表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

406/416

395.……寝よう。

お待たせしました。


更新時間がバラバラで本当にすいません……。


ではどうぞ。


『颯さん、私達、息もピッタリね! 颯さんと一緒に戦うの、私、好きよ?』


『ちょっ、ちょっと志木さん、いきなりどうしたの? ――あの、えっと、うん。私も、志木さんとダンジョンで戦うの、好き、だよ?』



 珍しく、赤星が受け答えで動揺していた。

 そりゃあの志木が、人との距離感詰め放題な逆井みたく、体をピタッとくっつけて来れば驚きもする。



「うわっ、凄っ……。背後からのハグかよ……百合百合だねぇ」 

 

 

 志木の顔と赤星の顔がほぼ真横に来るくらいの近さ。

 声を出す時の吐息が耳に当たったようで、赤星は恥ずかしそうにキュッと目を瞑る。



 ……ふむ。



「赤星は意外と美少女の攻めに弱いのか……」



 そして志木はやはり受けではなく攻め――




「――って違う違う! えっ、何これ!?」



 混乱していたのは俺だけではないらしく……。




『おおぅ……司ちゃん。ウチは今、凄い光景を目の当たりにしてるよ。――花織ちゃんは、攻めるとエロい!』


『ばっ、バカッ! 美桜、そんなこと言ってる場合か!? 花織さんが颯さんとえっ、エッチなことをおっぱじめるかもしれないって時に!! はわっ、はわぁっ!』



“おっぱじめる”って……。

 立花は表現からもムッツリが(にじ)み出てるよなぁ……。


 画面はしっかりと志木・赤星の姿を映していて動かない。

 しかし空木と立花のやり取りから、現場は十分ざわついていることが窺えた。


 

『レイネさん、颯先輩がッ! 颯先輩が先輩以外の人と大人の階段上っちゃいますよ!!』


『うっ、いや、でも……相手はカオリだし……女同士だし……良いんじゃねえの? 隊長さんもそこは寛容(かんよう)だと思うけど』



 いや桜田よ。

 逆に俺が赤星と大人の階段上っても、それはそれでマズいだろうに。


 ……ってかそんな可能性がそもそもないだろうけどね。

 


「レイネも、だからそもそも俺がどうこう言う事じゃないって、うん」



 過去を映した動画だとは分かっていても、口に出してツッコまずにはいられなかった。


 だが(さかのぼ)って考えれば、先ずツッコミを入れないといけないのは志木の行動であって……。



『その、颯さん、お互い受験もあって、最近は中々一緒にいられる時間が無かったでしょ? だから、こうして颯さんといられることが、嬉しくて……』


『志木さん……うん。ありがとう。私も、志木さんと一緒にいられると、楽しいし、嬉しい。志木さんは凄く尊敬する、素敵な人だから』



 本当に仲の良い、親しい友人同士の空気感。

 周りを置き去りにするそのやり取りを見ていて、やれやれと溜息を洩らしながら苦笑する。



「フッ……シーク・ラヴはやっぱりメンバー同士で恋愛してるのかもな」


 

 よくネットで目にする誰と誰のカップリングがベストかという俗っぽいネタ。


 逆井×志木の組み合わせが至高だとか。

 白瀬×飯野さんの胸囲の暴力カップルに挟まれパイだとか。

 あるいはツギミーオールマイティー説からの派生で、他の11人誰とでもえちちな関係大丈夫なんてものまで。


 実に様々な派閥が日々、どのカップルが最高かを言い争っている。

 

 しかし共通するのはどれもこれも、全て“シーク・ラヴのメンバー内で”との前提があることだ。 


 つまり、それだけ世間的に見て、良い意味で男っ気が無いと思われていると言うことだ。



「ノリも女子高っぽいらしいしな……志木とか皇さんは余計に、か」



 周りが女性だけ、しかもトップアイドルになる逸材の美少女だらけという環境。


 ずっとそんな環境にいるんだったら、そこらの信用ならない男よりも。

 多くの時間を共に過ごしているメンバーの誰かの方が、愛情も芽生えやすいということだろう。


 

「会員番号0番を皆が俺にくれるのも、俺に母性感じてる説が濃厚だしな……」 


 

 つまり、彼女達は異性よりも同性の美少女たちと過ごす時間が多すぎて、男性と接する時にも“女性的な何か”を求めてしまっている可能性が強い。


 そして俺は彼女らと行動を共にする際、モンスターを倒したりダンジョン探索を先導したりを主に担当……。

 そうした行動・仕草は“危険・脅威から守ってくれる存在”とのイメージに繋がる。

 

 連想ゲームでそこから“あっ、じゃあそれ、お母さんじゃん!”と思われている可能性が否定できないのだ。


 ……こうして“俺氏、アイドル達には男として見られずオカンと見られてる説”が出来上がるのである。



「……まあそうじゃないと、こんな他に取り柄のないボッチに、0番の会員カードなんて渡さないよね」

 

 

 自分で言ってて何だか悲しくなってきた。

 動画、自宅ダンジョン共に大きな変化がないことを確認して外に出る。



「“動画、チェックした。戦闘に関してはあれで良いと思う。動画全体としては……一先ずこれだけは言っておく。……赤星と志木の美少女アイドル同士のカップリング、俺は良いと思うぞ”っと」   


 

 家の中に入り、電波を確かめてから志木に送信した。

 

 はぁぁ……。

 

 

 ああ言ったが、志木以外の動画も併せると、コメントに困る動画ばかりだった。

 コメントに悩む映像なんて、異世界にいる勇者との通信だけで十分だってのに。  

 


「……あれ?」


 

 そこまで考え、ふと頭の片隅に引っかかるものを感じた。

 その正体を頑張って突き詰めると……あっ。

 


「…………そっか。これ、あれだ」



 織部が影響力をガンガンに行使して赤星が心配になったから、志木に頼んだじゃないか。

 織部の存在を匂わせないために“もっとユリユリ・イチャコラして、赤星との親愛度上げておいてくれ!!”って。

 俺が。


 

「やっべぇぇ……普通に(あお)ってるか、イジってるようにしか見えない文面だったよな」



 志木は真面目に、それを早くも実行して形にしてくれていたのだ。


 それを俺は、(あたか)も志木が“俺からあれこれ言われたことなど関係なく、異性よりも百合に積極的である”と受け取れる内容で送ってしまった……。

    



「……よし、寝よう」



 

 速攻で返信が来た音を聞いたかもしれないが……聞き間違いだろう。


 俺は動画の見過ぎで疲れていた。

 うん、そうだ、そうしよう。


 

 エグいくらいにメールの着信音がしていた様に感じたが、きっと気のせいだと自己暗示して、明日以降の俺に対応を任せたのだった。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「あっ、ご主人、始まったよ!」


「おおぉぉ~! お館様お館様っ! ミオちゃんが出ているでありますよ!」



 今年もいよいよ残り日数が少なくなってきた頃。

 皆でリビングに集まり、年末が近づくと増えてくるテレビの特番を視聴する。



「お~そうだなぁ。ちゃんと怠そうな顔して働いてるなぁ~」

 

「フフッ、マスター、ミオのチェックする所はそこなんだ」

    


 学校と、そして帰って来てからの今までで勉強のノルマ分は終わらせたため、リラックスして見ることが出来る。


 

 大事なのはこうして気晴らしの時間も設け、コツコツ毎日続けることだ。

 習慣化すれば、意外に苦痛は少ない。


 

 我が家でもコタツが稼働中で、手と足を潜り込ませる。

 ふぃぃ~温かぁぁ……。

 

 人を中に閉じ込めて離さない引力があった。

 ヤベェ、こたつは人をダメにするな。


 萌え絵化したら、家のコタツは特にバブ味が深い美少女になるだろう。 

 

「……あっ、スマン、誰か足当たった」


「申し訳ありません、多分私です……」


 

 足の指先が触れた感覚があり、一瞬ドキッとした。

 流石に大きいコタツだとは言え、6人で使えばそうもなる。


 真向かいに座るラティアだったらしい。

    


「――あっ、コラッ、誰かあたしの足、蹴っただろ!?」


「え? ……えへへっ、レイネお姉ちゃん、勘違いじゃないの?」 



 レイネがお返しにとコタツ内で足を伸ばしたのが気配で感じ取れた。

 とぼけているが、負けじとルオも足を動かしているのが分かる。


 ……あの、偶に俺の足にも当たってるんですけど。



 だが特に注意することは無い。 

 俺も含め、こうして皆で集まってワイワイと何気ないやり取りをする。


 そのこと自体を喜んで、テンションが上がっているのだと分かるから。


 

「あっ、またっ。ルオだろ、絶対そうだ」


「えぇぇ~何のことかな? ボクはただコタツでぬくぬくしてるだけなのに」



 二人のじゃれつきに、俺も冗談交じりに参加する。



「おいおい、犯人は誰だ? 全く、俺が捕まえてやろう――」

  

 

 遊びのテンションでコタツの布団をめくり、覗き込む。 



「もう二人とも、ケンカはいけませんよ――」



 それが意図せずして、ラティアと被ってしまった。

 同じタイミングで中に顔を入れたらしく。



「あっ――」


「っ!? っっ~~~!!」



 ラティアとお互い、顔を見合わせて固まってしまった。

 赤い光が点る視界の中、色んなことが目に飛び込んでくる。


 

 未だに足先でのじゃれ合いを止めないルオとレイネ。

 中央に置かれたミカンに手が届かなかったからか、丁度コタツから抜け出した所のロトワ。

 ショートパンツの先から肌を覆う黒いタイツで、脚全体がコタツの熱で蒸れていそうなリヴィル。



 そしてスカートだったらしく、反対側からその中の布が少しだけ覗いてしまっているのを察し、慌てて再起動したラティア……。



「っっ~~!! あ、あの! えっ、えっと!!」


「スマン」



 二人してサッとコタツから頭を出し、外で気まずい謝罪をし合った。

 


「?」


 

 ロトワは無事にミカンを手に取ることが出来たらしい。

 再度モゾモゾとコタツに足を潜り込ませながら、不思議そうな顔をして俺とラティアを見ていた。




 ……い、今のはギリセーフだから!


 い、一瞬だったし!!

 コタツのランプの色のおかげで、全然、生地の色とかも分かんなかったし!!



「…………うぅぅ~~」



 だが一方で、赤色の光があったために分からなかったラティアの顔色が。

 コタツの外では、分かるくらいに真っ赤になっていたのだった。



 …………ラティア、スマン。

  

  

一緒に住んでるんですから今更ですけど、自分以外美少女しか入ってないコタツに足を入れるってのも中々な状況ですよね……。

こんなの判決、裏山死刑の一択ですよ(怒)



書籍版が発売して早くも続々と感想のお声を頂けて本当に嬉しいです!!

緊急事態宣言・書店さんへの休業要請と時期が被って、漠然としたソワソワ感があった瞬間もありましたが、感想等を頂けた喜びがあって、今は落ち着いていますかね!


中身も全くWEB版と同じではなく、手を加えております!

てつぶた先生が本当に素敵なイラストを描いて下さって、ラティアやリヴィル達のえちちで最高に可愛い絵をお楽しみいただけます!!



書籍版、発売中ですので是非よろしくお願いいたします!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 書籍化おめでとうございます。 最近は主人公とヒロインたちの掛け合いも増えてホクホクです! 歩谷先生の作品をこれからも応援し続けます! ps.主人公のとりあいとかおきてほしいなぁw
[一言]  昨日ようやく書店に単行本が入ったわ……あ、買ったよ? まだ織部が織部織部してなくて、新海さんに恥ずかしがるとか誰コイツってなるよね? >「赤星は意外と美少女の攻めに弱いのか……」  新海…
[一言] ラティアが小悪魔からただの純情少女になってる・・ かおりん新海の為に百合っぽいことしたのに完全に勘違いされてるしwメールでめっちゃ誤解を解こうとしてたんだろうなぁ・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ