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393.俺を殺す気か!?

お待たせしました。


すいません、時間が中々取れず、更新時間もバラバラで……。



ではどうぞ。



『わっ、あっ! ぼっ、ボタン、押しました――』



 解凍した動画ファイルを再生すると、いきなり皇さんのドアップが映し出された。


 かと思うと、皇さんは慌てて画面から離れ、全身が映る距離まで下がる。

 皇さんは、ルオと並んで、チアガールの格好をしていた。

 

 ……あの“大精霊装備”をした上で、である。



「……ワァオ」


 

 一旦、停止ボタンを押す。

 これは、皇さんのハレンチ極まりない格好を舐め回すように見たいから……では勿論ない。

 

 当り前だ。

 

 一瞬思考が停止してしまったから、それに合わせての措置をしただけである。



「えーっと……皇さん?」



 当然、俺の問いかけに応えてくれるわけもない。

 

 以前にも一度、ルオと一緒にチアガール姿で応援する動画を送ってくれたことがある。


 ルオが同じ格好をして並んでいるので、今回もきっとそうなんだろうと察しがついた。



「……はぁぁ」



 だが、皇さんの格好は以前のそれとは全く違う。

 隣に立つルオ以外で、“チアガール”と判断できるのは、手に持ったポンポン。


 そして未開の部族でももっと長そうなのを付けてると思える程に短い、腰蓑(こしみの)みたいなスカートのみ。



 後は、ウンディーネから贈られたあの痴女い格好をチアガールのファッションとして流用しているのだ。


 

 …………どこかの勇者な誰かさんが見たら、このセンスを絶賛すること間違いなしだな。


 

『あの、陽翔様! お勉強、お疲れ様です! 受験のため、ずっと頑張られていると御姉様やルオさんから聞いていまちた! ……あうぅぅ、噛んじゃった』



 カワイイ。

 舌まで噛んでしまったらしく、目をキュッと瞑って痛みに耐えている。


 

『あははっ。ドンマイ、リツヒ! ……それで、ご主人! ボク達、ご主人を応援することにしました! これで元気一杯になって、お勉強、頑張ってね!』



 やはり趣旨は俺の受験勉強を応援してくれることらしい。

 軽快な音楽が流れ始めると、二人は体全体でリズムを取って踊りだす。



 大胆な動きの中にも二人の細かな連携があって、見ていて楽しい気持ちにさせてくれる。


    

 ダンスが始まった当初こそ流れと勢いに乗って、こちらもほっこりしながら眺めていられた。



『……やっ!!』



 しかし、皇さんが大技に挑戦する雰囲気で、I字バランスを取った所で正気に戻った。





 皇さん、格好気にして!


 その衣装でチアはやっぱりいかがわしさ満点だから!

 皇さんの柔軟性よりも、股関節そのものに目が行っちゃうから!

 

    

「この動画……色んな意味でマズいな」


 

 皇さんが動き、飛び跳ねる度、スクスク成長中と噂の胸も上下左右に揺れる。

 精霊衣装とかいう格式高そうな防具のくせに、その皇さんの胸を隠しているのはたった一本のベルトである。


 ズレたり外れたりして大事な部分が見えてしまわないかと、こっちがヒヤヒヤドキドキしてしまう。

 

 それにあんな激しい動きをして、その、色々と擦れたりしないのかとも心配になる。



「……ま、まあ動画だからな。撮り直しがある。何かやらかしてたら、そのまま送ってくることはないだろ」



 簡潔にまとめられていたダンスは、無事何事もなく終わった。

 思春期男子としてはグッとくるものがあったのも事実だが、正直終わってくれてホッとしている自分がいる。

 

 ルオもルオで正規のチアコスチュームというよりは、コスプレ衣装っぽく肌の露出が多目な格好だった。


 

 二人して、俺の勉強を応援したいのか、ムラムラさせて妨害したいのか……。  



 溜息をついてまた頭を悩ませていると、まだ動画の時間が全然残っていることにふと気付く。


 動画内の音楽が鳴り止むと、それと入れ替わりのように拍手の音が画面外から届いて来た。

  


『――わぁ~二人とも、とっても素敵だったわ。きっと新海君も喜んでくれてるはずよ』 



 手を叩きながら画面内に入って来たのは、同じくコスプレ感あるチアガールの格好をした逸見さんだった。

  

  


□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆    



『――さっ、ルオちゃん。お着替え、してきて! 3人で新海君をもっと驚かせちゃいましょう!』


『うん! ――リツヒ、ご主人。直ぐ準備するから、ちょっとだけ待っててね!』



 ルオが逸見さんと入れ替わりに画面外へと出ていく。

 逸見さんがスマホ画面、つまり俺に向けて話しかけてきた。



『新海君、どうだったかしら? 二人とも、一所懸命に練習してたから、とても素敵な応援になったと思うのだけれど』


「素敵は素敵だけど……貴方の格好を見て、より純粋な気持ちで見られなくなってますよ」


 

 スーパーモデルとしても活躍するその抜群なスタイル。

 手足もスラッとして細く、露わになっているお腹も綺麗だ。


 何より三乳士の一角だけあり、ピタッと張り付くようなチアのトップスで、二つの大きな果実がこれでもかと強調されている。


  

 世のお父さん方や思春期男子が家族の目を盗み、夜更かしして見るタイプの映像感が本当に凄い。 

 先の皇さん・ルオのえちちなチア映像と相まって、ラティア達とは一緒には見られないさが天井知らずである。 



 送ってもらう時期が前後していれば、正に先日俺が夜更かしした時、これを見ていたのではと疑われても仕方がないような動画だ。 



 逸見さん……今回の件の黒幕は貴方でしたか。

 


『新海君もそうだけど、花織ちゃんに司ちゃんも……来年の受験があるから、こうして応援してあげることくらいしか思いつかなくて』 

  

『今年はですから、御姉様や司様、それに陽翔様がご参加できない分、クリスマス、私が精一杯、他の皆様をおもてなししたいと思います!』



 今年も去年のように、クリスマスに皆で集まって食事会というか、身内だけでのパーティーをする予定となっていた。

 

 逸見さんや空木なども含め、去年は参加していなかったメンバーも勢揃いするという。


 レイネやロトワもお呼ばれしているので、去年以上に賑やかな物となるだろう。



「俺達のことは気にせず、楽しんでくれればいいんだけどな……」

 


 一方で受験組である俺や志木、それに立花は参加しない。

 俺達としては過剰に配慮されると、それはそれでむしろこっちが気にする。


 自由に、そして気ままに楽しんで欲しいと言うのが俺達の共通した想いだ。



『私もサポートするから、律氷ちゃん、頑張って成功させましょう!』


『はい、六花様!』



 それにこのパーティーは、皇さんが更に成長するチャンスでもある。

 去年は小規模ではあっても、皇さんが慕う志木が主催していた。


 今年はその志木がいない。


 皇さんが志木の庇護を受けず、去年以上の規模で行う集まりを成功に導けば、きっと精神的成長にもなるはず。



 今年の合同文化祭で、皇さんが運営の主導的役割を担ったのと同じ趣旨だ。



「逸見さんが後見的にサポート役でいてくれるなら……まあ大丈夫か」



 パーティーの趣旨を理解して、必要以上には口を出さず。

 だが道を逸れるようであればそっと助言してくれる。


 そんな年長者的な安心感が逸見さんにはあった。



 俺達が受験でそれぞれの道を進もうとするように、皇さんにも自ら選んだ道を歩む強さを得て欲しい。


 そう言う視点から見れば、逸見さんは絶好のサポート役と言える。


 流石はあの椎名さんと同い年の親友なだけあるぜ!




『…………ウフフッ。新海君にはだから、少しでも頑張って貰えるよう、もっと素敵な応援をしてあげないと、ね?』



 ヒィッ!?


 すみませんごめんなさい!!

 別に年齢イジリするつもりじゃなかったんです!!

 

 逸見さんからゾクッとするような雰囲気を感じ取り、心中で即座に土下座謝罪。


 

 えっ、どうなってんの、これって過去の映像だよね!?

 未来のロトワじゃあるまいし、俺の心を未来予知して会話を成立させてる、なんてことないよね!?



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



『――じゃぁ、フフッ。最後に、3人での……フフフッ。ダンス、楽しんでね?』

    


 だが俺の動揺はやはり杞憂(きゆう)で、直ぐに逸見さんは楽しそうな表情に。

  

 そしてクスクス笑って、皇さんを促しながら位置についた。

 このツボに入ったような笑いを見て、先程の逸見さんとは違った、嫌な予感が脳裏をよぎる。



 そこに――




『――キャピィィィィ☆ ナツキ・シイナ“チアガールスタイル”、見参、だよっ! シュバババァッ!』


「ブフッ――」

 


 吹いた。

 現れたのは、ピチピチのチアガールコスチュームを見に纏った椎名さん……を再現したルオだった。



 椎名さんはこんな派手で、見るからにハレンチな格好を自分からしない、お堅い人である。

 そして“変身パターン”が幾通りもあるかのような“チアガールスタイル”という言い方。


 それらが組み合わさり、暴力的なまでに笑いを誘ってくる。 



 これっ、いかがわしい動画感がある以外に、別の意味でも世に出したらダメな映像だ!!

 

 特に椎名さんには、絶対にこの動画の存在を知られてはいけない!

 

“ナツキ・シイナ”の存在を既に許容しているとしても、である!



『キュピピピィィ♡ シイナ、新海様のために、御嬢様と六花と一緒に、踊っちゃうぞ! ズキュンドキュン☆』


「ちょっ、ルオ、止めて――」



 俺を笑い殺す気か!


 モノマネ芸人さんがよくやる“本物が絶対に言わないセリフ”を過激な方向に誇張したようなものだ。


 

 逸見さんも皇さんもあのハレンチなチア衣装のまま。

 更に椎名さんを再現しているルオの格好だって、相当に刺激的な見た目をしている。


 にもかかわらず、3人でのチアダンスを、俺は全くいかがわしい気持ちを抱くこと無く見ることが出来たのだった。


  

 ……代わりに、ずっと呼吸困難な状態だったけどね。



 

「はぁ、はぁ……志木の、送ってくれた動画を、見るか」



 真面目そうな内容の動画を最後に残しておいてよかった。

 心の中で志木に感謝を述べつつ、未だ残る笑いの余波に耐えながら、動画を準備するのだった。      



【ミッション!! “椎名さんに、バレるな!!” 難易度:ベリーハード】


受験勉強の応援動画のつもりが、先ずムラムラする内容となっている以外にも。

新海さんの頭を悩ませる内容な動画なのであった……(白目)


一方の志木さんは真面目ですからね。

そんなこととは無縁のはず……(目逸らし)



書籍の発売がもう後3日後に迫りました。

また既にご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、伊藤いーと先生が紹介マンガを描いて下さってます。


……とりあえずラティアは絵媒体だろうと文字媒体だろうと、どっちでもドエロい、ということですね!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全てを持っていくナツキ・シイナ(ルオ)。恐るべし!!!!!!!!! どうせこの後、新見のケータイで発見されてしまうのだろう……… [気になる点] 志木さんはね、真面目だから「受験が終わった…
[一言]  ダッシュエックス文庫のページで挿絵公開してたけど、織部が(まだ)織部じ ゃない件。あと新海さん普通にイケメンやな。  チアガールっていうと伊東ライフ(がんばれ♡ がんばれ♡)をどうしても…
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