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390.お楽しみの、始まりだっ!!

お待たせしました。


本当、更新がバラバラですいません。


ではどうぞ。


「誰も起きてないな……フフッ、フフフ」



 1階リビングに到達。

 電気が消えており、誰もいないことを確認。


 

 今夜はラティアが客間にてロトワと一緒に眠っているはず。

 だが同じ階だろうと、余程へまをして音を立てない限りは起きないだろう。



「さてと……お楽しみを始めますか」



 自分の部屋から持ってきた物の準備を着々と進める。

 机の引き出しの奥、DIYで作った二重底に隠し続けてきた物が、今日ようやく日の目を見るのだ。


  

「フフッ、ゴミ対策もバッチリだぜ。これならバレない……おっと、換気も忘れちゃいけないな」



 女性は男性よりも臭いに敏感だと聞く。

 リビングに痕跡(こんせき)を残さないよう換気扇も回し、一緒に持ってきたポテチの空き袋を確認。


 事が終わった後はこの中に物を入れ、ゴミ袋に入れておけば誰も不審がらずにゴミ収集へと出せるだろう。



 フフッ、我ながら天才だぜ。

 誰か俺の犯行を食い止めてくれる奴はいないのか?


“完全犯罪、承ります”これで食って行こうかな、今後……。

 


「っと……そろそろ温まったかな? ……うん、良いだろう」



 冷たいままなんて、楽しさが半減だからな、グヘヘ。

 


「お供は……これにしよう。やっぱりラティア達の動画だな」

 

 

 スマホを操作して、該当する動画を準備。

 イヤホンを装着して、音漏れを防ぐ。



「さて、準備は整った。――パーティーの、始まりだっ!!」 



 両耳からラティアの声が入ってくる。

 それと同時に、俺は、手を動かした。

 

 

 真っ赤な色をした、物体を、今、体に――






「っっ!? うっ、うっ――」











 ――うめぇぇぇ!!







“夜食”っ!!




 


 そう、俺は同居人の美少女たちに隠れて、一人、いかがわしいことをしていた……のではない。

 

 


「うわっ、辛っ! 激辛MAX麺、ヤバっ、舌引き千切って洗いてぇぇぇ!!」



 真っ赤に染まった麺に喉まで焼き切られそうな痛みを覚えながらも、俺はその手を止めない。

 いや、止められない。



 この体に滅茶苦茶悪そうな食べ物を、夜中という更に体に良くない時間に、周りから隠れてコソコソと食べる。


 この背徳感が堪らないのだ!!



 ……まあ純粋に美味いってのもあるけどね。

 

 いつも食事を作ってくれるラティアやリヴィル、それにレイネにバレでもしたら苦言を貰う事間違いなし。

 だからこそ、コッソリと一人でやる必要があるのだ。



「っと、口直しに……あむっ、にゃむっ、むしゃッ、……うっ、苦っ。流石は薬草さんだぜ。あの舌をぶっ潰そうとする辛みの上に、圧倒的な苦味を上書きしてきやがった」

  

  

 普段は1枚くらいで止めるのだが、辛みを抑えるためにと言い訳して3枚、4枚と次々に口へと放り込む。


 これも食べすぎは体に良くないのだろうが、それを知りつつ摂取する。


 受験勉強もあって忙しく、溜まりに溜まったストレス発散だ。

 本当に久しぶりだから、今日くらいは……。



「……あぁぁ、本当に美味(うま)いし上手(うま)いなぁ。このインスタント麺も、ラティアの“歌”も」



 激辛のせいで額から汗をかきながらも、耳から入ってくる綺麗な歌声に癒される。


 今再生しているのは、ラティアの乱れたエッチな姿を収めた動画……などではない。

 というか、そんなものない。


 

 いわゆる“歌ってみた”動画で“RA”さん――要はラティアが正体不明の歌い手として投稿サイトにアップしている動画である。



 シーク・ラヴの1周年記念ライブで逆井達が触れてくれたおかげもあるが、何より純粋な歌の上手さが話題となってジワジワ人気となっている。



 こうして交互に襲い来る辛さと苦みで口が死ぬ中、耳はラティアのおかげでフワフワと心地いい状態なのだ。


 この落差を楽しむのも、ストレス発散に大いに役立ってくれている。




 さて、他の皆の歌も聴いて――




「――うにゅぅぅ……お館様?」



 ……ん? 

 あれっ、今何か音が――あっ。

 



「凄く、辛い辛いの匂いが、んんっ、にゅぅぅぅ……」



 イヤホンを外して、リビング入り口に目をやる。

 そこには、寝ぼけ眼を擦って立っているロトワがいたのだった。


 

 ロトワの鼻の良さを忘れてた……。

 換気扇を上回って来たかぁぁぁ……。 



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



「ええっと……とりあえず、ロトワ、これは、皆には内緒な?」


「うゅぅ……はい、内緒であります。お館様が夜中にお一人で、何かを食べていらっしゃったこと、ロトワは絶対、秘密にするであります……」



 まだ半覚醒の意識で、ロトワは危な気に頭を揺らす。

 ……これ、絶対しゃべっちゃう奴だろ。



 中途半端に起きてしまい再び眠るのには時間がかかると判断し、ロトワと向かい合って善後策を検討する。


 クッ、どうしよう……。

 このままじゃ、絶対にロトワの口からポロっと漏れてしまう。


 挙句――



“あらっ? まさか、私達が寝ている間に隠れて、お夜食を食べられていたのですか? しかも、私を始め皆の歌声を聴きながら? あらあら、ご主人様ったら……ウフフッ、お可愛いこと”


“へぇぇ……マスター、お可愛いね”


“隊長さん……そういう所あるんだ。へへっ、お可愛いじゃん”



 ってなるぅぅぅ!!




「ロトワっ、本当に言ったらダメな奴だからな!? 聞かれても“言わないであります! お館様と秘密にするって約束したであります!”って感じでもアウトだからな!?」



 夜中テンションだからか、ちょっと思考が怪しい部分があったような、無かったような……。

 だが気にしてられず、ロトワに必死に頼むこむ。



「お任せ、下さいでありますぅ……ロトワ、ラティアちゃん達に聞かれても、ちゃんと“お館様とのお約束があるので、知らない”って答えるであります……」



 だから、それがダメなんだってぇぇぇ!!

 何の対策も打たないとバレることが確定し、頭を悩ませる。

 


 すると、ラティアの動画を再生し終えたスマホに、丁度着信が入った。


 

 えっ、何だ、こんな時間だぞ。

 一体誰だよ……。


 ……空木?



「はい、もしもし――」



『あっ、お兄さんですか? 夜分遅くにすいません。あの、その、今……色々と大丈夫ですか?』



 夜中、既に日付が変わっていることからくる遠慮、というよりは。

 別の何かに配慮しての気遣いに聞こえた。



「まあ今起きてるし、問題は無いが……」


「うにゅぅぅ……ミオちゃん、でありますか?」


『あっ、じゃあ、やっぱりお兄さんだったんですね……ロトワちゃんも一緒?――えっと、丁度帰って来たところなんです。もし大丈夫でしたら、隣、今からロトワちゃんと来ませんか?』 

 


 突如かかって来た空木からの電話。

 その申し出も予想外の内容だった。


 

□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「いやぁぁ、良かった良かった。物盗りでも入ったんじゃないかってビビりましたからねぇ~」



 隣のシェアハウスで出迎えてくれたのは、一仕事終えた後で更に夜中であるにもかかわらず元気一杯の空木だった。



「……ミオ、かなりビビってた。ハルト達の家に泥棒でも入ったんじゃないかって」



 そして後ろから現れたのは、男装モードを完全に解いた、リラックス状態の梓だ。



「だってしょうがないじゃない。本当に帰って来た丁度にお兄さんの家に電気が点いたんだから。変な想像もしちゃうでしょう」



 なるほど。

 空木がシェアハウスに帰って来たタイミングで、俺がリビングの電気を点けたから、嫌な想像が頭を過っちゃったと。



「心配してくれたんだな――」


「――ちょっと待ってください。……むしろこの冬の時期……サンタになったお兄さんを、盗人と誤解したお姉さん達が捕まえたりする展開もあったりして」



 空木は名探偵にでもなったつもりなのか、額を指でトントン叩いて妄想をベラベラと口にして行く。



「ただお兄さんと直ぐに気付いても、お姉さん達は気付いてないフリしてそのままエッチな尋問ごっこへと移行。お兄さんグッタリ、お姉さん達ツヤツヤな聖夜ならぬ精夜なホワイトクリスマスに――」


「バカ野郎」



 こらっ、ロトワの前で色々とNGワード出すな。

 エロゲーのやりすぎだっつぅの。


 今年はサンタの真似事、マジでやろうとしてるんだから。

 ロトワが勘付くヒントになるような言葉は止めて欲しい。


 後コイツ、マジで頭んなかに転生したオッサンか何か住んでんじゃねえのか?

 トップアイドルがオッサンみたいなことばかり言うなっての……。

  

 ただロトワは空木と梓の姿を見ると完全に意識が覚醒したらしく、夜の遠足にでもやって来たように喜んではしゃいでいた。


 ふぅぅ……よかった。

 どうやら聞いてなかったようだ。



「アズサ殿。お仕事だったでありますか?」


「お仕事と言うか、護衛みたいな感じ。ミオと一緒に、シイナに付き合ってた」



 ロトワにせがまれ、梓が優しい笑みを浮かべながら話をしている。

 それを空木も傍から見て微笑んでいた。

 

 

 ……ロトワと梓があんなに親し気なのも驚きだが、空木と梓のセットも珍しい気がするな。



「ん? ――あぁ、梓ちゃんが女の子だって教えてもらってから、色々と親しくなるきっかけとかがあって」


 空木が俺の思考の意図に気付いて、簡単にそう説明した。

 そして自分の話題が出たと気づき、梓が顔をこちらに向けて親指をグッと上げる。



「エロゲー。色々と学ぶことが多い」



 おい。

 だから、ロトワの前でそういうワード出すなっての。


 何だよエロゲー仲間って。

 君ら仮にも男性・女性それぞれのトップアイドルなんでしょ? 

 

 ……いや、梓は実は女子だしノーカンとか、そう言うのは無いから。

  


 もうちょっと色っぽい話で繋がれよ……。



 とりあえず話を変えるために、今度は俺達の先程までの状況を話すことに。



「ははぁぁ……なるほど。お兄さん、勉強凄い頑張ってるらしいですね。花織ちゃんや司ちゃんが(しき)りに褒めてましたからねぇ。まるで自分の恋人の凄さを自慢するように」



 いや、誇張し過ぎ。



「ストレス発散は大事。背徳感がある中食べる夜食の良さ、分かる。だから、ハルトも私を食べてストレス発散すべき」



“だから”以下の因果関係が謎ですねぇ……。


 

 二人の冗談部分はともかく。


 直ぐに俺の言った場面が想像できたらしく、理解を示してくれた。 

 空木も梓も同じような経験があるからだろう。

  


「で、美味しく激辛をヒィヒィ言いながら食べてたら起きてきたロトワに見つかって、空木が丁度電話をくれたってわけだ」


「へぇぇ~。ウチらもこの後、スイーツバカ食いで夜更かしする予定だったんですよ」



 空木は大き目のレジ袋を示して、中からプリンやシュークリームを取り出す。

 帰りにコンビニで買ってきたんだろう。



「つまりロトワちゃんの口封じをしないと……ですね?」

  

 

 ラティアの動画を視聴していた点については触れていないのに、空木はあくどい顔をしてノッてくる。

   

 

「はわっ!? はわわっ……ろっ、ロトワ、口封じされちゃうでありますか!?」


「お兄さんやウチらの夜の秘密を知ったからには、ロトワちゃんをタダで返すわけにはいかないんだよ……グヘヘ」



 夜更かしパーティーの参加者が増えることを歓迎するように、悪い笑顔でロトワと対峙する。  

 そしてエクレアとフルーツサンドを両手に、これから悪魔の儀式でも行おうとするかのように距離を詰めた。


 じりじりとにじり寄られ、ロトワは絶体絶命の表情だ。



 ロトワ、スマンっ、俺は無力だ……!



「これでっ、ロトワちゃんもウチらの仲間だぁぁぁ~!!」

   

「はぁぁれぇぇぇぇ~!!」



 ロトワの犠牲の下に、賑やかな夜はまだまだ終わらないのだった。


ロトワ「(ラティアちゃんとリヴィルちゃん、レイネちゃんには絶対言っちゃダメって言われたけど、ルオちゃんには伝えたらダメって言われてない……つまり、ルオちゃんに伝えて秘密の共有者を増やせということでありますね、お館様!!)」


そしてルオを介してラティア・リヴィル・レイネへと広がっていく、これを伝播性の理論と言います(違う)



感想でお知らせ頂いて気付きましたが、閑話なども含めてですがとうとう400部を超えました!

書籍版の発売日も2週間を切って、色々と感慨深いものがあります……。


本当にてつぶた先生の描いて下さったイラスト、最高に素敵なものとなっております。

ラティアやリヴィル達の絵が主目的でも勿論嬉しいです、是非よろしくお願いします!



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― 新着の感想 ―
[一言] >「お供は……これにしよう。やっぱりラティア達の動画だな」  オカズだな! >「っと、口直しに……あむっ、にゃむっ、むしゃッ、……うっ、苦っ。流石は薬草さんだぜ。あの舌をぶっ潰そうとする辛…
[気になる点] 伝わり方が完全に中学生の「絶対誰にも言わないからさ、教えてくれよ」と一緒なんだよなぁ……
[一言] 十分色っぽい話でつながってるだろ! いや、正確にはイロっぽいと言うかエロっぽい話でだけど
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