表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

397/416

387.謎なんだよなぁ……。

お待たせしました。


更新の時間帯がバラバラですいません……。


ではどうぞ。

 いつもと変わらない平日の朝。

 嫌だなぁと思いつつも社会に抗う気力もやる気もなく、ダラダラと変わらぬ道を歩いて消化する。



「就職決まったぜっ! “探索士の2期生なら、是非ウチに来てくれ!”って、あっちから言って来てさ!」


「へぇぇ凄いな。……まあ、俺も推薦、受かったけどな! やっぱ“補助者”になって正解だったぜ!」



 登校すると、楽し気な会話が聞こえてくる。

 一方でその会話には混ざらず、勉強に励んでいる生徒も少なくない。

  

 受験や就職のプレッシャーから解放された組と、まだ進学先が決まらない組に二分されている。


   

 こうした光景を目にすると、改めて自分も受験が迫っていることを実感した。

 はぁぁ……勉強、嫌だなぁ。

 

 



「――おーし、じゃあホームルームは終了。自習ばっかだからって、明日もサボらず学校来いよー」



 特にこれと言って取り上げることもなく、学校での1日を消化した。


 今日もみっちりとやるべき問題集をこなすことが出来た。

 死んでいたメンタルを何とか奮い立たせたのだ。


 満足感・充実感を得つつ、帰り支度を済ませえる。



「ふぅぅ……もう後は単語帳と簡単な復習でいいだろう」


 

 既に規定の範囲の授業を終え、1日の大半が自習時間となっていた。


 だから学校では過去問や問題集など、集中力を要する勉強のための時間にした。

 そして家では英単語や日本史・世界史の年号暗記など、単純作業に当てるのだ。



「さて、帰るか……うぅぅ寒っ」 



 暖房の効いた教室から出て靴を履き替える。

 冬の寒さによる手の冷えを感じ、カイロを迷わず開封。

   

 持ってきていたものの、朝は使わなかった使い捨て品だ。



「はぁ、温かい」



 モンスターが吐く火は全然耐えられるのに、自然の寒さは実感するんだよな……。


 やっぱり魔力が間にあるかないか、ってことが関わってるのか?

 不思議だねぇ。


 さて、どうしようかな、自分へのご褒美に、帰りに甘いものでも……。

 ……俺は自分にダダ甘な新人リーマン・OLかよ。



「ちょっ、どけって! 俺にも見せてくれ!」


「うわっ、すげぇ綺麗ぇ……あっ、ちょっ、バカっ、押すなって!!」


「ツンって感じだけど、でもとんでもない美少女だよな……どこの学校の子だろう……桜田ちゃん学校(とこ)の制服かな?」




 校舎を出て校門までの道を歩き始めると、何やら人が集まりざわついているのに気づく。

  

 女子もいるが、やはり目立つのは男子の数。

 漏れ聞こえる内容からして、校門に人待ちしている女性でもいるのだろうか。 



「絶対彼氏待ちだろ……あんなモデルみたいな子を待たせるとか、裏山死刑だな、そいつ」


「それに釣り合うだけの男ってことじゃねえの? ……立石とかじゃね?」


「あぁぁ……なら、俺ら雑魚が挑んでも絶対勝てないな、返り討ちにされんぜ」



 立石め、織部という最愛の幼馴染がいながら他の美少女に(うつつ)を抜かすとは。


 織部の愛の鉄槌が必要だな。


 それはそうと……どれ、俺もその待ち人少女を見てやろうか。

 人垣に隠れてコッソリと……。



 ――って!!




「…………まだかな、もう他の生徒たち、出て来てるのに」




 ――何してんのリヴィルさんっ!?




 校門で注目の的となっている人待ちの美少女ちゃんは、リヴィルだった。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



 リヴィルは何故か赤星の学校(とこ)の制服を身にまとい、その上からパーカーを羽織っている。


 フードをしていてこの目立ちようは流石リヴィルと思わなくもないが……。

 驚くべきは男子の数が凄いのは当然として、女子も少なくない数が集まっていることだ。

 

 リヴィル……女子人気も凄いからな……。



 俺は慌てて周りから距離を取り、電話を取り出してリヴィルにかけた。




「……もしもし」


『あっ、もしもし、マスター? あのさ、今どこにいるの?』



 リヴィルと通話が繋がったと思ったら、周りのざわめきが一層強まった。



「うわっ、ちょっとだけど、ちょっとだけど笑顔になったぞ!」


「ぐあっ、かわぇぇぇ!! あの無表情な美少女にあんな顔させて! 絶対電話の相手彼氏だ!」


「ちょ、俺も俺も! 俺にも見せて!」 



 ええい、うるさいっ!

 スマホを当ててない耳を手で塞いで、リヴィルの声に集中する。



「……お前何やってんの? 新しい遊びか何かか?」 


『あっ――……ってことは、マスター、近くにいるの? フフッ、ただマスターを迎えに来ただけなんだけど』



 おかしそうにリヴィルが笑うのに合わせて、周囲の歓声も更に大きくなる。


 迎えに来てこの騒ぎかぁ……。

 俺が出て行ったら余計に事態がややこしくなるだろうな。



「……場所変えて、後で合流。先行っててくれ」


『そう? 分かった。先に行ってるね』



 場所を伝えると、リヴィルは抵抗することなくすんなり受け入れた。

 まあリヴィル自身があえて狙って、騒ぎを起こそうとしてたわけじゃないだろうからな……。   


 ただもうちょっと自分の魅力というか、どう周りから見られるかってのを自覚してくれればなぁ。   



 リヴィルが離れてから時間を置き、人垣が無くなりだしたのを確認して、俺は校門を出たのだった。





「っす。お待たせ」


「あっ、マスター、学校お疲れ様」


 

 駅近くの喫茶店でリヴィルと合流した。

 会計を済ませ、二人で家路につく。



「……で、いきなりどうしたんだ? ただ単に気が向いたからってわけじゃないんだろ?」


 

 ホームで電車を待ちながら、急な来訪やリヴィルの格好などを指摘する。



「酷いなぁ。マスターに会いたくて会いたくて、堪らず飛び出してきたんだったら、どうするの?」


 

 そう聞いてくる時点で違うって言ってるようなもんだろうに。

 俺が答えずジト目で見ると、リヴィルは楽しそうにクスクスと笑う。


 ……睨まれて笑顔になるって、何なの、リヴィルって実はドMなの?

 

 ……いや、まあドSだろうがドMだろうが、リヴィルってだけで需要はありまくりだろうけどね。


 


 電車が来たので素早く乗り込み、小声で先を促した。



「この格好はハヤテと着てた服を交換して……――あっ、そうそう! ハヤテが来たんだ。で、それだけじゃなくて」



 家に置いてきてあったはずのDD――ダンジョンディスプレイをリヴィルは小さな鞄から取り出して、それを俺に示す。



「“カンナ”からもメッセージが来てたからさ。流石にマスターを迎えに行った方が良いかなって」



 リヴィルの来意を納得し、感謝を告げる。

 


「……丁度寄り道して買い食いでもするかな、とか考えてた所だったからな」 


「そう、それはよかった。……フフッ、でも買い食いは止めた方がいいよ? ラティアが嫉妬するだろうから」


 

 買い食いに嫉妬って何だそりゃ……。

“間食し過ぎて夕飯を食べられなくなるぞ”的な意味だと捉え、軽く流しておいた。


 そうして他愛無い会話も交えながら、いつもとは違う不思議な下校時間を楽しむのだった。

 



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



「ただいまぁ~」



 家に到着し、玄関の靴を確認。

 確かに、ラティア達のとは別に、女性物にしては少し大きめのスニーカーが綺麗に揃えてあった。


 

「お帰り、ご主人っ、リヴィルお姉ちゃん!」 



 真っ先に出迎えに来てくれたのはルオだった。

 だが無邪気な笑顔が、リヴィルを見て、直ぐムスッとした顔に。 



「もう、ボクがご主人を迎えに行きたかったのになぁ~。リヴィルお姉ちゃん、ズルいよ!」


「フフッ、じゃんけんだったんだから、仕方ないよ」



 なるほど、誰が俺を迎えに行くかで一回揉めたっぽい。

 ……まあ誰が来ても同じ様な騒ぎにはなっただろうけどな。



「悪い、赤星。待たせたらしいな……あれ?」



 二人とともにリビングに入ると、確かに赤星はいた。

 そして、その格好に驚く。



「お、お帰り新海君。あ、あはは……お邪魔、してます」


「……そう言えば、何か“服を交換”とか何とか、言ってたな」

   


 後ろにいるリヴィルを見て、改めて赤星に目をやった。

 赤星の制服をリヴィルが着ていることの裏返しで、リヴィルの普段着は、赤星が身に着けていたのだ。

 

 

 

 女子同士とは言え、普通相手が着た服をそのまま着られるって、相当仲が良くないと無いんじゃないか?


 百合百合だねぇ……。



「あ、あはは。アイドルのお仕事で沢山色んな衣装は着るのにね。何だか気恥ずかしいな」



 照れる赤星に恥じることは無いと伝えておく。

 まあ新鮮で良いと思う、何かカッコいい感じがするし。


 リヴィルはリヴィルで、制服姿なんてまず見ないからな。


 

 そしてサイズ感が大きく異ならないことも、衣服の交換では必要な条件となってくる。

 普段小さめの服でも着られる人は、大きい相方の服を貸してもらっても着られるが、逆は難しいだろうからな。


 この場合小は大を兼ねる、という方が良いのか?


 小は大を……控えめサイズの人は、大きめの服も着られる……あっ、そうだそうだ!

 


「……ところで、織部が話したいらしい。――ラティア、夕飯はまだ、だよな?」



 キッチンの方に目を向けると、座っていたラティアが頷いて返してくれた。

 

 それを確認して、赤星に向き直る。



『そちらはもう冬ですか? すっかりコートが着頃の良い季節になりましたね。ところで、少し話したいことが――』



 今一度確認した、織部が送って来たメッセージの冒頭部分だ。 

 織部が“冬”・“コート”・“着頃の良い季節”とか言ってくると、いかがわしい意味での季語か何かがあるのかと思えてならない。


着頃(きごろ)”と“季語(きご)”を掛けてるのだろうか、とかどうでも良い事まで勘ぐってしまう。


 本当、普通のメッセージを送ってきて欲しい。



「どうする? 赤星も一緒に話を聞くか?」



 赤星は織部の名前を出した途端、待ってましたと言わんばかりにとびきりの笑顔を浮かべた。



「わぁぁ、本当!? うん! 新海君が良いんなら、是非!」



 織部と話せるのがそんなに嬉しいかね……。

 この喜び様を見ると、逆井よりもむしろ赤星の方が、何だか織部の親友みたいに見えてくる。



「嬉しいなぁ~。わっ、何を話そう! あぁぁ、緊張してきちゃった!」 

  


 赤星は、まるでこれから憧れのアイドルとご対面を果たすかのようにソワソワし始める。

 普段からしっかりしていて、頼りになるあの赤星が、である。

 

 ……逆なんだったら分かるんだけどなぁ~。

 

 だが既に二人は顔見知りだし。

 織部(アレ)が人気絶好調のスーパーアイドルである赤星に会うからと言って、ソワソワ緊張する絵が全く思い浮かばない。



 本当、織部は勇者補正かかり過ぎだろう……。



 俺の中での世界七不思議のランキングを変動させながら、織部との通信を準備するのだった。



 

逃げ切り!

逃げ切れ!


…………いや、織部さんから逃げろとか言ってるんじゃないです、はい。

むしろ織部さんからはどう頑張っても逃げられないでしょうから……(ようやく正気に戻った作者)

新海「…………(絶望)」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 冬よりも今の季節の方が織部さんはコートが似合いそう 温かくなると増えるんですよねぇ・・・
[良い点] 今回に限っては、織部さんは普通のメッセージを送ってきてます!(断言 [気になる点] 勇者からは逃げられないんだなぁ…
[一言] > 冬の寒さによる手の冷えを感じ、カイロを迷わず開封。  カイロの強化版でマグマが出た時には思わず二度見したね。うん、マグマのネーミングがアレなもんだからカイロってエジプトの首都名から取った…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ