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373.お風呂会……だと!?

お待たせしました……。


ではどうぞ。




「……それではご主人様、頭を洗いますね?」


「隊長さん、ジッとしててくれよ? 背中はあたしが、その、やるから」


「ああうん……あっ、いや、別に二人して洗わなくても……はい、ジッとしてます」



 色々と抵抗を試みてみたが、これはダメそうだと早々に察し、観念していた。

 ただボクサーパンツだけは履かせてくれとの要求だけは何とかねじ込んだが。

 

  

 お湯炊きを確認した後、ラティアがシャンプーのポンプを押して、手で軽く泡立てる。

 そして正面に立ち、俺の頭へと手を伸ばす。



「失礼します……」



 頭にラティアの手が触れ、優しく揉み込まれる。



 や、ヤバい!!


  

 堪らず目を閉じて下を向く。

 それはシャンプーの泡が目に入るから――ではない!!




 目の前にラティアの胸が!

 ビキニから溢れ出んばかりのたわわな果実が二つ、真正面にドドンとあったのだ!


 あ、危なかったぜ……あのままだと俺は無自覚に、永遠に前を向かされ続けていただろう……。

 そして泡で目が痛くなった所で。


“あら? ……ウフフ、ご主人様、泡が目に入って我に返るまで私の胸に夢中になってたんですか? あらあら……クスっ。お可愛い事”


 となっていたはずだ!


 

 クッ、ラティア、なんて卑劣な罠をしかけるんだ!

 


  

「んじゃ、隊長さん、背中洗う、からな……んしょっと」



 同時にボディータオルが背中に触れた。

 レイネが力加減に悩みながらも、一生懸命に動かしてくれているのが分かる。


 ゴシゴシ……ムニュムニュと……。




 ――えっ、ムニュ!?




「えっ、えーっと、レイネさん?」 


「あっ、悪ぃ! 強かったか!?」



 タオルの感触が離れるのと同時に、押し付けられていた胸の動きも止まる。




 ――って胸ですやん!!



 レイネさん、夢中になり過ぎて胸まで当たってるの気付いてなかったの!?

  

 こっちは目を瞑っているからか、より敏感になっている。

 そのせいで水着の質感や、その奥にある柔らかい膨らみの感覚を、見てなくても手に取るようにハッキリと認識してしまう。 



 レイネも……デカい!!



 クッ、前門の(ラティア)、後門の(レイネ)とはこのことか!!



「……フフッ。ご主人様、頭の方のお加減は大丈夫ですか?」


「あ、ああ……」



 ラティアは洗い残しが無いよう、丁寧に指を動かしてくれる。

 指使いに若干怪しむべき巧みさはあったものの、それ以外にムラっと来ることは今の所なかった。


 

 レイネも早々に背中を磨き終え、ラティアの方が終わるのを待っている状態だ。

 ……“前はどうした”って?


 流石にそこはやってもらわないからね、うん! 

 それはほらっ、色々と、アレじゃん?

 

 むしろ前は死守すべきだからこその、背中と頭を生贄にした取引だともいえる。

 

 5分前くらいの俺、咄嗟の判断ナイスだぜ、本当に!



「では流しますね……」



 声と共にシャワーの音が聞こえ、腕が濡れないよう軽くバンザイする。

 髪と背中を中心に洗い終えると、頭を振り雫を払う。


 

「ふぅぅ……ありがとう、サッパリした」


「はい。――……あの、本当に、火傷の方は、大丈夫ですか?」



 ラティアの声音が真面目モードになったのを感じ取る。

 レイネも浴槽の縁に腰かけて同じく聴く姿勢になった。


 ……まあ流石に、ただのラッキースケベ的なイベントだけでは終わらない、よな。



「冗談でも強がりでも何でもなく、本当に明日・明後日くらいには治ってると思う。だから大丈夫だぞ?」


「ジー……」


 

 えぇぇレイネさん……疑いの眼差し……。



「いや、マジで。俺って元々タフだから、うん。それに前衛でタンクだしな、今回のことで更に丈夫になると思う。打たれる程強くなるっていうか? ってか、ケガとかそれこそ火傷なんてつき物だって」


「……隊長さんの、ばかっ」

 


 レイネはポツンとそう呟くと、プイっと顔を背けて、逃げる様に湯船に浸かった。

 口を沈め、拗ねる様にプクプクと泡を作る。

 


「えぇぇ……」


「……分かりました。自分を納得させるのは難しそうですが、今回のことを教訓に、更に自分を磨くことで、何とか、なん、とか……」 

    

「ラティア……無理すんな。あたしだって、隊長さんがケガすんのなんか、全然納得してねぇからな。自分の不甲斐なさとか、やり場のないむしゃくしゃとかさ」



 いや、そんなこと言ったってしょうがなくないですか?   

 戦闘ですもん、相手がいることだし、俺が一番サンドバッグ、かつ的の役に向いてるんだって。


 だから、そもそもレイネ達が気にすることじゃないんだけどな……。

 


「そう、ですね……一先ず、赤い粘液状のモンスターを目にしたら、真っ先に葬り去ることを、自分との約束にして、一つの区切りにしたいと思います」




 スライムゥゥゥゥ!!

 逃げて、超逃げて!!


 これから先出会うだろう潜在的なスライム達よ、今すぐにどこか遠い所に逃げろ!


 ラティアの目が“炎スライム絶対許すまじ! 慈悲はない!”になってるぞ!!   



 いや、ラティア様!?

 俺は全然怒ったりしてないんだよ!?


 むしろアイツとは、場所やタイミングとかが違ってれば良い相棒になってたかも、とか思ったり……。



 そうして二人の魅力的な水着姿など脇に置いてしまう程、浴室内の空気が不穏なものになって来た時。

 

 脱衣所が突如として騒がしくなったのが分かった。



「――あっ、こらっ、ダメ、ロトワ!」


「はぅわっ!?」



 曇りガラスな扉がいきなり開くと、ルオとロトワが転げ落ちるようにして中に入って来た。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「だ、大丈夫ですか!?」 


「おいおい、無事か、ルオ?」



 二人が床にぶつかってしまわぬよう、何とか支えることに成功する。

 ラティアも手を貸してくれて、ロトワとルオをゆっくりと立たせた。



「は、はうぅぅ……はっ!! ――ろ、ロトワは、ロトワは見てないであります!!」


「ぼっ、ボクも! え、エッチなことなんて、全然、全く、一つも、見てないからね!?」



 立ち上がらせた二人はラティア達と同じく水着姿をしていた。

 だがそこにツッコむ暇もなく、サッと両手で自分の目を隠してしまう。


 その割には、ロトワもルオも、指の間からチラチラと俺達の様子を窺っている。



 …………。



「ばっ!? な、何言ってんだ!? あ、あ、あたし達と隊長さんが、そ、そんなエッチな事なんて、してるわけないだろ!?」


「えっ? 二人で一方的にご主人様の体を洗って差し上げたのも、大分エッチなことに分類されると思うんですけど? 違うんですか?」




 ……ラティアさん、純粋な眼差しでそれを俺に聞かないで。

 どう答えても俺が地雷踏むことになっちゃうから。




「……ほ、本当でありますか? でも、リヴィルちゃんが……」    

 

「うん、リヴィルお姉ちゃんが……」


 

 リヴィルェェェ。

 何を吹き込んだんだよ……。



 

「――あっ、何だ、普通にお風呂入ってただけなんだね。エッチな遊びはしてなかった、と……」




 そしてその当の本人がやって来た。

 例に漏れず、リヴィルも、とても大人っぽいセクシーな水着を着用している。


 

「いや、あのさ、流石に6人は狭いんだけど……」


「ほらっ、ルオ、ロトワも、中に入っちゃって」



 リヴィルは俺の言葉をスルーして二人を促す。

 ルオとロトワは一瞬迷いを見せるも、狭さから逃れるようにして浴槽に。


 

 うぐっ……水着の皆がこうも近くにいると、流石に意識せざるを得ない。


 

 同じく俺も狭さを言い訳に外へと逃げようとすると、目の前にリヴィルが立ちはだかった。


 ……あの、リヴィルさん?

 出られないんですけど。



「……皆でこうしてお風呂、初めてだけど、良いね」


「皆でお風呂って……」

    


 何を言ってるんだと反論しかけるが、リヴィルの瞳は真っすぐ俺を捉えていた。

 


「今日、ダンジョンでさ。ボス戦、快勝したのに微妙になっちゃったでしょ。それでも……――こうして最後楽しければ、良いんじゃないかな?」



 リヴィルの視線は俺を外れ、浴槽内で既にはしゃぎ始めた3人へと向いた。

 

 

「うわっ――おいルオ、ロトワも! 腕とか脚、当たるから! はしゃぐなっての!」


「ふふ~ん! レイネお姉ちゃん、ムッツリさんだからダメ~!」


「ダメーであります! レイネちゃん、何気におニューの水着であります! もう時期は外れてるのに、いつ新調したでありますか!」 



 それを、ラティアは優しい目で見ていた。

 そして、タイルの床へ直に腰を下ろす。


 リヴィルの言わんとすることを察し、もう先程の難しい話をする気はないと言わんばかりに。



「…………」



 つまり、リヴィルが先ずラティアとレイネをけしかけて来たことも。 

 そしてタイミングを見計らってルオやロトワをそそのかし、自分も風呂までやって来たのも。


 皆、今日のダンジョンのボス戦に、それぞれ思う所・落ち込むことがあったけど、それを引きずらないようにしたかった。

 無理やりにでも何かイベント事を作って、前向きにやって行こうと、そういう気持ちから出た行動だってことだろう。



「――はぁぁ。……分かった、降参だ。お風呂パーティーでも何でも、好きにやってくれ。あっ、でも、火傷の方は本当に問題ないから。そこは心配しないでくれ」



 まっ、今日くらいは良いか。


 これからもダンジョン攻略はやっていくつもりだ。

 1回のボス戦で各々反省点を見つけたからって、ずっとそれを引きずるのも非建設的か。



 ……べ、別に?

 この時期に皆の水着姿をこの至近距離で見られるからってのは、全然、全く、これっぽっちも関係ないよ? 

 

 リヴィル曰く全員が参加することに意味があるイベントらしいからな、うん、仕方ない……。 

 


「ん。……じゃあ、マスターの言質(げんち)も取ったし。これからボス戦があった日は、こうしてお風呂で反省会を兼ねて集まる。これで行こう。――もちろん、水着で、マスターも参加で」  



 なっ!?

 えっ、何それ、これ、今日1回限りじゃないの!?



「っ!? リヴィル……貴方は天才ですか!?」


「なっ!? おいリヴィル……あたしのデザート、後で分けてやる!!」



 こらそこの二人っ!!

 とんでもないグッドアイデアを聞いたみたいな顔をしない!!


 お、俺は流石に嫌だからね!? 

 ま、毎回毎回、こんなん心臓もたんわ!!    



「? 何だか分からないけれど、楽しそう! ボク賛成!!」 


「ロトワは皆でお風呂、大好きになったであります! 毎日でも一緒に入りたいであります!」


 

 こらぁぁ! 

 君達、いつもは俺に加勢してくれるじゃん!

 

 なんでこういう時だけ欲望に素直なの!?

 俺が追い詰められる時だけ脳内の天使と悪魔の勢力図逆転するのやめて!!



「……マスターがどうしても嫌って言うんなら、撤回するけど?」  

    


 ぢ、ぢぐじょうめ……!

 許さん、許さんぞリヴィルゥゥゥ!




 その後、室内あったか機能を使ってしばらく浴室にとどまることになり。

 ボス戦後のお風呂会案を泣く泣くのまされたのだった。 

 

すいません、もうちょっと更新頻度を頑張りたいとは常々思ってるんですが、近ごろの忙しさと疲れに負けてしまってます……。


一応主人公たちのちょっとした緊張と緩和が済んだことですし、次には直ぐライブの話に入っても良いんですが、ちょっと考え中です。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「……それではご主人様、頭を洗いますね?」  頭いきますよー。 > それはシャンプーの泡が目に入るから――ではない!!  胸が目に入るからだ! > ラティアの目が“炎スライム絶対許すま…
[良い点] 流石はリヴィル 天使のような小悪魔な発想だぜ 織部さんみたいな煩悩から来る発案じゃないから、新海さんには否定できないアイデアだわ
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