369.いや、そうじゃなくって!!
お待たせしました。
すいません、更新時間がバラバラで……。
ではどうぞ。
『へー。学園祭、盛り上がったのね。良かったじゃない』
『うん! かおりんとこには行けたけど、ハヤちゃんとこは律氷ちゃんが行ったんだ! 後4日くらいあったら、全部の学校、もっと回れたのに~って感じ!!』
話はそれぞれの学校のことに移り、そこから先日の合同学園祭に飛んだ。
白瀬、立花、そして司会役の空木が聞き手に回っていた。
『うちの学校も私立だが、他校程に学園祭には熱が入ってないからな。羨ましいな』
『なっつーの学校も、しらすんの学校も、皆で合同にすれば良かったかもね~』
「なっつー? ……お館様、リア殿のおっしゃっているのは、ツカサ殿のことで、よろしいんですよね?」
自信なさげに問い掛けてきたロトワに、俺も自信なく頷く。
「多分……だと思うぞ?」
あんまり逆井と立花の関係性を知らないが、消去法でもう立花しかないだろ。
白瀬がしらすん。
赤星はハヤちゃんだし、志木はかおりん。
そして空木がツギミーだ。
だから“立花司”の間にある“なつ”を取ってってことじゃないの?
「ふみゅぅぅ……リア殿は難解な言葉を使われるので、ロトワ、偶によく分からなくなるであります」
難解……ああ、分からなくもないな。
逆井の奴、ギャル語とか若者言葉とかガンガン使うし。
何よりメールの絵文字はもう暗号かと思うくらい関連性が謎だからな。
『あっ、そう言えばさ。ウチ、とある情報筋から聞いたんだけど、颯ちゃん、学園祭でメイド服着たんでしょ? あざといよね~』
『っっ!! もう、美桜っ! それ誰から聞いたの!? うぅぅ……今思い出しただけでも凄い恥ずかしい』
赤星は照れながら自分の顔をパタパタと手で扇ぐ。
「……フフッ、とある情報筋、ね~」
……リヴィルさん、意味深な笑みで見てくるか、枕を力強く抱きしめるか、どっちかにしてくれませんかね。
ああいや、やっぱり枕は勘弁を――あぁっ! ちょっ、何で両足で挟み込んでんの!?
カニばさみなんてやめなさい!!
こらっ、寝る時枕が気になり過ぎて眠れなくなるでしょ!!
『――あっ、そろそろ次に行かないと……』
話が盛り上がっていた所で、空木が時間を気にするようにして一度フレームアウトする。
直ぐに戻ってくると、空木は5人にペンとホワイトボードを手渡した。
『はい、じゃサクサクと次のコーナー行きたいと思いまーす。題して――ババン!! “おめでとう1周年記念! シーク・ラヴのこと、どれだけ知ってるかな? 覚えてるかな?”クイズゥゥゥ~』
『へぇぇ……面白そうね』
『むっ。クイズか……』
志木が余裕の笑みを見せるのに対し、立花、逆井、そして白瀬は難しそうな顔をする。
逆井はまあアホの子ってので分かるが……。
立花と白瀬はクイズ、ダメなのか?
出来そうな感じなのに。
意外だ……。
『チッチッチ。皆、いつからウチがただの面白楽しいクイズを出すだけだと錯覚してた?』
指を振って挑発的な顔をする空木。
また一度司会の位置から離れて、手を差し込む穴が開いたボックスを持ってくる。
『今から出すクイズは“シーク・ラヴに関する”問題ばかり! つまり、皆は正解して当たり前ってこと! もし不正解の人は――』
空木は上手くコーナーの説明をしながらボックスに手を突っ込む。
そしてゴソゴソ動かして引き抜く。
『ジャジャン!! ――ほう、最初は“ダンジョンで一緒に戦いたいと思う異性のポイントは?”です!』
『……つまり、罰として、美桜の引いた質問に答えろ、と?』
箱から取り出された紙を見て、赤星が察しよく趣旨を確認。
空木は頷き、早速問題に入った。
『第1問!!――シーク・ラヴ最年少は皇律氷ちゃん、ですが……では、最年長は誰でしょう!?』
「…………」
一瞬何故か椎名さんが思い浮かんだが、多分これは引っ掛けなんだろう。
椎名さんはまだシーク・ラヴの正式なメンバーというわけではないし。
「……そもそもシイナ含めたとして、最年長かも、怪しいよね~」
……リヴィルさん、俺の脳内独り言と会話成立させるのやめてもらえます?
『――はい、正解は“22歳2か月”で、飯野美洋さんでした! つまり、美洋さんは年でも胸の大きさでもシーク・ラヴ一ということですね~』
『……美桜さん、後で美洋さんに怒られても私知らないわよ?』
『へぇぇ……六花さんじゃなかったんだ。地味に知らなかった』
正解したものの、志木はジト目で空木に忠告しておく。
逆井は想像通り、一人だけ不正解だった。
逆井ぃぃぃ……。
『えっと、その、アタシは……ま、まあ? 頼りになるんだったら、うん、全然、アリっていうか? 他のことは全く気にしないって言うか?』
『へぇぇ……梨愛さん、シーク・ラヴでも随一の強さだからな。梨愛さん目当ての男性諸君には厳しい条件だな、うん』
逆井が罰ゲームをこなし、立花がコメントすると……。
『…………』
『…………』
『…………』
志木を始め、白瀬、それに赤星も無言だった。
それぞれが感情の読み取り辛い曖昧な笑みで……。
……どういうこと?
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
『正解は“花織様、花織ちゃん、志木ちゃん、かおりん、志木さん”の順に多い、でした! ファンの皆さんはつまり、花織ちゃんを神か何かと捉えているんでしょう! ――はい、飛鳥ちゃん、司ちゃん、不正解!! 罰ゲーム!!』
『うーん……何だろう。――あっ、大分前に空木さん達もここで事前プレイしてた、あのボードゲームの奴。あれをやってるわね! COMを最弱にして、私が圧倒的に勝つようにして、ストレス発散!』
『私は、その……歴代の戦隊シリーズで特に爽快だったシーンを何度も見返してる、な。全部録画はしてる、から、うん。かなりスカッとするぞ?』
その後、意外に細かい知識や記憶を問うクイズが出題され、赤星も不正解することがあった。
次々と問題が出され、不正解者もその分増えていく。
『梨愛ちゃん、司ちゃん、不正解! 知刃矢ちゃんは決め台詞の時“右目でウィンク”です! はい罰ゲーム』
『最近か……何だろう。雑誌も読むし、ゲームもするしな~。あっ、友達とチャットとか電話で長話! これかな、やっぱり!』
『えと、その、うん。……まあ皆はもう知ってると思うけど、その、“もしも自分が戦隊モノの変身ヒーローになったら”というIFを想像して、時間潰してます、はい』
「おぉぉ~ロトワも偶にやります! “もしロトワがお館様の窮地に颯爽と現れてお助け出来れば”を!! ツカサ殿とは気が合いそうであります!」
いや、うん、ロトワ。
それ助け終わった後のIFですやん。
えっ、助ける過程を想像して楽しんでるんじゃないの?
助けたことは前提で、俺に“助かったぜロトワ!”とか。
“お礼や褒美は何がいい? 助けてくれたんだ、何だってしてやるぜ!”みたいに言われる部分を妄想して楽しんでるってこと?
「フフフッ、ロトワは立派に育ってるよね~。ラティアと私達の教育の賜物かな~」
「えへへ……それほどでも~であります」
……クッ、ここにもラティアの影響力がっ!!
『不正解!! 司ちゃん罰ゲーム! 凛音ちゃん語検定1級のウチが翻訳しました。今のは“メールを送ったのに、3時間も返信が来ないよう~! 私、嫌われちゃったかな!? 助けて、ミオえも~ん!!”でした。……ちなみに梨愛ちゃんのはおまけ正解です。次はないので気を付けてください』
『“ミオえも~ん”に翻訳は無理っしょ!? かおりんもハヤちゃんも“美桜ちゃん”でスルーなのにアタシの“ツギミー”だけ辛口過ぎない!?』
『全然違った……いつも美桜に凛音の通訳を任せ過ぎたか……』
クイズでシーク・ラヴ自体についてや、そのメンバーに関する問題ばかりが本当に出題された。
そしてその解答を通して視聴者にも、シーク・ラヴ全体に対する親しみ・親近感が生まれるように設計されている。
罰ゲームも、彼女らの普段知らない一面・一部を知れることで、更にグッと心の距離感が縮まるようになっている。
ただ単に広報活動としての役割をこなせばいいなんて突き放したような雰囲気は全く感じられず。
ファンや視聴者のことを考えて動画が作られているんだとヒシヒシと伝わって来た。
『――えー、ここで凄く残念なお知らせがあります。クイズはこれにて終了なんですが……何と、花織ちゃんに一問も不正解を出させず仕舞いになってしまいました』
空木はさも深刻な事態が起きたと言わんばかりに沈痛な面持ちで謝罪する。
『花織ちゃんの罰ゲーム――嬉し恥ずかし質問コーナーをご期待だった視聴者・ファン・すべての関係者の皆さん、申し訳ありません。花織ちゃんが空気を読まず……ウチの、失態です』
『ちょっと!? 何で私が悪いみたいになってるの!?』
珍しく志木が取り乱すようにして空木に抗議する。
だがそれを逆井と赤星がそっと肩に手を当てて制止。
『かおりん……さっ、座ろう?』
『うん。志木さん、私達は気にしてないから』
『梨愛さん!? 颯さん!? それじゃあ私がダメだった前提みたいに聞こえるんだけど!?』
志木がアワアワしながらツッコミ役に回る。
そんな珍しい姿を映せたのだから、一応この企画は成功だったんじゃないだろうか。
アワアワかおりん……ツッコミかおりん……可愛いな、ちくしょう。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
『2人、それか3人くらいが一緒に組んでダンジョンの調査をすることは増えたけど……この5人で、っていうのはまだないね』
『ええそうね。ただそもそも1年以上前は、逆井さん達とこんなことしたりするようになるなんて想像もできなかったことだわ』
ワイワイと賑やかなコーナーから、ダンジョン関連の話題を話し合うコーナーに移った。
動画時間も残り少なくなってきており、締めに入ったのだと理解する。
『確かに。1周年か……ライブももう直ぐだし、凄く駆け足で来た1年だった気がする。……またこの5人で、今度はダンジョンでも行ってみたいな』
ふと零すようにして立花がそう呟いた。
『……まあそう言う企画だから良いんだけどね。司ちゃんの頭の中にウチはいなんだ、はー寂しい。孤独だわー。ウチ、そろそろ隠居して誰かに養ってもらうわー』
『あぁいや! 美桜を除け者にしたとか、そういうことじゃないぞ!? ただ、ただな! なんて言うか……私は探索士でもあるが、皆程には上手く戦えないし』
そこで少し声のトーンが下がる。
志木達程には活躍出来ていないと気にしていることが伝わって来た。
まあ志木を始め、赤星も逆井も、それに白瀬だって。
俺達と一緒に、一度は自分の実力以上のダンジョンに挑戦して、ボス戦だって経験してるからな……。
『……まあでも、ダンジョンも、探索士も、それにシーク・ラヴだって。まだまだ年齢にしたら1歳とちょっとでしょ?』
話が暗い方向へと向かおうとした時、逆井がそれを引き留め、逆に楽観的な、明るい未来を提示する。
『大丈夫だって、なっつ―! これからドンドン強くなれば、アタシらと一緒にどこまでも行けるって!』
『梨愛さん……――うん、分かった! ……私も、頑張ってみる。ライブが終わっても、多分受験でしばらく忙しいけど、それでも。もっとダンジョンで皆の足を引っ張らないくらい、鍛えて、強くなる!』
一瞬影を落としそうになったことなど無かったかのように、今はメラメラと闘志を燃やす姿をしていた。
それが丁度終わりの合図となったように、空木が引き継ぐ。
『――はい、というわけで。本日もお時間となりました。司ちゃんは果たして今度のライブまで生きているのか!? 無事生きていたとして正気を保てているのか!? 地獄の修行パートの結果を知りたい方は、是非私達の“1周年記念ライブ”に足を運んでください!!』
『いや、だから美桜!? 違うから、そこまで凄いことをする予定まではないから!! ライブが終わって、そこからで!! 受験と両立させるって意味だからぁぁぁ!!』
立花の悲痛な叫びを最後に、動画は無事終了した。
「……意外に楽しめたな」
これ1本だけでも、立花の人となりを何となくは理解出来たように思う。
志木からの申し出も、こうした立花の決意を想ってのことでもあるのだろう。
ライブの時、会ってみるか……。
で、本人も言っていた様に、その後、ダンジョンに同行するのもアリだと思う。
「……ってか、普通に会おうと思ったら会えるって、人気アイドル、大丈夫かよ」
俺が超絶根暗のストーカー系ボッチだったらどうすんだ、警備ガバガバか。
……ああいや、ボッチはその通りだけど、ストーカー系ではないからな、うん。
「? 大丈夫だと思います! ツカサ殿ならお館様と相性バッチリかと!」
いや、そんなことを気にしてるんじゃなくてだな……。
「クッ、クフフ……マスターと、相性バッチリ……クフ、クフフ! ラティアが聞いたら喜びそう」
……リヴィルさん、笑いの沸点低くて楽しそうっすね。
ってかもう寝ろ柑橘系酔っ払い予備軍!
……ああいや、俺のベッドで寝ていいって話じゃなくて!!
酔っぱらったらリヴィルは普段のリミッターを解除してより積極的な方向へとシフトします。
それをリヴィル自身も知っていて自ら飲む・匂いを嗅ぐことも……。
そしてえっちぃ感じで迫られ、物凄い近い距離間に新海さんも悩まされるんでしょう。
……こんな美少女、許せないな(おこ)




