368.それダメな奴!!
お待たせしました。
ではどうぞ。
『――はーい、始まりましたー。今日はスペシャルということで、内容盛り沢山でやって行きまーす』
『ツギミー始まって早々やる気無さ過ぎだし……』
『あ、あはは……まあまあ。折角司会を引き受けてくれたんだし。今日は大目に、ね?』
5人が横一列に並んで座り。
そこから離れた位置に空木が一人、対面するようにして椅子に腰かけていた。
逆井の言う通り、スペシャルにしてはやる気の欠片もない顔をしている。
……寝起きかっての。
「お館様、お館様! ミオちゃん、ミオちゃんであります!!」
ロトワは知り合い、それも大の仲良しである空木が画面に映っただけで凄く嬉しそうだ。
普段ならもう寝ている時間帯だろうに、眠気を感じさせないテンションである。
……今からでも、空木とテンション交換して来たらいいんじゃね?
「……マスター、ハヤテだよ、ハヤテ」
……そして何を対抗しているのか、リヴィルも俺の服を摘まんで呼びかけてくる。
「いや、分かってるっての。赤星だな、赤星」
反応してやると、リヴィルは満足そうに笑顔を浮かべ、袖を掴んでいた指を放す。
そしてベッドの枕を手に取ってギュッと抱きしめた。
……リヴィルさん、それ、俺のなんですけど?
この後寝る時、頭の下に敷くものなんですけど?
『はぁぁ……とにかく始めましょう。――まずは今日の趣旨は私達、“同学年組での座談会”、っていう認識で良いのよね?』
空木一人に任せられないと、白瀬がわざわざ5人の中での回し役を買って出る。
『うん、そうだねー。飛鳥ちゃん達同い年メンバーの5人で勝手にやってくれればいいのに。ウチ、何で招集されたんだろうねー』
恨み言を呟きながらも、白瀬のサポート自体には文句を言わない。
そうしてようやく場が整ったとでもいう様に、番組の進行を本格的にスタートした。
……食えない奴め。
『――はい、じゃあ次は花織ちゃん。このスペシャル回が初めての人もいるかもなんで、簡単に自己紹介をお願いします』
空木に話を向けられ、5人の真ん中に座る志木がアップで映される。
『分かりました。――こんにちは、志木花織です。シーク・ラヴのメンバーで、現役の女子高生でもあります。ここにいる5人で、楽しいお話を皆さんにお届け出来たらと思います』
『うわぁぁ、かおりん、あざとい! あざときれ可愛い!』
右隣、逆井のはやし立てる声に、志木は恥ずかしそうな笑顔を浮かべる。
……こういうのがあざといってんだよ。
黒かおりんめ、白かおりんの姿であざとさを振りまいてやがるぜ。
『――“きれ可愛い”……逆井さん。それは“綺麗+可愛い”の略語、で良いんだろうか?』
志木の左に座る女子が、スッと挙手して質問する。
凛とした声はとてもまじめな感じに聞こえた。
生徒からなめられている教師の授業中でも関係なく、疑問を感じた箇所を質問してしまうような。
そんなド真面目な感じの声は――
『――あー“司ちゃん”。そういう個人的な質問は画面の向こうの皆さんに自己紹介してからでお願いしまーす』
『えっ、ダメなのか!? 美桜、私に厳しい!?』
空木によって一瞬にしてツッコミに変わっていた。
空木ぃぃぃ……。
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『立花司だ。今回の企画趣旨からも分かる様に、年齢は皆と変わらない。家族構成は父・母・姉一人の4人家族、味噌汁を毎朝飲むのが日課!――どうだ、これでいいか!』
それはつまり、俺と同学年・同い年であることも意味する。
立花は整った顔を怒らせ、長いポニーテール振り乱す。
細い指を突き付けられた空木はそれにビビる様子もない。
『ふむふむ……えっ、司ちゃん、お姉さんいたんだ。初耳だな……あっじゃあさじゃあさ、一つ聞いていい?』
さっき煽るようにした態度など無かったかのように、空木は前のめりになる。
立花はそれに一瞬気圧されるも、直ぐに立て直した。
『あっ、ああ! 別にやましいことなど何もない! 聞きたければなんでも聞くがいい!!』
「ツカサ殿は……武士のような清々しいお方でありますね!」
この大和撫子風の美少女は、ロトワの目にはそう映っているらしい。
真っすぐなロトワとは確かに相性が良いかもしれないが……。
……空木とはどうだろうな。
『えっ、何でも!? グヘヘ、司ちゃん、ウチにそんな約束したらダメじゃないか……じゃあお言葉に甘えて――……趣味は?』
『普通!! ツギミーそれ全然普通の質問だし!!』
『……さっきの悪っぽい顔は何だったのよ』
逆井と白瀬のツッコミに、赤星も志木も楽しそうにクスクス笑う。
『っ! ……その、もう皆知ってるだろう?』
『えー。だって初めて見る人だっているかもだしー。“司ちゃん? は、誰それ。ウケるwww”って人にちゃんと司ちゃんのこと知ってもらうためにも、自己紹介は大事だよー』
「フフッ、ミオ、凄い、煽ってる。フフフッ……悪いこと、考えた時の、マスターみたい」
こら、リヴィル、ツボらないの。
……ってかそれでお腹抱える程笑いたくなるって、遠回しに“俺の悪だくみしてる顔、ツボです”ってこと?
……酔ってるから、普段と笑いの沸点違うだけだよね?
俺の顔が面白いってことじゃないよね?
『うっ、うぅぅ……日曜朝にやってる、戦隊モノを見るのが、子供の頃からの、毎週の、楽しみだ。――ど、どうだ! 言ったぞ! ほらっ、次、行こう!!』
『ウフフッ。――さぁ、あんまり司さんをいじめてばかりでも話が進まないわ』
志木の助け舟で、立花はホッと息を吐いた。
他の4人もそれ以上は追及せず、空木も引き際を誤らない。
『そうだね~――よっし。じゃあ皆の自己紹介も済んで、5人がどういう間柄かってのも今のやり取りで大体掴んで貰ったかな? じゃ、そういうことで早速コーナーに入って行きまーす!』
なるほど……。
好き勝手していたようで、初めての組み合わせだってことだから、そこへの配慮もあったってことか。
まあ5人+空木は同じグループのメンバーだから長い時間一緒にいる。
だがメンバー内にとっては今更なことでも、視聴者にとっては目新しいことや初めての発見だってある。
……空木め、何だかんだ言って抜け目ないMCをしおって。
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『飛鳥さんは最近どんな感じかしら? ダンジョンのことでも、学業面でも、それこそシーク・ラヴについてでも』
志木にそう振られて、白瀬はパッとは思いつかないようだった。
……ああいや、“パット”とかけたとかじゃないから、うん。
『えっ? うーん……逆にそう限定されないと何を話して良いか迷うわね』
同学年で同じアイドルグループのメンバーでも。
個人としての活動もあって、意外にそれぞれの近況を知らないこともある。
それで、各自が気になっていること、知りたいことなどを質問し合う時間になった。
『あっ、ならさ、白瀬さんに私、前々から聞きたかったことあるんだけど』
赤星が手を挙げて、端に座る者同士で顔を合わせる。
『えっと……うん。何?』
『白瀬さんって飯野さんとか逸見さんとかと親しいよね? それに年上の二人を良く引っ張ってる所も見るし凄いなーと思ってて。で、何か白瀬さんなりのリーダーシップ論みたいなものって、あるのかな?』
少し身構えていた白瀬も、赤星の真面目な質問に警戒を解く。
そして考えを纏める間があり、白瀬はそれを言葉にする。
『そうね……期待に沿えず申し訳ないけど。別に崇高な理念とか、カッコいい考え方みたいなのはないかな。でも二人が私を頼りにしてくれるって分かるから、それを裏切らないよう頑張る。ただそれだけ、かな?』
『おぉぉ……しらすん、カッコいい』
『だねー。飛鳥ちゃん、大人』
これには流石の逆井も空木も茶化すことは、素直に感心する。
『そっか……うん。ありがとう。何か白瀬さんの芯のようなものがちょっと伝わった気がした。白瀬さんは凄いね』
赤星もその回答を聞けて満足そうに頷く。
白瀬は褒められたのがこそばゆいのか、戸惑う様に小さく首を振って謙遜する。
『そ、そんな……私なんて全然、凄くなんかないわよ。志木さんとか、それこそ立花さんの方がしっかりしてて、ブレない強さみたいなのがあって……』
『ううん、白瀬さんは凄いよ。それに身のこなしだって軽やかだし。私も一応スポーツやってたからそれは分かるよ』
赤星は中腰になって前――画面に少し寄るように進みながら反対にいる白瀬を覗く。
そしてジーっとその体を眺めた。
『……うん。出る所は出てるのに、ちゃんと全体として引き締まってる、良い体つきしてると思う。――あっ、逸見さんも飯野さんも言ってたよ? 白瀬さんが3人の中では段違いにスマートで動きが軽やかだって』
赤星、それダメな奴!!
飯野さんと逸見さんは二つの大きなハンデを抱えて動き回ってんだよ!!
でも白瀬はそのハンデを自ら背負ってて、しかも着脱可能なの!!
『っっ!! ……そ、そう。は、はは。嬉しいなー。六花さんも美洋さんも、私のことそんな風に言ってくれてたんだー』
『……えーっと。――あっ、話変わるけど、梨愛ちゃんと司ちゃんって普段はスマホとかのやり取りすんの?』
ほらっ、空木が気を利かせて話変えるまでやってんだぞ!?
クッ、あの場に真実を察しているのは空木しかいないのか……。
視聴者目線では、白瀬が聞かされた二人からの気遣いに感動している?的な感じにしか見えないだろう。
だが実際には、白瀬は胸にグサッと来るダメージを負ったに違いない……胸だけに。
白瀬に限らず、この5人の組み合わせ……この後も大丈夫なんだろうか……?
多分次で終われると思います。
で、ダンジョンのお話に戻って、それでライブに突入、って感じですかね?
もしかしたら1話だけ別のお話を挟むかもですが。




