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351.合同学園祭!! ~1日目~

お待たせしました。


ではどうぞ。

「おっ、チャイムか……――うっし。じゃあ今日はここまでにするか」



 先生の言葉と同時に、教室内の空気が弛緩する。

 そして直ぐ、ざわざわした落ち着きない雰囲気に満たされた。



「はーい、静かにー。このままホームルームちゃっちゃとやって、さっさと終わるぞー。――……はい、皆が静かにするまでに2秒かかりました」

  


 ……2秒なら凄い優秀なタイムだなー。


 先生も手に持ってしかし、使われることが無かった黒板消しを置き直す。

 久しぶりに担任としてビシッと言える機会だと思ったのだろう、実に残念そうに俺達を見た。



「もうね、うん。君らがこの後の“合同学園祭”が楽しみなのは充分伝わりました、はい。俺の話は最小限にするから、お互い無駄な時間はなく行こう」


 

 いつもは課題や委員会の連絡事項を伝える時間になるが、今日ばかりはこの話題に絞られていた。


 

「もう言わなくても分かると思うが“合同学園祭”。つまり、ウチの学校だけじゃない。他の2校と合同だ。他校の学園祭に入場するにはお前たちでも学生証は必須だから携帯しろ、絶対忘れるな」



 逆に志木や赤星達の学校の生徒がウチの学園祭に来ようと思っても、それは同様のことが言える。

 まあそれは各学校の各クラスで口を酸っぱく言われてるだろう。



「自分達が自分達の学校で何か問題を起こすなら、まあもしかしたら対処の仕様があるかもしれん。……だが他校ではやはりルールが違うこともある。十分注意して、問題を起こすことなく楽しむ様に」



 最後に保護者・関係者同伴で行く場合について説明がなされた。 

 自分の所属校に行くのだろうと、他の2校へ向かう時だろうと。


 親兄妹、友達等を連れて行く場合は一度に2人まで。


 そして3校全てにシーク・ラヴのメンバーがいるため、注目度もある学園祭になる。

 だから、メディアやファンを仮に連れて行くことになっても、このルールの例外には当たらないため、ちゃんと守るようにと言い含められた。



「――うっし。じゃあ最後に一つ。……おそらくこれが、お前たち3年にとっては、最後の大きなイベントになると思う」



 ここからは事務連絡というよりは、先生の個人的な言葉だと察した。

 クラスメイト達もそれを理解し、逸りかけたかけた気持ちを今一度落ち着かせて、耳を傾ける。



「受験勉強や就職活動等、それぞれがそれぞれ、大変な時期だろう。――だからこそ楽しんどけ。頑張る時は頑張る。でも遊べる時には精一杯遊ぶ。メリハリを付けられるってのは、社会に出てからも重要な資質だからな」 



 多くの生徒が、この言葉に感じる所があったようだ。 

 頻りに頷いている者も大勢いた。


 この担任は普段はだらしないことも多いが、要所要所でビシッと決めることを言う。

 うーん……そりゃ陰ながら慕う生徒も少なからずいるわけだ。


 ……うん、“影ながら”だけどね。

 残念ながら“正面から”は殆どいないんだろうな……。



「っし。じゃあ解散!! ――……それで、あの、本当に頼むね? 今回は他校さんもいることだから本当によろしく頼むぞ! 俺まだローン無茶苦茶残ってんだからな、絶対問題起こすなよ! お前ら!!」



 ……そういう所っすよ、先生。

“隠れ人気”しか増えない理由。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆      



「おぉぉっ、あれ、月園(つきのその)の制服じゃね!?」


「いや、そりゃ合同なんだから、ウチにも来るでしょうに……」


「うぉっ! マジ可愛い子ばっかり!! ってか月園女学院ってこの世に存在したのか! 妄想上の桃源郷じゃなかったのか!!」



 校門を出る際、受け付けをする生徒の声が聞こえた。

 それでボーっとしていた意識を向けると、他の高校の生徒の姿が目に入る。

 

 女学生数人が固まり、列に並んでいた。

 他にも、赤星達の学校の制服姿をした生徒も後方に見える。


 前にいる女学生達はおっかなびっくり、でも外の世界を見てワクワクするような表情で友達と話していた。


  

「そうか……もう始まってるのか」

 


 開催の合図はつい先程あったらしいが、俺は直接は聞いていない。

 なのでこうして今、他校の生徒や関係者が並んでいるのを見て、初めて開始されたのだと実感したのだった。


 ……まあだからと言って、ワクワク感みたいなのはないけどね!



「……ねぇねぇ」


「もしかして、あのお方……」


 

 ……何か、女学生たちがこっち見てコソコソと話してんだけど。

 ちょっと、そういうの、ボッチは敏感なんでやめてくれませんかね。


 どうせ不審者かも、とか思われてんだろ?

 はいはい、怪しいボッチは早々に退散しますよ。



「急ぐか……」


 

 始まったと言うことは、約束の時間が近づいているということでもある。

 待ち合わせに遅れないようにしないとと、一人、歩く足を速めたのだった。

 





 バスに乗って目的の停留所まで行き、降りてから最寄りのコンビニまで歩く。

 既に月園の制服やウチの学校の生徒をチラホラ見かけていた。


 

 電車でも通える学校なので、俺とは別ルートを使って来た生徒たちもいるのだろう。

   

 

「――おっす、悪い。二人とも、待たせたか?」


 

 そんな生徒たちが思わずチラ見する二人組に、俺は声を掛けた。

 二人も俺が近づいて来た段階で気付いていたようで、それぞれ手を挙げて答えてくれる。 

 


「ううん、私は、さっき着いたところだから」


 

 リヴィルが目深に被っていた帽子を小さく上げる。

 心なしか口元が柔らかい。

  

 これから赤星の通う学校に向かうからだろうか。 



「そっか……ん? “私”は?」 



 言い方に引っ掛かり、もう一人へと視線を向けた。



「はっ!? ちょっ、おい、あたしもべっ、別に普通にさっき着いた所だから!」



 えっ、レイネとリヴィル、別々に家を出たの?

 その意が伝わり、リヴィルがクスクスと笑う。



「レイネ、何かコソコソとしてさ。私よりかなり先に出て行っちゃったの。多分、マスターとデートの待ち合わせ気分だったんじゃないかな?」 


「ちょっ、おまっ!! ぜ、全然っ違ぇし!!」



 クールな表情だったリヴィルが笑顔になったからか、道行く多くの男子生徒が見惚れていた。

 そしてそんなリヴィルの話し相手であるレイネもこれまた美少女だからか、思わず足を止めてしまう学生もいて……。 


 おーい、君達、道のド真ん中で止まると、後ろがつっかえるぞー。

 そんな視線を送ると、ようやく俺の存在に気付いて男共は歩き出す。


 何だか睨まれたように感じたんだけど。

 ……へいへい、驚かせて悪かったね、どうせ存在感薄いですよ。



「――じゃあ行くか。……所で、赤星と桜田のクラスは、その、本当にメールの時間でいいのか?」  



 声をかけて歩き始め、進みながら二人に尋ねる。



 赤星や桜田は自校の出し物だけでなく、シーク・ラヴとしてミニライブにも出演する予定がある。

 ただでさえ人気なのに、そのためにスケジュールはカツカツなのだ。


 なので、他の学校の生徒たちが彼女ら目当てに遊びに行っても、クラスにいないということも十分にあり得た。



 未だレイネは何か言い訳めいたことを言っているが、リヴィルは気にせず。



「ん。私もハヤテからちゃんとメール来たから、それは間違ってないと思う。レイネは?」

  

「……ああ。あたしも電話かかって来たから。チハヤがいる時間は合ってるはずだ」



 そうか……。

 それなら良いけど。


 ……ってかそもそも、別に俺は会わなくても良いんだけど。


 でもメールで、それぞれが係に入る時間を教えられてしまったからには、行かねば後で何を言われるか分からん。


 ……まあ俺は行くだけ行って、他人のフリすればいいんだけどね。 

  


 そうして二人と雑談しながら、赤星達の学校への道のりをしばらく歩いて行ったのだった。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆


 

「こんにちは。学生証をお願いします」


「うぃっす。……はい」


 

 受付係の男子生徒に、言われた通り生徒手帳を見せる。

 開いて写真と俺の顔を対照し、頷く。


 

「どもっす。えーっと……保護者・家族の方などのお連れの方は2名までで――」



 男子生徒の言葉に合わせ、リヴィルとレイネが俺の傍に近づく。

 それを見て、男子生徒は一瞬我を失う。

 


 しばらくボーっとしていたが、俺の咳払いで正気に戻る。

 ……完全に見惚れてたな。


 

「あっ、うぃっす、どもっす。大丈夫っす。ど、どうぞ、良い旅を!!」

 

「あざっす……」 

 


 生徒手帳を返してもらい、軽く頭を下げて入場する。

“良い旅を”って何だ、ここはどっかのテーマパークか。

 


「チッ、クソッ……」



 おーい、舌打ち聞こえてるぞー。



「フフッ、あの男の子には、私達がマスターの彼女にでも見えてたのかな?」


 

 リヴィルさん、楽しそうですね。

 俺は未だ背中に突き刺さる殺意の視線を受けてるので全然楽しくないです。

 

 はぁぁ。

 明日はホーム。

 それに明後日は志木の所で受け付けは女子生徒だろうから、まだマシか。

  

 


「そ、そうかも、なぁ? いやぁ、ったく、困るよな~そういうの」


「……レイネは全く困るような言い方してないね」 

  


 まあレイネはちょっと(わる)な感じをしといて、実は初心な子だから。

 そういう誤解を受けるのが新鮮なんだよ、放っといてあげな。

   



「へぇぇ……やっぱ私立は違うな」


 

 視界に飛び込んできたのは、真新しい校舎だ。

 つい最近に建て替えたかのように、壁面はとても綺麗だった。



 真新しいアーチを潜ると、直ぐに賑やかな喧騒に包まれる。

 近くでは出店をやっていて、ソースの香ばしい匂いや何かの甘い香りが鼻をくすぐった。

 

“実行委員”という腕章をつけた生徒が側を通り過ぎる。


 同じようなタスキを付けた男子や女子が、遠くにも近くにもいるのが目に入った。

 かなり多くの人員を配置しているのだろう。



「さて……早速行くか?」


「うん。先ずは……チハヤの所から?」

 

「だな。――で、注文の時はあたしに任せてくれ。“合言葉”があるらしいから」

 


 あ、そうなの?

 それは聞いてないけど……。


 何か変だったり、恥ずかしい言葉とかじゃないだろうな?

 

 ……言うのはレイネに任せて、俺はちょっと別の席でボッチ飯してもいいかな?


  

   

この先の時系列的な順序としては……。


合同学園祭→ルオの記念日→シーク・ラヴのライブ


という流れで進んで行く予定です。


盛り沢山なんでテキパキ進んで行きたいんですが、一方で折角のイベントでもあるんでじっくりも書きたい。

あまりダンジョンと離れ過ぎるのも考え物ですし。


うーむ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「……ねぇねぇ」 >「もしかして、あのお方……」 > ……何か、女学生たちがこっち見てコソコソと話してんだけど。 > ちょっと、そういうの、ボッチは敏感なんでやめてくれませんかね。  また…
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