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34.ボス戦、これは苦戦しそう――だといつから錯覚していた? 俺よ!!

もしかしたら、明日か明後日投稿をお休みするかもしれません。

 

ご了承下さい。




「ここが……ボスの間か」


 階段を降り、目の前の重厚な石造りの扉が開く。


 今までのダンジョン内は、ただ細い道と少し開けた場所がランダムに配置されていただけだったが。

 その先に見えたのは、石畳が敷き詰められた、体育館程の広さの間。



 

「うわぁぁぁ……如何にもって感じだね」 


 足を踏み入れた逆井も、俺と同じようにして周囲をぐるっと見回す。

 

「……守護者の姿は見当たりませんね……」


 生き物の気配が感じられない空間に、ラティアは逆に警戒感を強めていた。


「うん、多分――」

 

 リヴィルが、部屋に入り切ったラティアに目を向けた時――




 ――ギッ、ギギッ




「あっ! 扉閉まっちゃう!?」


「……来るよ」


 何者でも迎え入れるように開いていた背後の扉は。

 今は何人も出入りが叶わなくなってしまう。



 リヴィルの言葉に応えるように、室内で変化が起こる。




「――皆、落ち着いて、今まで通りな!!」

 

「はい!! ご主人様!!」


「マスターも、気を付けて!」


「う、うん、了解!!」




 ――瞬間、落雷の如く天井から白い光が降り注いだ。



 その瞬きの間に、室内に生き物の気配が溢れる。

 突如として出現したそのモンスター達に、俺は内心驚きを隠せないでいた。




 ――な!? 何だこの“数”!!




 軽く20体はいた。

 短剣や弓矢で武装したゴブリンが5体で1つのグループを形成していて。

 

 それが4つ、四方に散るようにして存在している。


 そしてその中央に――



「っ!! ――リヴィル!!」


 固まりかけた体を、頭を、何とか動かす。

 駆けだした俺の声を聞く前に、リヴィルも一直線に走り出していた。 


「ん!」


 リヴィルは四方に点在する通常のゴブリンには目を向けない。

 中央のボス――4体のオークによって神輿のように担がれている、シャーマンのような恰好のゴブリン。

  

 そのゴブリンを真っ先に狙った。



 それに対して、他のモブゴブリン達が道を阻もうと、中央に体を寄せようとする。



「お前ら全員、俺が相手してやる!! 固体名すらない、このモブどもがぁぁぁ!!」 



敵意喚起(ヘイトパフューム)】を惜しげもなく利用する。

 数こそ全部で25体だが、その内20はただのゴブリンだ。


 俺の吠えるような叫び声に、そのゴブリン達全員が釣られて俺を向く。



「リア様、よろしくお願いします――≪闇よ、刃となりて、揺れ刻め――≫」


「OK!! ラティアちゃんはアタシが守るから!!」


 ラティアも詠唱に入り、逆井がそれを守るようにして前に出る。




 よし――



「おっらぁぁ!!」



 俺はリヴィルの邪魔をさせないために、中央から見て7時方向にいたゴブリンへとダガーを鋭く突き刺す。


「ギギッ――」


 緑色の体液を噴き出し、刺されたゴブリンは抵抗すらできずに倒れる。

 


 


「ギッ!!」


「ギギ! ギギッ!!」 


「ギギッ」


 仲間をやられた他の3体が俺へと攻撃を仕掛けてくる。

 ダガー、短剣、弓――


 ――ん? 

  

 もう1体が持っている、あの“水晶”みたいなのは――




「――新海っ!! 他のゴブリンも全部そっち行ってる!!」


 

「っ!! しゃぁぁ、らぁぁ!!」



 逆井から飛んできた声に、ハッとして考察を一時中断。 

 目の前に迫ってきている敵の対処を優先する。


 っ!

 矢が、掠った。


「ってぇぇなぁぁ!!」



 武器を持っていない方の手で拳を作り、接近した短剣のゴブリンを殴りつける。

 利き手ではなくても、物理だけでゴブリンの頬を振り抜いた。


「グルッ――」


 その際に奴の手から離れた短剣を素早く掴む。


「しゃぁ!!」


 簡易の二刀流みたいな形を作り、一歩後ろへと飛んだ。

 逆井の言葉通り、俺に向けて他のゴブリン15体が迫っていたのだ。



 その時――



「ッ!!」



 金属を叩きつけたような、高い音が響いた。


 リヴィルのいる中央からだった。



「な!?」



 リヴィルが途中、邪魔になったゴブリン一匹を即座に沈め。

 正にシャーマンゴブリンに攻撃を仕掛けた時。

 



 ――バリアーが、張られていた。



 シャーマンゴブリンを守るようにして、半透明の壁が、リヴィルの拳を遮ったのだ。


 そして、時を同じくして、俺の近くで発光する物が――

 

「っ!! お前らか――」



 俺は、直ぐさまこの事態の全容を把握した。

 

 あの、武器を装備していないゴブリンの、水晶。

 それが、輝くようにして光っているのだ。

 

 そしてそれは、1つのグループにつき1体。

 つまり――



「――リヴィルッ!! コイツ等を先に潰さないと、そのボスに攻撃が通らないっ!!」



 手早く、簡潔に伝える。

 くっそ、こんなん普通なら4人で挑むもんじゃねえぞ!?


 もうこれレイドボスだろ!


 シャーマンゴブリン自体はそこまで大きくはないが、数・規模がもう普通なら4人で対応できるものじゃない。


 これ、4つのグループに分かれている水晶持ちを倒して初めてボスへ攻撃が通る仕様になっている。


 そして――


「≪――≫」

 

 チッ!!

 詠唱を始めやがった!!



 最悪だ!

 自分はあの不思議バリアーで守られている間に、魔法をぶっぱなしやがるつもりか!


「こんのっ、クソがっ!!」



 最初に俺が接敵した水晶持ちのゴブリンを何とか仕留めるも、その間にゴブリン14体が合流。 

 

 俺は集中砲火に晒された。


 矢傷が増える。

 

 何とか避けてはいるが、切り傷も少しずつ目立ち始めて来た。


 クソッ、こうなったら。 

 リヴィルに方向転換してもらって、手分けして水晶持ちを――







「――ふーん……そう。まあ関係ないけど」



 ……え?


 リヴィルのそんな声が聞こえたかと思うと、リヴィルは両手に“導力”を纏う。

 何色にも変わりうるその(もや)を手に、リヴィルは迷わずバリアーを殴りつけた。




 ――ガリッ



 何かが、大きく削り取られる音がした。



「ギッギッ!?」

      

 

 周囲の残る3つの水晶は、光っている。

 にもかかわらず。

 

 リヴィルが殴りつけたバリアーに、穴が開く。

 


「もう、一発っ――」

 

 

 ――ガゴッ


 

「ギギギッ!?」



 2度目の攻撃も、またバリアーを貫いた。

 リヴィルの腕が、くり貫いた穴を通り、神輿を支えるオークへと届きうる距離に。



 それを感じて、シャーマンゴブリンが、詠唱を止めた。

 予想外の事態に慌てる。

 

 そして指示を飛ばし、オークを後ろに下がらせようとした。

 リヴィルという脅威から少しでも遠ざかろうとするように。



 だが――



「無駄、だから――」



 今度は脚に、導力を纏わせたリヴィル。

 2度の突きで開けた穴を、点を、線にするように蹴りでなぞる。


 その間も、水晶は光ったままだ。





「おりゃぁぁ!! コノッ、お前ら、今だけだからな、後で覚えてろよっ!!」

 

 

 俺はそれを視界の端で捉え、何とか時間を稼ぐ方向へとシフトする。

 両手に握った刃物で時には打ち合い、時には矢を弾き、そして時には受ける。



 傷の無い部分の方が少なくなってきた。

 それでも、痛みは思った程無い。


 俺の防御力が高いのか、あるいはゴブリンらの攻撃力がそれほどでもないのか。


 

 兎に角、時間を稼ぐことだけに集中していると――





「――新海っ、ラティアちゃんっ!! リヴィルちゃんが壁、潰した!!」



 

 逆井の声がまた届いた。


 逆井はそれを叫んだ後。

 すかさず自分と俺の直線上にいるゴブリンの最後尾を攻撃しに移る。


 

「――ラティアァァ!! お願いっ!!」




 リヴィルが、バリアーを破っていた。

 そして、柱となっている下のオークへと攻撃を始めている。


 そのリヴィルの声を聞き届け、それに応えるように――

 







「――【シャドウ・ペンデュラム】!!」 






 ラティアの詠唱が、丁度完成した。

 合わせるように、リヴィルがその場を飛びのく。


 

 大きな闇が、シャーマンゴブリンの頭上へと姿を現す。

 闇は巨大な鎌を形作り、揺れ始めた。



「ブフゥゥ――」



 一揺れ――オークの2体を、真っ二つにした。

  

 

「ブフッ――」


 二揺れ――残りのオークを、一瞬で死者へと変えた。



「ギッ!! ギッ!?」


 三揺れ、四揺れ――抵抗するシャーマンゴブリンを、跡形もなく切り刻んだ。







「…………」





 呆然とする、残されたゴブリン達。


 当然だ、順序が違う。

 あいつらの想定していた順序は、自分達がやられた後初めて、あのシャーマンゴブリンらに挑める。

 そしてその過程で、本来ならシャーマンゴブリンからの“魔法”という援護があったはずなのだ。


 



 ――だが、その幻想を、リヴィルが打ち砕いた。





 俺は、以前に織部から送られて読んだメッセージの内容を思い出す。




『“導力(どうりょく)”と言われる特殊な生命エネルギーを体に宿せます。その“導力”を纏った攻撃はあらゆる守りを貫くそうですよ?』




 正しく、リヴィルの攻撃は、バリアーを貫いて、奴らの想定した戦闘の過程をぶっ壊したのだ。





「――後は敗残兵だけだ、一気に刈るぞ!!」


「ん!!」 


「はい!! ≪闇よ、全てを飲み込む、渦となれ――≫」

 

「おっし! アタシもやるよ!!」



 皆それぞれが、俺の呼びかけに答えてくれる。

 俺も気合を入れ直し、残ったゴブリン達を睨みつけた。



「グヘ、グヘヘ……今まで散々いたぶってくれたな……」



 不敵な笑みを浮かべる俺を、ゴブリン達は恐怖に包まれた顔で見ていた。








「――やられたらやり返す、1倍返しじゃぁぁぁぁ!!」





 

 



 その後、リヴィルやラティア、逆井まで加わり。

 モブゴブリンの残党を始末するのに、2分と掛からなかった。

戦闘シーンを書くのって難しい……。

一話丸々使いましたね。

こんな感じでいいんだろうか……。




ご評価いただいた方はナニィ!? 721名だと!

ブックマークは6700件を超えました!


総合ポイントも、もう直ぐ2万ポイントというところまで迫っております。


ここまで思った以上に長い道のりでしたが、何とかここまで来たという感じです。

本当にご評価いただいた皆さん。

ブックマークしてくださった皆さん。

そしてご愛読いただいた皆さん。


本当にありがとうございます!


今後も是非ご声援・ご愛読いただきますようよろしくお願いします!!


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[良い点] うん! よろしーんじゃないかと! (^-^)/
[良い点] コミカルなキャラで皆可愛い☺️ [一言] つづき待ってます
[一言] 1倍返しwwwワロスwwwww 確かにナニィ(721)だな・・・
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