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335.お前は黒幕か!?

お待たせしました。

日付は変わってしまいましたが、何とか……。


ではどうぞ。


「今日は来てくれてありがとう。梓も、それに白瀬も」


「うん」


「私は……まあ、別に。ハー君達の方が、ダンジョン攻略は上手いだろうし。こういう機会に参加させてもらえるの、貴重だと、思ってるから」



 翌日。

 お隣さん、つまりシェアハウスに集合した。


 逆井は後で来てくれるらしい。

 先に白瀬や梓が到着したので、軽く挨拶を交わす。



「フフッ。飛鳥ちゃん、素っ気なく返してるけど。本当は凄く張り切ってるのよ?」



 逸見さんが耳元で俺に(ささや)いて来た。

 既に動ける服装に着替えており、洗濯洗剤と女性の匂いが交わって良い香りがする。



「っ!! ――わっ、私は別に気合いなんて入ってません!! もう、ハー君も、あんまり六花さんの言う事間に受けたらダメなんだからね!?」



 白瀬に腕を取られ、逸見さんとの距離を取るように引っ張られる。

 その強引な行動の際、俺の肘が女性特有の柔らかな膨らみに当たって――




 ――って陽翔、これは胸やない、偽乳や!!

 


  

 危ない危ない、逸見さんの色香に惑わされて、更に白瀬の偽物を本物と錯覚するところだったぜ……。



 

「あ~はいはい。飛鳥ちゃん典型的ツンデレ乙。――でっ、お兄さん、場所の特定はどうなりました?」



 空木の面倒臭そうな声に、隣にいる白瀬から抗議の声が上がる。

 しかし空木が取り合わないのを参考に、俺も本題に入ることにした。



「……正直に言うと、何処のダンジョンがそうなのか。それはまだ特定できてない」



 俺の言葉を受け、居間全体に重い空気が流れたような気がした。

 俺が言ったのはつまり、今もなお桜田へと語りかけている大精霊管轄のダンジョンの場所を突き止められていないということだ。


 ならどこへ向かい、どのダンジョンを攻略すればそれが収まるのか、分からないことを意味する。

 こういう雰囲気になるのも当然と言えた。



「うーん……」



 この空気を何とかしようとしてか、ルオが(しき)りに唸り声を上げる。

 そしてその視線は無意識にか、同じように悩んでいるロトワへと向いていた。



 ……未来のロトワには、今回は頼れない、だろう。

 前回の皇さんの時も、あれはロトワ自身が自発的に未来のロトワを呼んでくれて、それで教えてくれたからこそ分かったのだ。


 そもそもロトワのこの“時”にかかわる能力を当てにするのは無しだ。

 俺達から使おうとし始めた時、それはロトワを利用しようとした奴らと変わらないことを意味することになる。


 だから、未来のロトワの力は、今回は無い物と思って動いた方が良い。




「……ハルトがいるなら、手段が無いではない」



 

 早速行き詰まりそうになった時、梓がそう口を開いた。

 皆が梓へと視線を向ける。



「……どういうことだ? 何か、あるのか?」



 少し含みがある言い方だったので、その真意を探るように問いかける。

 梓は真っすぐ俺を見た後、顔はそのままに、自分の少し後ろを指差した。


 そこは、蛍の光の様に、ほんのりと点が輝いているように見えて……。  


「……? えっと、梓ちゃん?」


「何か、そちらに、ある、んでしょうか?」

   


 逸見さんと皇さんが、梓の行動を不思議そうに見る。

 だが一方で、俺には――いや。

 

 俺にだけは、その行動の意味が分かった。




 ――そうか、“精霊”か。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『あん? いや、良いけど……えっ、隊長さん、隣にいるんだよな?』



 電話を掛け、直ぐに出てくれたレイネに用件を伝える。

 ただやはり、隣の家にいるのに電話を掛けたのは違和感があったらしい。 



「おう。……いや、わざわざ戻って話すと、桜田、何かあんじゃないかって思うだろ」



 桜田は仕事の調整も済ませて、今もなお妹さん達とウチに滞在している。

 そこにのこのこと帰って行ってダンジョン関連の話をすると、また心配がぶり返すだろう。


 

『あ~なるほど。了解、じゃあ直ぐに隊長さん所に向かってもらうから――』



   

 電話が切れると、3分としない内に自宅から浮遊してくる存在が。

 精霊達だ。


 

 壁をすり抜け、梓以外には反応されることなく俺の前へと漂って来る。



「えーっと……お兄さん? その、待ち人は来たってことで、いいの?」


 

 精霊が見えない空木が、周りを代表するようにして聞いてきた。

 それに、俺は自信を持って頷き返す。



「おう! ――あっ、いや、逆井はまだだけど、場所の特定は何とかなるかもしれん」


 

 先程梓がヒントをくれた時も、行けるかもと幾らか空気が和らいだ。

 だが俺の言葉を聞いて、今度は一気に大丈夫だという雰囲気が広がった。




「……じゃあハルト。私達は待ってるから」



 梓が当然の様にそう言うので、俺は若干肩透かしを食らったような気持ちになる。

 


「えっ、梓も付いて来るんじゃ……」


「……私がいなくても、ハルトなら見つけられる、大丈夫」



 何だか釈然としない思いがあり、納得するフリをして油断を誘った。

 そして――



「そうか……分かった。――で、本音は?」


「ここからならハルトの部屋が覗けるかもしれない。ハルトが部屋にいなくて、そして傍にもいない、今しかないから」



 いや何を言ってんの、この子は!?



「……要するに、ここは一応お隣さんですから。お兄さんがいない間に、お兄さんの部屋を覗き見出来ないか、ってことじゃないですかね?」



 えっ、それ普通逆じゃない!?

 アイドルが寝泊まりに使う隣のシェアハウスを気にして、君らがいない間に覗きを考えるってのが通常の思考じゃないの!?


 ってか俺の部屋覗いて何になるんだよ、面白いもんなんか何も無いぞ!!

 エロ本とか、そう言う類のグッズなんてのも無いはずだし……。


 そんな気持ちが顔に出たのか、梓はハッとした表情で恨めしそうに頬を膨らませた。



「……むぅ、誘導尋問。ハルト、卑怯」



 人の部屋を覗こうとする奴に卑怯呼ばわりされたくねぇよ!!

 


「あ、あはは……ご主人、頑張って!」


「お、お館様っ、ロトワたち、ちゃんとお留守番してるであります!!」



 気疲れでも感じ取ったのか、ルオとロトワが健気に励ましてくれた。

 


「おう……皆もそうだが、逆井が来たら10分かそこら待つ様言っといてくれ」


 

 入れ違いにならない様にそれだけは言い添える。

 そして精霊達が傍にいることを確認し、DD――ダンジョンディスプレイを取り出す。



 

「じゃ、ちょっと探してくるわ――」



 転移機能を用いて、先ずは近場の攻略済みダンジョンへと転移したのだった。

     



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「っと。……で、どうだ? 何か感じるか?」



 転移が成功したのを確認し、早速俺は精霊達へと問いかける。

 水、風、火、などなど……。


 今までレイネが仲良くなった各属性の精霊達。

 彼らはそれぞれ個性的な姿、そして話し方をした。


 

『……我が力、未だ解放する時にあらず』


 

 闇の精霊は、レイネが地球に来て早くに仲良くなった精霊だ。

 


「そうか……他は?」


 

 1体がダメでも、とにかく他にドンドン尋ねて行く。

 風も、火も、水も、同じくダメ。


 そうして聞いて行って、試してみた方法がダメだったのかと思い始めた矢先だった。



『――おいら、土っす!! 土の精霊だけど土の精霊じゃないっす!!』



 土の精霊が、自己の存在を否定する矛盾したような、無内容なことを告げる。

 いつもの調子なのでそのままスルーしようとした時、彼は全く同じような調子で、しかし、聞き捨てならないことを口にしたのだ。

 




『――微弱だけど、“ノーム様”を感じるっす! いや、感じないけど感じるんすよ、兄さん!!』



“ノーム”!?

  


「おい、それは本当か!?」



 再度確認すると――



『っす!! このダンジョンでは感じるけど感じない、感じないけど感じるんすよ、ノーム様を!!』



 何を言っているか一瞬意味が分からなくなりそうになる。

 だがこの土の精霊はいつもこんな話し方だ。


 中二病を患う光原妹の言う事も翻訳して来た俺なら、分かる。


 要するに“ここはそこまで強くは感じないが、確かにノームの存在を感知した”ということだ。



「っし! じゃあ次のダンジョン行くぞ――」



 このダンジョン自体はハズレだったが、それでも俺の気分は上向いていた。

 この“精霊ダウンジング”が行けると思ったからだ。

 




「――どうだ、ここは?」


 

 また攻略済みのダンジョンに転移した。

 同じように、今度は土の精霊に限定して質問してみる。



『うーん……ここは感じないっす。ノーム様のお力、感じないけど感じないんすよ』



 日本語からしたらおかしい言い方だが、言いたいことは完全に伝わった。



「つまりコッチは完全に遠ざかったと……じゃあ次に行こう」



 頭の中で地図を描く。

 さっきのダンジョンと今のダンジョンの位置関係を考え、今回のダンジョンの方向では、遠ざかったと言うことになる。



 なら今度は反対方向に飛ぶか……。






『っ!! 近い、近いっす!! ノーム様じゃないけどノーム様っす!! ノーム様が近くなくて近いっすよ、兄さん!!』



 おおっ、反応が強まった!

 ゲームなどでもお馴染み、ダウジングマシンを使用しているみたいに。


 土の精霊は目的地が近づけば近づく程、こうして強く反応してくれるのだ。



 そしてここまでくれば、今回桜田を誘おうとしている相手が誰かは判明した。



「大精霊“土のノーム”か……」




 まあ風、水と来たから、火か土かとは思ってたが。



『兄さん!! “様付け”大事っす!! ノーム様、ノームだけどノーム様なんすよ!!』



 いや、お前も今一か所、様付け忘れてたぞ……。






「――さて……どうだ?」



 更に少しだけ離れたダンジョンに飛んだ。

 すると土の精霊は沸騰する蒸気のように辺りを飛び跳ねだした。



『やばっ、マジヤバいっす!! もう側っすよ! ノーム様がいないけどもう自分ノーム様っす!!』



 ちょっと流石に直ぐには意味を分かりかねた。

 ただ、もう間近だと言うことだけは確からしい。



「良しっ、やっぱりこの方法で正解みたいだな……」



 このダンジョン自体に、そのノーム直轄のダンジョンがあるかまでは分からない。

 ただ少なくともこの付近に存在することは分かった。

 

 後はもう、見つけるのは時間の問題だと思う。


 

 ここからは他の属性の精霊達に協力してもらい、いつもの斥候の様に付近を捜索してもらえばいい。

 あるいは梓を呼んで、更に人手を増やして人力で当たってもいいだろう。




「っし。じゃあまずは戻って報告を――ん?」



 転移して自宅近くの廃神社跡まで戻ろうかと思った時だった。

 DDにメッセージが届く。


 一瞬、逆井達のDDから、逆井が到着したことの知らせが来たのかと思った。

 だがそれは違って――




『新海君、やりました!“ノームの神殿”に到着しましたよ! これから休憩を入れて突入開始です!』



 織部からだった。

 





 ――そう言えばお前もノームのダンジョン挑むって言ってたっけ!!




 ここで言って来るって、お前もう黒幕かってくらいのジャストタイミングだぞ!!


 クッ、折角桜田をダンジョン探索のグループから外して遠ざけ、ラティア達もつけるってくらいの過保護っぷりを見せてるのに……!!


 全く意図してのことではないだろうが……。

 うぅぅ。



 織部の魔の手を感じずにはいられないメッセージとなったのだった。

クッ、桜田さんを問題の中心点から遠ざけようと頑張っているのに!!

織部さんめっ、メッセージを送ってくるだけで“なにかあるんじゃ……!”と思わせるとは!

なんて勇者だ!!(白目)

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― 新着の感想 ―
[一言] ブレイブは何か不思議な感覚を共有してるのか!? おのれ織部!
[一言] 織部さんの魔の手が桜田に迫る…… もう痴女化は避けられないか 次々に周囲の女の子を痴女化させていくとはなんて悪辣な勇者なんだ(白目
[一言] > ――って陽翔、これは胸やない、偽乳や!! 偽乳「チェーンジ!」 >「ここからならハルトの部屋が覗けるかもしれない。ハルトが部屋にいなくて、そして傍にもいない、今しかないから」  あわよ…
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