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334.とりあえずウチでのんびりしとけ!! いやしといて下さいお願いします!!

お待たせしました。


多分、明後日くらいからまた少しずつペースを戻せそうです。


では、とりあえずどうぞ。



「……おう、桜田か? ちょっと今いいか?」


『せ、先輩? ……先輩の方から電話してくるなんて珍しいですね……ど、どうかしたんですか?』



 レイネが電話を切った後、即座に桜田本人へと連絡をしてみた。

 話を聞いて、赤星や皇さんのあの格好が直ぐ頭に浮かんだからだ。

 


 大精霊の加護を受けた装備。


 その恩恵は、普通の地球人には絶大だ。

 だが一方でその見た目も、普通の地球人の感覚からはかけ離れたもので……。

 そう思うと、いてもたってもいられなくなった。



「……色々とその、大丈夫か? 最近、忙しいみたいだが」


「っ!!――」


 具体的な中身に触れはしなかった。

 だが電話の向こう側で、思わず漏れ出たと言った声がする。

 

 ……やはり思い当たる節があるようだ。



『えっ? えっと……い、嫌だな~! 先輩、チハちゃんは大人気スーパーアイドル、ですよ? 忙しいなんて今に始まったことじゃ――』



 何かを誤魔化すような声音に聞こえ、確信を深める。

 側にいるレイネ達に、頷きで状況を伝えた。



「……そっか」 



 レイネは特に心配な様で、何とかならないかという表情でこちらを見てくる。

 ……いや、そんな顔されても、今すぐ何とかは無理だぞ。


 大精霊絡みのことだと分かっても、結局はダンジョンに行ってどうにかしないといけないんだし。



『……ですがまあ忙しいとはいえ、先輩の思い出作りに協力することはやぶさかじゃありませんよ? ですので、先輩がどうしてもって言うなら合同文化祭、チハちゃんの時間を空けてあげなくも――』 



 桜田は何かを誤魔化そうとするかの様に、ずっと話し続けている。

 


「…………」



 ラティアが無言で、用意が出来た夕食を運んできた。

 ただその目はやはりレイネと同様、桜田のことを心配している。


 ……まあ気休めにもならないだろうが、やらないよりはマシか。




「――桜田。お前、ウチに泊まりに来い」


『皆から引っ張りだこなチハちゃんですが、先輩が……――へっ?』



 桜田の間の抜けたような声が聞こえた。

 それが電話をかけて初めて、桜田から出た素の反応に思えたのだった。


 

「……ご主人様はワードのチョイスが流石ですね」


「マスター、そのストレートな表現が誤解を生むかも、なんて全く思ってない顔してるね……」



 ……ラティアもリヴィルも、二人してコソコソ話さない。

 聞こえてるからね。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「あの、その……夜遅くにお邪魔します。後、妹共々お世話に、なります」


「おう、とりあえずここにいる間だけでもゆっくりして行け」



 妹さん二人と共にウチに来た桜田を、玄関にて歓迎する。

 来たことはあるはずだが、レイネが近くまで迎えに行ったので何事もなく到着した。



「えっと、本日はお日柄も良く……」


 

 だが家に着いてからというもの、桜田は妹さん達以上にカチコチになっていた。


 いつもの堂々とした様子は完全に鳴りを潜めている。

 まるで借りてきた猫の様に大人しい。


 ……何でそんな感じになってんだよ。



「……まぁ、マスターはそうだろうね」


「ですねぇ……」



 ……リヴィルとラティアは何なの?

 俺にジト目をしないといけない呪いかなんかでもかかってるの?



「えっと……」 



 いつも頼りになる姉――桜田がいつになく硬いからか、妹さん二人にまでその緊張が移ってしまっている。

 ラティア達の眼差しから逃れる意味でも、そちらへ目を向けた。



「うっす。姉妹で来てくれたんだよな。自分の家だと思って、ゆっくりしてってくれ」



 屈んで視線を合わせて話しかける。

 偶に会う時も同じようにして接していた。


 それが効いたからか、妹さん二人はホッとした表情を浮かべている。 



「じっ、自分の家!?」



 対する桜田は全然だった。


 ……桜田、声がデカい。

 どこに驚いてんだよ。


 緊張を解すためによく使う常套句(じょうとうく)だろうに。


 ……後ラティアとリヴィルはコソコソしない。



 桜田を家に呼んだのは、要するに少しでも安心して欲しかったのだ。


 ここまで来て桜田も、何者かの声が聞こえることを認めた。


 それが自宅にいても聞こえるなら、どこだろうと不安は不安だろう。

 ただ――

 


「隊長さんが出るらしいから、寝る部屋はあたしん所か隊長さん所な。好きな方で寝てくれればいいから」


「えっ!? 先輩の部屋で寝て良いんですか!? あれっ、今日って私の誕生日か何かでしたっけ!?」


「姉さん……」


「お姉ちゃん……」

 

 

 レイネが率先して桜田姉妹の面倒を見てくれていた。

 ウチには仲の良いレイネ、そして圧倒的な戦闘力を有するラティア達がいる。


 ダンジョン関連での悩みなら、皆がいるウチに来れば少しでも気が休まると思ったのだ。

 

 その目論見は多少なりとも成功しているらしい。



「まあ俺の部屋だとしても気にせず、好きなように使って良いから。ルオとロトワも今日は空木ん所だし、そっちでも良いけど……」


「好きなように!? ――えっ、嘘、これドッキリか何かですか!? あっ、もしかして花織先輩の待ち受け画面見た仕返しドッキリとか!?」


 

 いや全くもって違うから。

 ってかなんだそれ、見たら仕返しされる様な待ち受け画面なのか、志木のスマホは……。



「はぁぁ……。――じゃあ、どう運んでも明日の昼頃には一旦戻るから、後は頼んだ」


「はい、かしこまりました」


「ん、了解」



 ラティアとリヴィルに家のことは任せ、俺は外に出る。

 そしてルオ達がいる隣へと足を運んだのだった。 



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



「なるほどなるほど……つまりお兄さんがまた一歩、エロゲー主人公に近づいたと?」


「……空木。お前“つまり”の使い方って知ってるか?」



 目の前、訳知り顔で頷く空木をジト目で睨みつける。

 何を言ってんだコイツは……。

 


「いや、軽い冗談ですよ!――ん、んんっ。それはそうと、またダンジョンですか……しかも知刃矢ちゃんが、何か地球外生命体の声を聞いて電波ってる? うーん……これ、凛音(りおん)ちゃんが知ったら喜ぶだろうな」



 まあ確かに、光原みつはら妹にとっては大好物な話題だろう。

 ただダンジョン・大精霊を“地球外生命体”って言うの、何とかならないか?


 間違ってはないが、違和感が半端ない。



「えと……では、陽翔様。知刃矢様の件は、つまり前回の私と同様のことが起きている、と?」


 

 パジャマ姿の皇さんが真剣な眼差しで問うてきた。


 隣には同じくパジャマのルオが。

 折角のパジャマパーティーを一旦ストップさせたことを申し訳なく思う。



 ルオ、ロトワが参加させてもらっている、お隣でのお泊り会。

 今回は空木、皇さん、そして保護者的な立ち位置で逸見さんがシェアハウスを利用していた。



「だと考えてる。……明日にでもそのダンジョンに行って何とかならないか見てこようと思ってるけど」


 

 今日が土曜日で良かった。

 明日が学校のある日なら、無理してでも夜に行かないとってことになってたからな……。   



「そう……でも新海君、明日って花織ちゃんも颯ちゃんも予定あってダメよ? 人数というか、戦力的に大丈夫なの?」



 心配したような表情で逸見さんが聞いてきた。


 とてもセクシーなネグリジェ姿なので、出来れば直視はしたくない。

 が、ここで逸らすのは不自然だろうと、出来る限り目を見てしっかりと答える。



「はい。逆井には今から声を掛けておくつもりです。桜田は妹さん達の傍にいさせてやりたいんで、それでレイネ達も残って貰うとして……」


 

 目の前にいるルオ達に視線をやる。



「ルオ達には申し訳ないが来てもらえると助かる。後は……最悪まだ心当たりはいますんで。攻略出来る戦力は十分あるかと」



 具体的にはゴッさん達のことだ。

 ゴッさんとゴーさんが戦力として計算できるだけの強さがあるので、まあ何とかなると考えている。


 ただ一つだけ問題があって……。



「……? お館様、どうかなさいましたか?」


 

 ロトワと目が合い、不思議そうに尋ね返される。

 それに首を振って答え、しばし考え込む。



 ……前回、皇さんの時のダンジョンは未来のロトワが教えてくれたんだよな……。 


 そしてその前、赤星の時はそもそもアルラウネのダンジョンが偶然、俺達のダンジョンに仕掛けてきたことでその存在が発覚した。




 

 ――じゃあ今回、桜田に語り掛けているダンジョンは、一体どこにあるのか……。





 それが分からなかった。

 今存在を認知してるダンジョンを、片っ端から当たってくしかないのかな……?



「そう……――ねぇ、人手は一人でも多い方が良いわよね?」 



 逸見さんが何かを察したように明るくそう切り出してくれる。

 年長者だけあって、気配りがとても出来る人だ。


 本当に美人で綺麗だし、性格も良いんだから、そりゃアイドルじゃなくても男が放っとかないだろうな……。

 そんな場違いなことを考えながら、一応頷いて返す。



「ええ、まあ……」


「フフッ。……なら、ね! ちょっと待ってて。私、明日フリーな人に心当たりあるから――」



 逸見さんは何を思ってか意味深に笑って見せると、早速スマホを手に取り誰かに連絡し始める。

 こちらが遠慮して止める間もなかった。


 

 人手は助かるが、全くのド素人を紹介されても困るのだが……。


 後、戦力になったとしても俺の全く知らない相手、とか。

 会ってもどうすればいいか分からないからね。



「……うん、うん、そうなの! だから、ね? ……そう! ありがとう。じゃ、新海君に代わるわね――はい」


 

 相手側と話が付いたのか、スマホを差し出してくる。

 逸見さんの私物かと思うと、何だかそのスマホを手に取るのが酷く緊張する。


 恐る恐る受け取り、耳に当てた。


 ……何かスマホから良い匂いが。

 いや、流石に俺の勘違いか? 



「……もしもし」


『――もしもし。“ハー君”?』


 

 その声と特徴ある呼び方で、一瞬にして相手が誰なのかを理解した。

 それを確かめる様にして表示画面をチラッと見ると、やはり――




「……白瀬か?」


『――ええ。何か六花さんから“ハー君が桜田さんとのフラグを立てる危機だ”って聞いたんだけど』


 

 ……何を話してんだ逸見さんは。

 電話の相手――白瀬も、そこは流石に胡散(うさん)臭そうに話していた。



「……まあ簡単に話すとダンジョン絡みだ。確かに手はあった方が助かるが、無理しなくてもいい」



 逸見さんや皇さん、それに空木にも同じことは言っていた。

 アイドルや学校でただでさえ忙しいのに、たまの休みで無理させたくなかったのだ。



『……無理なんか、全然ないから。それに――』 



 そこで一瞬、白瀬の声が途切れる。

 次に耳に届いたのは、その電話の持ち主の声ではなかった。




『――ハルト、ダンジョン? ……アスカと、手を貸すけど?』



 寝ぼけたような声だが、とても心強い奴の声が聞こえたのだった。


感想の返しも、ですから月曜くらいから一気に出来そう、ですかね。

ふぅぅ……長かった。


お話も桜田さんが何か危機的状況(?)なんですから、間を置かず行きたいところです!

桜田さんがどうなるのか、ハラハラしている方もいらっしゃるかもしれませんからね(白目)

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― 新着の感想 ―
[一言] 桜田さんを異世界の変質者共から守らねば 羞恥心と引き換えに多大な力を得ても先で待つのは織部ワールドとか…… このまま犠牲者が増えると全力のダンジョンアタックの様子は放送出来なくなってしまう …
[一言] 桜田さんは使用武器からノームと予想。 となると、残りの火は……。 出来ればかおりんを!! 出番が少ないかおりんに愛(哀)の手を!!
[一言] >「……ご主人様はワードのチョイスが流石ですね」 >「マスター、そのストレートな表現が誤解を生むかも、なんて全く思ってない顔してるね……」 > ……ラティアもリヴィルも、二人してコソコソ話さ…
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