332.買出しだよ!?
大変お待たせしております。
すいません、中々更新できない日が続き……。
ではどうぞ。
「へぇぇ……そんなことになったんだ」
学校が終わり、真っすぐ家に帰ってきた。
全校集会にて志木達が発表した内容を伝えると、リヴィルが珍しく驚いた顔をする。
「ああ。……志木とか皇さんの学院だけじゃなくて、赤星とか桜田の学校とも合同らしい」
「ふーん……まあ良いんじゃない? 面白そうだし」
「ですが3校も合同となると……とても規模が大きくなりますね。どのように当日は運営されるのでしょうか?」
ラティアは具体的なイメージが湧かないようだった。
入れてくれたお茶で喉を潤し、それから話す。
「3日間、それぞれの学校の生徒・関係者は他校へと行き来が可能らしい」
ホームルームで聞いた話を、そのままラティア達に説明する。
要は以前、皇さん達の学院の夏祭りに行ったが、あれの規模が大きくなって、文化祭バージョンでやるのだ。
俺が志木や赤星達の学校に行ってもいいし、あるいは志木が赤星達や俺の所に来ても問題ない。
同じことは赤星達にも言える。
つまり、相互に入場しても良いようになるってことだ。
「……で、1日置きにシーク・ラヴが各校でイベントもやるそうだぞ」
初日はウチの学校で、二日目が志木達の学院、そして三日目が赤星の所だ。
そのために一般の来客はチケット制などにして、対策は打たれるそうだが。
ただそのイベントが無くても盛り上がりはするだろう。
特に普段は男子禁制となる志木達の女学院に入れるとあって、ウチのクラスの男子を筆頭に、期待感はとても高い。
……まあ羽目を外し過ぎなければ良いんじゃないかな?
「なるほど……では今年はますますご主人様はお忙しくなりそうですね」
「…………」
えっ、ラティアさん、それ皮肉ですか?
1年生は飲食関係、2年生は演劇、3年は受験に配慮して好きな物を選択できる。
今年もウチのクラスは演劇を選択した。
……だがそんな中俺は、名誉ある買出し係に即内定を頂いていますが何か?
「フフッ、そうではなくてですね……」
「……まあマスターはそうだよね」
何だよ。
ラティアもリヴィルも、クスクス笑いやがって。
セリフすら貰えない裏方がそんなに面白いか。
ケッ、笑いたければ笑え!!
「本人がこれだからね……大変だろうね、スケジュール」
「ご主人様争奪戦はもう始まってそうですけど……」
何だよ“俺争奪戦”って。
だから、俺は“買出し”だよ“買出し”。
争奪されるのは買って来た中身であって俺じゃない。
二人には俺の悲しみは通じてないらしいな。
寂しい……ぐすん。
……んぁ?
「マスター? どうかした?」
「ああ、いや……メールが来たから……えっ、桜田?」
まあメールのやり取りはするが、ちょっと意外だった。
てっきり逆井とか空木辺りかと思ってたが……。
アイツらかなり頻繁にメール送ってくるからな。
しかも逆井に至っては暗号かと思うくらい謎の絵文字使ってきやがるし。
『先輩っ! 文化祭のこと、聞きました!? ふふん、チハちゃん当日はとても、とっっっっっても! 忙しいんですよ!』
何だコイツ、忙しい自慢したいの?
別にそんなの言われなくても知ってるっての。
探索士もやって、アイドルも頑張って。
で、ついでに学生やってるようなもんだろ?
そこに今回の文化祭だ。
忙しくて目が回るレベルだろう。
だが、それがどうしたってんだ……。
『で・す・が!! 先輩、3年生で高校生最後ですよね! 仕方ありませんからチハちゃん、当日のスケジュール、空けてあげても構いませんよ!! 先輩は暇してそうですから、特別に一緒に回ってあげましょう!』
「えっ、もう俺が暇な係だって他校に出回ってる!?」
個人情報流出!
俺が“買出し係”っての、他校に漏れてるぞ!!
「……やっぱり」
「ですね……もう始まっていましたか」
メールの内容を知った二人が納得顔で頷いている。
うぐぐっ……!
“買出し係”というか、普通に俺が暇人だという固定観念が、もう既に他者には出来上がっているということか!
辛い……。
「……って、あれ? ――今度は逆井と赤星からも来たぞ」
しかも内容はやはり多少の表現は違えど、当日忙しい自慢。
そして俺が暇しているという前提でお誘いのお言葉が。
……つまり、これは、あれか。
「おっ、もしかして、マスター気付いた?」
「おぉぉ!!」
二人が期待した目で見てくる。
この一連のお誘いメールの趣旨を、俺が読み解いたと感じたのだろう。
だが、これはそこまで喜べる様な事じゃない。
だって――
「俺……滅茶苦茶に気、遣われてるんだな……」
そんなに俺は時間が有り余るボッチ野郎に見えてる・映ってるって事だろう?
ああ、そうだよ!
どうせ当日誘い合ってバカ騒ぎするような男友達も。
非日常の空気に酔って、密かに急接近を期待できるような女子も。
どっちも0だよチクショウ!!
「…………はぁぁ」
「ま、まぁ仕方ありませんよ」
……二人の反応が、何だか噛み合ってないように感じた。
だが今正に傷心中であり、更に玄関から音が聞こえたことで、その疑問の中身が質されることは無かったのだった。
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「――あっ、ご主人の靴あるよ!!」
「おっ、じゃあ帰ってるんだな隊長さん」
「ただいま帰りましたであります!」
3人が続々とリビングに入ってくる。
ルオとロトワは俺が出る時にはまだ寝ていたが、今は一直線に走り寄ってくる程に元気一杯だった。
「おう、お帰り、3人とも」
「うん!! ご主人もお帰りなさい!」
腹にタックルして来たルオを受け止め、お返しにじゃれつく程度で足を引っかけて転ばせてやる。
それでも楽しそうにはしゃいでくれる分、ルオはラティアやリヴィルよりも与しやすい。
おい二人とも、見てるか?
ルオみたいにもう少し与しやすい方が俺の好感度上がるぞ!
「お館様、お館様! ロトワ達、先程4階層を突破しましたであります!!」
ロトワは俺の前に辿り着くと、直立で敬礼姿勢を取る。
そしてそう報告され、一瞬何のことか直ぐには分からなかった。
「庭の方な。ゴッさん達も参戦したからか、かなり楽勝だったぜ?」
レイネが補足してくれて、ようやく何を指しているかがわかった。
「あぁ……あれか」
いわゆる自宅の庭ダンジョンのことだった。
物置の中に入り口が出来て、1階層毎にそれぞれ攻略判定がなされる。
そして攻略してから次の階層が生まれるという不思議なダンジョンなのだ。
織部に以前確認してみたが、思ったような回答は得られていない。
シルレを始め、異世界側のメンバーも初耳のようだし、俺達で解決しないとならないダンジョンだということになる。
「そうか……ただ5階層目はちょっとストップな」
出来た当初は手探りで、大人数で出向いたものの。
脅威度もまだそこまでではないと見て、以降の階層は今日みたいに複数人であれば行ってもいいことにしていた。
だがやはり5の倍数は何となくヤバそうなので、人数を揃えて行こうと待ったをかけたのだ。
……だって、何かトラップとか、ボス部屋っぽい物、ありそうじゃん?
「おう! ……それで、隊長さん達は何を話してたんだ?」
「ん? あぁぁ……まあ、今度の文化祭のことだな」
先に手を洗いに行かせてから、先程話したことを再度、帰って来たばかりの3人にも伝えた。
「へぇぇ!! 楽しみだね、合同文化祭!!」
「であります!! 出店、出店!!」
ルオとロトワの下二人はやはり、お祭り事に早くもウキウキし出している。
「……あ~、あたしは留守番してるわ。あんまし騒がし過ぎるのは、ちょっとな」
それに対してレイネはサッパリした反応だった。
……まあ俺もレイネと同意見、だな。
基本は自由参加だし、俺も受験言い訳にして、休もうかな……。
「……隊長さんは多分留守番は無理なんじゃないかな?」
「えっ、ご主人行かないの? ……あっ、ボク達のことは気にしなくて良いけど。でも、それでも難しいと思うよ?」
「……難しいかもしれないであります」
……何でや。
何度も言うけど買出し係だぞ、俺。
買出し係ってそんなに忙しいの!?
えっ、去年も同じ係で大分楽だった記憶あるけど……。
5人で一致して“俺、当日は超忙しい説”を押してくるので、早くも“買出し係”に不安を覚え始めたのだった。
やはり中旬後半までずっと忙しく、1話の更新だけでも本当に合間を縫って頑張っております。
日々疲労感で書く気力がゴッソリ削られ、プライベートな時間もほぼない中、レビューを頂けていたことに先程気付きました。
「んっ? ……あっ、レビューだ。レビューか……えっレビュー!?」
って感じで、直ぐにはその意味に気付かず、二度見してしまったほどです。
ありがとうございます、本当に嬉しいです!
まだ忙しい日々が続きますが、何とか少しでも更新、そして話を進められるよう頑張ります!
……か、感想の返しはまた落ち着いたら一気にやります。
すいません、読んではいます、ちゃんと目を通してはいるんです!
ですのでもうしばらくお待ちを!!




