表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

313/416

306.コイツ、何のつもりだ!?

お待たせしました。


久しぶりにスヤーと爆睡しちゃってました、すいません。



ではどうぞ。



「お疲れ様でした。簡単ですが摘まめる物を用意しましたので、よろしければどうぞ」


「シャワーも、さっさと浴びてきな」


 

 ラティアやレイネが出迎えてくれた。


 家に戻り、まず赤星と皇さんの分断を狙う。 

 その存在を知らせるのは赤星だ、皇さんにはルオやレイネ達とゆっくりしてもらうことにする。




 ……正直皇さんも、信頼できる相手だとは思う。



 だが、織部の存在はそれだけで刺激が強い。

 ある意味R18だと言ってもいいだろう。



 だから今回は、皇さんの健康的な成長を考慮して見送りにした。



「あんがと~。アタシは着替えだけで良いから、ハヤちゃん達が、借りちゃいなよ」



 協力者(さかい)も上手く、二人を分断するように誘導する。 



「すいません、いつもありがとうございます。――颯様、以前先を譲っていただいたので、今回は颯様が。私はルオさんと後で頂きますね」


「えっ、良いの? ……そっか、じゃあお言葉に甘えてお先に……新海君、ラティアちゃん、じゃぁ、借りるね。――ロトワちゃん、行こっか」


「はいです!!」



 皇さんとのやり取りもあり、ロトワと一緒に赤星が、先にシャワーを浴びに行く。

 対する皇さんは、ルオと軽食をお腹に入れるため椅子に座った。



 フフッ、想定通りだ。



 ……いや、何かこれだと、赤星がシャワーを浴びている間にエロいことを企むみたいに聞こえるな。


  

 まあ企みはあるが、エロいこととは全く関係がない。

 今日は至って真剣な内容なのだ。


 

 ……だ、だよな?




「……俺は先に部屋に戻って片付けするわ」


「了解。――あっ、リア。着替えるんなら部屋使う?」


「わぁぁ、ありがとうリヴィルちゃん! じゃあちょっとだけお邪魔しようかな~」



 別々の用事を済ませる体で、3人揃って2階へ。

 ラティアとアイコンタクトを済ませ、皇さんやルオ、レイネの相手を任せる。


 今日織部・勇者という存在を知らせたくない3人。

 それをラティアだけに任せるのは少々申し訳ないが……まあロトワもいる。

 あまり事情を頭に入れてない分、上手い具合に意識を逸らす行動があるかもしれない。


 

 そこは二人を信じよう。  






「――よし、追手はいないな、リヴィル?」


「うん。……いや、まあそりゃいないでしょう」



 軽くツッコミが入り、肩に入った力をゆっくりとほぐす。


 自室に戻り、改めてこれからのことを確認する。

 逆井は本当に着替えてから来てくれてもよかったのだが、そのまま俺の部屋に入って来た。



「別に新海の部屋でも着替えは出来るっしょ? ……な、何なら新海、そのまま見てても良いよ? ニシシ」



 そう言って少々強引に笑って茶化すが、俺が本当に見るって言ったらどうするつもりなんだコイツ……。



 ……まあそんな度胸もやる気もないけどね!



「……じゃあ話を進めるぞ? ――対象(ターゲット)は赤星。赤星がシャワーを浴びている間に最終確認を済ませる」


「うん。ハヤテに“カンナ”のことを教えるんだよね?」


「ああ」



 リヴィルの言葉に頷いて返す。

 

 今日でなくとも良いのだが、一番タイミングが良かったので今日決行することにした。

 織部自身にも、赤星に伝えることはOKを貰っている。

 

 っていうか、半分は織部のためでもあるんだがな。


  

「赤星がどういう反応をするか、正直予想はつかん。……そこん所、どうなんだ逆井?」


「えっ、ハヤちゃんの反応? うーん……」 

 


 答えに悩みながらも、逆井は本当にこの部屋で着替え始める。

 素知らぬ振りをして視線を逸らすが、衣擦れの音がダイレクトに聞こえてきてしょうがない。


 逆井め、俺がここで着替えをガン見したらどうすんだよ。

 


 ……まあそんな度胸もやる気も全然ないけどな!


 

 最近、アルギニンとかシトルリンとか、ムラっとくる系のサプリが食事に合わせて提供されるから、余計こういうのは辛い。



 クッ、ラティアめ、プレゼントされた物をしっかりと活用しおって……!



「どうだろうね。ハヤちゃんも柑奈も元々は知らない同士だったんだから、怒るとか泣くとかは無いと思う。あって困惑とかじゃない?」



 ……まあそのあたりが妥当か。



「分かった。とにかく、これから正念場を迎える。二人とも、頼むぞ?」


「ん、分かった」


「オッケー!」



 リヴィルと逆井の協力を確認し、後は赤星を待つのみとなったのだった。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「ふぅぅ……ありがとう新海君、シャワー浴びて、スッキリしたよ」



 着替えも済ませた赤星が、呼びに行ったリヴィルと共に部屋へとやって来た。

 


「はぁぁ、涼しい……落ち着くねぇ」



 リラックスして気分も緩んでるのか、シャツをパタパタとさせて空気を送る。

 その分肌が見え隠れし、赤星の油断具合が伝わって来た。



「ハヤちゃん……そういう気を許してますよアピールが、律氷ちゃんに“伏兵”認定される所以(ゆえん)なのに……」



 傍にいる逆井が、俺にだけ聞こえるようにそう呟く。

 いや、これは単に暑かったからだけじゃねえの?



「ん? 梨愛、何か言った?」


「いや、何でも……」


「……ハヤテ、鈍感系スキルも身に付けてるね」

  


 ……リヴィルさん、聞こえてないのを良いことに変な事言わない。

 これから結構大事な話をするんだから。

 

 真面目に、いいね?



「――えっと、赤星、それで、部屋に来てもらったのは大事な話があるからなんだ」



 改まって姿勢を正し、そう切り出す。

 それで逆井もリヴィルもサッと笑顔を消した。



「……大事な話? ――うん、何かな?」 



 室内の雰囲気を察し、赤星も真剣な表情になる。

 ……よし!



「その、な。今まで黙ってたことなんだが――」



 一瞬だけ言葉に詰まり、リヴィルや逆井の顔をチラッと確認する。

 二人は無言で頷いて返してくれた。


 大丈夫だという優しい、でも力強い後押しみたいに感じる。

 咳払いして仕切り直し、改めて思い切って打ち明けた。




「赤星には伝えておこうと思う。――“織部”のことなんだが」 


「…………」



 赤星の反応がない。

 珍しくフリーズしたみたいな顔になった。

 

 そしてようやく理解が追い付いたのか、出来た間を恥ずかしがるように頬を赤らめる。



「――あ、ああ、織部さん! うん、織部さんのことね! で、それが、どうかしたのかな!?」



 ……何でそんな焦った感じになってんの?

 赤星にしては本当に珍しいな……。



「……ハヤちゃん、伏兵的勘違いしてたね」


「言葉の意味は分からないけど、何となくリアの言う通りな気がする」



 いや二人とも何を言ってんのかサッパリなんだけど。

“伏兵的勘違い”って何だし……。



「いいか? っと……織部――織部(おりべ)柑奈(かんな)についてだ。織部は実はな……生きてるんだ」



 改めて言い直したことで、赤星も気を取り直して話に集中する。

 だが、今度は俺の言葉の意味を直ぐに理解したようで――




「――あっ、えっと……うん。そう、だよね、うん。大丈夫、私も信じてるよ、織部さんが生きてるって」



 ……ん?

 

 予想外の反応に、打ち明けた俺達の方が思わず困惑する。

 赤星は特に俺や逆井に向けて、とても優しい目を向けてきた。



「私も……織部さんが戻ってきたら、一杯話を聞きたいな。でも、梨愛や新海君との思い出話ばかりされて、ちょっと嫉妬(しっと)しちゃうかも。ははっ」




 ……あっ!

 これ……新海ゼミでやったことある!


 

 ――腫物(はれもの)に優しく触れるタイプの対応だ!!



 学校で“はいグループワークするから、〇人組作って~”の時には散々お世話になりました!!



 志木とはまた違ったタイプの、でも王道な対応だろうか。

 クッ、“織部が失踪した体”、やっぱ面倒臭いな!


 織部本人も相当に面倒臭いのに、綺麗な織部が関わってる場合も大概困ることになる。

 


「えっと、ハヤちゃん? そ、そうじゃなくて……」    

 

「フフッ、梨愛、良く言ってたもんね。“親友”だって」



 赤星は逆井を傷つけまいと想ってのことだろうが、逆に当たり(さわ)りのない話題に終始してしまっている。


 ……むむむ。

 これはちょっと雲行きが怪しくなりそうだな。




「――ねえマスター。もうさ、直接会わせた方が早いんじゃない?」



 そこに待ったをかけたのが、リヴィルだった。

 こうして3人だけだと行き詰まるかもって時に、冷静に一歩引いた位置から見つめ、助言してくれた。


 


「……そう、だな」



 本当は赤星に、織部が生きて異世界にいるって所まで説明してから、ご対面と行きたかった。


 ……だって相手は織部だぜ?

 ぶっつけ本番で何か変なことしてかき乱されても嫌だろう。



 だがこうなったら仕方がない。


 直に生きている織部に対面させて、赤星に一気に説明してしまおう。



「――今から、赤星にその証拠を見せる。ああ勿論、このことは志木とか、皇さんにもまだ話してないことだ」


「え、えっと……うん」



 DD――ダンジョンディスプレイを出し、通信を繋げる準備を始めた。

 赤星もそこに来て、話の方向が分からなくなってきたらしい。


 俺のやることに口を挟まず、少し不安そうにリヴィルや逆井の顔へ視線を往復させていた。



 10秒もせず、画面が切り替わる。

 織部も待機してくれていたらしい。


 すぐさま通信が繋がり、画面に現れたのは――




『――はじめまして。梨愛や新海君から常々ご活躍は伺っていました。同学年の織部柑奈と言います。赤星(あかほし)(はやて)さん、よろしくお願いしますね?』




 久しぶりに見た、ウチの学校の制服姿で。

 三つ指ついて挨拶しかねない程に丁寧・清楚な佇まいの織部だった。


 いつものハチャメチャ具合は完全に鳴りを潜め。

 初見だと、思わず息を飲んで見惚れてしまう程の大和撫子っぷり。

 

 

 現役の大人気スーパーアイドルである赤星も、ボーっとその織部の姿を見つめる――

 





 ――だ、誰だコイツ!?



 

 お、織部めぇぇぇ!!

 何でかは知らないが、コイツ――






 ――“猫”ならぬ“綺麗な織部”を被ってやがる!!



織部さんめ、何を企んでるんだ!


志木さんが相手で白かおりんと黒かおりんを使い分けるみたく、綺麗な織部さんと痴織部さんを使い分けるつもりなのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 新たなパワーワード痴織部www 作者の織部推しが凄いwww
[一言] どっちかというと痴織部さんというより恥◯部さんだよね 綺麗な織部さんを被ってても興奮して露出しそうだし
[一言] > まあ企みはあるが、エロいこととは全く関係がない。 > 今日は至って真剣な内容なのだ。  でも織部だぜ? > 「どうだろうね。ハヤちゃんも柑奈も元々は知らない同士だったんだから、怒るとか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ