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304.それも含めて、そう言うプレイしたんだろうな……。

お待たせしました。


コメント欄だけのをちょっと書いてみたんですが、あんまり上手くいかず……。

ということでそれは諦め、普通に主人公視点で書くことにしました。


一応[]で囲われているのが、動画のコメント欄で呟かれたコメントになります。


ではどうぞ。



“つぎみ~探索士! 最強の探索士を目指して、いざ冒険と参りましょう!”


『おぉぉ……そっか、ウチからか。んじゃっ、サイコロサイコロっと――』



 PC画面の向こう、更にメンバー達がいるスタジオに設置された大型テレビに、可愛らしいキャラが一人映る。

 そしてゲームの進行役となるお供の“補助者”が、空木のターンであることを告げた。


 コントローラーのボタンを押し、動き出したサイコロの目を止める。



『おっ、ツギミー、いきなり“6”じゃん! 幸先いいね!』



 このゲームの性質から急遽(きゅうきょ)MC側に回った逆井が盛り上げる。



『さぁ、美桜はどのマスに止まってどう行動するのか……』



 メインで進行を務める白瀬は企業から情報を貰っているのか、カンペと画面を交互に見ながら司会をこなしている。


 


「……うわっ、空木、もしかして、もうプレイスタイルは“アレ”で行く気か!?」



 空木が初っ端なから取った行動に俺だけでなく、コメント欄も活発になる。



[ツギミーいきなり“アイテム企業マス”止まりやがった!]


[しかも初期の手持ち金を全部ブッ込んで、妨害アイテム買ってやがる!]


[あれっ!? キャラの強化とか、モンスター対策のお金は!?]


[コイツ、ダンジョンに潜る気サラサラねぇ!! このボードゲームの一番の趣旨ぃぃ!!]



『……美桜様は、まあそう言う方ですしね』


『フフッ、美桜ちゃんったら、悪戯(いたずら)っ子さん』

   


 椎名さんと逸見さんも対戦相手たるプレイヤーだが、あまり驚きは見えない。

 逸見さんは特に、逆井とMC・プレイヤーの役割を変わることになっても落ち着きはらっている。

 

 ……まあこれから彼女たちも泥沼の戦いに身を投じることになるからな、一々驚いてられないか。

 

 



 この“抜け駆け! ダンジョン探索ウォーク!!”は、来月発売する据え置き型のゲームだ。


 ボードゲームで、探索士となったプレイヤーがサイコロを振って、マップ各地に発生するダンジョンを目指していく。

 ダンジョンを一番乗りで攻略すれば高い報酬が得られ、自分のキャラを強化したり、傭兵探索士を雇ったり、色々と出来ることが増えるのだ。


 そうして最初に設定した年月まで繰り返し、最終的に総合資金が一番多いプレイヤーの勝ちとなる。



『ぅぁ――』

 


 プレイ開始から4ターン経って、最初の犠牲者が現れる。

 コメント欄の方がむしろ、地獄にいるような絶叫が上がってる始末だ。

 


[ギャァァァァ!! 和奏(わかな)ちゃん死んだぁぁぁぁ!!]


[ツギミー、お前は鬼か!?]


[3ターン連続でアイテム関連マスに止まった空木ちゃんの大ナタが今、振るわれる!!]



『ツギミーエグ過ぎだし! ――えっ、しらすん、こんなんアリなの!?』


『……ちなみに企業の担当者さんから事前にコメント頂いてます』



 空木の行動を若干引き気味に見ながらも、白瀬は進行ボードとはまた別の紙を取り出す。

 そうして淡々と内容を読み上げ、プレイヤー4人も含めた皆に聞かせたのだった。



『“是非とも親しい友達や彼氏・彼女、家族などと一緒にプレイしてください。十分楽しめる作品になっていると自負しており、きっと終わった後はしばらくギスギスした関係が続くでしょう”――とのことです』



[最後wwwwwwww]


[ツギミー、晴れて妨害プレイに公認が出ました(笑)]


[あれ……1対1対1対1のはずなのに。いつの間にか空木ちゃんvs他3人みたいになってない? まあ面白いから良いけどw] 



 ゲーム序盤から、先行きがとても不安になる展開となったのだった。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『――あっ、やった! ダンジョン攻略した!』



 光原姉――光原(みつはら)和奏(わかな)の可愛らしいガッツポーズが映る。

 それと合わせる様にして、ゲーム内のキャラもピースサインを決めていた。



“やりましたね、わかな探索士! これで3度目のダンジョン攻略です! 報酬金が29万7200円入ります!!”



『フフッ、おめでとう和奏ちゃん。お姉さんも嬉しいわ』


『むむぅぅ……2位に落ちてしまいましたが、まだまだこれからです』


『あ、あっ、ど、どうもです! えへ、えへへ……』



 逸見さんと椎名さんの言葉に、光原姉は蕩けたような笑顔になる。

  


 

[おぉぉ……一時はどうなるかと思ったが、これで和奏ちゃん単独トップか]


[和奏ちゃんデレ顔スクショしました] 

  

[ツギミーの妨害プレイに対して、親友タッグが和奏ちゃんヨイショプレイで脇を固めてるからな]



 コメント欄も最初の時よりかは落ち着きを取り戻して、純粋に彼女たちのゲームプレイを楽しんでいた。



「なるほど……椎名さん・逸見さんのお姉さんタッグはそういう風に動くわけか」



 二人は空木とは異なり、あからさまな捨てプレイはしないものの、今回のゲームの勝者を光原姉へと持って行くようにしていた。

 阿吽(あうん)の呼吸というか、特に二人がそうしようと言葉を交わしたわけではないのに、だ。


 流石、長年親友として過ごしていただけのことはある。



「俺もコメントしようっと……“さっきから椎名さんと逸見さんの水面下でのコンビプレイが凄い! 流石、大人の読みは深い!”っと」


『……さてさて。――あっ、コメントありがとうございます。どれか読みますね。えーっと……“生まれてからの年齢=ボッチ歴さん”! “椎名さんと逸見さんの大人アイドルコンビ、年齢からくる読みが深い!”ですって!』

 


 いや白瀬さん!?

 何でそんなピンポイントで俺のを拾ったし!

 しかもそのまま読まずに要約するなよ!


 それじゃあ何か、特に椎名さんを“2X歳メイドアイドル”でディスってるみたいに聞こえるじゃん!!




『そうですか……そのボッチさんとやら、コメントありがとうございます。大変参考になる意見でした』

 

『フ、フフッ……も、もう椎名ちゃんったら……顔、顔に出てる……』



 ほらぁぁぁ! 

 何か殺気だってるじゃん!

 

 

[バカッw 言った奴さっさと謝っとけw]


[椎名さんおこだぞ! おい、誰か止めろ!!]


[唯一の希望たる六花さん、腹筋崩壊でそれどころじゃない件w]



 ……お、俺だってバレてはいないよな、うん。

 やっぱりコメントはちょっと控えよう。

 後、椎名さんとの接触もしばらく控えたい……。



 それから5ターン程は、静かに嵐が過ぎ去るのを待ったのだった。





『――おっ、やった、【呪魔法】習得!』



 残りターンも折り返しとなり、開始からずっと最下位の空木がまた何かえげつないのを引き当てた。



[グェッ!! ツギミー、妨害アイテムとか妨害技の引き天才かよ!]


[“こんな探索士は嫌だ”――“妨害技しか習得せず、ダンジョン攻略に精を出さない”]


[高額の報酬金を受けとるでもなく、ボス退治に成功したでもなく。ランダムマスで妨害技の習得をして、今日一番の笑みを見せる美桜ちゃんw]


[まあ現実には魔法とかスキルなんてまだ夢物語なんだろうけどな……それでも空木ちゃんは、ある意味では理想の探索士を創りあげている……気がするw] 



 またコメントが読み上げられ、そこから話が展開する。



『――そう言えばさ、このゲームじゃダンジョンクリアしたら“報酬金”貰えるよね?』

 


 そう尋ねた逆井に、白瀬が答えた。



『そうね……それが?』


『んとさ、このゲームって、アタシらのことも含めて現実を参考に、ちょっと遊びも入れて作ったんだよね? ――現実の方はどうなってるか、みたいな話もした方がいいのかな、って』



 それで、白瀬も。

 そして椎名さんや逸見さん、それに空木も。

 

 逆井が言わんとすること、更にそこからどうすればいいかを理解した。



『なるほど。――私がこの前同行させて頂いた時、報酬は確かに出ました』


 

 椎名さんが代表して答えると、それでコメント欄も沸く。

 


[へぇぇ……やっぱ出るんだ]


[椎名さんは補助者だけど、攻略した人はちゃんとお金貰えるんだね]


[まあ椎名さんは律氷ちゃんとこで働いてるわけだし、お金には困らないだろうけど]



『このゲームだと、“依頼を出す企業・自治体”によって“難易度・成功報酬”が変わるようになってるけど……今私達が受けることがあるとすれば、国か自治体さんだけよね?』



 椎名さんと呼吸を合わせるように、逸見さんが言葉を継ぐ。

 二人ともプレイを続けながらも、画面のこちら側――俺達視聴者をも意識してくれているんだと分かり、感心するばかりだ。



『まあ今ウチらの武器を造ってくれてるのは志木・皇グループが主でしょ? ゲームの方は、かなり多くの企業が携わってる未来を想定してるっぽい』



 空木の気の抜けた、しかし確信を突くような言葉で、更にコメント欄は自分達で考察を進める。



[要するにこのゲーム、ちょっと先の未来も見据えて作ってるってことだろ?] 

[ゆくゆくは国とか自治体だけじゃなく、企業・会社が依頼出して、ダンジョンに関わるのが普通の、そんな未来が来る――製作陣はそう見てんだろ]


[ゲームで楽しんでもらうことも目的だろうけど、それを通してダンジョンに親しんでもらう……ああ、そもそもこの動画配信もそう言えばそんな趣旨なのかな]


 

 逆井や逸見さん、椎名さん、そして空木の言葉をきっかけにして、ドンドンコメント欄ではゲームや製作の裏に関する考察が繰り広げられていた。


 こうして自主的・能動的にゲームやその奥、ダンジョンについて考えてもらえていること自体で、広報としては成功と言えるのだ。



「なるほど……志木の奴め。今日の企画自体も知ってて勧めたな」 



 この光景を見させるために、志木は今日、俺にこれを見ることを勧めたのだろう。


 そう思うと、その思惑は成功している。

 それがちょっと悔しいと同時に、流石だと感心もするのだった。 




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『あぁぁ……残念、最下位(ベベ)か……良い所まで行ったのにな~』



[一度も4位以上を経験してないのに“良い所まで行った”とは……?]


[まあ妨害ツギミーに、ヨイショ椎名さん・六花さんだと、和奏ちゃんトップは妥当だろうな……]



 かれこれ36ターン、計1年分を遊び、決着がついた。

 まあコメントにもある通り、中盤くらいから皆、薄々予想は出来ていた結果だが。



『おめでとう~ワカちん!』


 

 逆井も手を叩いて光原姉を祝福する。

 ……それは良いんだけど、逆井、女子相手に“〇〇ちん”みたいなあだ名、何とかならない?


 ちょっとさ、その、うん、色々……あるじゃん?

 ロトワの“ギンギン”みたいな感じで。

 

 ……出来れば別にして欲しいものだ。



『あ、あ、ありがとうございます! 初めてプレイしましたけど……何て言うか、凄く楽しめましたね!』

 


 鈴が鳴るような透き通った声で光原姉は喜ぶ。

 それを見て、逆井や白瀬も、そして一緒にプレイしていた3人も皆目を細めた。


 

[うん、見てただけだけど、普通に楽しめた]


[俺も。発売したら普通に買うわ]


[ああ。1回だけでこのゲームの面白さ・奥深さ・怖さ全てを表現してみせたこの動画マジ優秀]



 コメント欄も称賛が相次ぐ。

 これをきっかけにして予約希望や購入希望者がドッと増えている様子だ。



『あ~ま、ウチも楽しんだから。発売日なったら自分のお金で買うかも』



 空木のコメントを聞いて、更にそれに続くコメントが増えた。



 ……あぁぁ、なるほど。

 空木はこれをも見越して、妨害プレイをしたんだろうな。


 

 要するに、ゲームの面白さを引き出し、そうすることで購入してくれる人が増える。

 それは引いては、このゲームをプレイしてくれる人が増えることで、ダンジョン・探索士関連の情報普及にも役立つのだ。




「最初はお金貰えないから帰りたい、みたいなこと言ってた癖に……」



 まったく、空木は捻くれた奴だな。



『――さて、じゃあ締めに入りましょう。1位になった和奏には、景品として、このゲームの引換券が贈呈されます!』



 白瀬が大きなボードを持って来る。

 企業側が事前に作っていた物のようで、“ゲーム引換券”とデカデカと書かれていた。



『わぁぁ、嬉しい! 発売されたら沢山遊びますね! ――あっ、そうだ! “凛音(りおん)”ちゃんとも一緒にプレイしたいです!』



 その一言で、鎮まりかけていたコメント欄が、一気に活気づいた。



[っ!? バカッ、誰か止めろ!!]


[この超仲良し双子の間を引き裂く、この性悪(しょうわる)ゲームをさせるな!!] 


[ツギミー、おまっ、責任取れ! 遊ぶ時はツギミーが常に一緒になって接待プレイしろ!!]


[“不仲”とは無縁の光原姉妹がゲームでギスギス……見てみたい自分がいる。ゴクリッ]



 ……空木、変な所で炎上してんな。

 とりあえず、後で空木は労ってやることにしたのだった。




ツギミー、こういう空気を読むプレイは出来るけど、罰ゲームが懸かってたら多分本気で勝ちに行ったと思う。

椎名さんも、罰ゲーム内容によってはその道に屍を築いてでも勝ちをもぎ取りに行ったでしょうね……(白目)


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