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298.やる気になり過ぎてもダメだな……。

お待たせしました。


すいません、久しぶりに執筆途中にパソコンがいきなり落ちて。

それでやる気をなくしてダラダラしてしまいました。


ではどうぞ。



『ふぅぅ……――あっ、カズサさん! ということは、新海君も一緒ですね!』



 オリヴェアの名を使い一時的に借りたという宿屋の応接スペース。

 そこで織部達は休憩を取っていた。



 カズサさんを見かけた織部は元気よく振り返り、頭の被り物をとってみせる。



「……ああ、まあな」


『? 何でそんな微妙な表情なんです?……――まあそれはそうと、子供たちに夢を与えるっていうのも、良い物ですね!』



 俺の様子に疑問符が浮かんでくれたのは嬉しいが、それが自己反省に繋がらないから何とも言えない。

 

“子供たちに夢を与える”。

 言葉面は御立派で勇者っぽい善行を積んでるな、と思えなくもないんだが……。


 

「お前な……異世界の子供に変なことを教えるな」


 

 子供たちに縛られて快感を覚えるウサギもウサギだが。

 縛られたウサギを虐めて、勧善懲悪(かんぜんちょうあく)をした気分になって快感を覚えるような子供、嫌だろう。


 浦島太郎でももうちょっと子供向けにアレンジされてるわ。



『むっ! 変な事とはなんですか変な事とは! これは立派な啓蒙(けいもう)活動です! あの女の子たち、見所が大アリですよ、将来化けます!』


 

 化けてもらったら困るから言ってんだよ!

 異世界の未来ある少女たちに変な思想を植え付けるな!


 ……はぁぁ。

 コイツ、絶対自分の実益兼ねてるだろ。



「……サラは風船を作る係をしてたんだな。お疲れさん」


 

 犬の着ぐるみの首から下だけを身に着けたサラが、目に入った。

 サラは風船を膨らませ、そうして紐を括り付ける役を担っていたらしい。


 そう言う係も必要なんだろうが、織部やオリヴェアとは違い、性癖が前面に出ない裏方をしてくれているだけでも好感が持てた。



『あっ、はい、ありがとうございますニイミ様! この“風船”、膨らませるのもコツがいるので、結構楽しいです!』


「そうか……」 


 

 他のことに夢中になって、織部マインドに割く余裕がないというのは良いことだ。

 禁酒なども、夢中になれることが見つかればその分成功し易いと聞く。


 脳内から“織部”を断つのに役立つ趣味を、一刻も早く見つけて欲しい物だ。

     


『むぅぅ~。新海君から不快なエナジー波が……』



 んなもん受信すんなし。

 そう言う感性をもっと別のことに当てられないのかね……。 



『――って、オリヴェアさん!? どうしたんですか、大丈夫ですか!?』


『すいません……旦那様の匂いに包まれて興奮が収まらず昇天し過ぎて、立ち眩みが……』



 どんな因果経過だよ……。

 


「はぁぁ……直ぐ血、送るから」



 織部とオリヴェアのセットはどう足掻(あが)いても面倒事とハッピーセットである。


 痛む頭を抑えながら、梓にいらないペットボトルがないかを尋ねる。



「ペットボトルは500mlの水があるけど……血? ハルトの?」



 梓はキッチンにある冷蔵庫に向かいながら、俺の説明を聞き納得する。


 そして何を思ったか――



「肌を切るのは見ていて忍びない。だから血を出すなら鼻血が一番――」 


「まぁ……アズサ様、大胆ですね……」


「うぉっ!? ちょっ、アズサ、お前、何隊長さんの前で裸になろうとしてんだ!?」



 何とか肌色を見る前に、顔を逸らすことに成功した。

 ラティアやレイネの驚く視線が、梓に向かっているのが見える。

 


「……レイネ、ここは自室。私が脱いで裸になるのはおかしくない」


「おかしいだろ! 男の隊長さんが普通にいんじゃねえか!!」

 


 全くだ。

 女性の裸で鼻血出させようとするとか、どこのお色気マンガだよ……。



 あっちも騒々しかったが、こっちもこっちでドタバタだな……。

 部屋を汚さないようキッチンを借り、静かに血液採取の作業に入るのだった。

 



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「――で、成果はあったのか?」


 

 お互いに落ち着く時間を置いて、再び織部に尋ねた。



『……えっと、ニイミさん? オリヴェアはあのまま放置で……良いんですね?』


 

 カズサさんが念のためと言うように、DD――ダンジョンディスプレイの視界の端で横になるオリヴェアを指差した。

 

 呼吸は多少荒く、時にビクビクと痙攣(けいれん)しているものの、恍惚(こうこつ)とした表情で休んでいる。



「勿論、放置でお願いします」



 と言うより、余計にかき乱されることがないので、寝ていてくれた方が助かる。 



『五人目の五剣姫――“ネジュリ”さんについて、かなり多くの情報を得ました』



 織部はここからは真面目な話だというように、意識的に真剣な表情を作って話し始める。


 

『ただ……タルラさんもシルレも、それにカズサさんも。“ネジュリ”さんについては殆ど話してはもらえませんでしたが』



 そこに責めるようなニュアンスは無かった。



『……私達は今でこそ4人が同じ目標に向かって動いています。けれども普段は反目したり、利害が対立することも多いんです。“彼女(ネジュリ)”について、先入観を与えたくなかったんですよ』



 DDの上から、カズサさんの理解を求めるような声が届く。

 それに反論する者はいない。


 ……いや、レイネ、オリヴェアの方は見なくて良いから。



『……情報収集の結果を、簡潔に言いますね。――聞いた話からはとても好感の持てる素敵な御人だと思いました。ただ……協力を取り付けるのは困難を極めるでしょうね』



 織部の言葉を受け、サラが同意するように頷く。

 


『私も先程カンナ様から聞いた話だと、難しいというのが率直な意見です。――何を提示すれば相手が了承してくれるのか、そのきっかけが分かりません』



 現地で調査している二人がそう肌で感じるんだ。 

 実際に協力を仰ぐのは困難なんだろう。



 ……厳密には、織部が5人目の女性の協力を取り付けることは必須ではない。


 ただ、やはり5人中4人も既に協力関係にあるんだから、5人目も協力してくれるなら。

 それはとても力強い織部の後押しになることは確かなのだ。



「……ちなみに、どういう人物像だったんだ?」


『え? えーっと……王からの信頼も厚い、頭の回る知的な賢人、王国の策謀の裏には大体“彼女”がいる、軍を率いらせれば100戦100勝……とかですか?』


 

 織部が確認するような視線をサラに送る。

 サラも宿屋の中で収集できた情報を思い出すように虚空を眺めた。



『ん~……“ネジュリ”様は今でも既に権力・名声・栄誉を十分に極めた方なので、欲しい物・欲しい力なんてないんじゃないか、と』


「なるほど……」

  

 

 そういう話が本当なら、確かに織部達が協力を求めても、頷く姿が全く思い浮かばないな。



『あんまり関係ないかもですけど……子供たち的には大人程“参謀・軍師”というイメージは無いようでしたね。むしろ圧倒的な“個の強さ”・“魔王と渡り合った英雄”みたいなイメージが強いように思えました』



 聞いてる限りはもう完璧超人じゃん。

 全部が全部本当だとまでは思わないが、全て噂倒れと言うことも無いだろう。


 そう言う人を味方に出来れば、織部の旅も心強い物になるはずなんだが……。



「――私も一つだけ、思い出したことがある」  



 そこで口を開いたのは、梓だった。


 ……そうか。

 梓は異世界(あっち)の事情を幾らか知っていて、それでいてカズサさんのように五剣姫ではない。


 つまり、知っている情報があるのなら、口にし辛い理由はないのだ。



「王国が南側で接する魔族との境界線――ネジュリは軍を率いてそこを押し返した。ただその時、“相手の魔王と何やら駆け引きがあった”……そう言う噂が冒険者内で流れていた気がする」


 

 そして、梓の話が呼び水となったように、次々と話が展開していった。



「へぇぇ……あれって王国の五剣姫の話だったのか。何かあたしが戦場にいた時も似たような逸話、聞いたことがあるぜ。“一人の女が、伝説の力を使って魔王を驚かせた”ってな」



 サラが頷き、レイネの話を肯定するように続ける。



『私もです。ただ尾ひれがついたのか、真実なのかは分かりませんが私が聞いたのは“その力は失われた古代の魔法”で。“人族がそれを使えることに、魔王が感心してその場を引いた”と』



 皆の話が次々に繋がって行くのを不思議な感覚で聞いていた。

 




「――“古代の魔法”……“魔王”様“を感心させた”……“一人の女”の“人族”……もしかして、あの時の――」


 



 ――そこに、ラティアの呟きが漏れた。


 


「え? ……ラティア?」


「……はっ!? えっと、私、何か言ってましたか?」



 ラティアは自分で口にしていたことを全く自覚していなかったらしい。

 驚いたような顔を俺やレイネに向けてくる。


 俺はレイネと目を合わせ、頷く。



「ラティア……何か知ってることがあるのか?」 

  

「い、いえ…………」



 答え辛い過去、というよりは。

 自分でもまだ整理がついていない情報だらけで混乱している、と言う感じだった。



 なのであまり強く尋ねず、そこは引くことに。

 

 ラティアもそれを感じ取ってくれた。

 自分でゆっくりと、記憶を確かめるように呟く。



「――えっと……カンナ様。まだ確たることは言えませんが、諦めるのは早いと思います。もしかしたら……とっかかりくらいは、出来るかも、しれません」



 断定は避けながらも、ラティアはそう口にする。

 それは全く取り付く島もないかもしれないと思っていた織部にとっては、希望の光が見えたような情報だったらしい。



『わぁぁぁ! 本当ですか!? 分かりました! 私、諦めずに頑張ってみますね!! ――新海君、無駄かもしれませんが、私も足掻(あが)いてみたいと思います! 協力、お願いできますか!?』



 織部がやる気を取り戻したようだ。

 ……まあ、織部はこっちの方がらしいと言えばらしいか。



「おうっ、限度はあるがな! ドンと来い!」



 そうして請け負うように胸を叩く。

 織部もそれで心強さを感じてくれたようで、通信を切った後、早速メッセージを送って来た。



 そこには“送って欲しい物リスト”と書かれていて――



『新海君オススメのエロゲー・エッチなビデオ 18禁本(※薄い本でも可) 過激な衣装も2,3着 女性の興奮を高めるような精力増強剤があればそれもお願いします!』



 足掻く結果がこれかよ……。



 アイツ、こんなのを協力仰ぐ交渉材料にするつもりか!?  




 織部はやる気を出し過ぎてもダメだな、と学んだ一日になったのだった……。

織部さん、出ると1回は何かしらやらかすの、勘弁してほしい(涙)


主人公が尻ぬぐいするのも大変だろうし。

何より織部さんに引っ掻き回される私も毎回目が回りますぜ……(白目)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 流石は織部さんやで 出てくるだけ、台詞1つで場の雰囲気を我が物にしてしまう [気になる点] 最初の頃は取り繕ってたけど、本当に隠さなくなったな… これがブレイブカンナとしての成長なのか……
[一言] >  浦島太郎でももうちょっと子供向けにアレンジされてるわ。 勇者「えっ、浦島太郎の亀が虐められているシーンって亀甲縛りでSMプレイする事の隠喩ですよね?」 淫魔「いえ、亀(意味深)が虐めら…
[気になる点] 織部はそのうち露出狂になりそう…いやもうなってたっけ?
2020/10/05 20:17 え~シィー
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