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296.ホームだからな……。

お待たせしました。


昨日お休みして、リフレッシュして更新です。


ではどうぞ。



「ふぅぅ……サッパリした」


「お疲れ、マスター。これから向かうんだよね?」



 シャワーを浴び、着替え終えると、リヴィルとルオが自室から降りて来ていた。

 ラティアが用意してくれていた食事を、温め直して準備している。


 美味しそうな香りが漂ってくるが、我慢だ。

 ダンジョンで野暮用を済ませた後だが、またこれから出て行かないといけない。



「ああ、だから遠慮せず、先に食べといていいからな?」 


「うん! ――あっ、アズサお姉さんや、カンナお姉さん達によろしくね!」



 準備する手を止め、俺がこれから話すことになる二人の名を挙げる。

 どちらも一筋縄ではいかない相手のため、リフレッシュした頭にまた憂鬱(ゆううつ)さを感じた。



「うぃぃ~。――じゃ、行ってくる」


 

 夕食の準備で忙しいだろうと見送りは断り、玄関に向かう。

 そして事前に用意していた差し入れなどを持ち、家を出た。





『お兄さん……やっぱりロトワちゃん×聖ちゃんは恐怖のタッグでした』


「……不穏なメールを送ってくるなよ」


 

 冷房の効いた電車内。

 空木からのメールの中身に頭が痛い。


 先の内容を読みたくないと脳が拒絶反応を訴える。 


 しかし、またロトワのお泊りで面倒を見てもらっているともいえるので、無視するわけにもいかない。



『美洋さんも今日はここに1泊するんですよ。で、二人が美洋さんにあてがわれた部屋に行って。しばらくしたら凄い物音がしたんです。何だろうなぁ~嫌だなぁ~怖いなぁ~と思って。見に行ったら――』



 へぇぇ~今日は飯野さんもお隣にいたのか。

 ……いや、そうじゃなくて。

 

 何で怪談調なんだよ……。



『――なんと! 美洋さんが二人の相手で勝手に自滅したようで、手荷物がひっくり返ってたんです! そしてその中から驚くことに“あっは~ん”で“うっふ~ん”な本が出土して……』


 

 言い方もうちょっと何とかならないのか……。

 でもそうか……飯野さんがエロ本か……。


 ……ゴクリ。



「……とりあえずあの二人のセットが要警戒なのは確定だな」


 

 特に身体接触を伴う場合ね。

 


 ……ん?


 またメールが届く。




 ……あっ、今度は飯野さん本人から来た。



『美桜ちゃんがメール送ったと思うけど、違うからね!? 六花さんに渡されて!! “読んで勉強したら”って言われて、バッグに勝手に入れられて、だから普段からバッグに入れてるとか、そう言うのとは違うから!!』



 そんな必死に否定されると、益々怪しく感じるんですけど……。

 

 異性に、エッチなアイテム所持がバレた時の高校生男子かよ。 

 言い訳が友人に押し付けられたとか、もうね……。



 ……でも、逸見さんだしな~。

 あの人ならやりかねないという気持ちも半分ある。





 …………うん。


 見なかったことにしよう。



『お兄さん、美洋さんが(むな)しい抵抗を続けてますが取り合ってはいけませんよ』



 空木と飯野さん、交互にメールが来る。

 いや、そっちで解決してくれよ……。



『本当に違うから! 陽翔君、私胸は大きいし頭空っぽってよく言われるけど、その分だけエッチな事ばかり考えてる女の子なんかじゃないからね!!』



 ……いや、もう成人を超えてるんですから、女性がそういうの読んでもいいんじゃないですかね?

 ただマスコミ・週刊誌には気を付けた方がいいかもです。



 目的地まで乗り換えを含めて電車に揺られながら。

 俺は二人から来るメールの相手をこなすのだった。   

 



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆




「……ひぇぇ。こんな高そうな所に住んでんのか、梓の奴」



 清潔感溢れるタイルの床。

 エントランスは天井も高く、自動ドアも頼りない印象を受けない造りだ。


 女性は安心して暮らせるオートロック。

 ……まあ強さという意味でも、日常男として過ごしているという意味でも、梓には無用の長物かもしれないが。


 

「――ピッ、ピッ、ピッと……」



 事前に教えられた番号を押して、梓を呼び出す。

 チャイムが鳴ってしばらくして、梓の声が聞こえた。



『……誰?』


「俺だよ俺、新海だ」



 だが、それだけでは自動ドアが開く気配はない。

 声は完全に梓のはず。

 

 そして到着する直前にメールで知らせたんだが……。



『……“合言葉”を』


「いや知らねえよ」


 

 思わずツッコみが入ってしまう。

 えっ、何、何で俺は“新海陽翔”じゃないって疑われてんの?



『――えっ、隊長さんじゃないのかアズサ?』


『ご主人様の声……ですよね?』



 背後から、先に行っていた二人の声が聞こえる。

 完全にレイネとラティアの声だ。



 これで、俺が梓の部屋と間違えて、変人の家へチャイムを押したという線も消えた。




『むぅぅ……じゃあ仕方ない。ハルトと分かる回答であれば認める――“ハルトは私のことを……”?』



 その言葉に続く内容を答えろ、という趣旨らしい。


 いやもうこの質問内容をぶつけてくる時点で、俺だって分かってんじゃねえかよ。

 はぁぁ……。 



「“頼りになる協力者だと思ってる”……これでいいか?」



 一瞬考える間が出来る。

 そして梓が答える前に自動ドアが開いた。


 ……どうやら及第点は貰えたらしい。



『次回以降の合言葉を決めておく。“無二の相棒”。その次は……うん、“無くてはならない存在”――これで行こう』


「毎回変わるの!? しかも回を重ねるごとに合言葉の関係性が発展していってる件!!」



 斬新だな!




 

 エレベーターで移動し、梓の部屋の前までやって来た。

 チャイムを鳴らすと、直ぐにドアが開く。



「……いらっしゃい。私とハルトの愛の巣へ」



 出迎えてくれた梓はタンクトップにショートパンツとかなりラフな格好だった。

 ……まあ自宅だしな。



「いや、普通に二人も来てるだろうが……」



 チラッと足元を見ると、玄関には見慣れた二つの靴がある。

 ラティアとレイネの物だ。


 何が愛の巣だよ……。



「? ――家ではブーツもニーソも履かない。素足。……ハルトが望むなら履くけど」



 俺の視線の意味を、自身の脚に目が行っているとでも思ったらしい。

 いや、違うから。



「……これ、言われた差し入れ。――あのさ、差し入れって普通はホスト側が指定する物じゃないと思うんだが」



 不満な顔をしつつ持ってきた紙袋を渡す。

 梓は瞬時に表情を輝かせ、それを受け取る。


 そしてそこでようやく俺を中に入れてくれた。



「――あっ、ご主人様! お疲れ様です」


「おっす、隊長さん!」



 靴を脱ぎ奥に進むと、クーラーの効いた部屋に案内された。

 そこには既にラティアとレイネがいて、出前の寿司やピザが準備されている。



「うっす……って梓、何やってんだ?」


 

 梓は渡した紙袋から早速中身を取り出し、ロフトの上へと行こうとする。

 チラッと振り返って、殊更に真剣な声音を作った。



「……ハルトが折角届けてくれた、ハルトのアンダーシャツ。しっかりと仕舞わないと」



 ちなみに何故か“新品”じゃなく“ここ1か月で使用歴のある”という限定を付けられていた。


 ……普通逆じゃね?


   

「梓の部屋……ロフトは寝る用のスペースじゃないのか?」 



 女子の部屋だから遠慮気味だったが、この際なので改めて室内を見回す。

 今俺達がいるロフト付きのリビング以外に、もう一つドアを隔てた部屋が付いている。


 ちゃんとキッチンやトイレ、ダイニングもあるし……それにあのエントランスの例があるしな。


 かなりお高い所に住んでいることは直ぐに分かった。



「あっちを寝室にしてる」



 梓はしかし、そのもう一つの部屋を指差してそう答えた。

 そしてロフトを見て――



「――こっちは見られたら困る物を、隠す場所にしている」



 ……えっ、俺の差し入れのアンダーシャツはそっち行きなの!?



「……こっちは見られたら困る物を、隠す場所にしている」



 いや、2回言わなくて良いから。

 


「……後で、私がトイレか、お風呂に行く時、ロフトが無防備になるけど、決して上がってはいけない」


 

 わざわざ教えなくても行かないから……。



「むぅぅ……ハルト、手強い」




 流石にホームなだけあって、梓は今日、かなりハイテンションで突っ走っていたのだった。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆


 

 梓が取ってくれた出前で遅目の夕飯を済ませ。

 俺達は本題へと入っていた。

 


『――ギシッ! ギシィィ、ギシャァ!!』


「…………」



 撮影した動画を見てもらっている。

 梓の目は真剣そのものだった。

  


 ゴッさんがアルラウネと1対1で戦っている動画だ。

 これを撮ってくる必要があったために、ラティアとレイネには先に行ってもらったのである。



『ギシッ――』


『フンッ! ゴブリンにしては、動き、キレ、凄いじゃないのよ!』



 地中から現れるツタを操り、ゴッさんを上下左右から容赦なく攻め立てる。

 動画でのゴッさんはそれを上手くかわし、かと思うとカウンターでツタを華麗に切り裂く。



「……うん、良い動き。タフさが上がったからと言って、攻撃を食らってもいいと言う慢心もない」



 画面からは目を離さず、弟子の成長を小さく喜ぶ。


 この後織部と通信を繋ぐまでの間に、ちょっとでも見てもらえればと思ったが。

 予想以上に反応も良いようだった。



「……むむむ!」


「ははっ、だってよラティア。ゴッさん、良いらしいぜ?」



 今のやり取りを聞いて、難しそうに眉根を寄せるラティア。

 レイネは普段やり込められることが多いからか、ラティアが困っているのが嬉しそうだ。


 ……本当、ゴッさんとラティアの関係って謎なんだよな……。





「――うん、良いと思う。夏休み中に“守護者化”するんだっけ?」



 ゴッさんが何とかアルラウネに一太刀入れたところで動画が終わる。

 梓にそう確認され、少し考える間を置いて頷いた。 



「……そうだな、一応そういう風には考えてる。後、ゴーさんの進行具合も考慮要素の一つではあるが」



 リヴィルとゴーさんの訓練次第なところがある。

 が、まあ夏休み中だし、そこまで大きな差があるとも思ってない。


 2体が守護者化できる日も、本当にそう遠くないな。



「……分かった。守護者化したら次のステップに行く――私とマンツーマンでの戦闘訓練」


 

 おお……そこまでしてくれるのか。

 梓の忙しさは相変わらずだから、訓練の頻度は同じくらいだろう。


 だが、密度は一気に増すことになるはず。




 ゴッさん……お前はもっと高みに行けるぜ?




「――っと。通信だ。そろそろ時間らしい」


 

 DD――ダンジョンディスプレイの通知音がした。

 織部からの連絡と分かり、梓たちも気持ちを切り替える。



 それを確認してから、俺は通信を繋げたのだった。


……すいません、織部さんは次回です。


お待ちいただいていた方は、次回をお待ちください。



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― 新着の感想 ―
[一言]  おっぱいの大きいアイドル達に交互にメールを貰ってふーんで流す感じの新海さん。 > 「……これ、言われた差し入れ。――あのさ、差し入れって普通はホスト側が指定する物じゃないと思うんだが」 …
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