291.作戦会議!!
お待たせしました。
すいません、お腹ギュルギュルや疲労感など、体調が微妙なので執筆ペースをゆっくり目にしてます。
ではどうぞ。
「いらっしゃいませ~何名様で……あっ――」
押し式のドアを開け、カランコロンと音を鳴らして入店する。
可愛らしいメイド服を着こなした女性が対応してくれた。
しかし、俺を見るなり、その笑顔を固まらせてしまう。
……えっ、何?
大体こういう時、俺ではなく。
見た目抜群なルオやロトワを見て、デレっとする人ばかりなのだが……。
偶にラティアやリヴィルがいる時でも、今回のようにそちらを見ず、俺が注視される時がある。
“こんな美少女たちを侍らせてるクソ野郎はどんな顔してんだろうな……”みたいに思われてるのだろうか?
「?」
ロトワと顔を見合わせるも、分からないと言った風に首を傾げる。
一方ルオの方を向くと――
「はぁぁ……」
……えっ、何!?
ルオは原因が分かるらしい。
溜息をつかれてしまった。
「――えっと、店員のお姉さん? 先にもう一人来てると思うんですけど」
俺との間に立ちふさがるようにルオが前に出て、メイドさんに話しかける。
それで我に返った女性は、慌てて俺から視線を逸らして後ろを向く。
「しっ、失礼しました! お連れ様ですね! えーっと――」
カウンター席とテーブル席があり、その奥のテーブルから手を挙げる人が。
レイネだ。
それを見つけて俺達も女性も、向かうべき場所を理解する。
「ウっす」
アイスティーを飲んでいたレイネに挨拶する。
レイネも軽く手を挙げて返してくれた。
さて、座席はっと――
「――ご主人は奥ね。ボクかロトワが隣座るから」
「お、おう……」
ルオに仕切られて、レイネの真向かいに座る。
言葉通り、ルオは俺の隣、通路側に腰を下ろした。
ロトワはそれでレイネの横に行く。
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
メニュー表を示しながらそう言って、メイドさんはカウンターの奥に下がって行った。
「…………」
そしてその姿が見えなくなるまで、ルオはジーっと女性をにらみ続けていた。
……どしたし。
「えっ、ルオ、何かあったのか?」
レイネも気になったらしい。
グラスをテーブルの上に置き、直接ルオに尋ねた。
ルオにしては珍しく神妙な顔をして、声を抑えながら答える。
「レイネお姉ちゃん……ボク、目覚めたかも。“メス猫センサー”」
「あん? ――あぁ~何かラティアが偶に言ってる良く分かんないあれか?」
……ルオ、そんなもんに目覚めるな。
後ラティアも、普段からそんなワード生み出さない。
これから正に“ラティアのこと”について話すのに、変な感じになるじゃないか……もう。
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「えっと、ご注文――」
店員さんが俺に向かってそう言おうとすると、ルオがすかさず遮った。
「――このパフェと、こっちのチョコレートケーキと、コーヒーお願いします」
「あっ――は、はい! かしこまりました……」
再び戻って行く女性を見て、ルオは確信したように頷く。
レイネも感嘆するように唸った。
「なるほどなぁ~実際に目の前で見せられると、信じざるを得ないな」
「でしょ? ……ちょっと店員さんにはごめんなさいだけど、でもご主人ばっかり見るから……ねぇ?」
「そうなのですか? 確かに、ロトワもルオちゃんも目に入らない感じでしたけど……」
3人の会話を耳にしながら、さっきの現象について自分なりに考察していた。
一瞬、気があるんじゃね、みたいな都合の良いことを考える俺も脳内に沸いたが直ぐに排除。
レイネやリヴィルが異性だけでなく、同性にまでモテるという例がある。
要するに、俺を介して、ルオやロトワたちとお近づきになりたいと思う人もいるということだ。
それに物珍しさもあるだろう。
“こんな美少女たちの中に男一人――一体どんなマジック使いやがったこの男は……”みたいな。
だから、もしかしたら小さな頃に仲の良かった幼馴染との再会で、一気にラブコメルート突入、みたいな幻想は考えない方がいい。
……ってかそもそも幼馴染とかいねえし。
「まあラティアの言うことが現実にありうるってのは分かった――で? まだ頼んだ物は来てないけどさ、早速話を進めないか? その“ラティア”のサプライズパーティーについて」
レイネはここに集まった理由を改めて思い出させるように告げる。
ラティアに気付かれたりバッタリ会ってしまわぬよう、わざわざ家から離れた喫茶店に集合したのだ。
「……あっ、リヴィルちゃんから定期報告が来てます! ラティアちゃん“ニーソを沢山引っ張り出して着脱しては、にらめっこしてる”そうです!」
「うしっ、気付いてる様子はねえな! ……隊長さん、ルオ、どうした?」
向かいに座る俺とルオを見て、レイネは不思議そうな表情をする。
いや、今さっき出た話題ドンピシャなのかもって思って、な……。
「ラティアお姉ちゃんがいない間だからこそ、こうして作戦会議できるけど……それはラティアお姉ちゃんにも言えるのかもね」
「……かもな」
ラティアもラティアで、俺のいない間を見計らい、色々とコソコソしているらしい。
「――当日はじゃあ今日みたいに、リヴィルお姉ちゃんに時間稼いでもらうってことでいい?」
ホイップクリームがふんだんに添えられたパフェを頬張り、ルオが確認していく。
率先して今回の計画の進行係に手を挙げてくれていたのだ。
「ああ。料理はあたしとロトワで作ってく」
「はいです! お任せください! おいなりさんも沢山準備するですよ!」
ロトワは口の端にクリームを付けながらも元気に答えた。
それに気づき、レイネが紙ナプキンで拭ってやる。
……おいなりさんだけに注力しないで欲しいが、まあレイネもいるし、大丈夫か。
「俺とルオは状況に合わせて動くよ。どっちかの手が足りなくなった時の応援要員、だな」
これだけ大掛かりに動いているんだ。
今後リヴィルの時、ルオの時……と祝われる立場になったらバレるかもしれないが、まあそこは仕方ない。
「うん! ――あっ、ご主人、ボクらはプレゼント、皆でお金出しあって買ったんだけど、渡すタイミングどうすればいい?」
ルオに言われ、少しだけ気が重くなってしまう。
俺も皆と一緒にお金を出して一つのモノを買う方が無難だった。
が、今回の趣旨は“俺とラティアが出会って1年”を祝ってあげること。
他の皆はそれと合わせて“いつもお世話になってるお礼”をするというものだ。
皆とは別に準備するのが筋だろう。
「うーん……まあそれは同時に渡しても良いけど――」
ラティアのために、特注で頼んだ“サキュバスの衣装”。
ずっと同じ奴ばかりだと消耗品でもあるから何だし、これを機会にと思ってちゃんとした奴を作ってもらったのだ。
ラティアのスリーサイズも皆の力を借りて調べ。
装備に加護を施すことができるという“魔力の筆”なるものも、710DPで買った。
これは勿論、“Isekai”にて、オリヴェアの領地で購入したものだ。
だから、ちゃんと装備としても使ってもらえる物に出来る……はず。
しっかりと準備はした。
それでも、やはり漠然とした不安は残る。
「……お館様? 大丈夫です、ラティアちゃん、絶対喜んでくれますですよ!」
目敏く不安を感じ取ったのか、ロトワが率先して盛り上げてくれる。
「うん! むしろラティアお姉ちゃんが喜ばない姿なんて、想像も出来ないよ」
「だな! ……何ならこの際、犬のチョーカーでも追加してプレゼントしてやったらどうだ? 喜んで隊長さんの前に跪いて尻尾振るだろうぜ!」
いやレイネ、それは喜ぶの意味が違うだろう。
それに日々の辱めに対する恨みつらみを、この機会に晴らそうとしてるように感じるが、気のせいか?
「まあ、今から気にしても仕方ないな、うん――」
3人に励まされ、改めて気持ちを入れなおす。
まあ確かに、愛想笑いされたり迷惑がられたりは流石にないだろうと思う。
ダメだったらダメだったで、俺がメンタルブレイクすればいい話だ。
今回はラティアに少しでもいい思い出を作ってもらう、それだけ考えればいい。
「です! ――あっ、丁度またリヴィルちゃんから定期報告が」
良い具合に作戦会議もまとまり、お開きにしようとした頃。
ロトワがスマホをたどたどしい手つきで操作する。
今日ずっとラティアの動向を探ってくれている、リヴィルからの情報提供だ。
「えっと、ですね~……――何と!! “ついうっかり、を演出するために、いつになく自宅フィットネスを頑張ってる”だそうです!!」
「どんなアリバイ作りだよ……それは確かに“何と!!”だな……」
レイネの呆れたような声を聞きながら、ロトワはリヴィルからの報告を読み上げていく。
「あっ、お館様の洗濯物の取り入れを始めたとあります! ラティアちゃん、“つい疲れてうとうとしながら畳んでたから、私のとご主人様の靴下、間違って入れ替わっても仕方ない、ですよね……”と呟いていると!!」
全然仕方なくないんですけど。
リヴィルも良く上手いことその独り言に聞き耳立ててたな、おい。
「……それってつまり、ご主人の衣類にはラティアお姉ちゃんのソックスが入ってて、逆にラティアお姉ちゃんの方にはご主人の靴下が混じってるってこと、だよね?」
「……隊長さん、今から隊長さんの靴下もプレゼントリストに加えたらどうだ? ――ああいや“くわえる”って“咥える”じゃないぞ? ラティアがいくらアレだからって、流石に隊長さんの靴下咥えはしないだろうけど」
いや、うん、意味は分かったから……。
今回の作戦会議は決起集会の意味合いもあったものの。
微妙な空気になってお会計し、喫茶店を後にしたのだった。
ブレイブの侵食が知らず知らずのうちに進んでいる様に。
ラティアマインドも知らず知らずのうちに、ルオへとしっかり浸透している感じですね!
これも日々の教育の賜物……(白目)。




