290.フフフッ、俺の方が上手じゃないかい?
お待たせしました。
更新の時間帯がバラバラで申し訳ないです。
ではどうぞ。
□支配ダンジョン:ダンジョン名“ハルト・ニイミ 管理下ダンジョン No.12”
ダンジョンLv:36 階数:15 貯蓄DP:1200
〈管理下ダンジョン No.12 が、ダンジョン総合ランクF→D になりました。ランクアップ特典を2つ選択ください〉
「良し、大丈夫だったな」
ゴッさん・ゴーさんを生み出した親子ダンジョンに来ていた。
そして前回、ボス戦に勝って配下にしたダンジョンを食べさせたのだ。
「ご主人、出来たの!?」
待っていたルオが嬉しそうに尋ねてくる。
これは成功を喜んでいると言うよりも。
この用事が終われば、お出かけに行けるからという方が強かった。
「おう――ロトワも、もう少しだけ待っててくれな」
「――はい! ロトワ、待てと言われればいつまででも、お館様をお待ちするつもりです!」
いや、そこまでの覚悟が求められる程はかからないから、うん……。
ルオもロトワも共に、付き添いで来てくれていた。
とうとう夏休みに入り、俺も家に居られる時間が増えた。
なので、今日この後は勿論、これからのことが楽しみでしょうがないらしい。
『ふふん! あたい、またまた強くなっちゃったぜ! あんがとよ! あんた、もっとあたいに頼っても良いんだぜ?』
『だじぇ!』
「う、うっす……」
苦笑いしながらダンジョンとの会話もこなす。
ただ、他のダンジョンを食わせて成長させたということに少し戸惑いもあった。
……子供ダンジョンもいるのに、あんまりダンジョンの人格はそういうことは気にしないのだろうか?
まあダンジョンからすれば一食事に過ぎないんだろうな……。
こっちが考えすぎないよう手早く済ませるために、音声の指示に従いボーナスを選択した。
A:階層+5、モンスター創造DP5%減
B:“モンスター守護者化”機能追加
「これこれ……これは“B”だよなっと――」
ゴッさんやゴーさんは特に、自分達が強くなることを望んでいた。
“Fランク→Eランクへの成長ボーナス”はこっちの方が目的に合うだろう。
ロトワの連れる狐達の時のように、守護者に出来る機能を選択する。
よし、これで、ゴッさん達も更に強化できるようになったはずだ。
〈管理下ダンジョン No.12 が、ダンジョン総合ランクF→D になりました。ランクアップ特典を選択ください〉
同じ様なアナウンスが流れる。
これはだから、“Eランク→Dランクへの成長ボーナス”のことだろう。
A:階層+5、モンスター創造DP5%減
B:ダンジョン配下のモンスター、全能力値+20%
「ほう、“A”の選択肢はさっきと変わらないな……なるほど」
今ある情報だけを総合するとつまり、ダンジョンのランクアップボーナスは2種類なのだ。
“A”はダンジョンそのものの強化。
“B”は守護者化を可能にしたり、あるいは配下モンスターを強化したりできる。
つまり、ダンジョンを実質守ってくれるモンスター達を強くする、ということではないか?
建物に例えると分かりやすい。
要は、外壁や耐震構造など建物自体を良くしていくのが“A”。
アル〇ックやセ〇ムを導入して、警備員などの人員設備をどんどん優秀にしていくのが“B”だ。
「ふむ……このダンジョンは“B”で良いだろう」
ゴッさん達が更に強くなってくれる方が、今の所は有益だろうしな。
「うし……これでいいだろう」
今日ここでやるべきことを済ませた。
守護者化は今度やろう。
そうして帰る準備を進めると、ダンジョンから声がかかる。
『パパ、パパ! ママだけじゃにゃくて、今度はあたちにもダンジョン、食べさせてね! じゅるり……』
ヒィッ!?
だ、ダンジョン同士は共食いOKだとしても、ちょっと怖いんだけど!?
子供のダンジョンなんでしょ!?
そんな待ち遠しいように唾液をすする音させないで!!
「う、うん……どうなるかは俺も見てみたいし、ダンジョン攻略はまだまだ頑張り、ます……」
頬を引きつらせながらも、そう答えておいた。
それは別に子供のダンジョンが他のダンジョンを食べるヤバいシーンを見てみたい、という意味ではなく。
親と子のダンジョンで、レベルアップやランクアップ時に何か違いはないか見てみたい、ということだ。
……共食いを楽しませて、それを鑑賞するようなヤバい趣味は俺にはない。
「さ、さぁルオ、ロトワ、行こうか!」
二人を促し、早々に脱出することに。
ルオもロトワも、俺が急ぐ仕草を見せて不思議そうにする。
だが、その分だけ遊ぶ時間が増えると純粋に喜んでいた。
本当、変な影響を受けずそのまま純粋に育って欲しい……。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
「おお、そうかそうか……で?」
ダンジョンを後にし、カフェへと向かう道中。
ルオやロトワは楽しそうに日々の出来事を話してくれる。
俺が嬉しそうに相槌を打ち、聞き役に徹していたので更に気分を良くし――
「――でね、でね! ラティアお姉ちゃん、“私もうっかり、自分のニーソックスをご主人様のタンスに置き忘れることも……アリですよね?”って口に出しちゃっててさ!」
こうして無自覚に口を滑らせてくれる。
……うわっ、やっべぇぇ。
あの“賄賂で逆井が拭き拭き事件”、ラティアもバッチり把握してやがったか……。
……衣装ケースのハンカチのスペース、女性物の靴下が入ってないかどうか気を付けないと。
「そうか、楽しい話をしてくれて、ありがとなールオ」
「えへへ、どういたしまして!」
頭をグシグシと少し荒っぽく撫でてやる。
後でパフェも注文してあげよう。
情報提供者には謝礼を与えないとな。
ルオも嬉しそうに目を細めて、更に口元をフニャリと緩めていた。
フフッ、ラティアよ、情報戦は俺の方が一枚上手のようだぜ?
「――ロトワも! ロトワもお館様のお耳に入れたいこと、ありますです!」
「おお、そうか、ちゃんと聞くからどんどん話してくれ~」
ロトワ証人はどんなマル秘を教えてくれるんだい?
「えと、えとですね!――」
たどたどしくも、しっかり中身は分かる話し方だった。
ロトワの話はどうやら、つい最近タルラとDD――ダンジョンディスプレイを使って会話した時のことのようだ。
まあタルラとの話なら、それほど驚くことも出てこないか……。
「――で、タルラちゃんも“逆ばにー”? 気に入ったって言ってました! オリヴェア殿と一緒に、お館様に見せるんだって張り切ってましたよ!」
「へぇぇ……――へえぇっ!? そんなこと言ってたの!?」
驚き、思わずロトワを二度見してしまう。
それは俺だけにとどまらず。
擦れ違う中で“逆バニー”なる単語を耳にして、バッと振り返ったお兄さんお姉さん方もいた。
……いや、そりゃロトワくらいの小さな女の子の口から、そのワードが出たら驚くわ。
ただ本人は“逆バニー”という概念も良く分かってないからか、可愛らしい発音になっていた。
むむぅぅ……やはりタルラに入れ知恵を……。
……さては織部だな?
「あっ、あ! それと、サラ殿は凄く葛藤しているとも! タルラちゃんとオリヴェア殿で今、一緒に着るよう頑張って説得中だと聞きましたです!」
最初の情報だけでは褒めてもらえないと不安になってか、ロトワは更に新たな情報を口早に告げた。
――おお、サラ! 葛藤してくれているのか!!
その話からすると、サラの中にはまだ織部の悪の磁力と戦う良心が残っているらしい。
それは朗報だ。
是非ともサラには、俺の唯一の理解者として頑張ってもらいたい。
「そうか~! それは凄いな。ロトワも、貴重な話を、ありがとうな!」
「あっ――は、はい……ふ、ふにゅぅぅ……」
ロトワも、撫でられると途端に頬を緩めた。
フフフ、織部め、異世界にいるからと言って好き放題出来ると思ったら大間違いだぜ?
その後も楽しく話しながら歩いていると、目的の場所に辿り着いた。
メールを確認すると、もう既にレイネは先に中に入っているらしい。
『隊長さん、場所、分かる? 一応あたし先に着いたから、何なら迎えに行くけど』
こじんまりとした、しかし趣ある外観をした喫茶店。
ここで、とある作戦会議を開くことになっていたのだ。
もう着いたということを手短に打って送信。
そして、ルオとロトワを連れて、中に入って行ったのだった。
“逆バニー”という概念、私も知ったのは結構最近の話でした。
これは……皇さんの変身姿に負けず劣らずのえちえちな恰好です。
気になる方は家族や親しい人が近くにいない時にググってみてください。
要は、織部さんが好みそうな恰好、と言えばどんな感じかは大体わかっていただけるはず(白目)




