271.食らい尽くせ!!
お待たせしました。
今回はほぼ第三者視点になります。
ラティア達、居残りでの戦闘組が戦う場面ですね。
ではどうぞ。
□◆□◆Another View ◆□◆□
「では、あまり無理はせず。最悪の場合は逃げてくださって大丈夫ですので」
「えっと……その、本当に? そんなこと言われたら本当に危ない時逃げちゃいたくなりますよ?」
桜田の確認に、ラティアは微笑んで返す。
“逃げちゃいたくなる”なんて言い方、本当は逃げるつもりの人は使わない表現だからだ。
ラティアはそんな責任感ある桜田を頼もしく思いながらも、先の言葉は変えなかった。
「はい、大丈夫です。――ルオ、疲労はどうですか? 難しそうなら敵を引きつけるだけでいいですからね?」
「うん! 任せて!!」
元気よく返事をしてくれたルオを見て、ラティアは問題ないだろうと判断。
攻略に携わっていたとはいえ、それは“ナツキ・シイナ”として、だ。
“ルオ本人”として本格的に攻略を主導したわけではない。
そこまで疲労感はないのだろう。
後は――
「リツヒ様とロトワも。護衛と言っても無理せず、出来る範囲で構いませんので」
「は、はい!」
「分かりましたです! ロトワ、頑張ります!!」
頑張らなくていいと言った傍から気合い十分な二人を見て、ラティアは思わず苦笑した。
今回、任せられたモンスターの引きつけ、そして可能ならば討伐。
ラティアは最悪、一人ででもその役目を全うするつもりでいた。
「では行きましょうか――」
――チハヤ様もリツヒ様もダンジョン攻略の後。お疲れでしょうし……。
普段通りのパフォーマンスが出来るかどうか未知数だった。
もしこの二人のフォローが必要となるなら、それに当たってもらうためルオとロトワの助力は望めない。
なので最悪の場合を想定して、自分一人であのモンスター達を蹴散らす算段をしていたのだ。
だが、その想定は良い意味で裏切られることになった。
「――ぎゃぁぁぁ!! カニ味噌は吹き出さないで下さいよぉぉぉ!?」
「わわっ! 凄い凄い! チハヤお姉さん! ――ボクも負けてられない、っと!!」
前衛のアタッカーを担う二人の奮闘が凄まじかった。
桜田は自慢の大きなハンマーを上手く振り回して、大柄のカニのモンスターを叩き潰し。
一方ルオは脚そのものが武器となり、純粋な蹴りだけでその硬い甲羅を凹ませていた。
「≪闇よ、全てを食らう、魔牙となれ――≫」
――嬉しい誤算です! ルオは勿論、チハヤ様も、予想以上に疲れてない!
ラティアは詠唱を継続させながらも、戦況の把握を怠らない。
「なんっか! こう、して、カニを倒してる、ッと! “シーク・ラヴ”のマスコット、キャラクターじゃないはず、なのに!! 悪いことしてる、気分になります!!」
そんなことを言いつつも、桜田はハンマーの遠心力を用いてドンドンとカニを潰していく。
左右どちらかのハサミが大きく発達しているモンスターではあったが、その攻撃の前にはなす術なくやられていった。
その様は、まるで象の脚に踏み潰されたアリの様で。
中身をぶちまけてぺしゃんこにされるモンスター達は、その後ピクリとも動かないでいる。
「知刃矢様、流石です!!」
皇も黙ってはいなかった。
主にロトワと二人で、ラティアの詠唱のサポートを担っていたが、状況を見て独自に動いたのだ。
「ルオさん、助太刀します!!」
先のダンジョン攻略でも司令塔を務めていた皇は状況を判断する能力が一際高かった。
4体とそして5体のモンスター達の群れが合流したのを見るや、前衛をサポートした方がいいと判断したのだ。
「うわぉ! リツヒ、ありがとう!!」
主人たる青年や赤星がするような、攻撃しつつ動き回って敵のヘイトを集めていたルオ。
それにタイミング良く助力する。
皇は何でも器用にこなすが、短剣と丸盾を装備したオーソドックスなスタイルだった。
「せぃ、やぁぁ!! ――うわっ、意外と硬い、んですね……」
短剣を振りかぶり、大きなカニに叩きつけてみるも、跳ね返されて手が痺れる。
皇は自分が満足にダメージを与えられない相手を。
まるでミジンコでもすり潰すかのように倒して行く桜田に対し、尊敬の念を強めたのだった。
「そう、かな? ――てぃっ、せぁっ!!」
ルオに至っては素手ならぬ素足だ。
蹴り飛ばされるカニの甲羅には、綺麗にルオの足型がついている。
――凄い……知刃矢様も、ルオさんも……私も、自分に出来ることをしなくちゃ!!
「んっ! せぃ!」
大きなハサミが襲い掛かってくる。
それを剣でいなし、あるいは盾で受け止めた。
自分は数を減らすことには貢献できない。
だがそれでも焦ることなく、丁寧に皇はモンスターの攻撃に対応し続けたのだった。
――また群れが合流しちゃったけど、でも大丈夫。ルオさんや知刃矢様が確実に数を減らしてくれてる。それに――
「――皆さん!! ラティアちゃんの詠唱! もう終わりますです!!」
ラティアのもう一人の護衛であるロトワが、良いタイミングで、ラティアの詠唱の進行具合を伝えてくれた。
体の大きさに似合わない刀をブレなく構えている。
決してラティアには近づけさせないとする意志が、ありありと伝わる立ち姿だった。
「おぉぉ! 有難い、ですっ! またカニさん御一行が、合流しそうなんで、やっちゃってください!」
奮闘している桜田が天の恵みのように有難がるのも無理なく。
更に他のモンスターの群れが集まりだして、優にその数20を超えようとしていた。
それをラティアも把握し、魔法の完成を急いだ。
そして、全員の努力は実り――
「――【デモンズ・ファング】!!」
綺麗な白い砂浜一杯に、全てを飲み込む程の大きな闇が出現する。
最初からいたカニ、そしてつい先程新たに加わりだした群れの区別なく。
全てのモンスターがその中心点に吸い寄せられていく。
カニ達がおしくらまんじゅうするように、中央で密集すると――
「――闇よ、食らい尽くしなさい!!」
ラティアの命に呼応するかのように、闇は形を変える。
地面に出来た闇の口。
それが開いて、モンスター達を中に含める。
そして一気に閉じ、その存在全てを粉々にするように噛み砕いた。
「うっわ……凄っ……先輩、絶対ラティアさんの尻に敷かれるな~……物理的に」
桜田がそのあまりの威力に、一足飛びに何故か青年の未来を想像している間に。
モンスターは跡形もなく食らい尽くされたのだった。
「――ふぅぅ……これで見える範囲は大方片付きましたね。……それでチハヤ様、何かおっしゃいましたか?」
「い、いえ!! 先輩がラティアさんと相性バッチリだろうなって! はい」
「……本当に?」
桜田は焦りに焦った。
笑顔を浮かべながらも、まるでそれが笑顔に感じない表情を浮かべていたからだ。
――うわぁぁ、花織先輩に詰め寄られてる時みたいなプレッシャー!!
「は、はい! もう何なら体の相性も抜群かと!! 先輩の精も根も食らい尽くしちゃっていいんじゃないですかね!?」
――すいません、先輩、売っちゃいました! でも、命大事に、ですからしょうがないんですよ!
「……フフッ、そうですか。一先ずお疲れ様です。ただ、まだ戦闘があるかもしれませんから、気を抜かずに、お願いしますね?」
ラティアから発せられる圧が弱まったのを感じ、桜田はホッと息を吐く。
勿論、それは戦闘の緊張から解放されたから、ではないわけだが……。
――先輩、精も根も食らい尽くされるかもしれませんが、頑張って!!
そんな無責任な桜田の心境は置いておいて。
ラティア達は上手くモンスター達を引きつけ、数を減らすことに成功していたのだった。
□◆□◆Another View End◆□◆□
「――はっ、ハックション!!」
「えっ、新海君、大丈夫!? 風邪!? まだ水に入ったばっかりだよ!?」
これから潜ろうかと言う時に、くしゃみをしてしまった。
ペアになった赤星が心配そうに見てくる。
……クッ、普段なら赤星の方が風邪引きそうな格好してるじゃん、と軽く誤魔化せるのに。
今は水着で、俺の方が流石に寒そうな格好か……。
「悪い、もしかしたら誰かが噂してる……って、言っても、そんな奴もいないか」
自分で言ってて自分で空しくなるパターン。
仮に噂されるとしても、どうせ良くない噂だろう。
「ちょっ!? 新海君何で落ち込んでるの!?」
放っといてくれ……ぐすん。
「ああもう! 赤星、さっさと潜って何かないか見つけるぞ! レイネやリヴィルのペアに遅れるな!!」
「うわっ、ちょっ、待って――」
そうしてやり場のない怒り・虚しさの感情を、水中探索へとぶつけることに。
素潜りの要領で、先に水の中へと潜って行った。
あ、後1話で攻略自体は出来るはずだから!
だ、大丈夫なはずだから(震え声)
感想の返しはまた午後に時間が取れると思うので、その時に一気にしようかと思います。
すいません、滞りがちで。
申し訳ありませんが、もう少しお待ちを!!




