243.ロトワの未来購入作戦 後半
後半です。
これでロトワの問題は一先ず解決ですね。
ではどうぞ!
「――やったぁぁ!! やりました、ご主人様っ!!」
「マスター、やったね!!」
二人がこんなに素直に喜びの感情を表すのも本当に珍しい。
……だから、この左右からの柔らか過ぎる抱擁サンドイッチは……純粋な喜びの発露だよね?
「あ、ああ、やったな……」
そ、その……ま、まあ今回だけは……いっか。
――ってうぉっ!?
「く、来るぞ! 二人とも、離れて!!」
購入手続きが進み、魔法陣が出現する。
ロトワがこちらに転移してくるはずだ。
「うん――あっ、しまっ……」
「あっ、はい! ――あっ、いやっ、間違っ……」
……二人とも。
離れた後、何かに気付いて恨めしそうに俺を見ないでくださいな。
ほらっ、ロトワが来た時困るじゃん?
いきなり女子二人に抱き着かれてる男が“これから君の主人になりました、よろしく!”とか言ってもさ、うん。
今回はお互い不可抗力でしたということで……。
「――……ふぇ? ここは……?」
光が収束し、俺達の目の前にはあのロトワの姿があった。
色素の薄い長い髪を揺らし、辺りを見回す。
クリクリした大きな目に負けず劣らず、頭頂部についた二つの耳がヒョコヒョコと忙しなく動いていた。
「あっ――」
あっ、目が合った。
うげっ、逸らされた!
「あ、あのあの! ロトワは、ロトワで……ここは一体……ロトワ、確か、勇者の人の所に連れていかれるはずでして――」
いきなり知らない土地に飛ばされたからか、相当混乱している。
どうしよう、未だ織部はオークション会場から出てない、か……。
タルラと早く合流して、顔を見せてやりたいんだが……。
「……ねぇ、“ロトワ”っていうんですね?」
そんな困っていた時、ラティアが進み出た。
「え? えと、その、はい……お姉さん、は?」
優しく微笑みかけたラティアに、ロトワは怯えを微かに残しながらも素直に受け答えする。
それを見て、更に一層ラティアは嬉しそうに笑んだ。
「フフッ、ラティアって言います。ロトワ、あっちを見てみてください」
「へ? ……あっ――」
訳も分からないまま、ラティアに指差された方を向く。
ロトワはそれを見た瞬間、全てを忘れたように驚き混じりの笑みを浮かべた。
「うわぁぁ!! コンコン! コンコンですよ!!」
ロトワは俺達には目もくれず、この広間内を住処とする狐モンスターの下へ一直線。
修学旅行の時、赤星やリヴィルを探していて遭遇したアイツらだ。
「えへへ……うわっ、きゃっ、くすぐったいですよ、ペロペロはメッ、ですよ?」
「コーンッ、コンコンッ!!」
「あはは、ロトワも嬉しいですよ、コンコン達、初めましてなのに、初めましてじゃない感じがしますね……」
一時とはいえ、緊張や混乱それら全てから解放され。
ロトワは楽しそうに同種の狐達と楽し気に戯れていたのだった。
「フフッ……可愛らしい“家族”がまた一人、増えましたね」
「……ん、だね」
二人もそのロトワの姿を、微笑ましそうに見守っていた。
俺も、ラティアが口にした今の“家族”に、引っ掛けのニュアンスを感じなかったので、素直に頷いたのだった。
「ああ、そうだな……」
ただ……。
――全員統一で“コンコン”は愛称としてどうよ、ロトワさん。
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『――安堵。心から、良かった、ロトワ、無事で』
「うん、うん! タルラちゃん、また会えて、ロトワ、本当に嬉しいですよ!」
その後、オークション会場を出てシルレ達と合流した織部から連絡があった。
DDを介してロトワとタルラを再会させることに成功し、ようやく人心地付ける。
『ぐすっ、うぐっ……良かった、本当に良かったです、――ブシィィィッ』
いや織部、お前が一番涙してどうすんの。
鼻水も盛大にかんで……ってかいつまで仮面付けてんだよ。
『――信頼。ハルト兄、は大丈夫、だから。ロトワ、安心して、暮らして』
「そ、そうなんですか! 分かりました、タルラちゃんがそう言うならロトワ、安心しまくって過ごすですよ!!」
タルラにそうお墨付きを貰い、改めてロトワとの自己紹介に。
モジモジしながらも、画面から振り返ったロトワはビシッと頭を下げた。
「あ、あの! 今経緯を知ったとはいえ、お礼の言葉が遅れて申し訳ございません!! えと、助けていただいてありがとうございました!!」
「ああいや、そこまで畏まらなくてもいいけど……もっと楽にしてくれても――」
そう肩の力を抜くよう告げるが、それがかえってロトワの緊張を高めてしまったらしい。
「いえ! このロトワ!! “お館様”がおっしゃるのであれば、何時間でもこの体勢で待つつもりであります!!」
そうして敬礼の姿勢で固まっていた。
いや体育会系か。
ってか“お館様”って……俺のこと?
俺は鬼〇隊のトップか何かなの?
それとも戦国時代ばりに“ロトワァァ!!”って言いながら殴り愛をする、やっぱり体育会系なの?
……緊張してるだけ、だよね?
あれか、やっぱり“未来の自分”を呼ぶ力ってのがあるから、初対面を相手にしたら本能的にそうなっちゃうんだろうか……。
――よし、俺ジョークで解してやるか。
「……フッフッフ、ではロトワ隊員!!」
「は、はい!!」
いい具合にビクッとしてて、緊張感が増したな、よしよし……。
「コチラの世界は、特殊な能力など持たない単なる一般人だけで基本、構成されている! 分かるか!?」
「は、はい! 分かりませんが、分かりますです!!」
分かってないんかい!!
いや、それでいいけど!!
「うむ! そこでロトワ隊員に一つ、絶対的な使命を与える!!」
「っっ!! えと、はい!! 拝命しますです!!」
俺はそこで一瞬、間を置く。
緊張が一気に高まったロトワと視線を合わせ、フッと笑ってみせた。
「――一人の何でもない、普通の少女として幸せに暮らすように!」
「はい!! ……はい?」
……反射的に答えよった。
そして理解が追い付かずに聞き返されたよ……。
うわっ、スベったじゃん……クソッ。
「えっと……そ、そう! 俺達はこれから、ありとあらゆる幸福攻撃を仕掛ける! 異世界では食べられない舌の震えるような美味い食事で、食べすぎ腹痛に悩む日々が続くだろう!」
「…………」
うわっ、とうとう無言!
もう怖くて顔見れない!!
ええい、もうこうなりゃ自棄っすわ!
全部言っちゃえ!!
「楽しくて夜も眠れない娯楽の数々がロトワを睡眠不足に困らせ! 更には可愛らしい無数の衣服が、どれを着ればいいか分からないとロトワの頭を悩ませ続ける!!」
「…………」
「ええい! つまり、地球には! “未来を知ることが出来る能力”なんて信じてる人これっぽっちもいないから! 未来だなんだと思い悩む日々なんてないくらい、穏やかな普通の日常を一人の女の子として過ごすことになるの! 分かった!?」
最後はスベりにスベったことに対する逆ギレ混じり。
だが、言い切った……。
ほらっ、笑いたければ笑え!!
嘲笑えよ、ちくしょー!!
「…………ひぐっ――」
――ブワッ
「えっ、ちょっ、何で泣くの!? 泣きたいのは俺の方なんだけど!?」
主にスベり過ぎで!!
「お館、様っ、ひぐっ、ロトワ、ロトワ……――うぁぁぁん!!」
ぎゃぁぁぁ号泣ぅぅぅ!!
「はぁぁ……全く、マスターはもう……」
「フフッ。ええ、もう本当に。ご主人様は本当に仕様がない方ですね……」
何で二人とも嬉しそうに困った顔してんの!?
だから、困ってんのは俺なんだって!!
「うぅぅ、ひっぐ……お館様、ロトワ、一生、ついていく、所存です……ひっぐ」
号泣したと思ったら一生ついて回るって、どういうことやねん……。
折角最悪の未来を回避できたと思ったのに。
俺はこの先、新たに加わった同居人との生活に良い未来を思い描けず、頭を抱えるのだった。
ふぅぅ……。
これでようやく5人目ですね。
はい、ロトワは実は、なんと5人目の奴隷少女だったのです!!(棒読み)
まあ早くからバレバレでしたね、ええ。
これで丁度大体100万字くらい、行ったんですかね。
20万字につき、大体1人加入ペースですか……うん、丁度いいくらい?
ロトワの能力の詳しい内容とかはまた今後、ちょくちょく書いていくことになるかと。
感想の返しは……はい、明日以降に時間が取れた時に行うと思います。
もうしばらくお待ちを!!




