236.ダンジョン間戦争――攻略戦!
お待たせしました。
途中まで書いて終わらなかったので、ちょっと持ち越して、朝早く書ける時に書いて、で、今隙間時間を見つけて更新です。
※最後、第三者視点となります、分かるようにはしているつもりですが、お気をつけください、
ではどうぞ。
「――え? その、いいんですか? “ここで待機”で。これから攻略……するんですよね?」
何を言われたのか分からない、と言った様な桜田の質問。
俺はそれに対して頷いて返す。
そう思って当然だと示してやるように。
折角また志木から教えてもらった、公には未だ知られてないダンジョンに訪れたのに、だ。
同じ様な疑問を持ったのだろう。
俺の頷きで飯野さんも、あからさまにホッとした表情を見せた。
「んーっと……アタシも良くは分かんないんだけど、何かダンジョンで必要な実験をする、んだよね?」
唯一、昨日から付き合ってくれている逆井がそう補足してくれた。
「ああ。だから準備だけして、その時が来るまで待機してて欲しい。ゴッさんとゴーさん、それとワっさんがいてくれるから大丈夫だと思うが……」
簡単にそれだけ説明し、早速目的の場所へと向かおうとする。
――っと!
「ルオ、レイネ、何かあった場合は二人の判断で動いてくれ。まあ無いとは思うが」
そう声をかけると、元気よくルオが答えてくれた。
「うん、分かった! いってらっしゃいご主人!」
一方のレイネは、逆井を見ては視線を逸らし、また逆井を見る。
じーっと見た後、ゆっくり俺へと視線を移し、ようやくレイネ待ちだということに気付いた。
「はっ!? い、いや、えっと……お、おう! こっちはあたし達に任せて、は、早く行ってきたらどうだ!?」
……何でそんなにどもってんの?
いきなり見知らぬ人に話しかけられた時の俺なの?
「あ、あはは! レイネちゃん、アタシの恰好、やっぱどっか可笑しかった、かな?」
逆井は心当たりでもあるというように苦笑いしてそう尋ねた。
聞かれたレイネも、その心当たりが正に気になっていたんだというように、言葉に詰まる。
それもそのはず。
逆井はまた、新たに手にした装備を身に纏っていたからだ。
「いや、そんなことは、その、ねえよ? 何たってあたしやラティア達も隊長さんと話して決めたんだし……」
……もっと正確に言うと、織部もこれには一枚噛んでいたが、まあそこは良いだろう。
今度は赤を基調とした、だがこれまたビキニアーマー。
色以外で前回と違うのは、布製の前掛けが付いていることだ。
とても際どいビキニのボトム部分を隠すように、ヒラリと垂れ下がっている。
「えっと……うん、あはは、アタシは結構これ、気に入ってるんだけどな……」
逆井はそう言い聞かせるように告げるも、自分でちょっと恥ずかしい気持ちがあるのが隠しきれていない。
身に纏う生地が随分増えたと思うだろうが……。
――そう、これが肌を隠す役割を全く果たしていないのだ。
「梨愛先輩が良いんなら私は特に何も言いませんが……」
「えっと……若い子は凄く大胆なんだなって……うん、色々凄いね」
桜田、飯野さん、二人とも、一般的なご意見どうもありがとう。
民族的な模様が刻まれた赤いふんどしが、ビキニアーマー姿に追加されただけ、と思ってもらえればいい。
……どうだろう、単なるビキニアーマー姿より。
むしろ、それがひらひら揺れる度に、卑猥な気分を掻き立てられはしないだろうか?
“あまり暴走しないで欲しい、ですか? ではちょっと梨愛の装備についてご相談が! あっ、いや、別に強引に命令してくれれば勿論何でも聞きますが――”
逆井、スマン……。
あのままだと頭の可笑しい方向へと話が行きかねなかったからな……。
織部への手綱を付ける条件のバーターみたいになってしまった。
だ、だがその分、ちゃんと防具としての性能はバッチリだから!
紙装甲ならぬ布装甲だけども!
防御力は一級品だから、親友からの粋な贈り物とでも思っといてくれ!
「あ、あはは……やっぱちょっち恥ずいかな~! で、でもさ! アイドル衣装着て歌って踊る時もそうだったっしょ? それと一緒だって! 皆もやってみれば慣れるからさ!」
おいやめろ!
その露出が時として快感に、みたいな独特の癖をアイドルのレベルと同列に語るな!
そしてそこに潜む織部イズムを周りの女子に広めようとするな!
クソッ、織部への貸しが出来たと喜んでいたが、これはこれで心の疲労ががががが……。
そんな憂鬱さを抱えながらも、俺は逆井を連れて別の目的のダンジョンへと移動したのだった。
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Ⅰダンジョン機能展開
Ⅱダンジョン特性とDP交換
Ⅲダンジョン間戦争
「おお、やっぱりあった!」
さっき見た時も追加されていたが、今来てみてもそれが消えていることはなかった。
“Ⅲダンジョン間戦争”の項目が存在していることを確認して安堵する。
「へぇ~! じゃあやるんだよね? その……ダンジョンバトル?」
「正確には“ダンジョン間戦争”らしいがな……」
そう答えながらも、連れて来た逆井の体からサッと視線を逸らす。
いや、本当気になるんすよ、その股間辺りから垂れ下がってるひらひら……。
ビキニアーマーの露出の方が普通は異性の目を惹く、のかもしれない。
が、何をしても揺れる長い布が、俺には気になってしょうがない。
「ふ~ん……で、新海、しないの?」
クッ、その中身がエロ純度100%ビキニのボトムだと知っているのに、前掛けが風か何かで大きく逸れないかと期待している自分がほんの僅かだがいる!
本当にいかがわしい期待感とかではなく、純粋な好奇心なのだ。
暖簾効果とでもいうのだろうか……。
奥への視界を遮断する物があると、その先を覗きたくなる。
あるいはあの赤い布は、恰も興奮した男を闘牛士の様にひらりとかわすためのフェイクだとでもいうのか!?
「ちょっ、新海っ! どうすんの、するの、しないの!?」
「あんっ? いや覗かねえよ! 今の俺を覗かせたら大したもんっスよ!」
「……? 何の話してんの?」
うわっ、やべっ。
キョトンとした逆井の顔を見て、変なことを口走っていたのに気付く。
咳払いし、改めて新たな機能の実験を始めることを告げる。
「ごほんっ……。よし、じゃあ始めるぞ! ――えーっと何々……」
“Ⅲダンジョン間戦争”を選択すると、項目が展開され、一つの選択肢だけが浮かび上がる。
〇ダンジョン攻略戦――宣戦布告
ふーん……。
「えっ、いや、新海、ってか“覗かねえ”って何を!? 何の話だと思ってたの!?」
コラッ、終った話だぞ逆井!
寄ってくるな、今お前、自分が痴女みたいな露出度高い恰好って自覚ないの!?
それで近寄ったら、俺みたいな奴以外の9割9分9厘の男は勘違いすんぞ!
「んーっと……」
逆井を無視して“宣戦布告”を選択する。
さっき来た時に逆井同伴だったから、念のためまた連いて来てもらったが。
多分それは関係なかったな……。
“宣戦布告”の後、その相手先を選ぶ項目に飛ぶ。
これもまた選択先が一つしかなかった。
が、その場所も同時に表示され、これが桜田やレイネ達が待機してくれているダンジョンだと分かる。
俺が認識したダンジョン……じゃないとダメなのかな?
「ねえ新海、公共の女湯はやめとこ? ラティアちゃん達に頼めばいいじゃん! その、アタシ、もさ……その先のことだって覚悟はしてなくは……ないし、言ってくれれば覗きくらい……」
ちょっと静かにしようね逆井……。
いや、本当に何の話してんだよ。
<“宣戦布告先”の選択を完了しました。当該“ダンジョン攻略戦”に参加する“支配下ダンジョン”を選択してください>
っと!
いきなり音声が聞こえ、更に表示される項目が一気に拡大した。
場所と共に記されたその数々の選択肢は全て、俺が攻略し、DPではなく捕獲を選んで来たダンジョンだった。
そこに単独でか、ラティア達と共にか、その区別はない。
これら全てが、攻略戦に参加できる候補ということだろう。
「おぉぉ……よしよし、燃えて来たぜ! 何なら全部巻き込んでってのもアリだが……」
「えぇ!? その、ラティアちゃん達と皆でやるって感じ? ……やっぱ新海はハーレムプレイとかが好きなんだ……アタシ大丈夫、かな?」
逆井~そろそろ現実に戻ろうか。
それと“やっぱ”って何?
俺はどういう風に思われてんの?
……後それ、特にラティアか織部の前で同じこと言うなよ?
とりあえずはゴッさん達が生まれたダンジョン、それからアルラウネが守るワっさん達のダンジョン。
この二つのダンジョンを選択した。
その後、本当に宣戦布告を行ってよいかをもう一度、最終確認される。
「うっし……やるか!!」
俺は力強く頷いてそれに肯定した。
さぁ、特殊な攻略戦の始まりだ!
「うぅぅ……お、おーし!! い、いつでも来い新海っ! 柑奈、ゴメン、アタシ――」
……逆井は一旦、その恰好着替えた方がいい。
いや、変な意味じゃなく。
絶対そのビキニアーマーのえっちぃ見た目に、思考がモロ引っ張られてるから。
逆井のメンタルゥゥゥゥ。
□◆□◆Another View ◆□◆□
「うぉっ!? ……何だ?」
「……ご主人とリアお姉さんかな?」
変化は突如として訪れた。
青年の指示通り待機していたルオたち。
そこにいきなりアナウンスが鳴り響き、これから“ダンジョン間戦争”が始まることを告げられる。
そしてこのダンジョンの入り口。
その真横、左右両側に同じような穴が二つ、前触れなく現れたのだった。
「えっ、これ、え!? 先輩と梨愛先輩の計画ってことで、良いんですよね!?」
「た、多分……だよね?」
突然のことに不安な表情を浮かべる桜田と飯野。
その二人の視線を受け、レイネが素早く頷いた。
「ああ……隊長さんの言ってた“実験”ってやつだろう……――ほらっ」
レイネが指を差す方へ、全員が振り返る。
それは、入り口左右に出来た、二つの穴だった。
その片方、より大きな穴からゾロゾロと生き物が出現する。
「キキッ!!」
「キィィ、キッ!」
「うわっ!? えっ、おサルさん!? って、これ大丈夫なの、モンスターじゃ……」
飯野は見たことがない程腕が大きなサルの大群に驚きを隠せない。
が、意外にも。
これに落ち着いた反応を見せたのは、年下の桜田の方だった。
「あっ……これ、颯先輩とも一緒に見たことあります! 確か先輩のダンジョンの……」
桜田がそう評した通り、時間の経過とともに右に出来た穴からゾロゾロと増えていくそのサルモンスター。
それは青年が“手デカザル”と称している、アルラウネの治めるダンジョンのモンスター達だった。
彼らは秩序だって行動しては、レイネ・ルオの前に隊列をなす。
桜田や飯野を襲うなどということも一切ない。
「……つまり、コイツ等は今回のダンジョン攻略のお供って訳か」
レイネがモンスター達の様子を見て、そう判断する。
ブレードスパイダー――以前に赤星が、戦闘で変身するためのダメ押しをした、あの蜘蛛達も散見された。
「ボクとレイネお姉ちゃんに従ってる……って感じだね?」
「隊長さん……行く前にアタシらに任せて行っただろ? 多分それだな」
規律を守って、以降の指示を待つモンスター達。
それを見て、レイネは青年の去り際を思い出す。
“ルオ、レイネ、何かあった場合は二人の判断で動いてくれ”
確かにそう言っていた。
「うーん……これ以上に増えるってこともなければ、相手側のモンスターが襲ってくる、なんてこともないね。どうしよっか」
ルオは入り口のもう一方、左の小さめの穴。
そしてこれから挑むことになるダンジョン奥を交互に見ていた。
サルやスパイダー達が現れた方とは異なり、この左の穴から何かが現れる気配はない。
更に、これだけ大きな変化があったにも関わらず、敵ダンジョンに変わった様子が見られることもなかった。
「……よし。――ルオ、半分あたしが率いて、ちょっと攻略に行ってみる。ルオは隊長さんとリアを待っててくれるか?」
レイネは素早く頭の中で計算し、どう動くべきかを決断する。
特に危険があるわけでもないが、半分はルオに任せて桜田や飯野も含めて行動――待機させる方が無難だと考えた。
「うん、分かった! 気を付けてね?」
「ああ! ――おう、ゴッさん、手早く半分纏めてくれ。5分後に出発する」
青年が使役するゴブリンに指示を飛ばす。
「ギシッ!」
それを受け、その雌ゴブリンはサルの集団に更に指示を出していく。
サル達はそれに反抗したり不平不満を述べることもなく、当然のこととして従っていた。
そしてレイネが告げた通り5分程して――
「――うしっ、じゃあ行ってくる! チハヤ、ミヒロ、ちゃんとルオの言うことを聞いて待ってるんだぞ?」
「いやレイネさん!? 普通逆じゃないですか!? ルオちゃんが一番年下なんですけど!? 私達の方が庇護対象!?」
「うぅぅ……仕方ないよ知刃矢ちゃん。私達貧弱で、絶対ルオちゃんの足手まといなんだし……」
「えとえと! ボク、別にそんなこと思ってないよ! お姉さん達のこと、ちゃんと頼りにしてるから!」
そんな賑やかな雰囲気のまま、準備を終えていた。
ビシッと整列した6体×5つの群れ。
30体ものサルと5体のスパイダーの指揮を担うのは、雌ゴブリンだ。
近頃一回りも二回りもタフさがまして、顔つきに余裕や他の一般モンスターとは隔絶した強者のオーラが見え始めていた。
レイネは以前、戦争に従事していた頃を思い出し、懐かしく感じながらも。
「じゃあ行ってくる――」
初めてモンスターを指揮してのダンジョン攻略へと向かったのだった。
□◆□◆Another View End◆□◆□
次話の冒頭から中盤までにこの攻略戦を終わらせ、で、後半以降に織部さん達との話に戻ります。
ふぅぅ……。
攻略戦の話をちょっと丁寧に書こうかな、と思ったら1話じゃ全く終わらず……。
すいません、逆井さんのニュービキニアーマー姿を生贄に捧げますので許してください(目逸らし)




