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23.過去と異世界事情を知る……ってか奴隷少女、みんな重い過去持ちすぎてない?

づ、づかれた……。


最初主人公視点で、最後、第三者視点です。


殆どしないので、おかしなところがあればご報告お願いします。




『――ニイミ様が……買われた、のですか』



 織部の叫び声を聞きつけて。

 血相を変えて戻って来たサラが、そう口にした。



「……まあ、な」



 肯定した俺に対して、彼女は何とも言えない、そんな表情。



『……では“リヴィル”ちゃんの過去についても、お知りで?』


「ああいや、それは知らない」


『あれ? そうなんですか?』


 俺の返答に、意外だという反応を示す織部。


「……俺、相当嫌われてるっぽいし、知れる機会なんて皆無だったぞ」


『……そうですか』


 織部は俺の話には深く言及することはなく。

 しばし考え込んで、提案する。



『――では、一度切りましょうか。“メッセージ”を使って、概要は説明します』


「……そんなに長くなる話なのか」


 画面上の織部は何とも言い辛そうにしながら、隣のサラを見た。

 そのサラは、苦しそうに頷いた。

 


 そして、『これだけで誤解しないで欲しいんですが……』と前置きをしてから。

 重くなっていた口をゆっくり開いて、こう告げる――

   






『――リヴィルちゃんは……“マスター殺し”を犯した“ホムンクルス”なんです』






 

□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



〈被所有ダンジョンへのアピール率……100%。ダンジョンの捕獲に成功しました〉




『フヒッ、フヒヒッ……貴方の、ダンジョンとして……頑張る、ね?』



「……お前、さっき自分が発してた嬌声と違いあり過ぎだろ」



 織部との通信を一時切った後。

 メッセージが送られてくるまでの時間を利用して、俺は台座の間まで来ていた。

 

 そして今回はDPに未だ余裕があることもあって、ダンジョン捕獲2回目に挑戦したわけだが……。  


「ダンジョンってそういう前後の自己同一性を気にしない性質なの?」


『フ、フフフ……も、もう、あなた以外、見えない、よ?』


 反応に苦しむ無機物の色っぽい悲鳴を耳にした後にこうだ。

 全く会話ができている気がしない。


 ダンジョン何なのマジで……。



『……こ、これ、私が、できること、だから、他の子に、目を奪われ、ないでね?』




“①【魔力強化Lv.1】:500DP”

“②【魔力狂化Lv.1】:300DP”

“③【身体能力強化Lv.1】:550DP”

“④中級ジョブ≪狂人(バーサーカー)≫:7000DP”




「…………」


 俺は、このダンジョンの交換可能なリストを見せられ、更に冷や汗をかく。


 ……何でこんなヤンデレ仕様なの。

 本人(?)も言動が一々ヤンデレっぽいし。


 ってかダンジョンのヤンデレってなんだよ。 

 


「えーっと……≪狂人(バーサーカー)≫ってのは、具体的には、どんなジョブかわかるか?」



 俺がそう問いかけると、ダンジョンの雰囲気が一気にパァっと明るくなったように感じた。

 ……何、メンヘラ要素もあるの、このダンジョン?



『えっとね? 防御力を低くすればするほど、魔法とか、攻撃とか、の威力・効果がアップするの!!』


“防御力”ってのは、要するにステータスで言えば“タフ”の部分かね?


「へ~。なんかそれ以外に副作用とかってある?」


『副作用? ない、よ?』


 ふーん。

 それなら、使い方によっては良い働きしてくれるかもしれないな。


 リヴィルの件にしても、この先どう転ぶことになるか分からんし。

 

 俺がタンクだけでなく、普通にアタッカーとしても活躍できたら。

 ラティアの心労も幾らか減るだろう。



 

「それじゃあ、②以外を頼む」



 それに、ジョブを取得すること自体も、試しておきたい。

≪ダンジョンマスター≫や≪ダンジョン鑑定士≫は、称号に含まれているという処理だからな。



『う、うん!!――フ、フヘヘ……これで、私、は……他のメスより、貴方の役に、立てるね』



“メス”って……いやだから怖えよ。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



『――以下、こちらの異世界事情も含めて、少女“リヴィル”について記します』



 その件名から始まり。

 スキル交換後に送られてきた織部のメッセージは、長文に及んだ。


 DPにしてなんと56ポイント。



 リヴィル購入と、先ほどの交換だけで既に残りが69329ポイントになっていた。

 その中で56ポイントと聞くと少ないとも思えるが。


 いつもの織部の定期メッセージは多くとも5ポイント。

 なので軽くその10倍以上はいっているのだ。


 

 どれだけ複雑な事情なのかがそれだけで窺える。


 


「――さて、じゃあ読んでいきますか」



 台座の間の入口付近で、腰を下ろし。

 俺は少し気合を入れて、織部がしたためてくれたメッセージに、目を通し始めた。









  

 魔錬国(まれんごく)ゲルロ。

 それが、リヴィルの生まれた国。


 ――そして、この情報源であるサラの出身国でもある、と書いてあった。



 魔術と錬金術が盛んで、互いに切磋琢磨する形で国の発展に寄与してきた。


 ダンジョン攻略は生活と密接に関わっており。 

 この国のダンジョン攻略においても、互いに足りないところを補い合う。



「ダンジョン……奥が深いねぇ……」


 

 先ほど自分もそれを感じたばかりなので、結構、親近感が湧く。




 話は高難易度ダンジョンの攻略に関することに移る。

 高難易度のダンジョンには、決まってそれを守護する強いモンスター達が待ち構えている。


 特に恐れられているのが、ファンタジーのお馴染み――ドラゴンだ。

 その体は硬い硬い鱗に覆われ、ダメージを与えることですら一苦労する強敵中の強敵。


 難易度が高ければ高いほど、攻略した際のリターンも凄い。

 ゲルロも、他の国と同じく頭を悩ませた。

 



 そして……。

 魔術は他国も行っている“勇者召喚”というアプローチを。

 錬金術は“導士”というジョブを付与する道を、それぞれ模索。



 前者は中々上手くいかなかったが、後者において、希望の光が。







「――それが、“リヴィル”ってわけか……お?」





 後に注釈がつけられている。


『“導士”……1000年に1人、生まれるかどうかという極めて珍しいジョブ。人々を導く力を持つ――と言われていますが。要するにですね、シンプルに物凄く強いんです』



「へ~……まあ確かに。強そうな響きはするな」



『“導力(どうりょく)”と言われる特殊な生命エネルギーを体に宿せます。その“導力”を纏った攻撃はあらゆる守りを貫くそうですよ?』



「何それ……超便利な能力。羨ましい」


 そうして独り言を呟きつつ、読み進めていく。

 




 

 

 織部のような勇者は、特別なスキル・能力を持つ。

 一方の導士は、極めてシンプルに、導力を駆使してその体一つで、道を切り開いていく。

  

 この二つは対比される程に特殊で、優れたポテンシャルを持っている。

 

 

 そして……。





 ――ある錬金術師が、“導士”のジョブを備えたホムンクルス生成に、成功。




 

 人工的に“導士”ジョブを備えた者を生み出せる道筋の可能性を開く。



「……これが、“リヴィル”ってわけか」



 その後、担当者である錬金術師は国から褒章を与えられ、更なる研究開発に邁進する。


“導士”は言わば英雄の別名。

 そうした視点から、ホムンクルス生成に際して使われたのは過去の英雄・偉人達の遺品の欠片。

 例えごく一部の欠片と言えど、それを集めるのには金がかかった。


 でも、これで国の更なる後押しが確約された。

 高難易度ダンジョン攻略にも道筋が立つぞという、そんな時だった。



 ――当該成功例ホムンクルスが、生成者を殺害したのは。




「…………“マスター殺し”ねぇ……」




 というか、よくこんな詳細な情報を持っていたものだ。

 


「そこは、サラに感謝しないと、か……」


 


 その後、錬金術アプローチは完全に凍結。


 殺された錬金術師は、名の知れた実力者だった。

 やっかみもその分受けていたが、それでもしぶとく生き残っていたのだ。

 それだけ自己を守る術にも秀でていた。




 ――にもかかわらず、自らが生み出したホムンクルスに、殺されてしまったのだ。


「…………皮肉だなぁ」

 

 

 ここまで読んで、何となく全体像はつかめてきた。

 ただ――


「これだけだと、普通にマスター殺しちゃったってだけだ」


 サラや、おそらくその協力を仰がれた織部が助けようとすることと、ちょっと繋がらない。



「とすると……」



 ――やっぱり、何か事情があった、のかもな。




□◆□◆Another View ◆□◆□



「――さっ、食べましょう!!」


「…………」


 目の前に、大量の食事が並べられる。

 


 一度強く断ったはずなのに――



 リヴィルは、目の前で笑顔を浮かべるラティアに、不思議な感覚を覚えていた。

 先ほどから甲斐甲斐しく自分を世話しようとするこの少女に、変な接しやすさみたいなものを感じるのだ。



「遠慮しないでください! ご主人様は隣町までひとっ走りとおっしゃってましたから。食事は先に頂いていいようです」


 手を付けないことを、ラティアが勘違いしてそう告げてくる。



 ――多分、それ、嘘吐かれてると思うけど。


 

 そう思っても、リヴィルがそれを口にすることはない。

 でも、この目の前の少女の話を聞くことは、不思議と嫌な気分にはならなかった。


 



 リヴィルが生まれて、まだ2年。

 それでも、リヴィルは人を見る目には自信があった。


 何となく、見れば、分かる。


 



 ――この少女は、人を惹きつける魅力が、才能がある。





 ラティア本人がサキュバスだと自己紹介したが、そことはまた別に。


 スッと相手の心に入り込める。

 そしてそれを不快に思わせない。



「ご主人様以外の人の感想を聞けるのは新鮮です! 是非、率直な意見をお願いします!!」



 自分はこの少女の、もっと言うと自分のマスターにもなった人物に心無い言葉を浴びせた。

 にもかかわらず、こうして明るく、棘なく、自分に接してくる。



 


「――さあ!!」




 笑顔で、期待に満ちた目で見つめられ。

 謎のプレッシャーを、リヴィルは感じる。


 


「…………」




 本当は、そんなつもりはサラサラなかったのに。

 目の前に出された、蒸し鶏が乗ったご飯を、銀の食器で掬い、口へと運んだ。



「……うん、いいんじゃ、ないかな?」



 咀嚼(そしゃく)後、率直に、思ったことだけを口にした。

 するとラティアは大袈裟なくらいに大きな息を吐き。


「良かったですぅぅぅ……」


 その動作一つ一つが可愛らしい。

 自分にはないものだ。



 リヴィルは自分には殆ど表情がないことを自覚している。

 それで困ることもない。

 


 






「あれでリヴィルは足りるのですか? 小食ですね……」



 食後。

 あの一口以外手を付けなかったが、それでラティアが怒ることもなく。


 自然な流れで保存に適した処理をして、残り物を片付けていた。

 

 

「……ゴメン」



 申し訳なさを覚え。

 リヴィルはそう口にした。



「いいえ、良いんですよ? 私が無理に誘いましたから」



 嫌みでも何でもなく。

 ラティアが本当にそう思っていることが感じ取れた。 


 リヴィルは深く深く理解する。



 ――この子は、本当に自分のことを、心から思ってくれている。




 そして、その少女がこれまで笑顔で、自分らしく振舞えている事実が。

 嫌でももう一つのことを認識させる。  



 ――あの人も、凄く良い人、なんだろうな。


 目の前の少女が、心の底から信頼していることが伝わってくる。

 それを思うと、あんな態度をとったことを申し訳なく思う。

  


 でも、だからこそ。

 リヴィルはこうも思う。



 自分がとった行動は正解なのだと。

 

 

 ――これ以上、こんな良い人達に、迷惑を掛けたくない。






「――リヴィル、大丈夫ですか?」



「ッ!?」




 ラティアが、心配してリヴィルの顔を覗き込んでいた。

 思考に集中していたらしい。


 それで驚いた拍子に、異変が生じる。



 ラティアの顔に、別の顔が重なった。

 それは今まで無数に見送った、自分の同胞達の別れ際のもので――




『――ゴメンね……貴方に辛い役目を背負わせて』


『……何で、私は、生まれたの?』

 

『ねえ……死にたく、ないよ……』


『こんな思いするなら……生まれなければ良かった』


『――リヴィル……貴方は良いね、選ばれたんだから』



 

 全てが脳内で、繰り返し繰り返し、流される。

 自分以外のホムンクルスたちが、怨嗟の声となって、自分を縛り付ける。


 また、別の1ページが、リヴィルの脳内で再生された。


 

『――よし! よし!! これで量産化の目途がついた!! どんどん造るぞ!!』

 

 

 興奮した様子で自分に話しかけてきた男。

 その男の足元には、物言わぬ屍となった、同胞達がいた。

“導士”を宿していないことが分かった後、単純労働すら任せられないと判断された者達の末路。


 そして男は、それに気づきもせず、踏みつけすらしていた。





 ――何かが違う。何かがおかしい。何かを、なさなければならない。





 生まれてまだ間もないながらも、心が、体が、自分全てが。

 叫ぶようにして。

 そんな想いに導かれた。


 そうして気づいたら――




『……バカ、な』





 ――殺していた。




「――リヴィル!! リヴィル!!」



 ラティアの呼ぶ声も、リヴィルには届かない。

 今自分がいるのが現実か幻なのかも分からない。



『お前など……造らなければ、良かった……だが、唯では死なんぞ!?』


『折角買ってやったのに……こんなことになるなら、お前みたいな奴隷など、助けようとしなければ良かった!!』


『“導士”として生まれた癖に、それを使えない?――では私は何のために、貴様を買ったんだ!!』








「――あぁぁぁぁぁぁぁ!!」





 そんなリヴィルの叫び声と共に。

 黒い(もや)が、リヴィルから噴き出す。


 それは地獄からやって来た瘴気だと言われても頷ける程にドス黒かった。


 最初こそ不規則に漂っているだけだったが、やがて形を得ていく。



「これ、は……人?」

 


 警戒をしながらも状況の急激な変化に驚くラティア。

 そのラティアの言う通り、靄は人の姿となって、リヴィルの背後に控えるように漂った。


 もう少しで、完全な姿を得る――



「はぁぁ……はぁぁ……」



 ――と、思うと。

  

 リヴィルが荒いながらも呼吸を整えていく。

 そしてリヴィルの顔色が戻っていくに従い、靄もまた不規則に霧散していく。


 最後には、リヴィルの体へと吸い込まれるようにして、完全に消えてしまった。




「……ッ!! リヴィルッ!!」


 


「――来ないで!!」



 駆け寄ろうとしたラティアを、リヴィルが大きな声で、静止した。

 未だ乱れた呼吸を、何とか整え。



「…………ゴメン、でも見たでしょう? だから、あの人にも、言っといて」



 リヴィルは、ラティアの顔を見ないまま。


 


「――これ以上、私に関わろうとしないで。何なら、また売ってくれていいから」



 そう言って、自分にあてがわれた部屋へと戻っていった。



□◆□◆Another View End◆□◆□ 

この調子だと、後1話で何とか行けるかな……。

一応念のため2話ありうるとは思っておいてください。


感想の返しは……すいません。

やっぱり一度にまとめて行うことになりそうです。


読んではいるんです!!

別に返したくない感想があったから拗ねてるとかではないんです!!

本当に書くだけでクタクタで……。


本当、申し訳ないです……。



評価してくださった方が……おおっ!!

478人に!! シヌナヤ!!

ブックマークは4937件になってます!!


ありがとうございます、読者の皆さんからの、体を労わる励ましと受け取っておきます!


今後もご声援・ご愛読の方、よろしくお願いします!!

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[一言] どうせデレるんやろw
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