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231.え、参加すんの!?

お待たせしました。


ではどうぞ。



「ふぁぁぁ~……はふぅ」


『うわ、凄い欠伸(あくび)ですね新海君。昨日は寝不足ですか?』


「まあな……」



 織部の言葉に答えながら、チラリとラティアの様子を盗み見る。

 リヴィルとは違った意味で表情には出さないあのラティアが……。

 


「むぅぅ……」



 純粋に悔しそうに頬を膨らませていた。 

 拗ねたようにも見えるその仕草は、普段の大人びたラティアとは違いとても子供っぽく映る。



 ……まあギャップがあって、可愛くてよろしいんではないの?



『昨日はリヴィルさんもいたと思うんですが……』



 織部が自身の側にある画面奥、俺達の背後を覗き込むようにして尋ねてきた。


 待つ間の眠たい目を擦りながらもそれに答えようとすると、ルオが手を挙げて織部と話し始める。



「リヴィルお姉ちゃんは昨日、パイナップルジュースを飲んじゃってダウンしてるよ!」  


『へ? “パイナップルジュース”で……ダウン?』



 ルオがリヴィルの体質について、織部に教えている間。

 俺とラティアの目線が交差する。


 無言、だがしかし。

 膨大な情報の行き来が、そこにはあった。



“ご主人様……口惜しいですが、昨夜は完敗、です。まさかリヴィルを巻き込むとは……”



 そんな感じの悔しそうな視線を受け。

 俺は眠そうに目を擦る仕草で応じる。



“リヴィルが酔ってしまっては、付きっ切りで看病しないわけにはいかない。幸い――俺はラティアの料理のおかげで、目がしっかりと冴えていたからな? 眠らずにいられたよ”



 ギリッ……そんな歯ぎしりする音が聞こえたような気がした。

 ラティアのあんな表情、中々見ないぞ。



“隙を作るつもりが、寝られないことによって隙を見せなくなってしまった――策士策に溺れる、とは……このことですか”



 いや、まあその分俺は徹夜だから、今夜襲われたらマズいかもだけど……うん。


 でも多分そうなっても起きないだろうな、爆睡してる間に終わってるわ。


 ……勿論そんなことは露ほども表情に出さずにいるがな。

 



『――はへぇぇ……あのクールビューティーなリヴィルさんが柑橘系だけで“マスター……大ちゅき”とか言っちゃうんですか! 人は見かけによりませんね~』



 ルオからリヴィル講座を受けた織部の感想に、思わず心中でツッコミを入れる。


 リヴィルも多分、織部(おまえ)にだけは言われたくないだろうな……。


『もうカンナ様ったら……全く他人(ひと)のこと言えないのに、ご自分のことは棚に上げて』



 俺とサラの心が今、時空を超えてシンクロした。



「……それで? オリヴェアと妹さんはまだか? これ……さっきから二人待ちだろ?」



 こっちは柑橘酔いでダウンのリヴィルの他、レイネも自室にいる。

 だが妹さん達が来たと呼べば、直ぐに降りて来るはずだ。



『いや、他人事みたいに言ってますけど新海君も一応この原因の一人ですよ!?』


「はぁ? 何で俺のせいみたいな感じなの?」


『“血”ですよ! 新海君の“血”! 大変だったんですからね!?』



 そう言いつつ、織部は一人寸劇を始める。

 どうやらオリヴェアのモノマネらしい。


 ……いや顔凄いことになってるぞ、その絶頂の幸福に(とろ)けるような顔どうにかしろ。  



『――“あぁぁん! ダメ、いけませんわ! こんなの飲んだら、(わたくし)、絶対におかしくなっちゃいます! でも、これも信頼するルーネたっての頼み! これは仕方なく、仕方なくですわ!”』


 

 案外似てるのが何とも言えずイラっとさせる。

 ……いや、ちょっと寝不足だから怒りっぽいだけだ、うん。


 決して、織部とオリヴェアの相互相性の良さに頭痛を覚えてるとか、そんなんじゃないから。



『“ゴクッ……――アヒィィィィィ!? ダメ、ダメェェェ! 壊れりゅぅぅぅぅ!? わたくち、旦那しゃまの血が大しゅきなのぉぉぉぉ!”……ですよ!?』


「……いやお前、自分でその再現してて恥ずかしくないのか?」



 でも織部自身の口から“壊れりゅぅぅぅ!?”と頭痛い言葉が出てきても違和感ないのが、もうね……。


 ……ってか口の端から(よだれ)出てんぞ、お前がトリップして興奮してんじゃねえよ。

 


『何が恥ずかしいんですか! 立派にオリヴェアさんは壊れてみせたんですよ!?』


  

“立派に壊れて、それで恥ずかしいわけがない”って……言ってて自分で矛盾を感じませんか?

 ……ああそうですか、感じませんか。



 ……ええい、一々胸を張るな!

 張る胸も無い虚乳(きょにゅう)の癖に!



『あれ!? 何か新海君、いつにも増して辛辣(しんらつ)な雰囲気じゃありません!? 2割……いえ3割増しくらい!』



 そう受け取られてるってことは多分、2割は赤星を“ブレイブ”に引きずり込もうとしている分。


 そして残り1割は……俺の寝不足の分だぁぁぁ!!





 ……うん、スマン、八つ当たりになるから2割増しだけにしとく。  



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『う、うぅぅ……ま、まだ脚腰が……』


『しっかり、オリヴェア様!』


 

 ようやく来たと思ったら……。

 ……何で血を飲んだだけで、生まれたての小鹿みたいに脚プルプルしてんだよ。  


 どんだけ俺の血の影響、吸血鬼に対して凄ぇんだよ。



『……えっと、新海君。血液以外の体液でも媚薬的な効果が望めるか、興味ありません? 唾液か汗か送って下されば、被検体に心当たり、有るんですが……』


「スマン、サラ。ちょっと織部黙らせてくれる?」


 

 サラは申し訳なさそうな表情をしながら請け負ってくれた。

 ……いや、申し訳ないのはこっちだよ、いつもありがとうサラ。



『……はい。――さぁ~、カンナ様、しばらく私とオハナシしてましょうね~』


『ぎゃぁぁぁぁ!! サラが暗い笑顔してますぅぅぅ!? あっ、ダメ、ちょ、新海君、助け――』




 ふぅぅ、静かになった。



『え、えーっと……カンナちゃんはあれでいい、んですね、はい――では、今回私が“闇市(アンダーマーケット)”に潜入した報告をさせていただきます』

 

 

 オリヴェアの体調が良すぎて?悪くて?芳しくないからか。

 妹さんがこの場を取り仕切る。


 シルレやカズサさんはさっきの織部錯乱にも介入しなかったし、ここは静観ということだろう。



『……と言っても、当初の私の目的――姉さんは勿論、そこでは見つからなかったんですけどね?』


「フフッ……」



 妹さんのウィンクを受け、レイネが小さく笑みを浮かべる。

 二人は今まで会えなかった分を取り戻すかのように、簡単な仕草だけでの意思疎通の往来を何度もこなしていた。


 互いに別世界にいても通じ合う。

 これが以心伝心ってやつなんだろうな……。

 


『話が逸れました――“タルラ”様と私は二人の少数精鋭で潜入に成功。得ていた情報を元にして、主に奴隷オークションの商品が搬入されている付近を捜索しました』


『あそこを、二人で少数精鋭、か。まあタルラが付いているなら安全だったんだろうが……』


『ええ。話を聴くだけで背筋がヒヤッとしますね』



 シルレやカズサさんの言葉からして。

 四人目の五剣姫の少女は、実力面を相当に信頼されているらしい。

 

 実際に帰って来た妹さんも無事傷一つなくいる訳だし。



『内部は予想していた通り、警備も厳重で……タルラ様が目的とされていた少女――“ロトワ”様は見つかりませんでした』



 妹さんは悔しそうに告げた後、しかし直ぐに俯きかけた顔を上げる。



『ですが、分かったこともあります! やはり“ロトワ”様は“時”を操るとても特殊な能力をお持ちで、今回のオークションの目玉として出品されるということです!』


『ですか……』



 オリヴェアはそれを聞き、何とも言い辛い微妙な表情をしている。

 その心中を代弁するように説明してくれたのはシルレだった。



『オークションの目玉。とすると当日まで……他の商品(どれい)とは格別の、より厳重な牢に入れられるだろうな。それも簡単には見つかり辛い場所だろうさ』


 

 なるほど……。

 オークションに出品されると分かったこと自体は一歩前進。

 だが反面、手出しがし辛い場所に閉じ込められる、高い蓋然性があることをも意味する、と。


 うぅむ、確かに何とも言い辛い。



 


 前提として整理すると。


 その狐の少女、そもそも俺達、地球組が介入できる問題じゃない。

 なので、助ける・助けないは俺達が判断できることじゃないのだ。


 勿論、あの京都のダンジョンにある鏡で見た以上、何となく情も湧くし、助けたいという気持ちもある。


 だがここで間違ってはいけないのは、今異世界側の皆がその“ロトワ”という少女を助けようという方向に動いている理由。



『……ですので、オリヴェア様はじめ、他の五剣姫の皆様が兵を出すのが難しいことを念頭に置かれている、ということでした』



 妹さんの報告を耳にしながらも、頭を動かすことをやめない。

 


 ――要するに、“タルラ”という五剣姫の少女と協力関係を結びたいのだ。


 織部は織部の事情から早く異世界を救うためには、実力者たる五剣姫を一人でも多く味方につけたい。


 シルレやカズサさんは織部に協力する意味で、他の五剣姫も仲間にしたい。


 オリヴェアは元々、そのタルラと手を結んでいた。



 

 つまり、手出しができない俺達としては、どちらにしろ織部を援護するレベルで、その狐少女の救出に手を貸せばいいということだ。




『――つまり……実際にオークションに参加して、競り落とす、と?』


『え!? でもあそこって、タルラは参加できるの? ああでも……参加者は皆仮面を付けるっていうから、顔の方は心配ないのかもだけど……』



 シルレの確認や、カズサさんの口にした心配に妹さんは頷きでもって肯定する。



 裏の世界のオークションだから、きっと多額のお金をどうするかとか。

 あるいはもしバレてしまったら、とか。


 色々な懸念があるんだろう。



 俺達も同じように、漠然とした不安や心配事を思い浮かべながら聞いていた。



 ……そんな時だった――




『――え……“仮面”ですか!?』



 今まで画面枠外にいたはずの人物の声。

 しかも、何故か“仮面”というワードに溢れんばかりの喜び様を見せる。



 ……嘘、だろう?



 ――だが織部(やつ)は、ちゃんと現れた。



『何なら私がその“闇市”、参加してきましょうか!? それでオークションも出席しちゃいますよ!!』



 

もっとレイネとルーネを書いてあげたい。

なのに、なのに!


織部さんが悉く邪魔をするんだ!


クソッ、出番を減らそう減らそうと思っても、勝手に頭に出てきてしまう……!

これがブレイブの侵略か!?

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― 新着の感想 ―
[一言] 侵略ではありません 汚染です。 ニイミさんは速やかに全責任(いろんな意味で)を 取るべきです。 そして、早くケモミミの為にdp全部ぶっ込んで 購入して下さい
[良い点] う~ん、新海君の地雷回避能力が上がってるな~ つまり、もっと無茶してもいいってことか!
[一言] > 『うわ、凄い欠伸ですね新海君。昨日は寝不足ですか?』 ORB『さては昨夜はお楽しみでしたね?』 > 『――はへぇぇ……あのクールビューティーなリヴィルさんが柑橘系だけで“マスター……大…
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