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212.落ち着けぇぇぇ!!

お待たせしました。


本当はちょっと今日は休もうかな、とか考えてましたが、とりあえず少しだけでも進めることに。


もしかしたら明日は休むかも……。


とりあえずどうぞ。


「――とうっ!」


「あっ、おい逆井っ! ……はぁぁ」



 逆井は部屋に入るなり、俺のベッドへとダイブを決め込む。

 バフッと柔らかいマットに押し返され、逆井は満足そうに寝転がった。



「えへへ!……新海、良いベッド使ってんね……すんすん、ん? 何かラティアちゃんの匂いが――」


「おい、寝るなよ? 今日は泊まりじゃないんだろう?」



 足をパタパタさせて人のベッドを満喫している逆井に、そう注意をする。

 ……が、思わず視線をサッと逸らした。



 コイツ……短いスカート履いてるんだから、もうちょっと自分の挙動には気を付けろよ……。




「ん? ニシシッ、な~に、新海、アタシの下着、見たいの?」 

 



 ばぁろう。

 どうせ揶揄(からか)われてるだけだって分かってんだ。

 

 んなことで動揺なんかするか。



「んなことより、お前、その変装……どうにかなんないのか?」


 

 俺は努めて逆井の足付近は見ないようにし、その顔周りを指摘した。

 顔バレを防ぎたい程の人気スーパーアイドルだってのは分かってる。

 

 が、その丸いサングラスやどデカいマスク……かえって怪しまれないか?



「んも~だってしょうがないじゃん! かおりんにも厳しく言われてるんだから! それにさ、何か新海の家に行くって言ったら、3割増しで睨まれたし……」



 ……そりゃアイツだって忙しいんだからさ。

 遊びに行く感覚で“他の人の家に行ってくるんだ!”なんて軽く言われたらイラっともするだろう。




 そんな軽い雑談を交わしていると、ドアがノックされる。

 返事をすると、ルオの声が返って来た。



 逆井は少し慌てたように起き上がり、俺のベッドに腰かける。

 …………。

 

 まあいいけど。



「――ご主人、リアお姉さん、お菓子とジュース持ってきたよ!」



 ルオは器用に片手でお盆を支え、扉を開けて入って来た。



「おお、スマン」


 

 ルオからお盆を受け取り、逆井が取りやすいよう近くにある本棚の上に置いた。 

 

 1m程の高さしかないから、座ってても手に取れるだろう。



「今日は何か作戦会議なんだよね? カンナお姉さんを交えての!」



 ルオが興奮するように尋ねてくるのに反し、俺の心は憂鬱(ゆううつ)そのものだった。


 勿論これから織部との相談事ということで、気が乗らないのもある。

 ただ俺の気を重くしている、その最たる物はやはり赤星の件だ。



「ま、まあね~。ハヤちゃんとアタシと柑奈。皆一応は同級生ってことだから、ハヤちゃんのこと、何かいいアドバイスないかなって。ね、ね新海?」



 逆井の言っていることは全く持ってその通り。

 今日の集まった趣旨そのものだった。


 だがルオのことを意識しすぎてか、声が上ずったりしていて若干怪しさが出てしまっている。


 

「あのね、ご主人、後でお話終ってからでいいから、ボクもカンナお姉さんとリアお姉さんと話してもいいかな? 本当に、ただもっとお話をしたいってだけなんだけど……」


「えっ――」



 突然の申し出に一瞬、声が詰まる。

 が、不信感を抱かれてはならないと直ぐに持ち直す。



「あ、あぁ、うん。まあ、良いんじゃないか? 織部の方に聞いてみないと何とも言い辛いが……後で分かったらルオの部屋に行く、でいいか?」


「うん! あっ、でも――」



 な、何だ今度は!?

 何が出てくるかと身構えるも、特におかしなことでもなく。 



「もしかしたらラティアお姉ちゃんのお部屋にいるかもしれないから……」 


「何だ、そんなことか……分かった。いなかったら、ラティアの部屋まで行くから」



 そこまで受け答えをして、ようやくルオが満足したように笑顔になる。



「ありがとう! じゃ――」



 ルオが部屋を後にし、ドアが閉まる。

 そしてたっぷり10秒程の時間を待ち、ようやく安堵する。



「ふ、ふぅぅぅ……ルオちゃんは悪くないんだけど、でもいつもドキドキしちゃうな~」



 逆井は緊張で汗でもかいたのか、手を団扇(うちわ)のようにして自身を扇いでいた。



「ああ……織部が絡むと、ヒヤヒヤすることも多いしな……」



 俺も同感だというように、机から薄いノートを2冊引っ張ってくる。

 1つを自分で使い、ゆったりと上下させて自分に風を送る。



「ほれっ、使うか?」


「あんがとー……あっ!?」


 

 手を伸ばした拍子に、逆井の肘がガラスコップにぶつかる。

 丁度コップは俺の方へと倒れてきて……。


 ビシャッ。


 

「…………」



 ズボンの下まで染みて来た。

 ちべたい……。

 

 まあ、これが逆になって、逆井のラッキースケベを見るなんて展開にはならなくて良かった。

 ただでさえ赤星と気まずいのに、逆井とまで気まずくなったら目も当てられない。

 


「あっ、あ、ゴ、ゴメン新海! うわっ、濡れちゃった……えと、えと……ふ、拭くもの!」



 が、罪悪感でパニくったのか、逆井は何故か自分の上着を脱ぎだした。


 バ、バカッ、何やってんの!? 

 


「お、おい!?」


「ゴ、ゴメンね、今拭くから……あぁぁ、染みちゃってる……」



 逆井は上半身が下着姿になっていることなど全く気付いていないという感じで、自分の服を俺のズボンに当てようとして来た。


 本当に申し訳なさそうな表情で、こっちの方が罪悪感を覚える程だ。


 コイツ、ギャルで“細かいことなんて気にしませーん!”みたいな雰囲気のくせして。

 実際には滅茶苦茶にナイーブなんだよな……。




「いや逆井、ここ俺の部屋だから。俺が自分の着替え出せば済む話だから」


「え? ……あっ。ゴメン……全然気づかなかった……」


 

 それでまた自己嫌悪みたく落ち込む逆井。


 逆井のメンタルゥゥゥゥ……。

 


□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



『な、何ですかその状況は!? その“ハヤちゃん”さん、うらや――けしからなくないですか!?』



 織部さん、今“羨ましい”って言いかけました?

 赤星が意図せず変身してしまって、裸を晒してしまった状況を“羨ましい”って口に出そうになりませんでした?



「けしからんって言うか、今回のは完全に事故だと思うんだけどね~。でも流石にハヤちゃんも恥ずかしかったっポイよ?」



 先程まで落ち込んでいたが、織部の顔を見て持ち直した逆井が補足する。

 しかし、何故か織部はドンドンと論点がズレて行って……。



『恥ずかしいなんてもんじゃないです! 常時、24時間、365日、ドキドキと興奮と羞恥心が体から離れないんですよ!? 分かってますかその状況!?』


  

 何でお前が一番の熱量を持ってんだよ……。

 後さ、無意識にサラッと挟んだのかもしれないが、ドキドキと羞恥心と“興奮”ってなんだ。


 

「……その時の帰り以来、赤星と会っても、避けられることが多くてな。一体どうしたものかと思って今日の会合を設けて……」   



 そこまで話して、不意に言葉を切る。

 

 織部が何やら逆井へと、一方的に質問を浴びせていたからだ。



『梨愛っ、それは新海君が変身の主導権を持っているってことで、良いんですよね!?』


「え、えっと……うん、多分そうだと思う、けど……」


『新海君の気持ち一つで、公共の場でも変身してしまうかもしれないんですよね!?』


「え!? いや、うーんと……そう、かな?」


『ということは! 新海君に裸か着衣かの決定権を握られている、弱みを持たれている状況と同じ! と言っても過言ではないのでは!?』


 

 過言だよ。



「ま、まあ新海ならさ、別にハヤちゃんに悪いことするなんてないだろうしさ! そこはハヤちゃんも分かってるって、前言ってたよ?」


 

 逆井のフォローに今日初めて感謝の気持ちが湧いた。

 だが、そこまで言っても織部の熱は収まらなかったらしい……。 



『そんなことは百も承知です! 重要なのはその“シチュエーション”なんですよ!』

 

「また訳の分からん事を……」


「え、そうなん? でも何か柑奈がここまで言うんだから大事なことなんじゃ……」



 逆井ぃぃぃ!

 まだ間に合う、引き返せぇぇぇ!!



『お互い信頼し合っている者同士、その相手に自分の着衣の生殺与奪を握られている……これほどまでに興奮――ドキドキすることは無いでしょう!!』


 

 一瞬もう全部が面倒臭くなってしまった。

 このまま放っておこうかな、との考えが頭を過ぎる。


 が、そんな甘い考えの俺を叱咤(しった)する、もう一人の俺が。



 ――話の生殺与奪の権を、織部に握らせるなっ!!



 ハッとする。

 そうだ、このままだともっと面倒臭いことになるのは必定!



『何で、何で私の変身アイテムを私が持ってて、新海君が持っていないんですか!? 理不尽です! あんまりです!』


「意味がわからん! 理不尽と嘆きたいのはこっちだ! いい加減にしないと……サラに有ること無いことチクるぞ?」



 その一言で、全ては決した。

 織部は震えるようにして、首を嫌だ嫌だと何度も振る。

  


 危ねぇ、本当に面倒な方向に行きかけてたぜ……。



『そ、それだけは止めてください! サラは本当に容赦ないんです! あの子、新海君の前では良い子のフリして、実は絶対ドSなんですよ! お説教も長いし、行儀にも厳しいし、胸は大きいし――』



 最後の方、完全に私怨(しえん)じゃねぇか……。

 ってか普通にサラが織部のことを思って接している風にしか聞こえないが……あっ。



「か、柑奈っ、後ろ後ろッ!」



 逆井が気付いて、慌てたように織部の後ろを指差す。

 が、既に遅い。



『――そうですか……カンナ様から見たら、私はニイミ様の前では猫を被っている、ドSな胸デカエルフということなんですね……』


『え? あっ……サラ……』 



 織部は一瞬にして悟ったような表情に。

 さて、しばらく時間を置いた方が良さそうだな……。



「……逆井、休憩に入るようだ。ルオの持って来てくれたお菓子でも摘まんで待ってよう」


「え? えーっと……」


『待ってっ! 切らないでぇぇ! 行かないでくださいっ!! お願いします、私を見捨てないでくださいぃぃ!』 


『さっ、カンナ様、少しお説教の時間と参りましょうか』


『やっ、ダメ、あっ――』



 ブツッ。



 切れた。



 …………。



 

 今日の教訓は、サラを怒らせるのはやめた方がいいってことだな、うん。


 

次に織部さん側の話をメインに聞くことになる、かも……。

多分レイネの妹絡みの話ですかね。

なので3人目の五剣姫についてもそろそろ……かな?



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― 新着の感想 ―
[一言] 生殺与奪の権…ねぇ 一体何岡義勇さんなんだ…
[一言] 織部卿がその場に存在するだけで ヘンタイスキー粒子の濃度がえらいことに やはり、本物(イロモノ)はちがうね!ミ☆ ラティア様の部屋に行く。。。 それひゃくにじゅっぱー罠やん ルオ氏は無邪気…
[一言] > 私の変身アイテムを私が持ってて、新海君が〜 どさんこなラーメンパワーでメークアップすれば現状でもワンチャンある(ない)(だいぶギャグ)(写真撮りたい)
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