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210.家やダンジョンにご招待!

お待たせしました。


では、どうぞ!


「行けっ、そうだ、そこだ!!」



 子供が推しのヒーローを応援するみたいに、俺はお気楽な声を上げる。

 


「ギシィィ!」


「Giii,GiGii!!」



 背後から俺の声援を受けたからか、モンスター達の動きにも熱が入る。


 手デカザルの一撃を、硬さとタフさに定評のゴーさんが受け止めた。

 群れで行動するサル達は4体で一気に攻める。

 

 が、それでもゴーレムの壁を打ち崩すことはできないでいた。



「キィッ!?」


「ギシッ! ギシシィ……」

 


 その間に、ゴッさんが群れの頭との1対1を仕掛ける。

 数で不利な場合の二人の戦法は、常にこうだと決まっていた。


 

 腕の大きさにも関わらず俊敏に動くサル。

 が、ゴッさんはそれを上回る足さばきで相手を翻弄。


 見事に背後を取り、模擬戦のために用意した棍棒を叩きつける。

 脳天をヒット。


 

 ズザザァァっと地を滑る。

 


「キッ、キィッ――」



 手デカザルもそれだけでは終わらない。

 群れのボスとしての矜持(きょうじ)か、素早く立ち上がった。


 が、もう決着はついている……。



「Giiiiii!!」


 

 サルの真上に影が出来る。

 ゴーさんがその大きな足を上げていたのだ。

 

  

 さながらプレス機の真下に滑りこんでしまったかのように、一瞬にしてサルの顔が絶望に染まる。   



「ギシッ、ギシシッ!」



 ゴッさんのしてやったりといった満面の笑み。

 これを見越して、攻撃の方向まで調整していたのだ。


 

 地力の差もあったが、ゴッさんとゴーさんの連携勝ち、だな。




「――そこまで!! 勝者、“ゴッさん・ゴーさん”チーム!」



 あの岩石で出来た足がボスザルを踏み潰す前に、俺は終わりを告げた。

 

 




「ギシッ、ギシィィ!!」



 ゴッさんは3連戦終わりにも関わらず、まだまだ元気な様子を見せる。

 

 

「キィィ……キキィィ……」



 反対に手デカザルは落ち込んでいた。

 ボスのいる彼らのグループも合わせて、既に3チーム、計15体が敗北を喫していたからだ。



 過ごした時間が長いからか、審判役とか関係なく、普通にゴッさんやゴーさんチームを応援してたが……。



「まあ、そんなに落ち込むな。本来なら1回の戦闘で“5体”なんて制限はないんだから、今度はもっとフィールドも入れてセッティングするから、な?」


「キッ、キィ?」



“……励ましてくれてるのかい、(あん)ちゃん?”みたいな目を向けてくる。

 それに頷き返し、サル達のモチベーションも保ってやることに。



「よしっ、じゃあ次は蜘蛛型モンスターの皆さん準備を――」



 彼らとは戦闘を経ずにこのダンジョンをクリアしたためか、蜘蛛達に心持ち低姿勢で接する。



 木々で囲まれたこのフィールドで、蜘蛛達はワラワラと集まって来た。


 見た目こそ俺達の知っている蜘蛛そのものだが、その脚に特徴がある。

 体はサルより一回り小さいものの、彼らの細長い脚は全部が鋭利な刃物で出来ていた。


 糸も吐くが、肉弾戦も結構イケる口らしい。



「キッ、キィィイ!!」



 ボスザルの慌てたような合図で、サルの群れが血相を変えて離れだす。

 皆、ブレードスパイダー達を恐れていた。

 つまり、食物連鎖的にはサルより蜘蛛達の方が強いらしい。

 

 

 ……良かった、攻略の時、戦闘がサル達だけで。

 


 


 ――pipipi,pipipi……




「――っと、そうだ、もうそろそろ時間か……」



 セットしていたアラームが鳴ったことで、待ち合わせのことを思い出す。

 


「悪い、ちょっとこれから出るから、自主練か何かしといてくれ――」



 俺は彼らに謝りながら、一時その場を離れた。

 まあ直ぐに戻ってくることになるとは思うが……。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆ 



「はぁ、はぁ……っっ。ふぅぅ……」



 自宅から一番近い、あの廃神社跡に転移して。

 俺はせっせと家へ戻っていた。

 

 

 外は既に暗くなり、心地よい風が吹いている。

 

 もう夕飯時か……。

 少し空腹を感じながらも、家へと向かうことを最優先する。


 

 随分走っても、全く息切れを起こさない。

 

 去年の今頃じゃ、考えられない変化だ。

 ダンジョン攻略の成果かねぇぇ……。



 

 しばらく走り続けると、自宅が見えてきた。

 家の前には人影が3つ。

 


「…………あっ! 来た来た!」 



 真っ先に俺に気付き、一人が手を挙げた。



「悪い。遅れたか?」


  

 俺はその人物――逆井に向かって頭を下げる。 

 が、それに反応したのは他の二人――赤星と桜田だった。



「いや、全然。私達が早く到着しちゃっただけだから」


「そうです、あんまり気にしなくても大丈夫ですよ」


 

 二人にそう言ってもらい、ホッとする。

 一応は余裕を持てるよう、逆算してアラームを設定してたからな。

 間に合ってよかった。 


 

「うわっ、ちょ、ハヤちゃん!? 何でそうすんなりとヒロイン力の高いセリフが出てくんだし!? 何かまた伏兵力上げてる!?」


「え? は? いや、ちょっと何を言ってんの梨愛?」

 


 本当、逆井は何を騒いでんだか……。


 確かに、何かデートの待ち合わせでのセリフっぽくはあった。

 でも赤星も、別にそれを意識して言ってるわけでもないんだし、騒ぐ程のことじゃないだろうに……。


 


 

「良いから、とりあえず入れ。家の前だと目立つ」


「おおう、先輩、大胆ですね、今を時めくアイドルを3人もお持ち帰り――」


「……志木に有ること無いこと、吹き込もっかな……」


「――すいませんでした! ささっ、梨愛先輩、颯先輩! 何やってるんです、入りますよ!!」



 必死か。

 桜田……お前、本当に志木と何があったんだよ……。









「あっ、リヴィルちゃん、レイネちゃん! 今日はよろしくね」


「ん。颯も、よろしく」


「ああ、あたしたちこそな」



 中に入った赤星が、玄関で待っていた二人に気付く。

 リヴィルもレイネも、既に向かう準備は出来ていた。


 そして、留守番のラティアとルオもリビングから顔を出してくる。


 

「ご飯、大目に作っておきましたので。途中で食べてください」 



 ラティアから保冷バッグを渡された。

 ズシリとした重みを感じる。

 

 6人分だし、これ位はするか……。



「えへへ! おにぎり、ボクも沢山握ったよ!」 


「おっ、偉い偉い」

 

   

 肩に背負い直しながら、ルオの頭を撫でて褒めてやる。



「うぅぅ……ようやく纏まった日数のお休みですよ。明日から3日間、私は目一杯だらけるんです! レイネさんもまた遠慮せず来てくださいね?」


「ははっ、ああ。何も無ければまたお邪魔させてもらうよ」



 桜田とレイネの雑談を横目に、全員の用意が大丈夫か、再度確認する。


 


「ん~……ま、大丈夫じゃない? 言ってたあのダンジョンに行くだけでしょ?」


 

 逆井の言葉に頷きで返す。



「そうそう。あの赤星と会った時のダンジョンな」


「もう攻略しちゃったんだよね。凄いな、新海君たちは……」



 まあ、正確にはボスを一発で伸したのはレイネだけどな……。




「さっ、じゃあ行くぞー――ラティア、ルオ、行ってくる」


「はい。行ってらっしゃいませ」


「うん! ご主人も皆も、気を付けてね!」



 二人の見送りを受けながら、俺はDD――ダンジョンディスプレイの転移機能を使用した。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆

    


「へぇぇ……こんな感じだったんだ」


「綺麗なところですね……今までのダンジョン観が一気に覆りそうです」



 アルラウネの間――15層にまで来て、逆井達は揃って感嘆の声を上げる。



「……うん、やっぱり、ここからだと思う。何だか呼ばれた気がしたのは」



 中でも赤星は、俺達にはない特別な感情を再確認するように辺りを眺めていた。



 


「――で? 会って欲しい人がいるって言うから待ってたら、この子らは何なのよ!? 私、こう見えて暇ってわけじゃないのよ!」



 引き合わせたアルラウネは怒っている、というよりはこれから何が始まるのかと訝っている感じだった。 



「うわっ、しゃべった!」


「モン娘! モン娘ですよ梨愛先輩!!」


 

 桜田、お前意外に詳しいな。

 ただ念のため、一応軽い説明はしておくか……。  



 彼女がこのダンジョンの守護者であったり、特殊な勝利条件だったために勝っても消滅したりせずにいることなど。


 簡単にだがこのダンジョンについての説明をしておく。



「へぇぇ……じゃあ新海が今、このダンジョンの所有者ってことなん?」


「まあそういうことになるな」


「…………」 

 


 無言の赤星が少し気になるが……。

 まあとにかく。


 ゴッさんやゴーさん同様、モンスターでも敵ではない存在もいると受け入れてはくれたようだ。


 良かったな、という視線を向ける。

 しかし、アルラウネはプイっと顔を背けた。

 


「ぜ、全然嬉しくないし。別にそんなこと頼んでないのよ。あ、貴方のこともその……仕方なしなのよ? 別に、私、無理してダンジョンマスターになってって頼んだわけじゃないのよ?」


「……隊長さん、コイツこんなこと言ってんぞ? 大丈夫なのか?」



 そんなことを言うアルラウネを、レイネが胡散臭そうに指差してそう告げる。

 


「いや、レイネ……多分レイネと同じ症状だから、うん。マスターに聴かなくても大丈夫だと思うよ?」

 

「あぁぁ……なるほど。レイネさんも先輩大好きツンデレさんですからね……そう言われると納得です」

 

「なっ!? リヴィルもチハヤも! あ、あたしは別にツンデレなんかじゃねぇぇ! ってか隊長さん、違ぇからな!?」


 

 えぇぇぇ……。

 俺のことはともかく、ツンデレはツンデレでしょうに……。


 桜田も俺と同じように思ったのか、やれやれと首を振る。

 そして仕方ないなと言いたげに、極々簡単なエピソードを披露してくれた。



「……前、家に来た時に言ってたじゃないですか。“隊長さんのこと、嫌いじゃないのに、偶に素っ気なく当たっちまう……どうしたらいい?”って」


「へぇぇ……フフッ」



 うわぁぁ……リヴィル、良い笑顔してる。

 いじる相手を見つけたって感じだ。

 何かリヴィルの口から“メイド服”って単語が聞こえた気がするが……。

 



 ……うん、そっとしておこう。




「――えっとだな、赤星。それで、これが一応攻略した時に得た戦利品なんだが……」



 レイネの叫び声は一旦、空耳ということにして。

 風景を眺めていた赤星に話しかける。


 

 そして見て欲しいものがあると言って、あの“シルフの贈り物”として貰った、防具やダガー一式を取り出した。



 すると――



「ッ!? 新海君っ、それ、何か言ってない!?」


「え?」


 

 目の色を変えたような赤星に、即座には対応が出来ず呆けたような声が出る。

 そしてそんな予想外の反応は、赤星だけにとどまらなかった。



「――ちょっと! それ、共鳴してない!? もしかしてこの子、シルフ様が呼んでたんじゃ……」 



 血相を変えたアルラウネが叫ぶ。


 その言葉の正しさを示すように、俺が取り出した贈り物一式は、淡く黄緑色に発光し。

 そして赤星の登場を喜ぶかのようにその輝きを強めたのだった。

この話も長引かないと思います。

次で終われるはず。


そしてその次は多分、織部さん達、かな?


あんまり織部さん登場に間が空くと、私の中での織部さんが活躍を欲して暴れだすので、そろそろ出てもらわないと。

ああいや、放置プレイは放置プレイで相手を喜ばせる結果になるんですけど、その分また登場した時の反動が……。


……っていうか何言ってるんだろう、私は。

ちょっと疲れた作者の頭の中に、織部さんの侵攻が始まっているみたいです。


早めに休むことにします……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 伏兵力が1,000,000を超えると ヒロインにクラスチェンジします。 そして、その先にはラティア様と織部卿が待ってます (この二名はヒロインを超えた何か) ここからビキニアーマーの人が巻…
[気になる点] > 固さとタフさに定評のゴーさんが受け止めた。  固さより堅さのがいいような? いや誤差か? 対義語での比較をするとわかりやすいらしいが……『固い-緩い』『堅い-脆い』『硬い-軟い』だ…
[良い点] もうこれハヤちゃんがヒロインでいいよね!? [一言] 今までずっと内緒にしてたんですが 実はカンナさんが一番好きです
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