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202/416

196.広報のイベントに行ってみるか……。

お待たせしました。


ではどうぞ。


「はぁぁ……ラティア、スマン。俺、修学旅行前に謎の不審死で発見されるかもしれん」


「フフッ、ご主人様ったら、御冗談を」



 いや、結構マジなんだが……。

 学校帰りに合流したラティアと並んで歩きながら、俺はそんな憂鬱(ゆううつ)さが離れないでいた。



 あれから正式に、あの映像が動画投稿サイトでアップロードされた。

 その反響たるや凄い物で……。




“メイドアイドルw”


“『きゃぴ☆』って……大丈夫かこの人”


“『2X歳』……21歳と本当の年齢を言う以上にイタさを感じる”


“色んな意味で凄いw 将来の2大エース候補の自己紹介を完全に食いやがった”


“主人たる律氷ちゃんも笑ってる……彼女も道化を演じれて本望さ(笑)”



 などなど、本命たるダンジョン攻略そっちのけのコメントの嵐だった。


 ……しかもシイナさんのものだけが目立つ結果に。


 俺は改めて、彼女から送られてきた最後のメールの文面を思い出す。



『……コンド、オハナシ、シマショウネ?』



 これがもし脅迫文みたくポストに投函されていたら、俺は間違いなくしばらくの間、自分から姿をくらませていただろう。



「カオリ様からも確か、メールが沢山来てたんですよね?」



 ラティアの指摘に、更にげんなりとする。

 


「まあな……アイツ滅茶苦茶忙しいだろうに、そんだけ怒ってるってことかもな」



 動画の感想を送ったはいいが、関係ない内容の返信までもが、アップロードした後の今でもガンガン来るのだ。



『ねえ、貴方、白瀬さんが握手会でコスプレしたの、どう思う?』


 

 とか



『私も最近、コスプレ、してみようかな、と思ってたりして……』



 などなど。

 いや、“普段から白かおりんコスプレしてるんじゃ……”とは言えない、流石に。



 気怠げにそう呟くと、ラティアがクスッと笑う。


 ラティアはもう直ぐ温かくなって着れなくなると、ニットのセーター姿をしていた。


 あえて地味目のコーデにしているらしいが……。

 むしろ逆に、ラティア自身の素材の良さが際立ってしまってると感じる。

  


「どんな話題でも、怒ってる文面になっても。ご主人様と沢山メールをすることが出来て、嬉しいんですよきっと」


「えぇぇ……」



 本当かよ、と疑念をたっぷり(にじ)ませた声で応じる。

 相手はあの志木だぞ?



 普通におこおこかおりんが爆誕しているだけだと思うが……。



「フフッ……」



 しかし、ラティアは答えず、ただ笑うだけ。

 こうして何気ないやり取りを交わすこと自体に、本当の意味があると言うように……。



 そう言えば、私服姿のラティアと二人きりというのも久しぶりな気がする。


 

「…………」



 まあ、楽しそうなら良いけどさ。





「――で、ルオは先に行ってるんだよな?」


「あ、はい。先に入って、会場の様子を見てくれていると思います」


「そうか……空木には若干悪いことしたし、良さ気な席、空いているといいけど……」



 そう言って、一瞬立ち止まって端に寄り、メールを確認。

 未だルオからの返事は来ていない。


 

 次に、昨日の内に空木から送られていたメールを開く。




『お兄さん……学校あるんでしょう? 別に、無理して来なくてもいいから。お兄さんも、3年で忙しいだろうし、特に期待とか、してないからさ』



 と書いているものの、その末尾には『念のため』としてURLが載っていた。

 ……期待してないなら、そんな寂しそうな文面打つなよな。

 


 そしてそこを開くと別のホームページに。



“ダンジョン探索士補助者ってな~に? ――現役探索士アイドル シーク・ラヴに聞いてみよう!”



 イベント概要と共に、最寄り駅をはじめ、アクセス方法が記されていた。




「コチラの道で、大丈夫そうですか?」


「えーっと……多分合ってる。開催時間もまだ先だし、余裕だろう」

 

  

 元々の探索士制度が学生達をも対象としている以上、補助者についても学生が参加し、興味を持てるように考えられている。


 だから平日にも関わらず、イベントがあり、しかも時間が学校終わりでも来られるくらいに調整されていた。



「フフッ。ルオも楽しみにしていましたからね。急ぎましょうか」



 先に一人で向かってしまっているルオも、確かに気にはなる。

 が、ここ最近あまりメールの相手をしてやれなかった空木のことも、そこそこ気になっていた。


 ほら……俺、直近で二人の鬼を相手どらねばならない正念場に立たされてたしさ、うん。



「ああ、そうだな、行こうか」


「はい!」



 鼻歌すら始まりそうなくらい、足取り軽やかに運ぶラティアと共に、俺は会場へと向かった。  



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「――あっ! こっちこっち!」



 目深に帽子を被ったルオが立ち上がり、こちらへと手を振る。

 場所は県公園の一角、偶に演劇やヒーローイベントなどにも使われる外の開かれたホールだった。


 

 降りていく階段前で進行表を受け取り、ルオが待つ席へ進む。

 未だ空は明るいものの、舞台上には念のためか照明の準備もされていた。



「悪い悪い……一人で大丈夫だったか?」


「うん! 迷いかけたけど、親切な人達に教えてもらったよ?」


「親切な人達、ねぇぇ……」



 屈託ない笑顔でルオは言うが、俺はどうしてもそう単純に割り切ることは出来なかった。


 今も、チラホラと立ち上がったルオのお尻――ホットパンツや足に視線を向けてる奴がいるし。

  

 俺はルオの右、他の客と隣り合う可能性のある席へと腰を下ろす。

 ラティアを反対の席、つまり一番端へと座らせるための配慮だ。



「……ありがとうございます」


「……はて? 何のことやら」


「フフッ……前失礼しますね」



 ラティアはそう言って小さく笑い、俺の前を通る……っておい。

 ……さり気なくコケそうなフリして、俺の膝に手を付かないの。


 こんなところでボディータッチするな。



「…………」



 いや、意味深な視線もいいから。

“こんなところじゃなければ……良いのですか?”的な。



 はぁぁ……。







『――それでは、時間となりましたので、始めさせていただきたいと思います』



 しばらく待っていると、マイクを握った司会の女性から開会の宣言があった。

 人も大分集まっているようだが、俺の隣は未だ空席。



「ご主人、始まるね!」


「ああ、そうだな……」



 俺とラティアに挟まれたルオは、無邪気にイベントを待ちわびていた。

 ラティアはそんな様子を眺め、目を細めている。

 

 恰も休みの日、子供のために興味が無くてもヒーローショーへと出かけてきたみたいな……って!


 いやいや、関係ないから!



 ラティアと二人でルオを挟む席順になったのも、偶然だし!

 俺が他人と隣り合わせれば、ルオとラティアは純粋にイベントだけを楽しめるかなと思った、それ以外にないから!



「……フフッ」



 コラそこっ! 

 楽しむルオを慈しむように眺めてから、こっちに流し目送らない!!


 そう言うのはいいから、純粋にイベント楽しんどけ!



『――さて、早速本日のメインゲストの方々をお呼びしましょう。皆様、温かな声援と拍手でお出迎えください!』 



 司会の合図とともに、音響設備から音楽が流れる。

 歌は付いていなかったものの、メロディーからシーク・ラヴのセカンドシングルだと分かった。



「今日は空木だけじゃないんだよな?」


 

 入り口付近で渡された紙には『出演者:シーク・ラヴ3名 空木(うつぎ)美桜(みお) 他未定 元防衛省副大臣……』となっていた。


 

「うん! 親切な人が教えてくれたけど、ミヒロお姉さんと、リアお姉さんが来るんだって!」


「また親切な人か……」



 誰だよ……。


 まあ帽子を被ってカモフラージュしていても、やっぱルオはその容姿だけでも目を惹くよな……。


 笑顔を絶やさないその明るさや、純粋な可愛さは、とりわけ異性の関心を惹き付けてやまないだろう。


 ……戦闘能力的に、誘拐とかは逆にあり得ないだろうが、漠然と不安になって来た。



「ルオ、良いか? ただでさえルオは可愛くて目立つんだから、あんまり知らない人とはホイホイ話したらダメだぞ?」



 そう言って帽子の上からガシガシと頭を撫でてやる。

 怒っているわけではなく、心配しているということが伝わったのか。


 ルオは声を抑えながら頷いてくれる。

  


「う、うん……あっ、んんっ……」



 ……ん? 

 

 そんなにくすぐったかったか?




『――どうも~~~』


『おは――あっ、違った! こんにちは!!』


『こんちわ~~っす!』



 丁度、舞台袖から3人が登場。


 

「あっ……」   

     


 手を離し、自分の膝の上に戻す。

 ……と、隣から惜しむような呟きが漏れた、ように聞こえた。



 ただもうルオは前を向き、登場した3人を見ていたので真実は分からない。




急遽(きゅうきょ)梨愛(りあ)ちゃんと美洋(みひろ)さんが参加してくれることになったから、今日は休んでやろうかと本気で思っていました。空木(うつぎ)美桜(みお)です』



 会場全体から笑い声が上がる。

 いや、今日お前がメインで決まってたイベントじゃないのかよ……。



『ど、どうも! 以前に二人と出たドッキリ番組以来、何だか週1回でドッキリにかかってるので、このイベントも何かないかビクビクしながら参加してます。飯野(いいの)美洋です!』 


 

 これまた笑い声があちこちで起こる。

 ……おい、テレビ局さん、体張らせるのはダンジョン攻略だけにさせてあげてよ。    




『あはは! チーっス! 最近物凄く良いことがあって、テンションアゲアゲです! ただそれでさっき控え場所でツギミーに“梨愛ちゃん……ニヤニヤし過ぎ、キモイよ?”って言われました! 逆井梨愛です!』



 ……逆井、まだ織部との再会をプラスの意味で引きずってるのかよ。

 凄いな、織部パワー……。




『――はい、とても楽しい自己紹介ありがとうございました。では、早速イベントの方、進めてまいりたいと思います』



 進行を引き取った司会によって、ダンジョン探索士補助者についての啓蒙(けいもう)イベントが始まった。

頭痛が酷く長続きしていて……すいません、もしかしたら明日はお休みするかもしれません。


感想の返しについてはどちらにするにしても午後に時間を取ります。

ですのでもう少しお待ちください!


後、200部分超えて何もなかったら、何か積極的に動いてみようと考えてました。 

ですので、タグに何か小説大賞関連で増えてたらそういうことなのかと軽く流していただければ。


落ちたら……まあその時はその時ですね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 場面展開が早く、日常がどんどん進むのがとても心地好いです まだまだ掘り下げられそうな場面でもさらっとまとめて次話に持ち越さない。 連載特有のハラハラ感が無くて安心して読めます なのにキャ…
[一言] 実にラティア様は通常運転ですな。 もはや正妻の威厳を感じる今日この頃 ニイミさんと関わると美少女達は路を外して逝く ぼちぼち皆様の変身シーンを創造しなければいけないのでは? ※ニイミさん含…
[一言] > ラティアはもう直ぐ温かくなって着れなくなると、ニットのセーター姿をしていた。 > あえて地味目のコーデにしているらしいが……。 > むしろ逆に、ラティア自身の素材の良さが際立ってしまって…
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