閑話② ミニミニストーリーその3――眠りにつく彼女達……。
更新どうしようかな、でも今日5章を始めるのもちょっと気持ち的に……。
そんな感じで考えていて、とりあえず更新はすることに。
ただ本編じゃありませんので、読まなくても物語には支障は無いようにしています。
要するに閑話で、今までにちょびちょび書いていたミニミニストーリーの4人一気に見てみようバージョンです。
ラティア達が寝ている間、どういう感じなのかを書きました。
全部が全部、第三者視点です。
ではどうぞ。
青年を支える4人の少女達。
今夜は、その彼女達の眠っている様子を覗いてみよう。
まずはリヴィルとルオの部屋から……。
「すぅ……すぅ……」
リヴィルは穏やかな寝息を立てている。
とても寝相は良いようだ。
布団を敷いて、ルオと隣並んで眠っている。
……一癖も二癖もある少女らにしては、何もなさそうか?
「んっ……マスター……」
――っと! やはり何かはあるらしい。
寝言で、自らが慕う青年のことを呼ぶ。
そのリヴィルの耳には……ん?
ヘッドフォンが着けられているではないか。
音楽でも聴いて、リラックスしているのかな?
少しその中身を聴いてみよう――
『……リヴィル……愛、してる……好き、だ』
何と!
彼女は音楽ではなく、青年の声そのものを聴いていた!
『もう……我慢、でき、ない……一緒に、なろう?』
しかもよくよく聴いてみると……。
何やら声は、ブツ切りにしたものを繋ぎ合わせたようになっている。
それはそうだ。
リヴィルは今までの青年の会話を録音し。
そうしてそれらを編集し、こんな理想の音声データを作り上げたのだから。
「マス、ター……う、んん……」
……折角良い夢を見ているようだ。
邪魔しちゃ悪い。
さっ、次はルオの様子を見てみよう。
「むぅ……にゃむ……えへ、えへへ……ご主人……」
蕩けるような表情で寝言を呟くルオ。
勿論、同室の相手はヘッドフォンで自分だけの夢の中だ。
ルオもルオで、幸せな夢を楽しんでいた。
うーん……リヴィルと違って、特に何か機械を使っている様子はない。
やはりさっきのリヴィルだけが特殊だったのかな?
「うへ……うへへ~……ご主人、動いちゃ、ダメだよ……くすぐったい……」
……おや?
よく見てみると……。
ルオは自分の枕があるのに、それを布団の外へと放り投げてしまっている。
じゃあルオは枕無しで……いや。
ルオは自分の右腕を頭の下に敷いていた。
その右腕へ、愛おしそうに頭を擦り付けている。
「ご主人……腕……気持ちいい……」
――そう、ルオは自分の右腕にだけ【影絵】のストックを使っていた。
ただどうしても、主人たる青年の右腕は再現できないでいる。
なので、今ルオの右腕は、一番肉質が近しいシルレの右腕となっていた。
そして、ルオは青年がスポーツで使うアームカバーを右腕に纏っている。
青年のものを一体どこから調達したかは……知らない方が良さそうだ。
「ご主、人……ありが、とう……」
…………。
質感・匂い。
青年の腕枕を可能な限り再現しているとはいえ、ここはそっとしておいてあげよう。
さて、ではもう一つの部屋へと向かってみよう。
……何かあっても、無くても、気にし過ぎないように。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
こちらの部屋は、レイネとラティアが使っている部屋だ。
二人もリヴィルやルオと同じように、布団を敷いて仲良く並んで眠っている。
「……んんっ、ん……隊、長さん……」
一方で先程と違って、レイネは音楽プレイヤーもなければ自分を変える術も持っていない。
流石に……何も……無いんじゃないだろうか?
「……隊長さん、ぅぁ、ぁぁ、ダメッ……」
……何やらうわ言を繰り返している。
残念ながら少し調べてみる必要がありそうだ。
うーん……おっ。
レイネが寝返りを打った。
その拍子に、枕が少しずれたぞ!
この辺りを調べてみて……っ!!
――枕の下に、沢山の写真や紙があるではないか!
見てみよう!!
………………何と!?
写真に写っているのは彼女が“隊長さん”と呼んで慕う青年の姿ばかりではないか!!
しかもその多くは風呂上りや脱衣の時など、肌が見える場面で占められている。
「そん、な……いや、ダメ、天使と……隊長さん、で……なんて……」
紙の方も、ただの白紙じゃない。
何やら文章が書き連ねてある、読んでみよう……。
『隊:レイネ、俺じゃダメか? レイネのことが大好きなんだ! 愛してる!』
『あたし:そ、そんな! いきなり、そんなこと言われても……』
『隊:フフッ、そんなこと言って、俺の体に興味津々みたいじゃないか』
『あたし:ばっ、バカ! し、知らない! そんな意地悪な隊長さんなんて――』
これ以上は彼女のプライバシーに関わる。
読み進めるのは控えておこうか……。
とにかく。
レイネは、自分の好みの写真とシチュエーションを書き連ねた文章。
それらを枕の下に隠しているようだ。
“枕の下に好きな人の写真を置くと、夢に現れる”
そんな俗説もあるくらいだ、彼女を責めるのはよそう。
さあ、最後だ。
さて、ラティアは……っと。
「……すぅ……すぅ……」
……案外と普通に眠っているようだ。
特におかしな点も見当たらない。
彼女が変な夢を見ている、様子も見受けられないな……。
「んっ……すぅ……すぅ……」
寝返りを打ったが……ダメだ。
怪しい物が出てくると思ったんだが……。
クッ、これで終わりか?
「……ご主人、様……フフッ……」
!!
今、笑った?
ハッ!?
ラティアが引き寄せたのは薄い布団……ではない!!
――シーツだ!!
そしてこのシーツ、薄い水色をしていて、明らかに男物!!
チッ、そう言うことか!
現場はここじゃない、急ごう――
「――うぅぅ……うぁぁ……やめ、ラティア……何、で……」
……遅かったか。
彼女らの主人――青年がどこか断り切れないといった感じの寝言を呻いていた。
青年はベッドで眠っている。
そのシーツは、さっきラティアが抱きしめていた物と見た目・内容、全てにおいて同じもの。
つまり予備、スペアだ。
「……あぁ……やめ、それは……うぅ……」
青年が困惑した様子で寝言を呟いている理由、もうお分かりだろうか。
――つまり、ラティアはバレない様に普段から青年のベッドのシーツを取り換えていたのだ。
それだけなら単なる清潔好きで終わるが、勿論そうではない。
ラティアはそれを、1日自分の寝具として抱きしめながら睡眠をとる。
するとどうだろう?
そのシーツはラティアの甘く淫靡な匂いがこれでもかと染み付いてしまう。
それを次の日、ラティアは素知らぬ顔でまた元に戻しておく。
青年はそうと知らずに、その匂いに包まれたシーツで眠りにつくのだ。
異性を興奮させ、誘惑するフェロモンがムンムンと出ているサキュバスの。
調査はこの辺で切り上げよう。
……青年の犠牲は致し方ない。
これ以上はこっちも危険を伴う。
特に、淫魔の彼女に見つかると――
「――ウフフ。ご主人様との、時間を邪魔する不届き者は、どなた、ですか?」
ヒィィィィァァァァアアアア!?
……何か最後だけホラーっぽくなってしまった。




