162.また……今度は2枚も。
お待たせしました。
無理せず、書けるだけ書こうということで書いてます。
なので進行的には殆ど進んでません。
体調の様子を見ながら、ゆっくりやっていこうと思います。
ではどうぞ。
『いやぁぁ。白瀬さん、似合ってるね……ああ、ごめん! これ、セクハラかな!?』
『はは、流石に大丈夫じゃないですか? 私も似合ってると思うよ。その“犬”のコスプレ』
『そ、そうかしら……』
司会者の芸人さんや赤星に褒められ。
画面向こうの白瀬は照れて縮こまっている。
「むむ~。確かに、可愛いですし、中々にあざといチョイスです、アスカ様」
「……あざとい、のか?」
隣で唸りながら、ラティアはテレビを眺めていた。
視線でリヴィルに問うてみると、頷き返してくる。
「……まあ、あざといんじゃない? ね、レイネ」
「え? あ、えっと……さ、さぁ?」
レイネは何故か目を泳がせながら答えをはぐらかせた。
番組が進んでいったので、会話はそこで一旦終わったものの。
よくよくレイネの視線を追ってみると、どうやら白瀬のコスプレ姿を凝視しているらしい。
ぼーっとしたまま白瀬の可愛らしい姿や、フリフリと揺れる尻尾に目が吸い付けられている。
……ゆるゆりしてるの?
「可愛いね、アスカお姉さん。動物のコスプレ、ボクもやってみたいな……ね、レイネお姉ちゃんもそう思うでしょ?」
「あぁ……そうだな……コスプレ、可愛いな……――えっ!? ああ、いや、あたしは別に、ぜっ、全然そんなこと思ってないからな! うん!」
……コスプレしたかっただけかーい。
って言うか、それで隠せたと思っているのだろうか。
ほぼほぼ自供してるやん。
『――では、今週はここらでお別れです、と、その前に! 赤星さん、お願いね』
番組も既に終わりに差し掛かっていた。
以前見た時は赤星と一緒に見ていたのに。
今度はその赤星が画面で告知をしている。
それが何だかとても不思議な気分だった。
『ホームページでも確認できます。〇月〇日、私達“シーク・ラヴ”初の握手会が開催されることになりました。皆さん、是非来てくださいね? あ、ほらっ、白瀬さんも』
『当日、勿論私もいますから! 今日みたいなクイズの罰ゲームとかじゃなく、普通にコスプレもするかもしれません! 会場に来てくれないと、見れないかもしれませんよ? 来てね!』
白瀬は犬のコスプレのまま、赤星と共に上手く告知をこなしていた。
スタッフロールを眺めながら、白瀬の恰好について思考する。
……いや、別に見惚れてたとか、そう言うことではなく。
上手い手だと思った。
白瀬自身は俺の知る限り、コスプレ趣味を公表はしていなかったと思う。
コソコソと隠れながら自分の生き甲斐を楽しむのは窮屈だったはずだ。
一方で、一気にあんな過激なコスプレをしていると世間に告げるのも、それはそれで勇気がいる。
だから、こうして軽めのコスプレをする姿を見せることで、認識の間を埋めていこうということじゃないだろうか。
世間が白瀬をそういう人物なのだと少しずつ理解してけば、白瀬もグッと楽になるだろう。
「ふぅぅ……じゃあ、俺自分の部屋に戻ってるから」
「あ、はい。分かりました」
ラティアの返事を背に、俺は自室へと向かう。
そして部屋に入り、ベッドにボスンッと倒れ込んだ。
「あのダンジョン攻略で、何かしら感じる部分があったのかな……」
俺は起き上がり、勉強机に向かう。
その引き出しから、1通の封筒を取り出した。
今日届いて、既に一度下で皆がいる時に開けていたものだ。
再び開封し、中身を出す。
メモ用紙が一枚。
そして、とても見覚えがある形状のカードが2枚。
「…………」
何とも言えぬ微妙な気分で、それらを眺める。
『飯野美洋公式ファンクラブ会員番号:0 新海陽翔』
そのカードに映った飯野さんもまた、コスプレをしていた。
牛をイメージしたコスプレだろう。
白黒の牛柄をあしらったビキニに始まり。
アームカバーやソックスも身に着けてポーズを取っている。
胸の大きさが際立つのが恥ずかしいのか、両腕で胸を隠すように抱えている。
……が、隠し切れていないのが、かえってその凶悪な程の大きさを強調していた。
肌の出るだろう衣装を、自分で選んだんじゃないのだろうか……。
「……いや、飯野さんはまだいい」
何だかんだ“送るから”みたいなことを言っていたから。
「問題は……」
俺はメモ用紙を見る。
そこには女の子らしい几帳面な字で“私の覚悟を示す……その一端だから”とだけ書かれていた。
何ともいえない感情を抱きつつ、視線をもう一枚のカードに移した。
『白瀬飛鳥公式ファンクラブ会員番号:0 新海陽翔』
「何でや……」
色々な思いを含んだ一言だった。
この白瀬も、例に漏れずコスプレをしている。
ただ、このコスプレがかなり曲者で……。
「何故に……何故に“サキュバス”を選んだ」
特注だろうか、正にラティアが着るようなザ・サキュバスという衣装だった。
胸元に大きな穴が開いた黒のトップス。
アンダーも生地面積がこれでもかと小さく作られている。
尻尾や耳などもちゃんと装着されており、その本気度が窺えた。
「……これ、そう言うセクシー路線じゃないとダメみたいな決まりでもあんのかね」
多少恥ずかしそうにしながらも、カードの白瀬は大きく股を開く堂々とした座りをしている。
お腹につけたシールだろうか、淫靡な紋章とも相俟って、嫌でもムラムラさせられた。
……手強い。
「…………」
溜息をつきながら、仕方なく二枚を財布の中に仕舞い込む。
既に一度皆がいる前で開封しているので、気にしない方がいいのかもしれない。
それでも、これを……特に白瀬の物を。
ラティアの前でもう一度見る勇気はなかった。
「どうなるか……全く分からん」
予測がつかないだけに、自分から地雷を踏みに行くこともあるまい。
……だ、大丈夫だよね?
ヤバい、ちょっと怖くなってきた。
こうなってくると、既に一度だけでも、ラティアに会員カードを見せてしまっているのが悔やまれる。
あの時は特に何でも無さそうにしてたけど。
これが変な方向へと行くきっかけにならなければいいが……。
以下、読まなくても大丈夫です。
――――
とあるお昼休み。
2人はテレビゲームをしていた。
RPG要素の混じったボードゲームだ。
「――マスター、実はニーソックスよりも網タイツの方が好きっぽいんだよね」
「むむっ!」
リヴィルの一言に、ラティアの手元が狂う。
思考もかき乱され、どうすべきかを迷う。
押し式のタイマーは残り時間15秒。
自らのターンが残り僅かだということを示していた。
二人でこのゲームをやる時の自主ルール。
制限時間以内に行動を選択できなければ『何もしない』を選ばねばならないというものだった。
「くっ……仕方ありません!」
ラティアは“特技”選択を諦め、コマンド内にある“サイコロを振る”を選ぶ。
サイコロの目は3。
ゲーム内のラティアのキャラが移動。
「あぁぁ! 『モンスターの大群に襲われる』! 1ターン休みに……」
「フフッ、ラティア。まだまだ甘いね」
ラティアの不幸を傍目に、リヴィルは自分のターンを進めた。
「……ご主人様、スラッとした体形も好きですが実は豊満な体つきの方が好みらしいんです」
ラティアとリヴィルはこのゲームをただ楽しむだけでなく。
判断力・思考力を養うためのものとしても積極的に遊んでいた。
なので相手のターン時。
相手の思考を乱す発言を一つ、行うことが出来た。
「……へぇぇ」
一瞬、リヴィルは手を止め。
しかし、冷静に考える時間を取ってコマンドを選択。
『必ず6が出る』という“特技”で、超プラスマスに狙って止まることに成功した。
「ん。『所持金が3倍』か……こんなもんかな」
「うぅぅ……差がまた開いてしまいました……1ターンお休みは大きいです」
1ターン休みの場合、自主ルールで相手の思考タイムが15秒増える。
それもあって、リヴィルはラティアの妨害に心を乱すことなく冷静に選択ができたのだった。
その日。
妨害のための“主人は実は……”ストックの質が悪かったのもあり、リヴィルがラティアを資産トリプルスコアで下す結果に終わった。
そして緊張感を持たせるため、負けた方は罰ゲームとして……。
「――あ、あの……ご主人様! 実は、私! ご主人様がいない間、ご主人様の部屋の椅子に、下着姿で腰かけてしまいました!」
帰って来た主人に恥ずかしい秘密を一つ、暴露するのだった。
――――
ゲーム編も残り1話。
次はリヴィルとルオですね……。
また間隔が空くかもしれません。
期待せず、ゆるりとお待ちください。




