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160.ラティア達のいない、初めてのボス戦!

お待たせしました。


ボス戦です。


開始直後、第三者視点に切り替わります。

途中でまた主人公視点に戻ります。


分かるようにはしているつもりですが、お気を付けください。


ではどうぞ。



 ボスの間特有の厳粛な雰囲気。

 俺とレイネは特に気負うことなく、来るべき時を待つ。



「やっぱり不思議だよね~。入った時は何もいないのに、いきなりグワっと来るし」



 逆井は同じく緊張した様子もなく、いつも通りの調子で広間を見渡していた。

 こうしてどっしりと構え、実力も一番ついてきただろう逆井が、何だかかなり頼もしく思える。



「ヒィッ! いきなり来るんですか!? お化けですか、それとも未来人みたいに!?」


「ちょっと、飯野さん! 良く分からない怖がり方で脅かさないでよ!」


「うーん……流石に緊張するわね~……この後の晩御飯、食べられるかしら」

   


 流石に白瀬たちは初めてのボス戦とあってか。

 それぞれ顔が強張り、肩に力も入っているように見える。


 ……いや、逸見さんは何かいつも通り、ぽわわ~んとしてるかな。



「大丈夫ですよ! 油断はダメですが、過剰に怯える必要はありません! ねっ、先輩?」



 皆を、とりわけ白瀬たちを鼓舞するように、桜田は明るく告げる。

 その桜田に呼応するように逆井も笑顔を浮かべた。 

 


「ニシシ、大丈夫っしょ。しらすん達は初めてだから、無理せずいてくれたら、それだけでいいから。ね、新海?」 



 両者ともに良いこと言ってるのに。

 何で最後の締めを俺に言わそうとすんのかね……。




「ああ。とにかくパニくるな。後は臨機応変にレイネと俺で状況は整えるから。なっ、レイネ?」


 

 サラッとレイネにバトンを渡す。


 自分に振られるとは思ってなかったらしい。 

 ビックリして可愛らしく声が裏返ってしまう。  

 


「えっ!? あ、いや、えっと……もう!! 隊長さんのバカッ! そういうの、あたしに振んな!」



 ぷんすかと怒る姿は微笑ましく。

 皆がその姿を見て笑い声をあげた。



 白瀬たちの肩からも、いい具合に力が抜けたように思う。




 ――さぁ、来い!




 そして1分ほど待機した後。

 無風のはずの室内で、風が俺の全身を撫でた。


 鳥肌が立ち、何かが到来する前兆を敏感に感じ取る。



「! 来るぞッ!」




 今まではリヴィルが一番先に感じ取って来た、ボス出現の瞬間。

 今回は俺が最初だったらしい。



 全員が構えるかどうかという時に、広間全体が、光に包まれた。



 光は一瞬でその輝きを閉じる。

 


 一つ、それまでには無かった、大きな存在を知覚する。



「――敵は“1体”だ!!」


「お前ら、散るぞっ!!」



 真っ先に状況を把握したレイネが叫び。

 それに被せるようにして、俺も指示を飛ばす。



 



「――Gruuuu,Graaaaaaaaaa!!」 

   



 

 咆哮(ほうこう)

 耳が痛くなるくらいの大声が、ビリビリと空気を震わせる。

 

 

 人の如く二本足で立った存在。

 そして、同じく腕が二本。


 右手の爪が長く伸び、鋭い刃が指の本数分あるように思わせる。




「――“リザードマン”の亜種だっ!!」



 3mを超す巨体を差して、レイネがそう叫ぶのが聞こえた。




 蜥蜴人(リザードマン)とのボス戦が、始まった。



□◆□◆Another View ◆□◆□




「――っらぁ!! しぃッ! サァッ!」



 リザードマンとのボス戦が始まって、1分が経った。

 当初の複数vs複数という想定は外れたものの。


 

 戦闘はレイネ達の一方的な展開で進められていた。

 


 正面は彼女の主人一人が務め。

 他6人はそれぞれ背後か側面から攻撃を仕掛けていた。



「すっご、新海……新海って、あんな強かったっけ……」



 レイネと共に背後を担当する逆井が、ただただ驚きを口にする。

 彼女の槍による払い、突き、切りはどれも鋭く、実際に小さくないダメージを与えていた。



「――【不意打ち】っ! せぇぁ! ッらぁあ!!」



 レイネは常に意識外であるバックから攻められる利点を、最大限に発揮。

 双剣を駆使し、美しい舞のように次々と傷を刻んでいく。


 逆井と共に、パーティーの攻撃の要として大いに活躍していた。


 だが、そんな二人をしても――




「うらぁぁ!! オラオラッ、サァッ!」



 たった一人、正面で相対す青年と比べると、(かす)んでしまう。

   

 


 ――隊長さん、ほぼ一人でボスを抑え込んでんじゃねえか。



 

 レイネは更に激しく双剣を振るいながらも、主人の戦いに目を見張る。

 それほどまでに、青年の戦い振りは凄まじかった。


 


「GRAAAAA!!」


「うるせぇぇ!! 叫ぶだけで、笑いがとれると、思ってんじゃねぇ!! 芸人さんだってな、体張ってんだ! サァッ!」



 巨体を誇るリザードマンの拳を、時に全身で受け。

 長い爪による鋭い刃を、時に紙一重でかわし。



 そして肉弾で殴り蹴るして、青年は着実にボスへとダメージを与えていた。

 

 リザードマンが青年を無視できないのは、彼の【敵意喚起(ヘイトパフューム)】による効果だけではない。



 明確に、青年ただ一人を。

 自己の生存の脅威だと見做(みな)した、見做さざるを得なかったのだ。 




「GR,GRUUUAAA!!」


「おっと! おい、360度縄跳び来んぞ! サァッ!」



 リザードマンが何か溜めに入ったと見るや。

 青年から全員へと即座に声が飛ぶ。


 

 彼の言葉通り、リザードマンがその後、一回転した。

 それに合わせて、長い尻尾も回る。


 恰もリザードマンを軸としてバーが一周する仕掛けのように。




 青年の指示もあって、全員がタイミングを合わせ、それを回避。


 一度目は間に合わなかった者もいたが。

 今回は伏せるなり、飛ぶなりしてその攻撃を避け切った。



「へっへっへ。必死に必殺ゲージ溜めたところ、空振りだったな! ご苦労様っ! サァッ!」 


 再び正対した青年から、掛け声と共に重い拳が入る。

 


「ちょっ! 新海ッ! 引き付けてくれるのは、助かるけどー! その卓球っぽい声、叫びすぎぃぃ!」



 逆井の声を、青年は笑顔でスルー。

 だが、それでよかった。


 そんな冗談みたいなやり取りを交わす余裕がある。

 それだけ彼らはボスを圧倒していたのだ。


  

 

 ボス戦は、確実に終わりを迎えつつある。


 ――そう、思っていた。



□◆□◆Another View End◆□◆□




「っしゃぁぁあ! おらっ、うらぁぁ!!」



 ――うん、本当にこのまま終わりそう!



 あまりに調子良すぎるから逆にフラグ立ててみたけど……。

 ごめん、やっぱ特になんもなさそう!




 ほんと、ラティア達がいないから、最初はどうなるかと思ったが。

 何かもう(みなぎ)る全能感が凄い。



 原因は多分称号だろう。



 ミミックのボス戦後に貰ったあれだ。



「やぁっ! ――知刃矢ちゃん!」


「はい、六花さん、サポートお願いします!」

 


 ボスの左手――俺の右側に布陣する桜田と六花さんが見えた。


 六花さんが鞭を駆使して、相手の攻撃を牽制。

 その間にモーションが大きいハンマーで、桜田が攻撃するという構成だ。



「――GR,GRRRR!」 

   


 叫び声をあげ、右手の爪を高く振り上げる。

 


「させるっ、かっ!」



 称号〔枠外者に強き者〕、そしてそこから得られたジョブと効能が体を昂らせる。

 明らかにリザードマンが強者だと分かっても、≪強者狩り(ジャイアントキリング)≫のおかげで、一切怯えが湧かない。


 それどころか、危ない薬でもキメたのかというくらいテンションが上がって上がって仕方がない。



「うらっ!――」



 上昇した身体能力に任せ、リザードマンの膝を足場に跳ね。 

 そして爪の付け根を思いっきり蹴飛ばす。



 足にジーンとした痺れが走る。

 だが、これで右手は大きく逸れた。



「――やれっ!」



 俺から見てリザードマンの左に位置する白瀬、そして飯野さんに声を飛ばす。



「っ!! 飯野さん、サポートするわ!」


「はっ、はい! ――やぁぁぁ!!」



 チェーンソーを携えた白瀬が飯野さんの前を行く。

 俺の蹴りを受け、降りてきた爪の付け根へと狙いを定めた。



「はぁぁぁ!!」



 音を鳴らして駆動する刃が、鱗の薄い皮膚に、直接切り込む。

 そしてその上から――



「てぇいやぁ!!」




 ダメ押しとばかりに、飯野さんが斧を振り下ろした。

 大きく振りかぶった斧は、ドスンッと大きな音を立て。


 白瀬によって削られた肉に食い込み、そして断った。





「GYAAAAAAAAA――」



 俺だけでなく、レイネや逆井の猛攻で既に満身創痍。

 一部とはいえ、身体の部位の切断に堪らず悲鳴が上がる。



 その際、大きく口が開いて――




「これで、終わりだ――」 




 再びリザードマンの体を足場にして跳躍する。


 

 開かれた口の前まで跳んだ。



 ゴーレムをも溶かしたその灼熱(しゃくねつ)。 

 これで沈め――




「【業火】ッ!!」 




 手から放たれた炎は、その口に逃さず吸い込まれていった。


 ボス戦で、相手は曲がりなりにも龍と関係あるモンスター。


 リザードマンから放たれてもおかしくない熱量の炎。

 太陽を付近で撮影したような、燃え盛る大火。  



 それが余さず全て、リザードマンの体内を焼き尽くす。




「GYAAAAAAA――」




 声にならない声。

 苦しみ悶えることもままならない様な悲鳴だった。



 数秒後、お腹が一気に膨らんだかと思うと。

 


「GRR――」



 膨らみきった風船のように、ボカンッと爆発した。

 そしてそれを皮切りに、口、喉、腕、裂けた腹。

 

 あらゆる体の部位が破裂し、飲み込まれた火炎が漏れ飛び出した。





「ふぅぅ……」

   


 

 数十秒後。


 火の勢いが弱まり。 

 その頃にはリザードマンも、元の姿を保っておらず。




「これで終わり、かな?」



 奴が動かないのを確認し。

 俺は一つ、息を吐いた。




 ボス戦は、俺達の快勝で幕を閉じたのだった。

 

すいません、本編で力尽きました。

感想の返しはまた午後以降にさせてください。


ミニミニストーリーも本当は書くつもりだったんですが……。

申し訳ない、次回以降で……。



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― 新着の感想 ―
[一言] 本人としては弱いと感じてるけど周りからの評価に気付かないのが新海って感じ。いい主人公や
[一言]  なんだかんだで新海さんも強くなってるんだなと。 > 「ちょっ! 新海ッ! 引き付けてくれるのは、助かるけどー! その卓球っぽい声、叫びすぎぃぃ!」  口でクソを垂れる前と後に付ける文言か…
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