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146.ぎゃぁぁぁぁ!

お待たせしました。


ではどうぞ!



「……ふぅぅ。とりあえずは一安心だな」



 一度スマホから顔を上げ、ホッと息を吐く。

 通信を繋ぐまでの、ちょっとした時間潰しだった。


 

 見ていたのはネットの掲示板だ。

 


 一昨日のあの番組の件。

 意外に炎上とかはしておらず、スペシャルはかなり好評だったようだ。


 ただ後半のお父さんとの対談のインパクトのために、ゲストのRaysが食われてしまった感じになっていたが。




「ただ……この予想は、どう反応すればいいのか……」




 もう一度スマホ画面に視線を落とし、書かれているコメントを拾い読んでいく。



“パパんの健康が心配”


“あれ……マジでショック受けた顔だったな”


“これで皇グループの経営が傾いたら、原因は直ぐに分かるし、立て直しは意外に楽でいい”


“ところで、皆、会員番号0って、誰だと思う? 律氷ちゃん「他の男性の方に」って言ってたけど”


“今までも予想で何スレも消費されたが……やっぱ大本命は律氷たんのじいじだな”


“あの人か……あれが相手ならパパんも強くは言えんだろうな”



「皇さんのお爺さん、ねぇぇ……」



 皇グループの現会長で、要するに律志さんの父親、皇さんのお爺さんということになる。


 俺は自分の財布に入れてあるそのカードを取り出し。

 何ともいえない気分でそれを眺めた。

 


「今後……財布は無暗に落とせないな」 


  

 そこには、まあちょっと普通では見られないような姿の皇さんが映っている。

 いや、これが無かったとしても、財布はそうそう落としていい物じゃないが。



 でもどこから知られるか分からないからな。

 用心しないと……。




「ふーん……まあ、そう思っててくれる分には、俺は良いけど」



 更に書いてあるコメントを流し読んで、胸の内で感想を呟いていく。



“結構経営に関してはバチバチやってるらしいよ? 会長と社長”


“親子でも、そうしてちゃんと会社の舵取りどうするか遠慮なく話し合ってくれるから、むしろステークホルダーは安心できる”


“律氷ちゃんのあの申し訳なさそうな言い方……相手は父親に匹敵するくらい大事なんだろうな。だから大本命にじいじが浮上した”



「いや……うん、ちゃうねん。スマン」


 

 微妙な気持ちになりながら、誰に対してか分からない謝罪を入れておく。




“まあ爺ちゃんならしゃあないわ。じゃ、俺は律氷ちゃんのお婿さんで甘んじとくか”


“仕方ない。なら俺は律氷ちゃんの椅子で我慢しておこう”


“なら拙者は律氷たんの便器で”


“律氷ちゃんの犬の役目は誰にも譲らん!”


“――誰かぁぁぁ!! 至急お巡りさん呼んできて!!”


“犬とお巡りさん……誰が上手いこと言えと”



「……これ以上は良いか」



 特に心配していたようなこともなく。

 後は誰が皇さんの(色んな意味で)特別な相手になるかを言い合っている。

 

 俺は気分転換を済ませ、これからの通信に備え、準備することにした。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『…………』


「…………」 

 


 通信を繋いで、5分と経たず。

 俺と織部は揃って悟ったように天を仰ぐ事態となっていた。



 何故かって?


 それは……。






「――だよね、だよね! ボク、“勇者”を絶対許せないよ!」


「あぁぁ、全くだぜ! あたしもルオと同意見だ。“勇者”なんか、絶対碌な奴じゃねえよな!」



 

 ――ルオとレイネが、“反勇者”で意気投合してしまったからです。




「ご主人様、カンナ様……その、大丈夫ですか?」



「えっと……マスターもカンナもさ、その、色々顔が凄いことになってるよ?」



 同席しているラティアとリヴィルから、そんな気遣いの言葉が囁かれる。


 え?

 二人とも、何を言ってるんだい?


 俺達は勿論、ピンピンしてるさ。


 なあ、織部!



『…………』


『ああ! カンナ様、ダメです、こんなところで寝てはいけませんよ! カンナ様、カンナ様っ!!』



 サラに頬をペチペチ叩かれて呼び起こされる織部。

 ……アカン、全然ピンピンしてなかった。



 まあそりゃそうか。

 なんたって、ルオが勇者のせいで凄惨な目に遭ってきたと、織部は知っている。


 そして新参のレイネも、そのルオと同意見で反勇者を掲げてしまう始末。


 

 そりゃ織部も白目剥きますわ……。




「……あれ? そういえば……カンナお姉さん、何か元気ないね?」


「あん? ええっと……その、何かあたし達、変なこと言ったか? 気に障ったなら、謝るけど……」



 二人が画面越しに見える織部の異変を感じ取ってしまう。

 流石にまだ二人とも、織部が勇者だと知ってどうなるか、全く反応が読めん。


 ここは……!






「――いや、全く許せんよな! “男の勇者”め!!」





 俺は、あえてルオとレイネに、同調する。

 ただし、一つだけ重要な要素はヒッソリと加えておくが。



「確かルオも、レイネも、襲った奴は“男の勇者”だって言ってたっけか?」



 いきなりテンションを上げて激しく同意し出した俺に戸惑いながらも。

 ルオとレイネは頷いて返してくれる。



「えっと……うん、そうだよ」


「あ、ああ……だが、それがどうしたんだ、隊長さん?」



 俺はこれ幸いと織部の方を向き、必死に目だけで伝える。

 


『……はっ!? ――っっっ! っ、っ!』



 これまでに築き上げた協力者としての絆の力か、織部もすぐさま察してくれた。

 白目も一転、決意を秘めた瞳で頷き返す。



 

 ――行くぞ、織部!



 ――はい、新海君!




 言葉にはしなかったが、織部のそんな力強い声が聞こえた気がした。




「全く許しがたいよな、“男の勇者”ってやつは! 異世界転生だか異世界転移だか知らんが、どうせ調子乗ったクソ野郎だぜ! なあ織部!!」


『本当ですね、うん! “男の勇者”に碌な奴なんていませんね! 現実に異世界に来て、そして過ごしている私が言うんです、はい、間違いありません!!』



 さあ、どうだ!?


 俺達の勢いに乗りに乗った同意の忖度を受け。

 ルオとレイネは最初、ポカーンとする。


 だが、直ぐに表情を明るくし、更に高いテンションとなって返って来た。



「だろう!? 本当そうなんだよ、あたし達の天使の里を襲っといて、そいつなんて言ったと思う? “堕天使共、結構手強かったぜ……”だぞ!? 許せねぇよ! マジで!」



 よし……。


 確かにその勇者自体は本当に救いようがない奴らしいが。

 今はとにかくそれは置いておく。



 何とかレイネは思考がそっちへと向いてくれた。


 さて、ルオは……あれ?



 今、ついさっきまではレイネと同様、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべてくれたのに。


 何故か、今は眉を寄せ、首を傾げて織部をじーっと見つめていた。




「……あれ? それはいいんだけど……じゃあ何で、カンナお姉さん、さっき凄く怖そうな顔をしていたの?」


「あん? あれ、そう言えば……」



 ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?

 ルオの言葉でレイネも戻って来たぁぁぁぁ!!




 

  

 ヤバいヤバいヤバい…………。



 織部も同じように目をぐるぐると回してしまっている。

 どうしようどうしよう……!



 絶体絶命か、俺達!!



 

 


 ――そんな時だった。 



 




「――ご主人様」


「マスター、任せて、私達に」





 俺達のために、立ち上がった者達が、いたのだった――

本当に本編を書くだけで一杯一杯でして。

本来ならミニミニストーリーを書くつもりだったんですが、こちらはお休みです。


感想の返しもすいません、今後は少し遅れ気味になるかもしれません。

出来るだけ本編を書くことを優先して更新した方がいいかと判断しました。


時間ができればちゃんと返しますので、今しばらくお待ちください!


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[一言] > “まあ爺ちゃんならしゃあないわ。じゃ、俺は律氷ちゃんのお婿さんで甘んじとくか” >“仕方ない。なら俺は律氷ちゃんの椅子で我慢しておこう” >“なら拙者は律氷たんの便器で” >“律氷ちゃん…
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