14.物事は、いつも思ったように上手くいくわけではないらしい。
今確認しましたところ、一応ローファンタジー部門1位は死守しておりました。
2位からの突き上げが凄いですが、何とか、ですね!
また、総合部門では7位にランクが上昇!!
総合ですよ総合!!
しかも6位まであと5ポイント!!
5位も非常に強敵ながら、射程圏内ではあります!!
本当に私達の戦いはまだまだこれからでした!!
ありがとうございます!!
どうぞ、お話です!!
二人と別れてしばらく。
地域の住民に配慮して作られた人工芝の小さな小さな公園で。
俺たちは軽食を取りつつ、休憩していた。
この後、とうとうダンジョンに突入する。
なので、一時体を休めているのだ。
「――可愛らしい方達でしたね……」
先ほどの二人をラティアはそう評した。
そこに、嫌みや皮肉の意味など全くない。
「ああ、まあ、な」
逆井が“クォーター”と言っていただけあって。
“かおりん”――志木は少し赤みがかった綺麗な髪をしていた。
二人とも。
逆井と共に急遽アイドルになると言われても納得の容姿。
ただ、志木はあの腹黒そうな裏の顔も隠して、アイドルをやっていくのだろうか。
逆井も逆井で、あのアホっぽい感じで、アイドル戦国時代と言われるアイドル業界を生きていけるのか。
ってかそもそもダンジョン探索士のアイドルってなんだ。
心配だ……。
志木とはつまり、有名なあのスポーツ業界の巨人『SHIKIグループ』のご令嬢、ということだ。
戦後いち早く運動・スポーツの価値に目を付け、スポーツ関連事業を掘り起こす。
テーピングやアイシングスプレー、ゼッケンなどの小さなものから。
球技のゴール、測定計、果ては競技場の開発など大きなものまで噛んでおり、全てを手掛ける。
最近では日本語の“四季”と掛けて。
季節に合わせたスポーツウェアを大々的に売り出している“SHIKIシリーズ”がファッションとしても使えるとして流行っている。
そして皇――『皇株式会社』は日本のエネルギー事情を支える一角を担っている。
海外からのガスや石炭等の輸入をするだけでなく。
開発途上の資源国へと掘削技術などを指導し、日本へと融通してくれる橋渡しのようなことも積極的にしている。
近頃、ダンジョン出現でも真っ先に攻略のための資金提供などを申し出ていた。
ダンジョンを題材にした啓蒙番組での協賛名でもよく目にする。
「――おっ」
ハムときゅうり、そしてチーズを挟んだサンドイッチを。
口に入れ、ムシャムシャと咀嚼する。
今朝作っておいたそれは、簡単ながらも食感が豊富で味もいい。
間に刻んだ薬草も混ぜていた。
あれからも一応頻度は減らしたが、薬草は食べ続けている。
あの一件で全く摂取を断つと、それはそれで、織部が気にする。
自分のせいで、みたいに織部に思わせるのも悪い。
それに今度こそ違和感が何かあれば、それで原因特定にもなるし、という思いから。
その偶にいいアクセントになる苦みを含んだサンドイッチを。
片手で食べながら、反対の手で見ていたスマホに、メールが。
……ってか、昨日に来てた。
「……逆井か。全然気づかなかった」
昨日もダンジョンに行っていて。
更に今日はFランクダンジョンに挑戦とあって。
色々バタバタしていたからな。
10件も来てるぞ。
おいおい……しかも全部逆井。
ちょっとおっかなびっくり、最初のを開く。
『件名:ようやく研修終わった!!』
昨日の18時頃のメール。
ざっと本文も目を通すが、どうでもいい愚痴が文全体の5割。
それと関連性が分からない謎の絵文字が約4割を占めている。
何とかコイツの用件1割を抽出すると――
『でさでさ、ようやく自由ができたわけ!! んで、明後日、遊びに行かない?』
コイツはこれを言うだけで、なぜメールの9割がどうでもいいことで埋まるのか。
俺が気づかなかったせいだが、コイツの言う“明後日”とはつまり、“明日”になる。
ってか何で俺を誘うん?
コイツ、俺以外に誘える奴なんて山ほどいるだろうが。
他にも誘ってるけど、スペア的な感じ?
女子の、しかもカースト最上位の奴が考えることはよくわからん。
そう不思議に思ってメールをどんどん開いていく。
『件名:あれ? 新海、届いてる? もしかして……ラティアちゃんと激しい運動中だったwww?』
19時頃のメール。
……何を言ってんだコイツは。
そしてこのメールの絵文字は象が鼻を大きく伸ばしているもの。
“www”だけでもイラっとくるのに。
『件名:もう……新海もお盛んだね! アタシの風呂上りのも使っていいよ?』
20時頃のもの。
このメールには添付ファイルがあって。
開いてみると、本当にバスタオル一枚だけを巻いた逆井の自撮りだった。
未だ湿った金の長い後ろ髪を持ち上げて、うなじ部分を上手く映している。
「……こいつは何の努力をしてるんだ」
『件名:えっと……新海? ちゃんと届いてる? 寝ちゃってたり、する?』
21時ごろに来ていたメール。
いや、単に忙しかっただけなんだが。
それに仮に寝ちゃってたら、それはそれで返信できないだろう。
『件名:もしかして、またなんか無茶したりしてない? そうじゃないなら、返信欲しんだけど……』
『件名:……ゴメン、私がなんか悪いこと、した? 何かあるんなら、謝るから……』
22時頃のもので、連続だった。
また添付ファイルが。
開いてみる。
可愛らしいピンクのパジャマを着た逆井が、自分の部屋で涙目になっている。
そしてこれまた愛らしいクマのぬいぐるみを抱きしめていた。
よくよく見てみると、そのぬいぐるみに紙を持たせていて。
その紙には『ゴメンね、ニイミ君!!』と書かれていた。
「……いや、お前のメンタルどうなってんだよ」
何!?
志木もそうだけどさ。
ダンジョン探索士って二面性ないとなれない職業なの!?
じゃああのお人形みたいな皇律氷ちゃんにもなんかあるんじゃないかって怖いんだけど!!
その後も同じような情緒不安定になっている逆井のメールが朝まで続いていた。
申し訳ない思いもあったので、一応手早く事情を伝えるメールを打っておく。
「『すまん、忙しくてスマホ見てなかった。後、邪推すんな、ラティアとボッチの俺が何かあると思うか? “明日”は多分無理』っと」
すると――
「うっわ、もう来た!? 怖えよ……張り付いてたのか!?」
『件名:もう! 心配して損したし! 埋め合わせ、ちゃんとしてよね? バカッ!』
小さなドラゴンがシャドーボクシングしている絵文字と。
何かあった場合の連絡手段としての電話番号が添えてあった。
埋め合わせって……何でや。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
『ダンジョン探索士の講習課程修了~以降は、各自治体に実地研修を委託』
『ダンジョン探索士、広報活動にアイドル起用~探索士がアイドルグループを結成する案も』
そろそろダンジョンへ出発するかと腰を上げる。
その時、ネットニュースが丁度更新されて、それに目を移す。
丁度逆井が言っていたことでタイムリーな話題だ。
そのニュースを開いてざっと目を通すことに。
『夏休み期間を利用した講習課程が終わった。これで候補生たちは正式に探索士となる』
やはり逆井が言っていたように、昨日、ようやくその講習が終わったようだ。
だから志木や皇さんもいたわけか。
『最年少では中学生もいることもあり、今後の実施は週末や、平日でも放課後以降の時間を利用する計画だ』
それに対して、未だ野党や与党内の一部から批判の声が出ていると紹介している。
――その計画だと、青少年たちはずっと探索士としての生活ばかりを送ることになる。
――青春時代とは掛け替えのないもの。それを犠牲にしてまで国防の一部を担わせる意味はあるのか。
――もっとゆとりある計画を策定すべきだ。
などなど。
『各自治体が把握するダンジョンに、自衛隊と連携し、実際にダンジョンに潜っていくことになる』
「ふーん……そういう風になってんだ」
『政府は、世界初の攻略となった○○××ダンジョンに対する簡易の調査結果が出たこともあり、プログラムを前倒ししても問題ないと判断』
「なるほど――」
その記事を閉じる。
そしてもう一つの記事を読もうとした時――
「――ご主人様」
ラティアに呼ばれた。
顔を上げると――
「――はぁ、はぁ……あっ!! あ、あの!!」
何かを、あるいは誰かを探しているようにして走っていた女生徒。
先程見た志木と同じデザインの制服を着ていることから、高校課程の子か。
息を切らしており、俺たちの姿を認めると近づいてきた。
「御姉様を、見ませんでしたか!?」
開口一番、そう告げられる。
余程慌てているのか、完全に部外者・赤の他人である俺たちにそう言ったのだ。
それを本人も言った後気づいたのか、「あっ――」と声を出す。
そして直ぐに補足する。
「えっと、あの、“志木花織”御姉様、という方で、この学園の生徒会長もされていて、えっと――」
何とか俺たちに自分の意図を伝えようと、身振り手振りも交えていた。
「ダンジョン探索士もされているんです!! えっと、とてもお綺麗な方で、とても頼りになるお方で、それで――」
ただ如何せん身内情報が多すぎて何を言いたいのかが伝わってこない。
「ええっと……そのダンジョン探索士の“志木”さんに、何か伝えたいことでも?」
わざわざその情報も挙げた上で彼女を探している。
何かダンジョン絡みかと問うてみた。
俺の問に、目の前の女生徒は激しく頭を上下に振る。
「はい、はい!! お姉さまに、一刻も早く伝えなければならないことがあるんです!!」
そして、混乱が極まっているのか、全くの無関係な俺たちに、彼女は告げる――
「――ダンジョンが、ダンジョンがあって!! それに、そのダンジョンに“律氷”が入っていってしまったんです!!」
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
「――ラティア、直ぐにダンジョンに向かう。準備してくれ」
「はい!!――」
彼女に、会ったら必ず伝えると約束して別れ。
俺はラティアにそう頼むと、直ぐにとある相手に電話を入れた。
――prrrrr……pi!
『――もしもし~? うにゅー……なにぃ~? だれ~?』
よかった、直ぐに出てくれた。
もうすぐ昼になりそうなのに、さっきまで起きていたからか。
物凄く眠そうな返事だった。
「俺だ、新海だ――逆井」
俺が掛けた相手――逆井は、そう告げてもまだ頭がフワフワしている様子。
『にいみぃ~?……うゅぅぅ、にいみぃ?』
コイツ、眠いとこんなに甘い声で人の名を呼ぶのか。
どうでもいいが。
「起きろ、緊急だ」
『この声……新海?』
何となく、俺が電話の相手だとゆっくり理解していく。
だがもっと早く話を進めたい。
「ああ、そうだ、お前が大好きで大好きで、夜も眠れなかった、新海だ」
こういう風に冗談でもインパクトあることを言えば――
『――は、はぁぁ!? 新海!? えっ、ちょ、なんで――ってか新海のこと大好きとか意味わかんないし!?』
一発で起きてくれた。
やっぱりな、俺にんなこと言われるなんてキショいだろう。
『い、いや!! ベ、別に新海が嫌いとかそういう意味じゃなくて!! っていうか、むしろそういう気持ちも、なくはなくて――』
電話口の向こうでまだゴニョゴニョと聞こえ辛いことを言い募る逆井。
流石に起こしてしまった上に、一方的に用件を言うのは申し訳ないが緊急だ。
今度の埋め合わせもちゃんとしてやろうと決めて、告げる。
「それは今はいい――逆井、お前、“かおりん”の連絡先、知ってるか?」
既に評価していただいた方は182名に。
ブックマークも1979件、もうすぐ2000ですよ!!
それにPVも1日7万に到達しました。
本当に、未だ作者が見たことなかった景色を。
読者の皆様と一緒に作り上げ、見ているような気分です。
感謝の気持ちで一杯ですよ、もう!!
それだけに、後5ポイントが……悔しい!!
それに2位の超面白そうな作品からの突き上げも。
こ、これが主人公的作品からの挑戦状かもしれない……。
今後も、ご評価、ブックマーク、ご声援を、どうぞよろしくお願いいたします!!
まだ、まだ!!
私は奴の壁にならねばならんのです!!




