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134.天使の力の源泉……。

お待たせしました。


昨日はお休みして、グッスリ寝てスッキリしました。


今回も引き続き第三者視点です。

後、レイネの過去、つまり幼い頃の回想みたいになるので、そこは少しお気を付けください。


ではどうぞ!



「――レイネお姉様ぁぁ! こっちこっち!」


「ふふっ。こ~ら、待ちなさい、ルーネ!」



 それは、幼い頃のレイネの記憶。

 綺麗な花が咲き誇る庭で、二人の少女が追いかけっこをしていた。

 レイネとその妹、ルーネである。


 この頃のレイネは言葉遣いも荒っぽくなく、純粋な愛らしい少女の一人だった。



 何も知らない一般人がその場を見れば、その光景のあまりの美しさに立ち止まり、目が釘付けになっただろう。

 そして“まるで天使のように可愛らしい少女達だ”と表現するかもしれない。



 その正しく種族としても天使である二人はそっくりで、年も2つ違い。

 そして何よりとても仲が良かった。


 レイネは自分を慕ってくれる妹を大層可愛がり。

 またルーネも姉のことが大好きだった。


 優しく、そして天使として才に溢れるレイネのことが誰よりも誇らしかったのだ。

 未だ誰も成し遂げなかった“愛の精霊”と仲良くなるという偉業を成し遂げたのだから。

 




「私はこっちよ、お姉様。捕まえられるかしら?」



 

 逃げる妹とはかなり距離が開き、ちょっと走っただけでは追いつけない。

 それにも関わらず、レイネのその表情に焦りはなかった。


 彼女が脚力に自信があるということではない。

 それでも、レイネは一瞬のうちに妹との距離を詰められるという確信があった。



 

 離れたところで自分を呼ぶルーネの斜め上。

 そこに黒い点のようなものが浮かんでいる。


 ルーネはそれに気づいていない。

 それに気づくことができるのは今の所、彼女らの父と、レイネだけ。


 と言っても、別に危ないものではなかった。

 むしろ、彼女を助けてくれる存在だ。



「ええ、勿論! 約束、忘れてはダメよ? 私が勝ったらおやつを貰うからね!」



 声を張りながらも、レイネはその黒い浮遊体へと目の焦点を合わせる。

 最近仲良くなった“闇の上位精霊”だ。

“愛の精霊”と同じく、天使で力を借りることに成功したのはレイネだけだった。



『…………』



 レイネは彼と意識を繋ぐ。

 そして――




「うわぁっ!?」 

     


 ルーネの驚く声が上がる。



 ――レイネの体が、黒い水へと分解した。



 そのレイネだったものが、レイネ自身の影へと沈んでいく。

 同時に、ルーネの上方辺りを漂っていた闇の上位精霊にも動きがあった。



 彼の体も、レイネと同様黒い水状になる。

 真っ黒な球体のアイスが熱で一瞬にして溶けるように。



 だが次の瞬間。

 黒い水はどんどん膨張していった。

 

 そして、1秒としないうちに、それは、レイネへと姿を変えていたのだ。



「よっと――」



 更に、元々レイネがいた場所には、闇の上位精霊が出現する。


 だが、精霊の姿を未だ認識できないルーネの主観からしたら。

 いきなり姉が目の前から消えて、だが次の瞬間には突然上から降って来たことになる。


 もっとも、精霊を見ることができるレイネからしたら、至極簡単な話だった。

 


「えっ、あっ、ひゃっ!」


 

 驚くルーネを見ながら、彼女の体に触れる。

 

 勝ち誇った笑みを浮かべながらも。

 レイネは約束通り、後で妹からおやつを貰うことを考える。

 その代わり、ルーネには、自分が大事にとっておいたおやつを分けてあげよう、と。





「フフッ、私の勝ちだね、ルーネ?」



 

 そう、レイネは自分と。

 そして仲良くなった闇の精霊の居場所を入れ替えることができるのだった。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆  




「ほう、そうか……レイネは凄いな、お父さんよりも偉くなっちゃうんじゃないか?」


 

 自分達の屋敷へ戻った姉妹は夕食時、楽しそうに先ほどのことを報告した。

 褒められたレイネはこそばゆくなり、照れてはにかむ。



「エヘヘ……」


「あ、いいなぁぁ――お父様お父様! 私も! 私もお父様より偉くなるの!」



 そのズレた対抗心に家族は皆して笑い声をあげる。

 平和そのものだった。

 


「じゃあ、ルーネも。沢山の精霊達と仲良くならないとな。――それっ!」 



 そう言って彼女たちの父は徐に立ち上がり、何も無い手を空中で振って見せた。

 その手の軌道に沿うように、光が歪む。


 つい今しがたまで見えていた父親の胴体が、消えたのだ。



「うわぁぁ! 凄い凄い! お父様の体が切断された!」 


「ははは……いや、そんな表現をされるとちょっとお父様の意図と違うんだけどね……」 


 苦笑いを浮かべた父はまたもう一度同じように手を振って見せる。

 今度は消えたと思った体が、確かに戻っていた。



 勿論これらは種も仕掛けもない手品、ではなく。



「へぇぇ……お父様、それ、“光の精霊”さんの力、だよね?」


 

 要するに、光を操って、他者が目に見える光景・情報を歪めていたのだ。


 その証拠に、ルーネには見えていなかったが、父親の側には透明な宝石のような物が浮いていた。

 光の上位精霊だ。



 先ほどレイネが闇の精霊の力を借りて場所を入れ替えたように。

 仲良くなった精霊の属性に応じて、レイネの一族を含む天使の一部は特殊な能力を使えるのである。

 

 それは仲良くなった精霊の数に応じて強くなっていく。


 1体の光の精霊よりも、2体の精霊と。

 2体の精霊よりも4体の精霊と仲良くなる方が、天使はその力を増すのだ。


 


 

 娘たちを驚かそうとしてやったのだが、それをレイネに言い当てられてしまう。

 しかし、父親は残念がることはなく、むしろ今ので分かったのかと目を細めた。



「ほぅ……分かるのか、レイネ」

  

「うん! “愛の精霊”さんがこの前、教えてくれたんだ!」

 

「ッ!! そうか……――レイネ、精霊さん達とは、今後も仲良くしなさい」



 父親は、多くを語らず、ただそれだけを教えた。

 それはレイネとルーネ、二人の娘にとって、ある意味最も重要なことだと思っていたからだ。



 



 人にも色んな種類の人が存在するように、天使も天使でそれぞれ皆一様であるということはない。

 持ちうる才能・能力も違っていれば、各々が仕える神もまた、違っているのである。


 

 レイネ達の一族が仕える神はあまり人との関わりが深くはなかった。

 その分、力の源泉を他に求める。


 それが、精霊達だった。


 

 その力の源を人に求める神であれば、その人と神の媒介をそれにあった天使が務める。

 つまり、レイネ達の場合、その役割は主と精霊との間に立つことであった。



 だから、最も重視される素質・才能は、その精霊と仲良くできること。


 実際、レイネの父親の職務の中にも“精霊の好む素材・アイテム集め”なるものがあった。

 また、幼い天使、即ちレイネ達のような子供への教育では“精霊が嫌がること・精霊にしてはいけないこと”を暗記させてテストすることも当たり前だったのだ。




「? うん。大丈夫! 私、“愛の精霊さん”ともちゃんと仲良くするから!!」



 レイネは父の言葉の真意の全てを理解できたわけではない。

 それでも元気よく頷き返したのだった。



 

 レイネが父だけでなく、周囲の大人や天使の高官たちからもその才を認められ「将来必ず君は大成するよ」と言われる所以。

 

 それはつまり、誰も成し遂げなかった“愛の精霊”と仲良くなったことに尽きる。

 

 

 火の精霊と仲良くなれば、熱を操り。

 風の精霊と友好を結べば、風を生み出すことができるようになる。 

  

 

 では愛の精霊は?




 ――それは“あらゆる属性の精霊に好かれるようになること”。




 ラティアがサキュバスとしてその圧倒的な女性的魅力を放ち、特に異性を魅了するように。

 レイネは愛の精霊に好かれたことで、あらゆる属性の精霊を魅了する存在となったのだ。



 つまり、レイネが積極的に動かなくとも、あっちから勝手にやってくる。

 それを分かっていながらも、彼女の父親は言ったのだ。


“精霊達と仲良くしなさい”と。



 父親は、ゆっくり教えていけばいいと思っていた。


 精霊に対して傲慢に振舞ったり、何か間違えてしまえば自分が教え、諭して道を示してやればいい。

 彼女が大人になるまで、自分が見守っていこうと。





 ――しかし、家族の別れの時は、とても早くに訪れてしまった。


コンテストとかに応募すると、別方面からの書籍化の声がかからなくなると聞いたことがあるので、今まで一切応募はしなかったんですが、どうなんでしょうね。

単なる俗説となからこれから検討しようかな、とも思ってますが……。


※以下、先日のミニミニストーリです。

読まなくても支障はありません。


――――


「ふーん……」


 扉の隙間から、ラティアが階下へと降りていくのを確認する。

 それからリヴィルはそっと自分の部屋を出る。

 

 目的地は、先程までラティアがいた部屋だ。



「…………んっ――」

 

 リヴィルは一気にベッドに横になった。

 そして布団を被り、その温かさに包まれる。


 枕を頭の方から取り出し、ギュッと抱きしめた。

 

 ――んっ……マスターの匂いがちゃんとする。


「……ラティア、思い止まったんだ」 

 


 リヴィルは“除菌なんてしなくていいじゃん派”だったのだ。

 除菌して主人の匂いが消えてしまうなら、いっそのこと布団の洗濯・掃除などしないままでいいのではという過激派。

 

 主人のいない間の家の中では、意外にラティアの方が保守派で通っているのだ。


――――


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― 新着の感想 ―
[一言] >  主人のいない間の家の中では、意外にラティアの方が保守派で通っているのだ。  それ主人本人にリソースを割いているからその分、他が大人しくなってるだけじゃね?
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