128.4人目の少女を購入!
本当はお休みする予定だったんですが……。
ふと設定が気になって、メモを覗いていたら、ちょっとこの子に関する重大な設定ミスに気づきまして。
それを直していたら……もう書いちゃった方がいいか、と書くことに。
こうして書き続けていると、そういう嫌な予感みたいなものって、結構当たるようになってくるんですね。
はぁぁ……。
ではどうぞ……。
「へぇぇ……良いんじゃない? 私は賛成だけど」
「うーん……でもリヴィルお姉ちゃん、この説明文、凄いよ? “群れることを極端に嫌い、他者を固く拒絶する”だって」
「でも“戦闘経験も非常に豊富”なんでしょ? 目的の宛が外れても、戦力として心強くはあるよね」
「それはそうだね。でも凄いな……“天使”さんか。ボク、天使の人とは会ったことないな……」
夕飯の最中。
帰って来たリヴィルとルオに、先ほど紹介された候補を見せていた。
特にルオは興味津々なようで、ご飯そっちのけでDD――ダンジョンディスプレイの画面を見ていた。
話を聞いていると、二人的には積極的に反対はしないという感じか。
というか、まあ最終的な判断は俺に任せる、ということになるのだろう。
「ラティア的には……どうだ?」
隣で豚汁をすすっているラティアへと話を振ってみる。
ラティアは食事の方が疎かになっているルオを少し窘め。
それから少し考える間を置いて、口を開く。
「ん~。確かに、この説明文の全体的な印象はあまり良くはないと思います」
まあ確かに。
主人に対する態度も特殊だって書いてあるし。
最後なんて、要は何か問題あっても商館は知らないよ、ってことだろ?
地雷の臭いがプンプンする。
ただ、ラティアはそう前置きしてからも。
目の前で楽しそうに意見を語り合うリヴィルとルオを、ゆっくりと眺める。
そして、自分の意見を続けた。
「ですが……私達も、最初は多分、大なり小なり、似たような感じだったんではないでしょうか?」
「…………」
それについては……ちょっとコメントに困る。
そんなことはないよ、と簡単に言ってしまうのも違うし。
かと言って思っていることをそのまま言葉にしてしまうと、ラティア達に悪い気もする……。
「何らかの問題を抱えながらも、ご主人様に買っていただいて、ここで新たな生活を送るようになって……」
今までの決して遠くはない過去を慈しむように、ラティアは目を細める。
「多分、この子も、きっと、何か辛い問題を抱えてるんだと思います。それでも、私や、リヴィルや、ルオの時のように……きっと」
そのラティアの言葉を聞いていたんだろう。
リヴィルもルオも、今はもう画面を見てはいなかった。
俺を見て、力強く頷いて見せてくれる。
「良いんじゃない? ちょっとくらい問題がある方が、可愛げがあって」
「大丈夫! ボクも一緒に頑張るからさ! それに、推薦してもらった子なんでしょ? ならなおさら素質はあるんだと思うし!」
ラティアからも信頼を感じる視線が送られてくる。
確かに、この子がダメなら今回、補強は保留にしようかと思っていた。
だから、何だか3人に背中を押されたような、そんな気になる。
「……だな」
また一人、他者の人生を買うんだという責任の重さみたいなものを、改めて実感した。
少し気合を入れて頷き、覚悟を込める後押しをしてくれた3人を、俺なりの優しい目で見る。
「それに……“年若く、見目麗しい容姿は何人をも振り向かせる魅力を持つ”だしね」
「あっ! それボクも思った! 天使さんだし、やっぱり美人さんなんだろうね~!」
リヴィルとルオの何とはなしの言葉に――
「――ですよね、ですよね! また一人、この家に魅力的な女性が増えるとなると、私も凄く楽しみです!」
…………ラティアさん、今日一の食い付きっぷりっすね。
さっきまでの真面目な空気での白ラティアは、一瞬でどこかへと行ってしまったらしい……。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
「よし……じゃあ、買うぞ?」
俺の部屋に全員が集まって、開いた『Isekai』を眺める。
ルオは自分以外の奴隷を購入する場面が初めてだからか、少し緊張している様子。
特に気負う様子のないリヴィルの隣で、既に生唾を飲み込んでいた。
『天使族:3万5000DP 詳細:特殊なスキルを所持。年若く、見目麗しい容姿は何人をも振り向かせる魅力を持つ。戦闘経験も非常に豊富。
※特記事項:本人の出自・性格・主人への態度全てにおいて特殊。…………』
指でタッチして、どんどん手続きを進めていく。
すると、薄暗い背景の中、怪しい風体をした商人が現れる。
青白い体をしていて、あちこちに入れ墨のような文様が入っていた。
その男が表情を歪ませ、こちらへと忠告をしてくる。
『この商品を、お求めで? ……“天使族”という部分だけでこの商品を購入なさるのなら、はっきり言いますと、お勧めはしません』
「むっ……」
いや、商売としてやってるんだろうから、忠告するのは分かるがそれでもちょっとムッとなる。
ちゃんと話し合って決めてるから、大丈夫だよ。
更に手続きを進めると、その目的の少女が連れて来られる。
「はぁぁ~……確かに、文句なしで美少女ですね」
背後のラティアが画面を見て、感嘆の息を漏らす。
「……だね。胸も、ラティア並みに大きい」
リヴィルよ……その情報に真っ先に触れる必要はありましたかな?
「綺麗な髪……金色と銀色が混ざってて、何だか本当にお人形さんみたいだね」
ルオが言うように、背中まで流れる金糸と銀糸の髪は、まるで神の造り物のように美しく映った。
そうして少女の容姿を一頻り観察し終えた所で、再び手続きを進める。
最終の所でもう一度、注意があった。
『……最後に、お買い上げいただいた場合、いかなる理由であっても、当商館は返品、賠償、その他一切の責任を負いません。宜しいですか?』
「……おう」
ちょっとビビらされるものの。
でも、ラティア達を買った時にも、似たような注意はされた。
今更だ。
注文を、確定する。
「――うわぁぁぁ!」
その直後、画面の少女の足元では魔法陣が浮かび上がる。
そして俺達の部屋にも、同時に同じ魔法陣が現れ、発光し出した。
一番近くにいたルオは初めてということもあって、興奮で目を輝かせている。
画面の魔法陣が上昇するとともに、少女の姿が消えていく。
反対に、部屋の魔法陣の上昇は、少女の姿を少しずつ形作って行って……。
「お、おぉぉぉ! 凄い凄い! ボクもこんな感じで来たんだ!」
現れた少女を目の前にして、ルオのテンションは最高潮に。
だが、そんなはしゃぐルオを前に……。
「…………」
購入した少女はこちらを――俺達4人を見て、沈黙していた。
口は、首元から伸びた黒いマスクのような物でピタッと覆われていて、見えない。
その立ち姿は天使というより、まるで暗殺者のような、無を思わせる。
そんな少女が……最初の一言を発した。
「――お前が、あたしの新しい隊長か?」
鈴が鳴るような、美しい声だった。
聴いていて心が安らいでくるような、そんな声。
俺を真っ直ぐ見る。
何となく逸らしてはダメだと思い、俺もその目を見つめ続けた。
だがその目はずっと見ていると、何だか吸い込まれそうになって……。
そうして彼女の言葉に答えられないでいると、更に彼女は言葉を続けたのだった。
「“レイネ”だ……。最初に言っておく――雇われの身だ、力は貸してやるよ。だがな……」
その声は美しく。
これで何か歌でも歌ったら、皆して手放しに歌姫だと騒ぐだろう。
それ程の綺麗な声なのに、彼女がその声で告げる言葉は……。
「――あたしに必要以上に干渉すんな。あたしはあたしで……やりたいようにさせてもらう」
……とても悲し気なものだった。
今週の内、どこか1日突発的に休むかもしれません。
事前にお伝えしておきますね。
ただ、やっぱり4人目の子が来たわけですし、キリのいいところで休みたい……むむぅ。




