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127.へぇぇ……オススメですか?

明日はお休みするかも……しれません。


すいません、良い感じのところで間を開けたくはないんですが、ちょっと休憩に1日……欲しいな、と。


明日の体調次第ですので、まだ分かりませんが。


ではどうぞ!


 昼食を食べてソファーの上で寛いでいたら……。



 それに終わりを告げる音が鳴り響く。




「ん? メール? 誰から……って、この音は!?」


 


 案の定、送り主の名前は“椎名さん”。

 おどろおどろしい着信音を聞くと、毎回胃が縮む思いがする。


 じゃあ普通のにすれば、と思うだろうが、それはそれで問題があるのだ。


 普通にメールだと思って開けたら椎名さんの毒が籠った文面……うん。

 やはり事前に心の準備が出来ていた方がまだましだな。




「はぁぁ……えっと……ん?」




 ちょっと気が重くなりながらも開けてみると、予想していたような内容ではなかった。



『突然すみません。逸見(いつみ)六花(ろっか)という女性をお知りですか? 御嬢様と同じシーク・ラヴのメンバーで、私の知り合いでもあるのですが……』



 文面の最初は、そんな畏まった感じで始まっていた。

 いや、勿論知ってるけど。


 でも何だろう……。


 

 訝しみながらも、読み進めていく。 




『彼女と話をしていたら……その、いつの間にか、彼女が新海様の連絡先を知りたいと言い出して。あの、教えても大丈夫でしょうか?』



「え……」



 何であの人が俺の連絡先知りたいの?

 どういう話してたらそうなるんだろう……。



『彼女、あれでもかなり外見は良いですし、モデルもやってたので……メディアの露出も多いです。教えてしまって新海様に迷惑をかけるのもあれなので、勿論断っていただいても大丈夫です』



 うーん……。

 まあ悪いことに使われないなら別にいいけど。


 あの、梓の件でもちょっと協力してもらったっけ。

 見た目ぽわわ~んとしてたし、そんな悪そうなことには使わないだろう。



「“特に問題はありません。ただ、オレオレ詐欺集団とかに売られると電話対応に困るので。悪いことに使われないならば、ですが”っと……」



 ふむ、まあこんなもんか。




 直ぐに返信を済ませて、再び体をソファーに沈める。


 リヴィルとルオは仲良く買い物に出ていた。

 だから、ラティアが帰って来た時誰もいないなんてことにならない様、時間を潰す必要がある。


 

 しばらくはここでスマホでもいじって、ダラダラするか……。






「ふ~ん……」



 あまり興味があるわけではないが、一応の反応みたいな声が出る。

 ネット記事をいくつか漁っていた。 


 普段は学校で授業を受け。

 そして夜はラティア達との時間を過ごしたり、あるいはダンジョン攻略に精を出す。

 ……変な意味じゃなく。



 だから社会の動きとかを知るには、こうして隙間の時間を見つけてコツコツ調べるのが重要になってくる。





『男性探索士アイドル“Rays”ファンクラブ発足 一時、アクセスが集中し、サイトがパンクしかける事態に』



 そんな関心を惹こうとする見出しが書かれている。

 

 実際に詳細を見てみると、特に大きなハプニングがあったとかではなく。

 普通に彼らのことを褒めたたえ、これからの活躍に期待する、みたいな感じだった。




『――先日の音楽番組で大々的にデビューを飾った“Rays”の5人。彼ら5人はそれぞれが特異な経歴の持ち主で、中でも立石と木田両名は実際にダンジョン攻略の経験もある。人気もあらゆる世代に渡り、これからの彼らの活躍に、目が離せない』




 そんな感じの文章が続いて、最後には写真が添えられていた。

 あの、焼き肉で打ち上げの際に、俺達の場の空気を凍らせた男。



 龍爪寺(りゅうそうじ)(しょう)がウィンクを決めていた、ド正面ドアップの写真。


 

 写真の下に、出典や簡単な説明文が付されていて……。



『“Rays”リーダー龍爪寺(りゅうそうじ)(しょう)が、ファンへとサービスポーズをしているところ。特に若者に人気で、彼の絶大なカリスマ性がとどまるところを知らない』




「…………」 

   


 そっ閉じ。

 最近は記事も玉石混交だな……。

 

 情報を得る側のメディアリテラシーが求められる世の中になって来た。



「さて、他には……おっ?」



 さっきのは無かったことにして。

 俺は次に目についた記事を見てみることに。




『“シーク・ラヴ”、研究生の一部お披露目イベントと同時に、初の握手会開催 ファンクラブ会員には優先券配布も』



「へぇぇ……」



 詳細は順次ホームページなどで更新していくが、まずはイベント開催決定のお知らせだということ。

 近くその会見もあるっぽい。



『――当日多数の一般のファンや、ファンクラブ会員の来場が想定される。今出ている案では、午前と午後の部に分けて、午前ではファンクラブ会員が優先して握手や懇親を図る機会を設けては、というものもある』



 なるほどねぇ……。



 じゃあ、もしかしたら、あの会員番号0のカードも、意味が出てくるかもしれないな……。





 ――ガチャッ



 玄関からドアが開く音がした。



 おっ、ラティアが帰って来たかな?





□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「どうだ? 正直に思ったことを言ってくれればいいから」


「うーん……」 



 帰って来たラティアは早速、昨日あった話を聞きたがった。

 特に3人で『Isekai』を見たという話をしたら、自分も、ということになって。


 今、更新された部分を見終えたラティアに意見を訊いているところだった。




「今すぐ買うと決断するには、ちょっと、弱い気がしますね」


「やっぱりそうか……」



 ラティアの意見が聞けたので、昨日3人で話したことも伝えておく。

  

 やはり、この人だと選ぶだけの決定打に欠ける。

 うーん……。



「まあ、今すぐ補充する必要性があるわけじゃないし、気長に見てもいいんだがな……」 

「そうですね……」



 何となく、今回の購入は見送ろうかという雰囲気が出来つつあった。

 だって、特に具体的な候補が上がるわけでもないし、無理して買う必要性もない。



 

 

 そんな時だった。

 

 織部から連絡が来たのは。






『ニイミ様。お伝えしたいことがあります』


「あれっ、えっと、“カズサ”さん?」 



 DD――ダンジョンディスプレイを繋いでみると、真っ先に画面に現れたのは所有者たる織部ではなく。


 真剣な表情をしたカズサさんだった。

 織部はキチンと画面外にはいるらしいが、今回は主にカズサさんの用事らしい。



 ラティアとは初対面ということになるので、どう互いに紹介しようか迷ったが……。



 その話題が出る前に、カズサさんが真剣な様子そのままに、話を切り出した。



『もう……どの奴隷を購入なさるかは、決めましたか?』


「えっと……いえ」



 今正にその話題でラティアと話していた所だったので、ちょっと驚いた。

 正直に今の状況を伝えることにする。



「一応目は通してみたんですが……どの人も決め手に欠けるって言うか、これって人が、候補が上がらなくて」


『そうですか……』



 カズサさんは一瞬、沈黙し、顎に手を当てて考える間を持つ。

 そして顔を上げると、思い切ったように口を開いた。



『私の代わりとしてニイミ様をお助けするわけですから。私も、私なりに調べてみたんです。商館を訪れて。それで、どうだろうという人が一人』


 

 要するに、俺達のために独自に動いてくれたってことか。

 それで推薦できそうな人物が一人、見つかったと。



『ニイミ様のパーティーの課題を今すぐに解決する、という感じではないのですが、やり方次第では、大きな戦力になってくれると思います』


「へぇぇ……でもそんな人、いたんですか。俺達見逃しちゃってたのかな……」



 そう口にすると、カズサさんは小さく笑みを浮かべる。

 


『仕方ありません。奴隷商の人が別個に設けてくれたグループを集中的にご覧になったのでしょう? そこにはいなかったので、彼女は』



 あ、そうなんだ。

 

 

『勿論、絶対にその子を買ってあげてくれという要求ではありません。皆さんがお気に召したのでしたら、検討してくださいという趣旨です』


「分かりました。わざわざありがとうございます」



 感謝を伝えるとカズサさんはまた静かに笑って見せ、どの女性がその人なのかを教えてくれた。

 そして、その後に少しだけ付け加える。




『言い伝えですが……神代の頃から、精霊と神。そしてその神と人を繋ぐ役割をしたと言います。意思疎通の媒介をするには持ってこいの人材だと、私は確信しています』






 通信を終えた後、彼女が教えてくれた人物を『Isekai』にて探してみると、確かにその項目が見つかった。




『天使族:3万5000DP 詳細:特殊なスキルを所持。年若く、見目麗しい容姿は何人をも振り向かせる魅力を持つ。戦闘経験も非常に豊富。

※特記事項:本人の出自・性格・主人への態度全てにおいて特殊。

 →当商館主の主観的評価……群れることを極端に嫌い、他者を固く拒絶する。扱いは非情に困難を極め、問題のある奴隷として余所から回って来た所を譲り受けた形になる。

購入後、当商品の瑕疵(かし)を理由とする返還・取消、その他いかなる請求も当商館は受け付けないものとする』



…………ちょっと疲れがたまってる感がありますね。

早めに寝ることにします。


おやすみなさい……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほほぉ、次は天使族かな? 説明を見る限りは、魅力があるから調子に乗って孤独を演じているとか、そういうタイプでしょうか? どちらにしても、次がどうなるのか楽しみなキャラで良いですね
[気になる点] > 感謝を伝えるとアズサさんはまた静かに笑って見せ、どの女性がその人なのかを教えてくれた。 → 感謝を伝えるとカズサさんはまた静かに笑って見せ、どの女性がその人なのかを教えてくれた。 …
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