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12.女子三日会っていても刮目して見よ!! ――えっ、デカッ……。

ただ今確認しました、3位です!!

そして2位にも肉薄しております!!


51人の方に、更に評価をしていただき。

この作品を651件、ブックマークしていただき。

そして沢山の方に読んでいただいたことが、今、その3位という結果に結びついているのだと思います。


本当に、本当にありがとうございます。


もう、休んでも、いい、ですよね?


パトラ○シュ……僕はもう疲れたよ……。

「ラティア、玄関で待ってるから!」


 もうそろそろ降りてくると思うが、一応2階へ声をかける。




「――かしこまりました、直ぐに向かいます」


 少し慌てたような声が返ってきた。

 昨日準備していたはずだし、それほど手間取ることもないとは思うが。


 急いでいるわけではないので、そう伝える。  


「ちゃんと待ってるから、ゆっくりでいいぞ?――さて……」


 

 俺は待ち時間を潰す意味で、DD――ダンジョンディスプレイを見る。

 今現在の保有ダンジョンポイントは『DP:60101』となっていた。


「あのアーマーアントのDPが得られなかったのが痛いな……」


 あの時は見つかりたくないがために回収前に転移してしまった。


「それに、3つ攻略してたったの12000ぽっちってのも辛い」


 昨日までに合計3つ、ダンジョンを攻略したその総計の凡そがそれなのだ。

 俺が一番最初に攻略したのだって27000あったのに。



「……まあ、攻略順位の特典が大きかった、のかな」


 あの廃神社跡で2番目。

 アーマーアントのダンジョンが3番目、これはDPを入手できなかった。


 そしてその後、今日までに攻略できたので3つ。

 つまり4,5,6番目。

 

 そりゃ順番が下がるにつれて得られるGradeも下がる。



「今後のことも考えると、後40000は欲しい所なんだがな……」


 夏休みも残り日数の方が少なくなってきた。

 それが明けて、学校が始まると……。




 ――ラティアは独りになる。



 いや、学校から帰ったら勿論、一緒にいられる。

 でも今よりは顔を会わせる時間はぐっと減る。


 だから――


「寂しい思いを少しでもさせないためには、やっぱり――」




 もう一人、奴隷の女の子を――




「――ご主人様、お待たせしました!!」



「おう、いや、全然大丈夫だぞ?」


 

 階段から元気に駆け下りてくる。

 俺はDDを仕舞い、振り向いた。



「へー……今日のも、そ、その、に、似合ってるな」


「そ、そうですか? あ、ありがとう、ございます。嬉しいです……」


 お礼を言いながら、少しモジモジとするラティア。

 褒められて素直に嬉しいが、ちょっと居心地が悪い、そんな仕草を見せる。


 普通に褒められ慣れてないからかなと、最初は思った。

 だが、何か違和感を覚え――


「……あれ?」


 ラティアは今日もスポーティな装いをしている。

 上下で迷彩柄のアンダーウェアを着て、その上に薄いジャケット、パンツ。

 そこらでジョギングしていても、何らおかしくない。

 

 ラティアの可愛らしさ、健康さをより引き出すものだ。

 だが……。


 

「えっと……」


「……すみ、ません」


 俺が気づいたことに、ラティアも気づいた。

 それを本当に申し訳なさそうに、そして本当に恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。

 最後の方なんか消え入るような声で、かなり本人的にも恥ずかしいのだと分かる。



 ラティアのジャケット。

 昨日見た感じと、差異が、あるのだ。


 いや、二日連続同じのを着てないんだからそりゃあるだろう、と思うかもしれないが、そうではない。


 柄は勿論違うが、サイズは同じなのだ。


 なのに……。


 

 ――ジッパーが、上がり切っていない。



 昨日は全部上がっていたのに。

 

 そのせいで、アンダーの上から、形の良い二つの膨らみが自己主張しているのがハッキリと分かってしまう。

 ……心なしか、パンツもちょっと張ってないか?


「なるほど、どうりでちょっとばたばたしてたのか」


「う、うぅぅぅ」


 あれか、昨日は入った服が、なぜか今日はキツかった。

 それでラティアは上で慌ててたんだろうな。 


 

「……あー、まあ、サキュバス、だからな。うん、気にするな」


 俺は何とも言えず、そうとだけ告げた。

 

 ラティア曰く、サキュバスはその性的魅力を高めようとするように、その身体的特徴が育っていく。

 

 つまり、こちらに来てより栄養のある物を食べ。

 また、モンスターを倒してその経験値を蓄えた。

 なので、ラティアは女性として、どんどん魅力的になっている、ということだ。

   


 だから、まあ恥ずべき事ではないし。


 それに、偶にラティアは物凄く性に関して積極的になってたから。

 あまり気にしないと思っていたが、どうやら恥ずかしいことは恥ずかしいらしい。




「……はい」




 そうフォローしてみたが、未だ恥ずかしさのせいか、顔の熱が取り切れていない。

 ……大丈夫だろうか。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆  



「――うわぁぁぁぁ!! ご主人様!! 風が凄く気持ちいいです!!」


 さっきまでの心配は、もうすっかり消え去っていた。


「だろ? 朝だしな、蒸し暑さもない、快適だ!!」


 後ろから聞こえる声に、俺は少し声を大きくして答える。

 周りに人の姿はほとんどない。


 そんな中で、こうして風を切るようにして走るのは、とても気持ちがよかった。



「“自転車”ぁぁ!! とっても便利です!!」


 

 初めての自転車で、見事に乗りこなして見せたラティアは、そんな純粋な感想を口にする。

 よっぽどお気に召したらしい。


 本人は運動神経は良くない、と言っていたが。 

 モンスターの倒す割合は圧倒的に俺よりもラティアの方が多い。


 なので、身体的能力の上昇も、俺よりもラティアの方が大きいのだろう



 

「ですが、本当にいいのですかぁぁ!? 私がご主人様の“自転車”に乗ってしまって!?」 


「ああ!! 俺はこっちの、ちっこいの、乗り慣れてるからな!!」



 俺は、市が導入しているシェアサイクリングの自転車に乗って。

 ラティアは俺が普段使う自転車に乗っている。


 シェアサイクリングの自転車は各駅間に借りられる自転車とその置き場を設置してある。

 なので、乗り捨てができて便利なのだ。 



 俺の方が体の大きさからしたら、自分の自転車に乗った方がいいのだが。


「……」


 チラッと後ろを振り返る。

 むぅぅぅ……。

 デカい。

 

 織部の発展途上のサイズを考慮して、ラティアの服のサイズを決めたのに。

 女子は三日会い続けていても、刮目して見よとはこのことか。


 ラティアは最近成長著しいからな。

 女子では背もある方だし。

 それに、小さな自転車に乗ると、更にその二つの凶器の大きさが際立ってしまう。

 

 俺はサッとまた前の景色に集中する。

 何という磁力。

 これは、運転中は危険だな。



「? どうか、なさいましたか?」



 ラティアが不思議そうに首を傾げているのが、見てなくても手に取るように分かった。 


 まあ、今の行動は不自然だよな。




「――まだ10kmはある、ゆっくり、朝の景色を楽しみながら行こう!!」



「はい!!」



 それっぽいことを言って、何とか煙に巻いた。

 ふぅぅ。












 それから、初めての土地ということもあって。

 本当にゆっくりしたペースで漕いでいた。

 

 今向かっているのは。

 ラティアの分類でいうFランクのダンジョン――“校舎裏 ダンジョン”だ。


 ただ、『校舎裏』と言っても、俺の通っている学校の校舎裏、ではない。

 俺の家からだと15kmまでは離れてないくらいの距離にある隣町。

 

 

 そこに、他府県でもちょっと有名なお嬢様学校がある。

 つまり、今向かっている“校舎裏 ダンジョン”は、そこにあるのだ。



「…………」


「ふんふん……ふん、ふふん」


 言葉は交わさず。

 しかし、俺とラティアはこのまだ朝早い時間。

 二人きりでのサイクリングを楽しんでいた。


 ラティアなんか、鼻歌まで歌っているし。

 


 

 俺はそんなラティアを背中の方に感じながら。

 別のことを考えていた。




「…………」



 ――やはり、話すことはできない。




 本当にこの世界を全身で楽しんでいるラティア。


 そんなラティアの辛い過去も聞いた。

 もう、ラティアに、あんな辛そうな顔は、させたくない。


 その可能性があるなら、やはり、俺は黙っている――いや。


 何も知らなかった道化を演じるのが、正解なのだろう。




 ――俺は、織部に、一つ、嘘をついた。



「――ご主人様、あれは、何ですか?」



「あれは……通勤ラッシュを避けるために、家族の寝ている間に出かける悲哀を背負ったサラリーマンという種族だな」


 

 昨日も、織部から連絡があった。

 後2日程で、ようやく次の街に到着する、と。

 

 その際に、しつこいくらい、俺の体を気遣っていた。


『大丈夫ですか、体、おかしい所とか、違和感があるとか、ないですか?』みたいに。


 俺たちの間には、不文律というか、暗黙の了解というか。


“お互い、何か相談事があれば、きちんとそれに乗る”みたいな感じのものがあった。

 

 それは、相手の世界へと行き来できないための、気遣いから。

 最初に、協力関係を築くと決めたときから、なんとなくできていた。




「――ご主人様、ご主人様、あれは、何でしょう?」


「あれは……酔っぱらったまま公園で寝て、起きたら自分が何故こんなところにいるのか、と驚いているタイプだな」




 その“相談事”には、勿論。

 体調がおかしい、違和感がある、といったものでもよかった。



 俺は、それを、しなかった。



 不文律。つまり明文化されていない約束を、ズルく解釈したのだ。

“相談事”は、相談されなければ、相談事足りえない。


 

 ――とはいえ、俺自身も、最初は分からなかった。


『全く慣れていない人が薬草を過剰摂取すると、拒絶反応みたいなことが起こると思うんです。嘔吐したり、お腹を下したり……そんな、違和感みたいなものは、ありませんでしたか?』



 あの薬草の件。

 そう聞かれて、俺は「無かった」と答えた。


 ――だが、違和感は、あったのだ。



「――ご主人様、あれは……何をしているんでしょう?」


 ラティアの指さす方には。

 オッサンが片方の靴だけ脱いで、その靴をバットに見立て、素振りしていた。


「あれは……何をしてるんだろうな?」


 いや、本当に。







 

「――楽しかったですね、ご主人様!!」


 俺の自転車を駐輪場に預け。

 今はもう目的の高校が目に見える位置にまで来た。

 


「ああ、帰りもあるからな」


「はい!!」


 俺がそう答えると、嬉しそうに返事する。

 目に入るもの、体験すること、全てが新鮮で。


 ラティアはそれを本当に心の底から楽しんでくれている。


 

 だがラティアが来た当初――



 その時のことを思い出す。


 

 そう、その時こそ――




 ――俺の体には、違和感と呼べるものは、あったのだ。



 薬草しか食べられず、他の食べ物は喉を通らなかった。

 そして、冷凍した薬草の美味しさに、自分のアホさに、涙すら流していた。


 あれは、見方を変えれば、俺の体は不調を告げていたのではないか? 

 


「――あっ、あれが、“学校”ですか!?」

 

「ああ、多分な――随分綺麗な校舎だ……」

 


 それを分からなくしていたのが、ラティアへの罪悪感。

 でも今はそれがどちらかだったかなど、検証の仕様がない。

 

 それに、不幸中の幸いというか。


 冷凍した薬草を食べ、そのあまりの美味しさに感動を覚えた後は。

 食欲も完全に元に戻っていた。


 (あたか)も、毒により弱まった体に、エネルギーが注がれたかのように。

 冷凍されたことにより、毒が消えた薬草から、良い成分だけを抽出し、体がそれをむしゃぶりつくしたように。


 そして体は本能的にそれ一回の経験を気づきとしたのではないのか?

 それが、【ヘイトパフューム】獲得の真相だとしたら。 


 ――全部推測に過ぎない。

 冷凍されたから毒が消えた、というのも都合のいい解釈だ。



「“学校”……何だかドキドキしますね?」


「まあな……女子高だし」



 でも、この隣のラティアは。

 俺との時間を心の底から楽しんでくれて。

 俺を慕ってくれて。


 そんな少女が。

 可能性とはいえ、自分が弱っていたことからくる罪悪感から。

 主人が体の不調に気づけなかったのかもしれない、なんて知ったら?

 

 ――ラティアは優しい子だ。

 とても、とても、優しい女の子だ。



『私のせいで』……と自分を責めるかもしれない。

 

 そんなことは、させない。

 そんな可能性は、俺が潰す。



 

 俺を慕ってくれて、こんなに充実した日々を送らせてくれている。

 この少女の笑顔が曇るくらいなら。


 自分が、単にバカやっていたせいで、その不調を見逃してしまったという風にしてやる。

 心配してくれる織部には悪いが、今更そこをほじくり返しても、出てくるものはない。

 検証しようがないのだから。


 俺にできることは、自分を慕ってくれる女の子を、体を張って、ボロボロになってでも守って。

 一方で、頭を回せるところがあるのなら、自分にできることがあるのなら、自分の地位や名誉すら、チップに出すことだ。

 それくらいしか、ボッチの俺にできることは、ないんだから。


「――さっ、行こう。このまま突っ立ったままなのは、流石に怪しまれる」



 俺は、決意を新たに。


 胸を張って、女子高へと足を進めるのだった。






 ……いや、胸張って女子高へ向かうのはダメだろ、俺。 

 くそっ、カッコよく決めたかったのに……。  

1位まで本当にもう少しのところまで来ました。

なので、キリがいいから1位になったら、毎日投稿に一度休みを挟もう。

――そう考えたんですが、それだとあるジレンマが。


通常、読んでくださっているわけですから、皆さん投稿は多い方がいいのが普通です。

でも、1位になったら投稿に休みが挟まれる、とする。


そうすると、1位にしない方が、作者は休まねえんじゃね?と考えてブックマークや評価をしていただけない方向に力が働く――なんてことを考えたり。


なので、迂闊に“1位になったら○○します!”とかも言えませんし。

まあ一番したいのは、一回休憩挟みたいです。

ただ、今、本当にこの作品に勢いをつけていただいているのも事実。


悩ましい……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一位になってもどんどん投稿したほうが良いと思いますよ。で、一日辺り10万pvできたら隔日投稿ぐらいで! 応援してます!
[一言] 追記、作者さんが無茶をするよりも一日毎に日を開けたり、週に二、三回程度の更新にして疲れ無いようにしたらどうでしょうか? 毎日更新で無理するよりは良いのかもしれません。 安定して投稿してると…
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