124.感動のご対面……但し、映像だけどね!
予定していたより早めに片付け終わったので、更新します。
ではどうぞ。
「よいしょっと……ん、これで、いいかな?」
翌日。
学校から帰ってきて、さっそくリビングの前で色々の準備を済ませた。
テレビは録画、特に梓が出演した番組に合わせる。
「織部に気を使わせたからな……本当、俺なんでまだ学校行ってるんだろう」
そのせいで、あの後、物凄く良さげな場面にもかかわらず、俺はフェードアウトした。
まあ、だから、改めて今日色々話すんだが。
今はまだ夕方で、今日が金曜日ということもあり。
今回は明日の心配をせずにじっくり時間をかけることができる。
「ご主人、ノートパソコン。ここに置いておくね?」
「おう、ありがとう。悪いな、お泊りから帰って来たばかりで疲れてるだろう?」
テレビの前のテーブルに、俺のノートパソコンを置いてもらう。
梓とテレビチャットする際のものだ。
以前、梓とシルレを会話させるために使ったのと同じで。
DD――ダンジョンディスプレイの画面と、ノートパソコンのテレビチャットの機能を向かい合わせにして使うつもりだ。
「ううん、全然! リツヒとのお泊り、凄く楽しかったよ!」
疲労を隠しているでもなさそうな、本当に元気一杯の明るい笑顔で答えるルオ。
そんな様子を見ていると、自然のこちらの頬も緩む。
「そか……ならいいよ、こっちも助かる」
「――マスター、もう始める?」
二階から降りて来たリヴィルが入り口から顔を覗かせる。
「うーん……そうだな。そろそろ織部に繋ぐか」
そう返すと、小さく頷いたリヴィルは冷蔵庫に向かう。
そしてペットボトルのお茶を出し、コップに注いでいった。
3人分入れ終わると、お盆に乗せて戻って来る。
ルオとは反対側、俺の右手に腰を下ろすと、俺とルオにコップを配っていった。
「ラティアは……どうだった?」
それを尋ねると、リヴィルは一瞬苦い表情を浮かべるが、直ぐに戻る。
「出るとき? そんなにおかしくはなかったけど……リアの家に行ってるんでしょ?」
「……まあ、な」
リヴィルの言う通り、ラティアは今家にはおらず。
今日一日、逆井の家に泊まることになっている。
昨日、急に決まったことだった。
ルオは今日帰って来たばかりなので事情を知らず、そう言えばと辺りを見回していた。
「その“フォゼ”ってスライムの魔族……信用できるの? ラティア、そいつを警戒してたんじゃない?」
「うーん……何とも言えん。――ああいや、信用できるかどうかってところな?」
正直いうと、別に悪い存在には見えなかった。
というか、織部とかシルレが警戒しなかったから、そう判断したに過ぎなくて。
俺自身があのスライムの紳士について知っていることなんて殆どない。
昨日、通信を切った後、ラティアにあったことを簡単にだが話したのだ。
そうしたら……。
“明日……私は席を外しておこうと思います”
と言われた。
何か思い詰めてた、という感じじゃなくて。
ラティアなりに思う所があっての前向きな判断、みたいな感じだと思う。
だからそれを尊重して、特に口うるさく聞き出そうとはしなかったが……。
「……まあそれも、今から分かるんでしょ? 大丈夫。マスターも、ラティアも、ルオも。私が守るから」
いや、そう言ってくれるのは嬉しいけど、そこまで張り切って決意固めなくても。
流石にリヴィルが出張らないといけないような事態にはならないだろうから……。
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“さぁ! Raysで一番の不思議キャラと話題の梓川君! 解答をどうぞ!”
録画した昼のバラエティー番組。
司会を務めるのは、中堅の域を脱するくらいになって来た人気芸人だ。
“…………ハル?”
対するは、ゲスト出演で、かなり接待気味に正解を示唆されていた梓。
しかし、その的外れな答えに、逆にスタジオ内は爆笑に包まれる。
あれだけ解答を事前に匂わせたのに、ボケてるわけでもなく、大真面目に間違えているという笑いだった。
おバカキャラとも違う、独特の梓の雰囲気に、出演者たちからも優しい笑みが漏れる。
“いやいやいや! えっっ、いや、えぇぇ!?”
“じゃぁ……ルート?”
“何で!? 僕のヒントの出し方間違ってたかな!? 演歌で、冬の歌だよ!? 春とカタカナは中々歌詞には出てこないかな~!?”
「…………」
『…………』
あれ、何だろう……。
リヴィルと織部から、無言のシラーっとした視線を感じる。
『解答を繋ぎ合わせたら……不思議ですね、ニイミ様の名前? になりますか?』
いや、サラさん!?
良いんすよ、具体的に言及しないで!
今はさ、録画動画ではあっても、姉妹感動の対面ってところでしょ!?
ってか梓も梓で、生放送で何を答えちゃってんの!?
微妙に俺の名前匂わせんな!
俺の服着てるからって、ちょっと俺に引っ張られ過ぎ!
ああ、何か偶にシャツの襟引っ張って鼻に持っていく仕草してる!
服の匂いを嗅いで俺の存在を匂わすんですか、上手くねえよ!
本当やめろよ、最近のネット自警団凄いんだからな、そういう照合活動みたいなの!
SNSで投稿した文字の縦読みで不倫相手とか特定しちゃうんだから!
『……良かった、本当に……アズサ』
ほ、ほらっ!
そうそう、DD越しに録画見せてんのはこのためだよ!
カズサさん、この微妙な空気、一人で感動へと持って行っちゃって下さい!
『あまり見慣れない、男物の服も、着ているようですが……』
「ああ、それは梓に頼まれたんで、俺のを渡しました!」
『――新海君のを!?』
「――マスターのを!?」
凄い、織部とリヴィルがシンクロした。
でもここは気にしたら負けだ……。
「……ご主人、ある意味ラティアお姉ちゃんがお泊りで良かったね」
以前同じことをリヴィルに言われた気がするよ、ルオ。
『そうですか……アズサは、そこまで……』
俯き、何かを自分の中で確かめるようにカズサさんは呟く。
顔を上げた時、その目は力強く、何か揺るぎない決意・意志のようなものを感じさせた。
そして……告げる。
『――本当にありがとうございます、ニイミさん。不肖、このカズサ・ヨウカワ。この御恩は必ずニイミさんに返す所存です。一生を添い遂げてでも』
わーい“一生を添い遂げてでも”だって。
……。
…………。
………………。
ファッ!?
次話か、その次くらいには……多分、例のお話に入るかな、って感じですかね。
“例のお話って?”ですって?
それは……あれですよあれ。
DPも補充が済んで。
主人公パーティーの足りないかな、ってところも見えてきて。
それで……あれです。




