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112.ラ、ラティア、落ち着いて!?

お待たせしました。


ではどうぞ!



「…………」


「…………」


「…………」



 えーっと……静かだね。

 ダンジョン内、にしても。

 

 もうちょっと会話があってもいいと思うんだけど。

 俺の後ろを歩くラティア達の間に、何か不和があるわけではない。


 むしろ3人が3人とも。

 

 大なり小なり同じ思いを抱いているのだろう。

 その視線は俺を通り越して、前を歩く2体へと向けられていた。


 

「ギィィ、ギシッ!」

 

「Gigi,g---」



 ゴブリンのゴッさん。

 そしてゴーレムのゴーさんだ。


  

 この2体と、そして俺が【モンスター探知】を駆使して機先を制することで、ダンジョン攻略は上手く進んでいた。



「よしよし……もう4階層まで来た。よく頑張ってるな」



 労う意味も込めて、回復魔法にて治療を施す。

 ゴーさんはゴーレムだけあって無機質っぽく、あまり反応はない。


 一方のゴッさんは光に包まれ、嬉しそうに目を細める。

 ……流石ゴブリン。

 

 普通の感性を持った人がそれを見て、心が洗われるような顔ではないな。



「でも、これでも随分マシになった方だよな。最初なんて、見れたものですらなかったし……」    



 褒めてやると更にニィィっと口元の笑みを深める。

 それはそれでいいのだが……。




「……ご主人様、メスのモンスターにご執心です」


「……ラティア、あんまり気にしない方がいいって。マスターも偶には変わり物を食べたくなるんじゃない?」


「……でも、ご主人戦闘でもモンスターにばっかり戦わせてるよね。ボク達はずっと後ろをついていくばっかりで」



 3人は後ろで何やらヒソヒソと話している。

 ……まあ聞こえてるけどね。



「……モンスター娘に、目の前でご主人様を寝取られている気分です」



 いや、何言ってんの?

 ラティア、ちょっと目、ヤバいことなってるから。


 正気に戻って!?



「……ギギィ」



 バカッ、ゴッさん、そこでニヤッとするな!

 煽ってるようにしか見えないから!



「…………」



 ヒィィィ!!

 ラティアのこめかみに青筋が!?



「……え、えっと、最初に話した通り、これは単に俺が一人ででもダンジョン攻略に挑める以上の意味があるんだ」



 ゴッさん達に構ってるのは別にラティア達を蔑ろにしているわけではなく。

 こうして攻略の間俺達だけで頑張れば、ボス戦ではラティア達主力を、無傷で送り込めるのだ。


 だから、モンスター達を育てることは巡り巡って俺達全員に意味がある……と説いているのだが。



「……なるほど。要は“モンスター娘もいいね”ということですね」



 いや、間違ってはいないけど、ニュアンス的に合ってもいない。

 ……何だかラティアからただならぬ凄みが発生しているのでツッコまないが。



「……もっとご主人様の視線を釘付けにできるよう、先ずは肌面積を増やして、チャームで悩殺。それから女体のこと以外考えられないように私の体液を毎日少しずつ……」



 怖い怖い怖い怖い!

 ちょ、何か急速にラティアの目から光が失われていくんだが!?


 物騒なことをブツブツ呟いてるし!

 


「ギッ、ギギッ!」



 うっわ、ちょ、ゴッさん、だからこんな時に歯ぎしりすんなって!

 モンスターなりの威嚇か挑発なのか知らんけどさ!!


 女性としては圧倒的に、そもそも比較の対象になってないほどにラティアが勝ってるのに。

 なぜそこまで強気に出られるのかが分からん。



「……もういっそのこと、ゴブリンもチャームしてしまいましょうか。その方が良くないですか、ご主人様?」 



 ……あかん。

 ラティアと、特にゴッさんは何故か相性が悪すぎる。



「ギシシッ!」



 俺の足元へとしがみ付くようにして、更にラティアを煽るゴッさん。

 ラティアの何かがブチっと切れたような音が聞こえ、俺は諦めたかのように思考を停止。

 そして天井を見つめて、念仏のようにある言葉を唱え続けた。






 ――モンスター、モンスター、モンモンモンモン……。 

 

 





□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆

  




 リヴィルとルオの尽力によって、ラティアは当座矛を収めてくれた。

 一方のゴッさんは、ゴーレムのゴーさんによる拳骨を受けて反省したようだ。


 

 ふぅぅ。


 


「GIIIII!!」



 ゴッさんへと振るった加減のある一撃とは違い。

 容赦のない一撃が、箱型のモンスター――ミミックを襲う。


 ゲームとかでは、宝箱を開けたらトラップとして襲い掛かってくる、強者感あるモンスター。

 しかし、このダンジョンでは普通に蓋を開けた状態で出歩いているし、箱の造りもボロッちい。


 

「Btyaaaaa!?」



 気持ち悪い断末魔が、ダンジョン内に響き渡る。

 振り降ろされたゴーレムの腕で、一気にペシャンコに。

 

 ミミックは特にアイテムなどを落とすこともなく、消滅した。



「ギ、ギギィィ……」



 先ほど自分も怒られた際、一撃を食らっているゴッさん。

 ミミックの跡形もない最後を目にし、肝を冷やしているようだった。



「……まあマスターの意図は十分わかったけど」



 戦闘が終わった頃合いを見計らって。

 リヴィルが2体のモンスター、特にゴーさんを視界の端に入れながら近づいてくる。



「階層がそこまで多くなかったら、確かにこの2体だけでも行けるかもね」


 

 リヴィルのお墨付きは、勿論俺が背後からこの2体をサポートしながら、という前提がついている。


 

「でもボス戦はどうするの? ボス戦があるダンジョンって5階層あるのが前提なんだよね?」


「ああ。まあ今回は3人の手を借りることになるが、ゆくゆくは、俺とモンスターたちだけでも攻略できるようになれればな、と思ってる」



 ルオの質問に答えながらも、俺は以前の親子ダンジョンのことを考えた。

 安全をとるのなら、順序を踏んで子の方のダンジョンを攻略して、それから親のダンジョンへと挑戦する。


 それも勿論確実性があっていいが、どうしても二つにパーティーを分けたいという場合は出てくるはずだ。


 

 その際、俺が一人でも攻略できるのとできないのとでは随分戦略の幅が違ってくる。



「……要するに、マスターは私達が主力だって考えなの?」


「? ああ。リヴィルが前衛、ルオが中衛、そしてラティアが後衛のバランス抜群なパーティーだ」



 リヴィル達3人が1軍だな。

 俺とゴッさん、ゴーさんはまあ2軍。


 だから、最悪の場合、俺達が子ダンジョンを攻略して、3人が親ダンジョンへと潜ってもらうことも視野に入れている。


 ……本当は、危険な方へは俺が行きたいんだがな。



 そのことを話してみると、ルオが指を顎に当てながら考える。



「……うーん、もう一人いたら、バランスもとれるかもしれないのにね」


「と、言うと?」

     


 先を促すと、ルオは宙へと向けていた視線を外す。

 そしてゴッさん達、次にリヴィルやラティアへと移していく。



「えっと、ご主人的にはモンスター2体とご主人の方が戦力的にはイマイチだと思ってるんだよね?」


「まあな……」


「だったら、あと一人――モンスターでも、ボクらみたいな子がもう一人でも。いてくれたら、丁度良さそうな感じがするけど」



 なるほど……。

 

 ルオの言うことも何となく分かる。


 今の話を聞き、頭の中で、天秤が思い浮かんだ。



 

 片方右側に乗る重りは3つ。

 それぞれが左に乗る重りよりも一回り大きい。


 なので、左の重りの数も3つと同数にも関わらず、天秤は右に傾いている。


 そんな中、左の皿に、もう一つ、重りを追加。

 

 数はこれで4:3と上回り、天秤は水平に。


 重さがこれで釣り合ったのだ。




「なら、そのためにも。織部達には無事、次の町へとたどり着いてもらわないとな」



 まだ新しい奴隷を買うと決めたわけではない。

 しかし、選択肢が広がることは歓迎すべきだろう。



 2日前に、シルレが言っていたように。

 織部とサラ、そしてシルレは少数精鋭にて出発した。


 シルレが国から支給されている飛竜に乗って向かうとのことなので、明日か明後日くらいには着くらしい。


 


「これまでは楽させてもらったし、DPのこともあるからね。この先のボス戦は気合い入れるよ」



 リヴィルは5階層、つまりボスへと続く階段へと視線を向け、静かにそう告げる。

 言葉とは裏腹に、全く気負うでもなく体を伸ばして準備を進めていた。




「ああ、久しぶりのボス戦だ。油断せずにいこう」



   

 そうして階段の前で、俺達はそれぞれ、戦闘の準備を整えていったのだった。      

某テニスマンガの部長っぽく言ってみたけど、誰もツッコんでくれず、一人落ち込む新海さんであった……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] その歌・・・・・・ ラミアとか出てくるフラグですか?
[良い点]  ヒロインが増えるのは良い、とても喜ばしい事だ……ただしゴブリン、テメーはダメだ──な淫魔の人? [一言] > 「……ご主人様、メスのモンスターにご執心です」  やはりメスか、淫魔の人が言…
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