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111.織部ぇぇぇ……。

すいません、短めで、ストーリー的にもあんまり進んでません。

ちょっと忙しかったので、ここで力尽きました……。


ではどうぞ。



『……あけまして、おめでとうございます』



 DD――ダンジョンディスプレイの向こう側。

 新年の挨拶にしては不満がにじむ表情。

 

 それが言葉の引っ掛かり具合にも出ている。

 心当たりがないので、訝りながらも挨拶を返しておいた。



「おめでとう……何だ、新年早々、何かあったのか、織部?」


『“何かあったのか”? ――ありまくりですよ!!』



 耳を塞ぎたくなるぐらいの大声。

 元気だなぁぁと感心しつつ、織部が左手で握ったものへと視線を向ける。


 それは、以前――去年暮れから織部に頼まれていた物。

 先ほどラティアの準備が整ったためにDDの転送機能を用いて送ったのだった。



『何ですか、これは!?』


「いや……“お雑煮”、なんだろ?」



 ってか、それを送って欲しいって言ったの、織部じゃん。

 何で織部が疑問形で聞いてきてんの?


 ラティアが折角、織部の注文通りに作ったというのに。


 

『いや何で新海君が“やれやれ、話が通じないぜ……”みたいな顔してるんですか!?』



 お手本みたく華麗なツッコミを入れた後、その左手の“ペットボトル”をこれ見よがしに振って見せる。



『そうです、お雑煮なんですよ! 新年の始まりを象徴する日本人の正月の伝統食! それが何でペットボトルにパンパンに詰め込まれて送られてくるんですか!?』


「え、いや、だって……お椀によそって送るのも変だろ?」



 送ってそっちについた瞬間こぼれちゃうかもしれないし。



『だからってペットボトルに詰めて送りますか普通!?』


 

 画面にその手に持った物をズズズイっと近づけて、強調する。

 映っているのは、500ml容器に小豆と小さく小さく成形された白玉がパンパンに詰まっている様子。

 

 小豆の一粒一粒がしっかりと見て取れるほどの詰め込み具合だ。



『もうシュール過ぎて風情の欠片もありませんよ! これでどう新年を感じろと!?』



 ……そこまで言われなければならないのだろうか?

 なら、こっちも言いたいことがあるから、言わせてもらう。



「――そう言うがな、そもそも小豆のお雑煮ってなんだ!? それもうぜんざいかお汁粉だろうが! 元々が新年感なんてないだろっ!」

    


 更に“ぜんざい”と“お汁粉”の境界線問題も別にあるが、それは今は置いておく。



「百歩譲って出汁を取った透明の物でマウント取られるなら分かる、だが小豆の雑煮をもってドヤ顔で風情とか言われても全く分からん!」


  

 俺もそもそもは母親が透明な汁のお雑煮を毎年作っていて、そっちの方が馴染みはあるのだ。

 今年はラティアが0から調べて、作ってくれたから、それはそれでいいなと受け入れることができた。


 だがこれは違う……と猛反論したところ。




『…………え、透明なお汁? ――お雑煮って……小豆を使ったものじゃ、ないんですか?』



 表情が抜け落ちたような織部が、震える声でそう言ったのだ。



「…………」



 その後、よくよく聞いてみると。

 織部の家は毎年、小豆の雑煮を母親に作ってもらっていたので、それが、それだけが“お雑煮”と呼ばれる料理だと思っていたらしい。



 家庭間での常識の差って、色々あるよね……。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆




“後で器に移し替えて、美味しくいただきます……”と力なく告げた織部を何とか励ます。 

 というか、こういう役目を担ってくれるサラが見当たらない。


 どうしたのかと聞こうとしたところ、丁度シルレを連れて織部の部屋へと戻って来た。



『おお、ニイミと会話中だったか――って、どうかしたか?』


「シルレか……すまん、サラ、織部が……」


 

 それだけで何となく事態を把握したのか、慣れたもので、表情を変えず直ぐに織部へと近づいていく。

 サラは近くにあった織部の荷物を漁り、おそらく俺が送ったであろう衣類の一つを取り出した。



『――さぁ、カンナ様、未だカンナ様が使用してない物ですよ』


 

 独特の表現をした後、その肌着を織部の顔の前へと持っていく。



『吸ってぇぇ、吐いてぇぇ……吸ってぇぇ、吐いてぇぇ……』



 サラの声に合わせて、織部は呼吸を繰り返す。

 沈んでいた表情が、徐々に戻り、次第に目を細めていく。



『あぁぁ……微かですが、仄かに新海君の、異性の香りがします……』



 これ……色々と大丈夫なのだろうか。


 織部のメンタル調整法としてもそうだが。

 それを俺が見ているという点でも、後々面倒臭いことになりそうな予感がしてならない。

    

 

『――申し訳ありません、シルレ様。もう少しカンナ様の調整に時間がかかりそうですので、ニイミ様と……』


『……ああ、分かった』

 

 

 織部が復活するまでの間、シルレが相手をしてくれるということだろう。

 だがあちらのDDの画面前まで来たシルレは……物凄く微妙な表情をしていた。



「……すまん、織部が迷惑かけるな」


『……いや、私は大丈夫だが、うん』



 普段から飄々としていて歯に衣着せないようなシルレが、言い淀んでいる。

 ……織部は今年も、多方面で色んな人に影響を与えているようだ。






『――ん、んん』 



 咳払いしたシルレは改めて表情を作り直し、話し始めた。



『まあ丁度いい機会だ、ニイミには伝えておこう。――明日町に向けて発つ。3,4日で着く予定だ』




お昼には時間を取って、感想の返しができそうです。

読んではいます、ちゃんと。

なので後少し、もう少しだけお待ちください!

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― 新着の感想 ―
[一言]  小豆のお雑煮……冬至の時、白玉を南瓜に変えたようなのが出たわ。 > 俺もそもそもは母親が透明な汁のお雑煮を毎年作っていて、そっちの方が馴染みはあるのだ。  地方によっては透明な醤油雑煮じ…
[一言] 織部さん、順調に変態(勇者)の道を歩んでますね。 というか、これ…戻ったら主人公に(性的な意味で)責任取らさないと人生詰むパターンですね(
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