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106.やめろ、これ以上の罪を犯すんじゃない!!

ふぅぅ……。

ではどうぞ。


『――この国を、世界を襲った未曾有の事態、ダンジョンの出現。それに立ち向かったのは今年発足したばかりのダンジョン探索士たちだった』



 映像は、ダンジョン自体やダンジョン探索士の簡単な説明から始まった。

 最初こそ堅苦しい話になるのかと思ったが、直ぐに映像は切り替わり。


 そこに映し出されたのは、正に今、この場にいる彼女たちだった。



「あっ、私達ですね! 先輩先輩! 出てますよ! 私、どうです、可愛いですか?」


 

 ……いや、桜田、お前が映ってるの、皇さんにガン飛ばしてる映像なんだが。

 それをどう可愛いと言えばいいのか……。



「ああ、そうだな、ちょー可愛い。ほんとほんと、来世一可愛い」


「“来世”!? それ褒められてます!? 貶されてませんか!? 適当に返事するにしても“世界一”とか“宇宙一”とかじゃないんですか!?」


 

 ううむ、やはり桜田の適正はバラエティー番組だな。

 貴重なツッコミ枠だ。



 

『彼女たちが最前線でダンジョン攻略という偉業を成し遂げてくれたおかげで、国内は沸き立った。それだけでなく、アイドルとしても正に飛ぶ鳥を落とす勢い。発売したCDは――』



 あのお披露目ライブの映像に移り変わる。

 赤星がバク転を披露し、逆井や志木、そして皇さんが歌いながら会場を盛り上げている場面だった。



「生で見てたけど、ハヤテ、凄くカッコよかったよね」


「うーん、結構歌って踊るのに必死だったから、あんまり覚えてないや」



 リヴィルに褒められた赤星は照れ隠しなのだろうか、頬を掻いて小さく笑っている。



「リツヒも凄かったよ! 他の人よりも体、大きいわけじゃないのに、会場全体を動き回って、それで歌もちゃんと歌ってて!」



 ルオもあの時の興奮を思い出したように皇さんを褒め倒す。

 


「……んっ、その、ありがとう、ございます」


 

 恥ずかしそうにしながらも、皇さんは褒められて嬉しそうにもぞもぞ動いていた。



「…………」


「…………」



 えと……何すか?

 かおりんも、逆井も、ほらっ、テレビ見ようぜ、テレビ!



「…………」


「…………」



 その無言の圧力やめようよ……。



「あ~、その、あれだ。椎名さんから教えてもらったサイトでも、逆井と志木の歌は、飛びぬけて上手かったって、あったな」


「フフッ……翻訳するまでもないと思いますが、ご主人様もお二人の歌はお上手だったと」



 こらっ、ラティア、お茶目に笑って見せてもダメだぞ。

 全くもう……。



「へ~そっかそっか……」


「……それなら良かったわ」



 ……まあ、怒られないならいいけど。




『――そして、次は男性探索士アイドルが誕生する番だ――』



 

 そのナレーションと共に、映像がスタジオに戻される。

 既に準備を終えていた立石達4人がアップに。



『その甘いマスクでファンや女性全てを惹きつける!! ――立石(たていし)ぃぃ総悟(そうご)っ!!』

 


「あれで甘いマスクと評するのね……良かった、私甘い物ってやっぱり苦手なのよね」


 

 こ~らっ、ちょびっと黒かおりん、出てるぞっ☆

 ……いや、うん、俺もちょっとその紹介には異議あり!!と叫びたくなったけども。



 紹介は一人一人されていくようで、木田や、勿論梓のことも呼ばれていく。



『醸し出す不思議な世界、触れたら病みつき、二度と普通には戻れない――梓川(あずさがわ)ぁぁぁ(かなめ)っ!!』



 いや、薬物かよ。

 もうこれはツッコんだらダメな奴なんだろうな……。



 残りの眼鏡インテリ、(ふじ)冬夜(とうや)さんも待った!!と言いたくなるような紹介を終え。 

 

 明かりが消える。    

 

 そしてその中央が、せり上がってくるタイプのステージだったようで――




 ――バッとライトがその中央に集められた。      



 スモークが四方から焚かれ、登場を演出する。



 それが全て消え去った時。



 男が一人、飛び出してきた。




□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『――そして最後の一人。帰国子女で、欲しい物はその手で何でも手に入れる我儘王子――龍爪寺(りゅうそうじ)ぃぃぃ(しょう)ぅぅぅ!!』


『Fooooooo!――待たせたな、皆ぁっ、俺だぜっ!!』








「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」






 ――おいやめろ!



 この空気何とかしろよ!!   



 赤く染めた髪をして、そこそこ体格のいい男が出てきてから。

 こっちとあっちでの温度差が凄いことになっている。

 

 テレビの向こうはもう興奮度Maxで、観覧客を含め盛り上がりまくっている。

 一方のこちらは先程の焼き肉でのはしゃぎ様が嘘みたいで、網の下の火のように盛り上がり全てが鎮火されていた。


 もうここは御通夜かとツッコミたくなるくらいだ。



『――堀田の野郎から、伝言を預かってるぜ――“プロデューサーとして君たちの船出に関われたこと、誇りに思う”』



 こちらの空気が死んでいることなど関係ないとばかりに、龍爪寺という俺様な男は続けていく。


「…………」



 か、かおりん!?

 大丈夫か、表情が抜け落ちてる!! 


 しっかりしろ、傷はまだ浅いぞっ!



『“これからのダンジョン界隈、アイドル業界――いや、この国全てを照らす光となって欲しい、そんな思いを込めて、君たちにRaysというグループ名を送りたい”――フッ、俺達に相応しい名じゃないか』 


 

 テレビの向こうでは頂点かと思われていたボルテージが更に高まる。

 それに反して、こちらは死の淵はまだ更に底があるんだというように空気が凍っていく。



「…………ぅぅっ」



 大丈夫っ、皇さん、別に危ない奴とかじゃないから!! 

 多分、ちょっと、頭が俺達とは違う作りなだけだから!!


 だから、極寒の地で魔物に襲われているみたいに震えて怯えないで!!




『俺は今日この日のために、試練を積み重ねてきた――フッ、さぁ、お前たち、これから5人でやっていくんだってな? この俺様についてこれるかな?』


『…………』



 梓ぁぁぁぁ!! 

 イラっとして殺気を漏らすな!


 グループ結成の瞬間に一人が現実から永久脱退とか洒落にならん!!



「……何かさ、(たて)ゴンと木田ッチの悪い部分を足して2で掛けたような、そんな感じだね」


 逆井、バカッ、お前“掛けて”どうすんだよ、割ってやれよ!!

 いや、正にそんな感じだけどさ!!



「――どうしたんですか? さっきから、嫌に静かですね……何かありましたか?」



 あっ、椎名さん!!

 良かった、この空気、何とかしてください!!



『オーケーオーケー! 歌だろ歌。留学先でも俺の美声に酔う奴が多くて困って――ああ、分かった分かった。さぁ、始めようぜ、ここが俺達の伝説の始まりだ!!』





「――えっ、何ですかこれ。放送事故?」




 椎名さん、率直なご意見どうもありがとうございます……。

 いや、うん、俺達にとってはもう正にその通りなんだけどね。





 その後、テレビでは最高の熱気を帯びながらデビュー曲が披露された。

 ただ、俺達の空気が更に凄いことになってしまったことは言うまでもない……。



本当はもう後1話で3章終わらせるつもりだったんですが、ちょっと今日の体力面的にキツいと判断して、2,3話見ておくことにしました。


すいません……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回の章で忘れられてそうな堀田峰敏キャラが絡んで来そうかな、竜爪寺とか言う輩も突っかかって来そうかな?
[一言] 会場は大盛り上がりって事は龍さんは元々有名な方なのですかね? それともテンションに引きずられただけ?
[一言] > 『その甘いマスクでファンや女性全てを惹きつける!!  つまり勇者は女性ではなかった……? まさか女性ではやく性女!? > 醸し出す不思議な世界、触れたら病みつき、二度と普通には戻れない…
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