99.ヒョエェェ!? かおりん、おこなの!? 激おこなの!?
もう“おこ”も古いのかもしれませんね。
若者言葉は日々進化している……。
追いつくのマジつらたん(これもか)
「え、ええと……志木さん?」
『…………』
「あ、あれっスね、天気も良くて、絶好の引きこもり日和だなー」
『……今日、雨よ』
「あの、えと……そっスね」
「…………」
ア、アカン!
ボケが通じなかった!!
コミュニケーションが成立する自信ないぞ、これ!
しかもやっぱり想像してたように視線が痛い!!
かなり怒っている……。
かおりん、激おこ中である!
『……何か?』
「いえ、何もないッス」
ヒィエェ!
素敵な笑顔なのに目が笑ってない!!
こんな時、どうすればいいか分からないのかな?
笑えばいいと思うよ!!
ってかもっと笑って!!
ほらっ、かおりんスマーイル!!
笑った君の方が可愛いよ!?
『もう、何よ……』
だがやはり笑ってくれるはずもなく。
画面からプイっと顔を逸らしてしまうだけだった。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
「そうですか!! お誘い頂きありがとうございます! 数日内にはお返事をと思ってます」
『ええ……ラティアさん達なら大歓迎だから。個人規模での簡単な打ち上げパーティーだし、遠慮せず来てくれると嬉しいわ』
あの凍えるような空気の中。
何とか事態を打開しようと思考していた最中、天啓を得た俺は即座にラティア達を招集。
志木もそれで態度を軟化させて、ようやく会話らしい会話をし始めてくれた。
……まあ、主にラティアを相手に、だけどね。
俺?
俺はいいんだよ……ってかできれば放っといてくれ。
芋虫ダンジョン攻略を改めて報告とかいいから、かおりんの腹の虫が収まるまで時間置かない?
「ご主人凄い……あのサングラスのアイテムを使ってないのに、気配が薄まってる」
「普通に座ってるだけなのに……マスター、何かしたの?」
……何もしてねえよ。
ただこれ以上かおりんの逆鱗に触れないようひっそり隅にいるだけだよ。
だから、二人とも、あんまりこっちに話を振らないで――
『――先日の件、改めて、お礼を。終盤のあのさなぎ型のモンスター。貴方が倒してくれたんでしょ? 助かりました。私も、多分白瀬さんも、あの時は頭真っ白で、まともには動けなかったから』
ああ、ほら……こっちに話飛んできちゃった。
「……ウっス。っつっても、あのモンスター、ほぼ瀕死状態だったからな。あれ、大丈夫か、映ってなかったか?」
それも実は心配事の一つではあった。
ちゃんと灰グラスつけてたが、そもそもビデオで撮ってたか分からんし……。
まあ、最悪映ってたら……桜田に何とかさせないと。
『それは大丈夫です』
「ああ……それは、良かった」
……凄い淡泊なお返事。
志木め、俺に対する愛情は無いのかーー!!
Siriでももっと表現豊かに返してくれるのに。
この俺に、温かいのはスマホだけ……。
ヘイSiki、俺に対する愛情はあるの?
……無いんだろうなぁぁ。
ラティアと話してる時とはえらい違いだ。
志木って、もしかして俺のこと嫌いなんじゃない?
ああ、その考えが浮かんでくると、本当にそう思えてきた。
……まあ仕方ないか。
ショックではあるが、これ以上嫌われないようにしよう。
『…………』
「…………」
また、沈黙が。
今度はリヴィルとルオの二人も、気軽に口を挟めるという感じでもなく黙っている。
うーむ……え、これ俺が何か言った方がいい感じ?
『――ねえ』
っと、志木の方が切り出したな。
『“あの日”も――私を助けてくれたのは、貴方なんでしょ?』
「…………」
――来たか!!
とうとう、この話題が。
これは……答え方を間違えるわけにはいかない!
「あの日? 何のことを言ってるのかは分からんが……」
もうここまで来たら白を切り通すしかあるまい。
画面越しに映る志木の表情、やはりただならぬ凄みを感じるがやり切って見せる!!
『っ!! 貴方は、そうやって――』
何かを呟いた志木は一瞬悔しそうな表情をして。
するとすぐにハッとして、俺の傍に控えていたラティアへと振り向く。
『ラティアさん!! 貴方は、貴方はいたんじゃない!? あの鎧をした蟻のモンスター!! 誰か強者がいないと説明がつかないもの!!』
ッ!!
そう来たか!!
だがここで視線で合図でも送ろうものなら、鋭い志木のことだ。
更に勘づくきっかけを与えかねない。
「……その――」
ラティアの声は最初、間を置くように躊躇うものに聞こえた。
しかし、それは一瞬で迷い無い否定の声音に変わった。
「申し訳ありません、カオリ様。私も、ちょっと存じ上げません」
ナイスだラティア!
よし、これで一気に畳みかけよう。
「悪いな、でもその打ち上げ? はちゃんとラティア達が行けるように日程も空けとくから」
言っていることに全く身に覚えがありませんよ、それよりもさっきの話、ちゃんと聞いてましたよ的な返事で上手く話題を逸らす。
全く心当たりがない場合を想定すると、“いや、何の話? 何言ってんの? 志木大丈夫?”みたいに軽く流すのが普通だと見た!
『何で、話してくれないの……やっぱり私の、ため?』
志木は俯き、呟いた。
……いや、勿論俺のためだけど?
だって話したら話したで物凄い怒るでしょ?
今まで黙ってたでしょーって。
でも……あれ?
何か微妙に噛み合ってない感はあるけど……。
ただ、それを解消したり、疑問を質す余地はなかった。
『あっ、御姉様、まだ陽翔様とお話の最中でしたか――』
『花織様、ただいま戻りました』
お風呂上りなのか、バスローブに身を包んだ皇さんと仕事着の椎名さんが戻ってきたのだ。
それで話は唐突に途切れ、志木は本当に一瞬だけ悔しそうな、切なげな表情を浮かべた。
だがそれは直ぐに元に戻り、皇さん達に笑顔を向ける。
『ええ。……律氷、椎名さんゴメンなさいね、彼にあのこと、話しておいて。私はお風呂を頂くわ――』
そうして返事も待たずに、足早に画面の外へと去って行く。
皇さんも、そして椎名さんも少々呆気に取られていて、しばらく彼女の歩いて行った方を眺めていた。
『えと、その……椎名? 御姉様、何かあったのでしょうか?』
『はぁぁぁ……大方、そこの新海様が、何かしら関係しているのでしょう』
椎名さんに盛大に溜息を吐かれ、そして断言するような言い方をされて少しムッとするも。
おそらくその通りなので何も言い返せず黙っていた。
ぐぬぬ……仕返しに、今度こっそり椎名さんを出し抜いて、皇さん連れて遊びにでも行ってやろうかな……。
……止めておこう、皇さんの喜んでくれる表情と引き換えに、椎名さんと皇父をダブルで召喚することになりそうだし。
一高校生でしかない俺のライフポイントなんて一息で消し飛ぶだろう。
その後、椎名さんの補佐を受け、戸惑いながらも皇さんは状況を把握。
志木から打ち上げの誘いを受けたことを改めて伝えた。
ラティア達の日程は空けて置いて、後は彼女ら次第だと簡単にだがもう一度話しておく。
そこで俺の出席について、椎名さんから厳しく追及を受けそうだったので、これまた話題を逸らすことに。
「――で、そういえば、志木が言っていたあのことって?」
それで思い出したかのように、皇さんは手を打って、表情を改める。
『そうでした――飛鳥様……えっと、白瀬飛鳥様との交渉・調整が済みました』
話を受け継いだ椎名さんが更に短く要点を伝えてくれた。
『拍子抜けです、案外すんなりと進みました。後程、具体的な日程はお伝えしますが――“梓川要”との接触ができそうです』
すいません、感想の返信はまた明日以降纏めて行おうと思います。
ちゃんと読んではいるんですが、今日はちょっともう疲れてて……すいません。
折角送っていただいたのに、本当に申し訳ない、もう少しお待ちください。




