年度別『レーベルごとの出版数』の推移②
<< 続き >>
では今回は出版作品紹介記事が多い上位10レーベルについて、年度別推移をみていきたいと思いいます。
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<< 出版数の多いレーベル トップ10 >>
まず最初に、出版作品紹介記事の数が多いレーベル順に並べ替えて『出版件数の多い上位10レーベル』を今回の検証の対象としたいと思います(全部のレーベルを見るのは大変なので、、)
□ 結果
□ 考察
累計値を見ると、現在までに最も多くのなろう書籍を出版しているのは『KADOKAWA』のメディアファクトリーが手掛ける『MFブックス(304)』となっていることが分かりました。
その次の二番目に『主婦の友社』が手掛ける『ヒーロー文庫(279)』が位置しており、市場参入時期も早かったこの2レーベルが、なろう書籍化市場における大手レーベルと言える存在であることが分かります。
では次に年度別推移を見ていきたいと思います。
※一応、全レーベルの集計結果も一応貼っておきます。ただ、なろう本文では極小表示となっていると思いますので、画像をクリックして「みてみん」のサイトでご覧いただけましたらと思います。
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<< 上位10レーベルにおける年度別推移 >>
次に2010年から現在までの上位10レーベルにおける年度別出版数の推移をみていきたいと思います。
※2019年はまだ年度途中のデータなので参考値程度にお考えください
□ 結果
□ 考察
市場参入時期で見ると最も参入が早かったアルファポリスの『レッジーナブックス』は2013年までは最も多くのなろう書籍を出版していましたが、その後は2013年から市場参入してきた『MFブックス』に抜かれる形となっていることが分かります。
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また、全体の出版総数が微減した2018年においても『トップ10レーベルの出版数合計』は微増していることが分かります。
このことから、2018年の出版数の減少は、上位レーベルが出版数を減らしたからというわけでは無く、減ったのはそれ以外の部分であることを読み取ることができます。
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<< レーベルごとの年度別推移 >>
では最後に、各レーベルごとに2010年から現在までの推移を見て行きたいと思います。
※2019年のデータは年度途中の数値であるため参考値として薄く表示しています。
□ 『MFブックス』
2013年からなろう書籍化市場に参入し、多くのランキング上位作品の書籍化を行っているMFブックスが現在最もなろう書籍を出版しているレーベルとなっています。
MFブックスは参入時期としては最先発のアルファポリス系レーベルよりはやや遅れるものの、2014年に著しく出版数を倍増させており、他社よりも早い段階でなろう書籍化を本格的に行ったレーベルと言えます。
ただし近年の推移を見ると、2016年にピークを記録した後は出版数は微減傾向にあり、少なくとも現在はイケイケドンドンな感じではなくなっている様です。
書報:MFブックス
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=23
□ 『ヒーロー文庫』
2番めに多くのなろう書籍を出版している『ヒーロー文庫』は2012年に市場参入した先行組です。
推移としては、2012年に市場参入した後、2016年に大きく出版数を伸ばし、なろう書籍化事業を本格化させたことが分かります。
書報:ヒーロー文庫
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=10
□ 『アース・スターノベル』
アース・スター エンターテイメントの『アース・スターノベル』は2014年に市場参入したやや後続組ですが、現在多くのなろう書籍を出版しているレーベルの1つとなっています。
書報:アース・スターノベル
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=49
□ 『カドカワBOOKS』
2015年にKADOKAWAの組織改編によって誕生した『カドカワBOOKS』は2018年時点では最も多くの作品を出版している大手レーベルとなっています。
あと、KADOKAWAは2015年に独自のネット小説投稿サイト『カクヨム』を運営開始しています。
書報:カドカワBOOKS
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=66
□ 『アリアンローズ』
女性向けライト文芸レーベル『アリアンローズ』は2013年に市場参入したやや先発組であり、2016年をピークになろう書籍の出版数の伸びは停滞している様ですが、見方を変えると安定期に入っていると言えそうです。
書報:アリアンローズ
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=19
□ 『レジーナブックス』
最先発のアルファポリス社の女性向けライトノベルレーベルである『レジーナブックス』は最も早い段階からなろう作品書籍化に取り組んでいたレーベルと言えます。
ただし2016年のなろう規約改定以降は作品紹介件数は大幅に減少し、2018年以降は0となっています。
※なお、このことが意味するのはレッジーナブックスによるなろう作品書籍化が止まったという訳ではなく『なろうで読めなくなった』ということです。
書報:レジーナブックス
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=2
□ 『アイリスNEO』
2016年に創刊・市場参入した、女性向けライトノベルレーベルである一迅社の『アイリスNEO』の出版数は増加傾向にある様です。
なお一迅社自体は『一迅社文庫アイリス』として2012年からなろう書籍化市場に参入している先発組です。
書報:アイリスNEO
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=69
□ 『HJ NOVELS』
みんな大好き『ホビージャパン』が発行する『HJ NOVELS』は2015年から登場。
ホビージャパンは今年7月に独自のネット小説投稿サイト『ノベルアップ+』をオープンしており、出版という形態かどうかはともかく、ネット小説界隈にはより注力する姿勢を見せているようです。
書報:HJ NOVELS
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=55
□ 『PASH!ブックス』
『主婦と生活社』の『PASH!ブックス』は2015年に市場参入し、近年の出版数は停滞傾向にある様です。
書報:PASH!ブックス
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=65
□ 『GAノベル』
『SBクリエイティブ』の『GAノベル』は2016年に市場参入した後発組ですが、出版数は増加傾向にあるようです。
書報:GAノベル
https://syosetu.com/syuppan/list/?labelid=76
以上、レーベルごとの年別推移でした。
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<< 前回・今回のまとめ >>
2回に渡って、レーベルごとの年別出版数の推移をみていきました。
分かったこととしては、
・なろう書籍化市場参入レーベルが増え始めたのは2012年頃からであること
・現在までに最も多くのなろう書籍を出版しているのはKADOKAWAの『MFブックス(304)』、次点で主婦の友社の『ヒーロー文庫(279)』であること
・全体の出版総数が微減した2018年においても、出版数上位10レーベルに限ってみると出版総数は微増していること
などでした。
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レーベル別の推移を見ると、上位10レーベルにおける出版総数が微増傾向にあることから『なろう書籍化市場は縮小しているわけではない』と言えそうです。
一方で、多くのレーベルにおいて出版数が倍々に伸びていく急激な成長期は終わり、現在は安定期に差し掛かっているというのが現状な様です。
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<< 次回最終回 >>
総合考察 ― なろう作品書籍化市場の現状と将来 ―
なお禁断の『レーベル別 続刊発行率』は……
……やめておきますっ
もしどうしても気になる方は、下記のページにデータ一括取得のPythonコードを掲載しておきますので、ご自分でお確かめください。
なろう作品の書籍化情報を全取得するPythonコード - なろう分析記録 https://karupoimou.hatenablog.com/entry/2019/07/02/220557