年度別『レーベルごとの出版数』の推移①
今回からは、引き続き同じデータセットを使って『レーベルごと』に年度別推移を見ていきたいと思います。
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<< 『レーベル』とは >>
『レーベル』は出版社における『ブランド名』の様なものであり、出版社をより細分化した単位と言えます。
同じ出版社による出版であってもレーベルごとに特色が異なるため、多くの読者にとって『出版社名』より『レーベル名』でみた方がより馴染み深く、推移の傾向が分かりやすいのではないかと思います。
では検証していきます。
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<< レーベル名の『記載割合』 >>
さっそく検証していきたいですが、その前に『出版作品紹介記事におけるレーベル名の記載割合』について確認しておきたいと思います。
なぜなら出版作品紹介記事における『レーベル名』の記入は任意であるためか、それなりに多くの作品がレベールの記載が無い状態となっているからです。
□ 結果
□ 考察
全体としては2割の出版作品紹介記事でレベール名が欠損値となっています。よって、今回のレーベル名別集計に含まれない作品も相当あるため、今回の集計結果がそれほどあてになるデータではないかもしれないと言うことが分かります。
一方で年代別に推移を見ると、レーベル名の記載率は上昇傾向にあり、近年の作品についてはほぼ集計に含まれるようになってきていることから、近年の分に関してはそれなりに信用性のあるデータと言えそうです。
では、年度別集計をみていきたいと思います。
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<< 年度別推移 >>
―― 2000年~2009年 ――
なろう黎明期のレーベル名記載は0件となっています。
黎明期の出版社は小規模なところがほとんどであるため、もしかしてレーベルと言えるものそもそもなかったのかもしれません。
―― 2010年~2012年 ――
2010年からアルファポリス系の『エタニティブックス』『レジーナブックス』が登場。
続いて2011年にはラノベ系の『電撃文庫』が登場しています。
そして2012年には現在多くのなろう作品を出版している『主婦の友社』の『ヒーロー文庫』が参入しています。
以降、各年ごとにみていきます。
―― 2013年 ――
KADOKAWAメディアファクトリーの『MFブックス』が参入。
また、女性向け作品を数多く手掛ける『アリアンローズ』の参入もこの年からです。
―― 2014年 ――
この年から参入レーベルが一気に増加。
首位は『MFブックス』となっています。
『オーバーラップ文庫』『GCノベルズ』『TOブックス』『アース・スターノベル』『モンスター文庫』などが参入。
―― 2015年 ――
引き続き『MFブックス』が首位。
上位勢の構成はほぼ固まってきているようにみえます。
あとこの年からKADOKAWAの組織改編によって『カドカワBOOKS』が登場。
―― 2016年 ――
『MFブックス』『ヒーロー文庫』『アース・スターノベル』『アリアンローズ』などの上位陣の出版数の伸びが顕著です。
この頃は新規参入の増加と同時に、以前からなろう書籍化を手掛けている出版社が、更に出版数を増加させていたということがうかがえます。
―― 2017年 ――
『ヒーロー文庫』が僅差で首位に。なおヒーロー文庫の主婦の友社は新レーベル『プライムノベルス』もこの年に立ち上げており、よりなろう書籍化市場に注力する姿勢であることがうかがえます。
また、2016年9月のなろう規約改定以降、『レジーナブックス』などのアルファポリス系のレーベルの出版作品紹介記事は減少していき、この年を最後にほぼ無くなります。
―― 2018年 ――
『カドカワBOOKS』が首位に。
上位陣の出版数をみると、かつての様な顕著な増加は見られず、多くのレーベルで出版数が頭打ちな傾向にあることが分かります。
なろう作品書籍化市場の右肩上がりの成長はほぼ止まったと言えるのではないかと思います。
―― 2019年 ――
そして現在。
現在もっともなろう書籍化作品を出版しているのは2012年という比較的初期の頃から市場に参入していた『ヒーロー文庫』となっています。
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<< 次回 >>
次回は累計出版件数の多い上位10レーベルについて、それぞれ年度別推移をみていきたいと思います。
ぽいんっ!
(レーベルについての考察は次回にまとめて行いたいと思います)