年度別『出版社ごとの出版数』の推移①
今回からは、年度別に『出版社』ごとにわけて『出版数』の推移を見ていきたいと思います。
なお、出版社名は社名変更や組織の統廃合などによって、年代ごとに変化があり、同じ会社であっても名義だけが変わっているという例もありますが、今回は出版作品紹介記事に記載されている名義をそのまま用いることにします。
―― 黎明期 2000年~2007年 ――
記録にある最初の出版は『鳥影社』によるものです。
ただこの記録は第一話で書いたように、小説家になろうの開始時期より遡るため、おそらくなろうで掲載されていた作品が書籍化されたというより、なろうに登録したユーザーが過去に出版していた書籍を紹介したものではないかと思われます。
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2002年から登場する『文芸社』、2006年から登場する『新風舎』はどちらも自費出版を手掛ける出版社の様です。
書報ページで出版作品紹介されている作品が自費出版によるものであるのかどうかは不明ですが、この頃はまだ、なろう作品の書籍化はきわめてマイナーな存在であり『なろう書籍化市場』といえるほどのものはまだ形成されていていなかったと言えそうです。
―― ネット系出版社参入最初期 2008年~2010年 ――
トレンドが変化するのは2008年からです。
2008年には『アルファポリス』や『アスキー・メディアワークス』など、ネットにフォーカスした出版社の参入が始まります。
ただし最初から出版数が爆発的に増加するわけではなく、やはりまだなろう作品の書籍化はマイナーな存在であることがうかがえます。
―― なろう作品書籍化市場の形成 2011年 ――
次にトレンドが大きく変わるのは2011年です。この年以降、多くの出版社がなろう作品の書籍化に参入する様になり、徐々に『なろう作品書籍化市場』が形成され始めたと言えるのではないかと思います。
以降、各年別に推移をみていきます。
―― アルファポリスによる書籍化の本格化 2012年 ――
2012年は『アルファポリス』が1社だけで61出版もの刊行を行っています。この頃から『アルファポリス』はなろう作品書籍化を本格化させたと言えそうです。
また近年多くのなろう書籍を手掛けている『主婦の友社』が参入したのもこの頃です。レーベル名としては『ヒーロー文庫』ですね。
―― 引き続きアルファポリス 2013年 ――
2013年も引き続き『アルファポリス』が市場を牽引しています。
他の出版社も前年より出版数を増やており、市場が徐々に拡大傾向にあることが分かります。また電子書籍や自費出版を手掛ける出版社名義での出版も増えています。
―― なろう作品書籍化市場の拡大 2014年 ――
2014年になると引き続き『アルファポリス』が最大手であるものの、他の出版社も本腰を入れ始めたということが分かります。
なおこの頃のKADOKAWA系列は名義が統一されていないため、複数の出版社として別々にカウントされていいますが、KADOKAWA系列を全部合わせると76になり、なろう作品書籍化市場においてアルファポリスに匹敵する存在となってきていることがうかがえます。
<< 続く >>
今回のまとめ
・なろう作品書籍化市場が形成され始めたのは2011年頃
・当初なろう作品書籍化市場を牽引していたのは『アルファポリス』