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落ちこぼれ魔法使いは召喚した最強ドラゴンに愛される~お姉さんドラゴンと巡る伝説?の旅~  作者: 高井うしお


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2話 盗賊

 僕とレイさんはてくてくと道を歩いていた。やがて日が陰ってくる。もう夕方だ。このままでは夜になってしまう。


「レイさん、そろそろ今夜休むところを探しましょう」

「まだ夕方じゃないの」

「すぐに真っ暗になります。それに食べ物もないですし」


 僕はすぐ横の森の中に入った。この季節なら木イチゴが取れるはずだ。


「よかった、やっぱりあった。とりあえず今日はこれでお腹を満たそう」


 試しに一粒口に入れる。甘酸っぱい味は今日の疲れを吹き飛ばしてくれるみたいだ。レイさんの分もマントに包んで森の外で待っているレイさんの所に戻った。


「ほら、木イチゴが成っていましたよ」

「まぁ、すごいのね。フィルがとってきたの?」

「はい、こっちはレイさんの分」

「あら、私は食べなくても大丈夫よ」


 レイさんは困ったように微笑んだ。


「ドラゴンは精霊に近いからものを食べなくても大丈夫なの」

「そうなんですか……」

「でもせっかくフィルが取って来てくれたからひとつ戴きましょう」


 レイさんはぱくりとひとつ木イチゴを口にした。


「……美味しい」

「よかったです」


 僕等は川の近くの開けた所を今日の宿に決めた。敷物代わりにマントを敷いてそこに転がる。地面はほんのり冷たくてゴツゴツしていたけれど仕方ない。


「ほらフィル、風邪を引くからこっちにいらっしゃい」


 同じく横になったレイさんが手を広げる。


「え……でも……」

「いいから」


 強引に引き寄せられた腕の中は温かくて、なんだかいい匂いもする。どきまぎとしながらも疲れもあってすぐにうとうとしてしまった。


『フィル、お前はどうして出来が悪いんだ』

『わざとじゃないんです。言われたとおりにしているつもりで……』

『がっかりだよ』


 クリス先生がため息を吐いて離れていく。本当に、いつも全力でやってるのになんで僕は……。


「……あ、夢……」


 そうか、もう学園を追い出されちゃったから、クリス先生に怒られる事もないんだ。僕はこんなところで熟睡して夢を見ていたらしい。


「フィル」

「あ、レイさん。起こしちゃいましたか」


 僕はレイさんの顔を見上げた。すると、その顔には警戒心が滲み出ていた。


「……誰か居るわ」


 こんな夜中に寄ってくるのはきっとろくなもんじゃない。例えば狼とか――盗賊とかだ。


「へへへへ、子供と女かぁ」

「おい上玉だぜ」


 今回は後者だったみたいだ。


「ど、どうしよう……」


 僕は鞄の中の魔導書をひっぱりだした。


「風の精霊よ……我が声に応えよ!」


 僕は風の魔法陣を手に呪文を唱えた。大きな風が吹き上がる。


「おお、なんだこのそよ風」

「駄目か、やっぱり」


 やっぱり僕の魔法は不発だった。盗賊は大笑いしてギラギラした目でこちらを見た。


「この坊主魔法使いか」

「そりゃいい、良い値段が付く。お前等殺すんじゃねーぞ」


 すらり、と盗賊達は剣を抜いた。じりじりとこちらに寄ってくる。


「ああ……」


 僕は恐ろしくて腰を抜かした。その時、ポンとレイさんが僕の肩を叩いた。


「そのまま、動かないで」

「……はい」


 僕が返事をするやいなや、レイさんの長い足が盗賊の頭を蹴り上げた。


「ぐわっ……」

「この女ぁ!」


 二人がかりで来たところを今度は手刀で一撃、残る一人のみぞおちに一発いれた。


「ふう、フィル……なんともないわね」

「はっ、はい!」


 僕の返事を聞くと、レイさんは倒れている盗賊を引き摺って一カ所にまとめた。


「さて、どうしようか」

「このまま置いてったら狼がでますよ」

「どこか人里に連れて行きますか」


 僕とレイさんは盗賊のやってきた方の森の中を覗くと、馬車と馬が隠してあった。


「縄もありますよ」

「ちょうどいい、それで縛ってしまいましょう」


 僕等は盗賊をふん縛ると馬車の荷台に乗せて、その場を後にした。それにしても細い女性にしか見えないのに、大男を片手で運んだのにはビックリしたな。やっぱりレイさんはあのドラゴンなんだ。


「馬があれば村までそう遠くないですよ」

「あれかな……?」


 レイさんが指を差す先には人家があった。


「そうです!」


 僕等が馬を走らせると、村の簡素な門で止められた。


「お前ら、何しにきた!」

「盗賊を捕まえたんで、引き取って貰えないでしょうか」

「なんだって?」


 訝しげな顔をした髭の男が幌馬車の中を覗く。そして慌ててこちらにやってきた。


「……本当だ! ここ数ヶ月、この盗賊には難儀していたんだ。一体どうやって」


 男の言う事ももっともだ。はたからみればただの子供と女の一行だもの。


「それは……」


 僕が事情を説明しようとすると、レイさんが手で僕を制した。


「彼は実は魔法使いで、寝込みを襲ってきたところを見事にババーンと吹き飛ばしたのです」

「えっ、そんなぁ……」


 ババーンとやったのはレイさんの方だ。文句を言おうとする僕の口をレイさんは手で抑えた。


「フィル、ドラゴンがここにいますとでも言うつもり?」

「それは……」

「いやあ! 魔法使いなのか、若いのに大したもんだ。もしかしてグレナストゥ魔法学園の?」

「あ、はい……」

「そうかそうか、さ。盗賊はこっちに引き渡して今日はうちに泊ってくれ!」


 僕達は髭の村人に連れられて、農家に泊る事になった。……なんだか釈然としないけど!


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