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28話 旅にで出よう

「は? 魔法が使えない?」

「うん……」


 一緒に働くにあたって僕は秘密にしていた事をアルヴィーに打ち明けた。


「正確には一回だけ使えた。それがレイさんを召喚した時」

「それがドラゴンって……お前の魔力どうなってるんだよ」

「さあ……」


 僕が遠い目をしていると、パンパンとホーマさんが手を打った。


「ほいほい、きりきり働く! アルヴィーも攻撃魔法以外を覚えた方がいいぞい」


 そうなのだ。はぐれ魔法使いらしく、アルヴィーは攻撃魔法特化で街の用事には向かないので僕と一緒に使い走りをする事になったのだ。


「教えるだけなら僕もできるから、頑張ろう」

「おう……」


 そうして僕達は配達に出かけた。


「あ、ずるい!」

「ずるいもなにもあるか」


 アルヴィーは魔法で屋根まで上がって、目的地まで飛んでいった。


「アルヴィーを誘ったのは間違いだったかな」


 一瞬そう思ったけど、あんな泣いてるアルヴィーを放っては置けなかったんだ。そして配達が終わったらポーション作り。最近は僕一人に任せられる事が増えてきた。


「アルヴィー! ちゃんと計りを使って!」

「ええー、めんどくさいや」


 アルヴィーは感覚派らしくてこういう所が適当になってしまう。僕は何度も注意しながらポーションを作った。


「フィル……なんでこんな真面目君なのに魔法が使えないんだ?」

「さあ? 教会では適性ありって出たんだけどね」


 僕はため息を吐いた。なんでなのか僕も知りたいよ。


「フィルはフィルのままでいいんです」

「まんまー?」


 レイさんはいつもの調子でそう言った。


「でもさー、いっつもレイさんがフィルにくっついてる訳にもいかないんじゃない?」

「いいです。くっついてます」

「まぎねも!」

「フィルはそれでいいの?」


 アルヴィーの青い眼が僕を見つめる。う……今は困らないけど、いつかレイさんにひっつかれてたら困る気がする……。


「うーん、それはそれで……」

「じゃあさ、俺のお師匠の所にいかないか?」

「アルヴィーの?」


 アルヴィーからそんな提案が出て驚いた。普通はぐれ魔法使いは弟子の存在も師匠の存在も秘密にするものだからだ。あと、学園に居られなかった位だからすごく変わり者も多いって聞く。


「大丈夫なの?」

「ああ、師匠は人好きの性格だから」

「そっかー……」


 僕はちらりとレイさんを見た。


「なぜ私を見るんです? フィルの行き先にだったらどこでもついて行きますよ」

「そっか、じゃあ行って見ようかな」


 僕だって魔法が使えるようになりたい。そんな、レイさんみたいな強力な魔法じゃなくてもいいから。


「じゃあ決まりだね。ホーマさんに許可をとらないとだ」

「所で師匠はどこにいるの?」

「隣の国のバルクだよ」


 うわーまた行くだけで一週間くらいかかりそうだ。ホーマさんに迷惑かけちゃうな。


「わしは構わんぞい。居なきゃ居ないで配達をやめればええんじゃし」

「ホーマさん……ありがたいけど、もうちょっと商売の事考えましょうよ」


 とりあえず許可は取った。僕達は数日をかけて旅支度をした。今回は資金があるからこの街で全部揃えられるぞ。


「旅は久し振りだな」

「僕も久し振り」


 シオンとレタ、元気にしてるかな。


「で、そのちびワイバーンも連れて行くのか?」

「うん。今のうちに色んな物を見せてあげたいんだ」


 マギネはいずれシオンの元に返す予定だからね。


「いっしょ!」

「そう、一緒だよ、マギネ」

「ぴい!」


 胸元に飛び込んで来たマギネを抱いて、僕達は家を出た。


「レイさん、それじゃ馬車を出して下さい」

「はい分かりました」


 レイさんの収納魔法でしまっていた馬車を取りだして僕達はそれに乗り込んだ。


「レイさんの収納魔法ってどれぐらい入るんだ??」


 アルヴィーはその容量にちょっと引いていた。


「……! フィル!」


 その時、レイさんが叫んで僕に多い被さった。


「……おっとやっぱ早いな」

「お前は……!」


 そこに居たのはあの名無しの男だった。


「どこに行くんだ?」

「お前に言うはずないだろ?」


 男はにやにやしながら近づいて来る。レイさんが構えるのが見えた。


「俺も連れて行けよ」

「は?」

「ひまなんだよなー。この街」


 ひょうひょうと語る名無しの男。こいつは何を言ってるんだ。


「お前がこの街の悪党のボスじゃないのか」

「違いますー。俺はただ雇われただけ。でもそれも飽きちゃったんだよね」

「別に旅行に行くわけじゃないから無理だよ」


 ここは丁重にお断りしよう。僕が断るとその男はにたりと笑った。


「あっそ、じゃあ俺はこの街に火でもつけて回ろう。なんせ退屈だからな」

「なっ!?」

「……連れていく気になったろ?」


 勝ち誇ったように名無しの男は笑う。


「レイさん……」

「はい、ぶっ殺します」


 レイさんが指をボキボキとならした。すると名無しの男はポッと頬を染めた。


「……いいねぇ、そういう所、大好きだ」

「……はぁ!?」


 僕とアルヴィーはその発言にぽかんとした。


「なんだよ、俺が女に惚れちゃいけないのか?」


 名無しの男はちょっとむっとした顔でこちらを見た。


「いや、あの……レイさんを?」

「一目惚れだ」

「まじかよ……」

「いやだって言ってもついていくからな!」


 男は高らかに宣言した。うう……初っぱなから頭が痛い……。


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