表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪人は、命を唄う  作者: アリー
4/4

第4部 ロックバンドと自己嫌悪

再び曲を作ろうとしたところで、コードを握る手がすくんだ。


ため息をつく。


俺は何の為に音楽をやっているんだろう。

誰の役にも立たない。



エンターテインメント性に富んだ音楽であれば、

ファンは楽しみ、その為に仕事を頑張ろう、とか思うだろう。


鬱の人しか聞かないような暗い音楽であれば、

万人受けはしないが、彼らが生きる為の薬になるだろう。

少なくとも俺はそんな音楽は聞きたくないが。


比べて、自分の音楽はエモーショナルロックと呼ばれる部類。

新宿や下北沢に溢れ返っているインディーズバンドと何ら変わりはない。



どうしたら売れるのか。


かと言って、集客0とかいうレベルの売れなさではない。

きっと、このままじゃ停滞する。


音楽性を変えるか。あるいは、バンドを解散するか。


大卒フリーターの馬鹿な頭には、この2択しか出てこなかった。



もう寝よう。夜はどうもネガティブになる。


そういえば、大学で脳科学を学んだ。

と言っても齧っただけだが、教授が言っていたことをふと思い出した。


『セロトニン、俗に言う幸せホルモンは、日光を浴びることで分泌、活性化されます。』


幸せホルモンか。日光浴で幸せになれるなら、世の中困ってる人なんかいねぇよ。



……つまんね。人生変わんねえかな。



そう思いながら眠りについた。




朝10時。iPhoneのバイブで目が覚める。

"まあちゃん"からの返信だった。




---------------------

雨宮康太さん



はじめまして!メールありがとうございます!

まあちゃん と言います。


12月6日、良いですよ〜

その日の夜は私も空いてます!


バンド!カッコイイですね!

なんというバンドですか?YouTubeとかで曲聞いてみたいです!


条件ですが、無しも可です。

料金については、当日相談して決めたいです!


よろしくお願いします!



まあちゃん


---------------------



"まあちゃん"。


それまで寝ていた為、一瞬


誰だ、こいつ……


と思った。


だがすぐに分かった。俺が買う女だ。


寝起きから気分が悪い。

自分という人間の汚さに吐き気がしてくる。




俺は女が好きだ、と言えるだろうか。


抱かずとも、抜けばいいはずだ。


その分のお金が浮く。

そのお金はバンドに注ぎ込み、良い機材でCDが作れる。




新宿歌舞伎町のラブホ街は、あまり好きになれない。



近くのホストクラブを通る度に、


コイツらも上下関係が厳しい中で夜中に頑張っているんだろうな


と思ったら、自分の無力さにいたたまれなくなるからだ。




だから、ちゃんと最後にしよう。


"まあちゃん"と一夜を共にしたら、歌舞伎町のラブホ街とはオサラバだ。


次に来る時には、彼女と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ