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THE バレンタイン イヴ☆ ~どんな男でも女子からチョコが貰える、たった一つの冴えたやり方!~

作者: シャイン樽画

 さて、話は、

 バレンタインデーの前日、

 2月13日のことである……


 ……


 ……


 昼下がりの会社の廊下を

 くたびれた感のするスーツ姿の中年男性が

 歩いていた……


「バレンタインデー……か……」


 会社の窓から見える

 デパートの看板を見ながら

 男性は呟いた。


 その目はどこか虚ろで、

 諦観の念が感じられる。


(ああ……糞ったれな人生だ……)


 もはや、完全に婚期を逃してしまった。


 もっと、20代のうちに

 婚活を頑張っていればと

 今更になって真剣に思う。


 仕事が忙しいから……

 金がないから……

 いい女がいないから……


 そんなことを言って

 現実から逃げているうちに、

 あっという間に

 ジジイに足を突っ込みそうな年齢に

 なってしまった……


「まだ若いんだから頑張って!」


 親戚や恩師など、そう言ってくれる人もいるが、

 今から焦って婚活して

 果たして間に合うのだろうか?


 いや、無理だ……


 男性は頭の中で即答する。


 金がない。


 いや、そうではあるが、

 貯金もそれなりにあるし、

 相手さえ、金より愛情を選んでくれたら

 何とかなるかもしれない……


 まあ、無理だろう。


 女性と付き合った経験なし。


 容姿は……論外。


 こんな状態で

 相手を自分に熱中させることなんて

 できるはずもない。


 大体、服のセンスが……


 自分では悪くないと思っているが、

 女の目から見たら、

 きっとダサイとか言われることだろう……

 流行なんて、知識もないし興味もない。


 もう何をやっても

 上手くいくわけがない。


 何をやっても中途半端。


 こんな俺が

 今更頑張ったところで

 人に笑われるだけだ……


 キャバクラや風俗の女が

 裏で「ぷーくすくす」と嘲笑しながら

 愛想で優しくしてくれるのが

 関の山……


 ああ……

 何でこんな世の中に

 生まれちまったんだろ……?

 思わず現実逃避したくなる……


 ……


 いや、だがしかし、

 男は、はっとする……!


「いや、違う……!

 変わるんだ……

 俺は変わるんだ……!

 変わるために……

 だからこそ、

 “これ”を計画したんじゃないか!?」


 男は、手に持った紙袋の取っ手に

 思わず力がこもる……!


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「はい、これ」


 男は、つかつかと女性社員の前まで来ると、

 そう言いながら、

 手に持っていた紙袋を渡した。


「は?」


 女性社員は、そう言って固まる。

 彼女は、男の部下にあたる。


 上司の男性から渡された謎の紙袋……


 これがもし、書類とかで

 渡されたのなら、

 何も言われないでも

 コピー機の前に行こうとしていたことだろう……


 だが、渡されたのは、

 紙袋……?


 しかも、赤い派手な紙袋で

 会社には似つかわしくない印象だ……


 これは一体……?


 女性が、紙袋を渡されたまま硬直していると、

 男性上司は、さも当たり前のことを言うようにして

 こう言うのだった。


「バレンタインデーの日に……

 俺に……

 このチョコを渡してくれ」


「え……?」


 女性は、耳を疑った。


 この上司は何を言っている?


 ……


 女性は、頭の中で整理をつけるのに

 数十秒を要した……


 やがて、意識を取り戻し、

 紙袋をよく見てみる……


 袋にはアルファベットで

 「××chocolate」とあった……


 どうやら、本当に

 この紙袋は、

 チョコレートであるらしい……


 そして女性は思う……


(そこまでして、チョコが欲しいのか……キモ……)


 自然と、

 憐れみとも侮蔑ともとれる表情が

 女性の表情に現れてしまう。


 男は、それを即座に感じ取ったが、

 極めて冷静に……

 受け止める。


 気にも留めない。


 男にとってこれくらい慣れっこだ。

 むしろ何でもない。


 以前、駅で道を訪ねようと

 呼び止めた女子高生に……




「ひ、ひぃ!? ご、ごめんなさい!?」




 ……と、

 泣きながら逃げ出されたことに

 比べれば……

 こんなことぐらい……


 ああ、そういや……

 あの時は、近くに交番があって、

 あの後、大変だったなあ……


 日本の治安は、しっかりと維持されている

 そう、身をつまされて感じたんだっけ……


 ……


 おっと、話が逸れた。

 男の意識が戻って来た。


 男は、あのJKに逃げ出されたことを

 ひとつの教訓として学んだことがある。

 それは……



『相手の立場になって考えてみよう!』



 ……ということだ。


 だから、男は、

 努めて冷静に、

 部下の女性に優しく語りかけた。


「あ、別に、

 皆の前で渡すとかじゃなくていいぞ?

 給湯室で隠れて渡す……とかで十分。

 何なら、会社の外で

 駅とかで待ち合わせて渡してくれてもいい……

 俺は君を辱めて

 公開処刑したいわけじゃないから」



(いや、そこじゃねーよ……)



 女性は頭の中で思う。


 そもそも、何で

 こんな回りくどいことさせんだよ、この人……


 女性が困った顔をしていると、

 男はそれを察したのだろう。


「俺の目的は、ただ一つ!

 俺は……

 形はどうであれ……



 【 女 子 か ら チ ョ コ を も ら っ た 】



 ……という事実だけが欲しいんだ!」


 男らしく言い放った。



 女性は、心の中で思う……


(うわぁ……キモ……)


 思わず、口に出そうになった言葉を

 ぐっと我慢して呑み込んだ。


 そして、その代わりに……


「彼女さんとかから貰えないんですか?」


 つい、思った疑問が漏れてしまう……


「……!?」


 その言葉に、男は一瞬、

 きっ、と女性を

 睨みつけるような表情を見せる。


(あ、やべ……地雷ふんだっぽい……)


 女性はそう思うが、

 男が女性を睨んだのは一瞬だった。


 男は我慢したのだ。


「君は、俺のこのブサイク面を見て、

 彼女がいると思うのか?」


「え……えと……その……」


 男は……

 これから、このバレンタインデーの儀式に

 付き合ってくれる女性と

 事を構えるわけにはいかなかったのだ……


「まあ、いいさ……

 とにかく頼んだぞ?

 俺の『ごっこ遊び』に

 付き合ってくれ……」


「……」


 男は踵を返して、

 その場から去ろうとする……


 ……


 ……が、数歩歩いてから

 男は、女性の方を振り返らず、

 最後に一言言い放った。


「言っておくが、これは業務命令だからな!」


 そう言って、

 すたすたと、その場を去った。


 残された女は、

 呆然としたまま、心に思う。


(何の業務だよ……あほ)


 そして、自分の席に戻ると、

 引き出しを開け、

 ハンドバックの中から

 何かを取り出した……


(どうすんだよ……これ……?)


 女性は、少し考えてから……


(折角、手作りまでしたんだものな……くそっ!)


 綺麗にラッピングされた“それ”を

 男が持って来た紙袋の中に

 突っ込んだ……


(もう、知らん……どうにでもなぁれ!)




 今日は、2月13日……


 明日は、聖バレンタインデーだ……

作者「以上、5ちゃんねる文芸板で書いたものを

   書き直して投稿した作品でしたw」

作者「元は、会話文だけのSSだったんですがね」

作者「冗談に付き合って、ちゃんと書いてみたけど、

   書いてて結構面白かったなw」

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作者「自作品の宣伝させてください!」


◆おねショタ転生! 異世界のオバs…おねえさん達に囲まれて僕はしあわせ者の冒険者です(泣) 

 ~どき!女(30over)だらけの異世界冒険記~

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