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くなど

作者: 葵陽
掲載日:2017/11/09

新作更新です。

長編を書くための一作というべきでしょうか

また十頁ほど書いたら連載にまとめようと思います。


賞に出せる作品を目指します、一応。

彼女は、こんにゃくが苦手らしい。

 

三度目のデートで分かったのだが、どうしても食べられないと言っていた。普段の、しっかりした彼女からはなかなか想像できない。

俺は何でも美味しく感じてしまうためその気持ちを分かってあげられないが、「いい歳なのに、恥ずかしい」と少し赤らんだ顔で言う彼女は可愛いと思う。

彼女、宍戸ししど けいとは友人の紹介で出会い今は、とても友好的な関係であると思う。三度目のデート、と言ったが明確に好意を口にしたことは一度もない。

「友達と遊ぶ」程度の意味合いしかこのデートにはない。

お互いに成人をとうに過ぎている。いい加減「恋人」という関係になりたいと俺、ともり 清太郎せいたろうは思うばかりである。


俺は、おもむろに彼女の皿の上からこんにゃくをさらう。

三度目とはいえデートでおでん屋に来るのは間違いだったと、今は猛省している。


清太郎は目の前の、慧の顔をこっそり見る。

慧にはモデルや女優のような、煌びやかな美しさはない。だがモデルや女優を綺麗だと思うことはあっても、「結婚したい」と思うことはないだろう。恋は盲目というのは本当らしい。


清太郎はこの世の誰でもなく、慧と「結婚したい」と思っている。









「まいどあり、またのお越しを!」

赤い暖簾をくぐり、おでん屋を後にする清太郎と慧。


二人並んで、最寄り駅までの道を歩き始めた。

「このまま、駅まで」

「あっ、いえ、・・・少しそこの公園で休みませんか?

ちょっと飲みすぎてしまって。」

送る、という清太郎の申し出を遮り慧は近くの公園を指さした。

昼間は数多くの子供が遊んでいただろうその公園、今はポツンと一つのベンチとそれを照らす街灯があるだけだった。


公園に入り、どちらからともなくベンチに腰を下ろした。出来てから大分経つのだろう、座ると同時にギッとベンチが鳴る。

「女性が座る前には椅子の下にハンカチを敷くのがベター、特に公園などのベンチに座るときには必須だ」という友人の言葉を、座った後に思い出し清太郎はまた心中にてひとり反省した。


意識はしっかりしているが酒も入っている為、両人とも気分が若干高揚していた。


 しばしの沈黙のあと、口を先に開いたのは清太郎。

「こ、今度は宍戸さんの行きたいところにいきましょう。今日のお詫びも兼ねます。」

「お詫び?」

「こんにゃく、いえ女性と飯を食べるのにおでん屋はあまりにも失礼だったかな、と。」

「なんだ、そんなこと。私は、おでん屋でよかったですよ。確かに世の女性はイタリアンとかフレンチとか、高級ホテルのバーとかが好きそうですけど。

それに、こんにゃくが苦手なのは私が悪いんです。」

ふふ、と恥ずかしそうに笑う慧を見て、清太郎は更に気分が高揚した気がした。全身に熱が駆け巡る感覚がする。

今日は立冬だというのに、暑い。

 

 気が付くと、清太郎は慧の目を見つめていた。本当は手も握りたかったが、不用意に相手の身体に触れるのはいけない、という友人の言葉を思い出して。


「宍戸さん、俺のこと、どう思っていますか。」

「灯さんのこと、ですか。」

「宍戸さんの恋人には、不釣り合いでしょうか。」

「あっ。」

清太郎の問いの意味が分かり、慧は顔を背けた。清太郎の位置からは、慧の表情が分からないが、長い黒髪の間からチラリと見える耳は赤くなっている。




「と、灯さんはとても優しくて良い方だと思います。」

「では、俺の」

「でも、お付き合いするのは考えさせてください。」

清太郎の高揚していた気分が、地の底に落ちていった。好きな人に翻弄されることで怒りを感じることはまずないが、その分落胆が大きい。まるで病気にかかった時のように、暗く淋しい気持ちになる。

他者から見れば今の清太郎は、捨てられた犬のようだ。


「俺に至らない部分が、あるなら。」

デートでおでん屋に行くところとか。


「いえ、そういうわけではないんです。私に灯さんは勿体ない、という意味で。」

「正直に言ってください、宍戸さん。未練がましい、往生際が悪いとさんざん言われている俺だけど、貴女が好きなんです。」

困り顔で清太郎の告白を断る慧。それでも、諦めきれない清太郎はベンチから降り公園の地べたに正座をした。

深夜も近い暗闇の公園といえど誰が通るかわからない。「困ります、立ってください」と慧が立たせようとするが清太郎は立ち上がろうとしなかった。

 余談だが、彼の着ているスーツは決して安くない。


どんなにしても立ち上がらない清太郎に諦めて、ようやく慧は口を開く。

「おこがましいことを承知で言うのですが。」

「はい、なんなりと。」

清太郎は慧の好みのタイプになる気満々であった。慧がデブ専なら明日から太るつもりだし、面食いなら整形も辞さないつもりだった。






「私は、自分よりも長生きする方が好きなんです。」

むかし、どこかの寮母さんも言ってたような気がする。


定期更新作です。

一度、前書いていたものをお休みして新作をと思い立ちました。

一週間考えてこの出来とは、と思いますがお読みいただければ幸いと存じます。

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