夢の中の君に恋をした
僕は恋をした。
名前も知らない。顔もはっきりと思い出せない。
シルエットに恋をしたのかと思うくらい記憶は曖昧で、そして根拠のない愛が自分を締め付ける。
自分がロミオだと錯覚してしまいそうだ。あぁ、僕は、夢に出てきた君に恋をした。
その日はまた一段と体が重かった。
ただでさえ朝は苦手なのに、ずっと恋に苦しまなければいけない。絶対叶うわけがないのに。
あの人が、もし。あの人が現実にいたとしても、向こうは自分のこと泣いて知らないだろう。
そもそも、顔も思い出せないからなお一層切ない。
でも、時間は有限なんだ。鬱に浸っててもしかたない。とりあえず、学校に行かなければならない。
小難しいことを考えているうちに気分は晴れるだろうと思いつつ、僕は家を出た
学校が終わり、自分の部屋にたどり着くと同時に思わず笑ってしまった。
誰が晴れるなんて言ったんだ。晴れるどころ雨まで降ってくる勢いだ。恋は、誰かに話をすることで余韻に浸ることもできるし、気持ちが軽くなる。なら、友達に俺は夢の中の女の人に恋をした!と相談できるなら、どんだけ楽だろうか。早く会いたいが、凄く夜が怖い。また、何とも言えない気持ちになるくらいなら、一層寝ないほうが良いのではないか。そんな考えはむなしく、僕はいつの間にか眠りについてしまった。