土の如き鬼
俺はいま走っていた
誰だって走りたくはないだろう
しかし一種の筋トレのようなものでもある。
こんな重い防弾チョッキに、物騒な突撃銃まであるから、正直いえば効果は申し分ない
だが残念なことに、走りたくて走っている訳ではない
死にたくないから仕方なく、
こんな重い装備でいるのに、
陸上選手さながらの速度で、
あれから逃げているのだ
鬼は人型である
というか人間にツノを生やした生き物だ
染めなければ髪の色も、爪の色も、皮膚の色も、普通の人間と変わらない
違いは魔法を使えるかどうか、だった
それだけのはずだったのだが
今回の鬼は明らかに違う
肌は、土をそのまま食べた、みたいな色をしていて
家1つ分くらいの大きさで
さらに言えば目なんかありゃしないし、足は3本もある
なんなのだろう、あれは
よく分からないが
こんな歩兵の持つ、プルバップ式の突撃銃では歯が立たないことは今分かった
そして自らの銃撃により位置がバレてしまい
鬼が、人間素手で潰す必要を作ってしまったため
全速力で追いかける、土気色をした3本足から逃げているってことになる
たかだか田舎の護衛なんて
不必要かと思っていたが
こんなものと戦わせられるなら
何人いても足りない気がしてならない